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12月 07 2022 睡眠が不規則な人は全死亡リスクが最大1.5倍高い――日本人8万人の縦断的研究
自分の睡眠が不規則だと自覚している人は、睡眠時間を含む多数の交絡因子を調整後も全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが高いというデータが報告された。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の大道智恵氏、小山晃英氏らの研究によるもので、詳細は「Sleep Health」に10月10日掲載された。
睡眠時間の長短がさまざまな疾患の発症や全死亡のリスクと関連のあることは、多くの研究により明らかになっている。また近年では、シフト勤務などによる不規則な睡眠も健康リスクとなり得ることが示唆されている。小山氏らも既に、主観的な評価に基づく不規則な睡眠が、メタボリックシンドロームのリスクと有意な関連のあることを報告している。主観的な評価は客観性に欠けるという欠点があるものの、煩雑な検査を必要としないため、一般住民など大人数の睡眠に関連する健康リスクを、簡便かつ低コストで評価できるというメリットがある。今回、小山氏らは、主観的な評価による不規則な睡眠と全死亡リスクとの関連の有無を、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)」のデータを用いて検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。J-MICC研究は、日本人の生活習慣病リスクの解明を目的として2005年から14拠点で継続されている前向きコホート研究。2004~2014年に35~69歳の成人9万2,527人がベースライン登録されている。そのうち、習慣的に睡眠薬を服用している人や追跡期間が1年未満の人を除外して8万1,382人(男性44.2%)を解析対象とした。睡眠の規則性については、ベースライン時の自記式アンケートに含まれていた「就床・起床時刻は規則的か?」の回答から判定。9,768人(12.0%)が「不規則」と回答した。なお、平均睡眠時間は6.6±1.0時間だった。
73万6,319人年(平均9.01年)の追跡で、3,376人が死亡。1,000人年当たりの死亡率は4.59だった。睡眠時間と睡眠が規則的か否かによって全体を6群に分け死亡率を比較すると、長時間睡眠群と睡眠が不規則な群で高いことが分かった。具体的には、睡眠時間6時間未満で規則的な場合は4.5、不規則な場合5.1、睡眠時間6~8時間未満では同順に4.1、5.2、睡眠時間8時間以上では6.3、7.6だった。
死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、飲酒・喫煙・運動習慣、教育歴、虚血性心疾患・脳卒中・がんの既往、および調査拠点)を調整後の全死亡リスクは、睡眠時間6~8時間未満に比較し8時間以上の群で15%高く〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間)1.05~1.25〕、睡眠が規則的な群より不規則な群は30%高かった〔HR1.30(同1.18~1.44)〕。性・年齢別に解析すると、男性は年齢(60歳未満/以上)にかかわらず、睡眠が不規則な群は有意に死亡リスクが高かった。一方、女性では睡眠が不規則なことと死亡リスク上昇との関連が有意なのは60歳未満のみであり、60歳以上や女性全体では有意な関連がなかった。
次に、睡眠時間が6~8時間未満でかつ規則的な群を基準として、他の5群の死亡リスクを比較。その結果、睡眠が規則的な場合は睡眠時間が8時間以上の群で有意なリスク上昇が認められ〔HR1.14(1.04~1.24)〕、睡眠が不規則な場合は睡眠時間にかかわらず、全てのカテゴリーで有意な死亡リスク上昇が認められた。具体的には、6時間未満はHR1.21(1.02~1.44)、6~8時間未満はHR1.23(1.09~1.40)、8時間以上はHR1.52(1.18~1.96)であり、最大で52%ハイリスクだった。
著者らは本研究を、「睡眠の規則性に対する主観的な評価と、全死亡リスクとの関連性を示した初の報告」としている。結論は、「睡眠障害を含む慢性疾患の既往歴が不明のため、交絡因子の調整が十分でない可能性などが限界点として挙げられるものの、死亡リスクの評価には睡眠時間の長短だけでなく、睡眠の規則性も把握する必要があることが明らかになった」とまとめられている。
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11月 07 2022 明るい寝室で寝ることが肥満やうつ症状、全身性炎症と関連
約3,000人の一般住民を対象に、睡眠中の寝室の明るさと健康指標との関連を検討した研究(平城京スタディ)から、明るい寝室で寝ている人には、肥満、脂質異常、全身性炎症、うつ症状、睡眠障害が多いという結果が報告された。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究であり、詳細は「Environmental Research」に9月21日掲載された。
寝室の明るさが健康リスクとなる可能性を示した研究は、過去にも報告されているが、それらは対象者数が限られていた。今回、大林氏らが実施した研究は、奈良県に居住する40歳以上の一般成人3,012人を対象とする大規模な疫学研究であり、照度計を用いて2日間にわたり睡眠中の寝室の明るさを測定した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。解析対象は、照度計の設置位置が適当でないと判断された対象者などを除く2,947人(平均年齢69.3±7.8歳、女性60.6%)。睡眠中の寝室照度の中央値は1.0ルクスだった。照度の四分位値で全体を4群に分類すると、第1四分位群は0.2ルクス未満、第2四分位群は0.2~1.0ルクス、第3四分位群は1.0~4.0ルクス、第4四分位群は4.0ルクス以上だった。
これら4群の健康指標を比較すると、以下の有意な関連が認められた。睡眠中の寝室照度が明るい群ほど、BMI、腹囲長、中性脂肪が有意に高値であり、HDL(善玉)コレステロールは有意に低値だった。また、睡眠障害(ピッツバーグ睡眠スコア6点以上)やうつ症状(老年期うつ尺度スコア6点以上)の割合が有意に高かった。これらの健康指標に影響を及ぼし得る因子(年齢、性、喫煙・飲酒・運動習慣、収入、教育歴、入床時刻、就床時間、睡眠薬・抗うつ薬の使用など)を調整した多変量解析でも、睡眠中の寝室の明るさがさまざまな健康リスクとなっている可能性が浮かび上がった。
第4四分位群(最も寝室が明るい上位25パーセント)は第1四分位群(最も寝室が暗い下位25パーセント)に比べて、BMI(P=0.007)、腹囲長(P<0.001)、LDL(悪玉)コレステロール(P=0.015)が有意に高く、睡眠障害の割合も有意に高かった〔第4四分位群ではオッズ比(OR)1.43(95%信頼区間1.14~1.79)〕。さらに、10ルクスをカットオフ値として二群に分けて比較すると、寝室の明るさが明るい群は前述の指標に加えて白血球数が高値(P=0.041)で全身性炎症の亢進が示唆され、また、うつ症状を有するオッズ比が有意に高かった(P=0.047)。
以上の結果から大林氏らは「3,000人規模の横断研究により、交絡因子を調整後も寝室の明るさが、肥満、脂質異常、全身性炎症、睡眠障害、うつ症状と有意に関連していることが示された。今後の追跡調査による縦断的研究が必要とされる」と総括。また、「寝室の明るさと白血球数の関連を示した研究は、本研究が初めて。白血球数は心血管死や全死亡の予測因子である」としている。なお、両者の関連のメカニズムについては、「夜間の光曝露による睡眠障害やメラトニン分泌の減少が白血球数を増加させたのではないか」と考察している。
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7月 16 2021 日本の子どもの睡眠負債の現状――2万人超の調査結果
秋田大学大学院医学系研究科精神科の竹島正浩氏らの研究結果が「Scientific reports」に6月1日掲載された。2万人以上の小中学生の保護者を対象とする全国規模の調査から、日本の子どもたちの睡眠実態が明らかになった。日本の子どもは睡眠時間が不足している可能性があり、18.3%の子どもが何らかの睡眠障害に該当した。また、情緒・行動面の問題に睡眠に関する症状や睡眠潜時、中途覚醒時間の延長が関連していたという。著者らは、「子どもたちに情緒・行動面の問題がある場合、睡眠に関する問題を考慮する必要がある」と述べている。
子どもの発達において睡眠は重要な役割を果たしている。子どもの睡眠負債は覚醒度の低下だけではなく多動、不注意などの症状とも関連する。また、子どもの睡眠障害はうつ病などの精神障害のリスク因子である。このように、睡眠と情緒・行動面の問題および精神疾患との関連について多くの研究がなされている一方で、日本の一般児童における睡眠実態や、睡眠と情緒・行動面の問題との関連については明らかにされておらず、医療、教育、支援の現場における理解はきわめて不十分である。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。これらを背景に竹島氏らは文部科学省と各地域の教育委員会の協力を得て、北海道から九州の10県にある小学校148校と中学校71校の子どもたちを対象に睡眠の実態調査を行った。2009年12月~2010年4月に、6~15歳の子ども8万7,548人の保護者に対してアンケート調査を行い、回答のあった2万5,779人から内容に不備のあるものなどを除外した2万2,604人(平均年齢10.3±2.5歳、男児51.0%)を解析対象とした。
子どもの睡眠習慣については、過去1カ月間の就床時刻、起床時刻、昼寝時間の平均を保護者が質問票に記載した。就床時間は就床時刻から起床時刻までの長さとし、総睡眠時間は就床時間から入眠潜時(寝付くまでに要した時間)、中途覚醒時間(寝付いてから起床するまでの間に覚醒した時間)を引いて算出した。睡眠効率は就床時間あたりの総睡眠時間の割合とした。
対象児童の過去1カ月間の睡眠の状況については小児・児童用簡易睡眠質問票(BCSQ)を用い、就床時の症状4項目(就床抵抗など)、睡眠中の症状9項目(夜驚、悪夢など)、起床時の症状5項目(覚醒困難など)、眠気の症状1項目(突然眠る)を調査した。睡眠症状のサブスケール(就床時、睡眠中、起床時、眠気)を有する割合は、週2回以上の項目が1つ以上該当する場合に「あり」とし、BCSQの合計得点が24点以上の場合「睡眠障害の疑いあり」とした。
情緒・行動面の問題については子どもの強さと困難さ質問票(SDQ)で評価し、Total difficulties scores(TDS)を算出した。
では結果だが、睡眠習慣については就床時刻の変化が最も顕著であった一方で、起床時刻は概ね一定だった。小学校1年生から中学校3年生の9年間で就床時刻は約2.2時間後退し、その結果9年間で睡眠時間は2時間減少していた。
BCSQでは18.3%の子どもが何らかの睡眠障害に該当した。睡眠症状のサブスケールについては起床時の睡眠症状が最多で41.7%、続いて就床時が34.5%、睡眠中が32.9%であり、日中は0.3%だった。SDQでは情緒や行動面の問題は学年が上がるに従い減少し、特に多動性と不注意を示すスコアが成長とともに大きく低下していた。
続いてTDSを従属変数、年齢や性別、睡眠習慣、BCSQで測定した睡眠症状(就床時、睡眠中、起床時、日中)を独立変数として重回帰分析を行った。その結果、すべての睡眠症状および入眠潜時の延長、中途覚醒時間の延長が情緒・行動面の問題と有意に関連していたが、睡眠時間は関連していなかった。情緒・行動面の問題と睡眠時間に有意な関連が認められなかった理由として、最適な睡眠時間は人により異なることのほか、この研究では本人ではなく保護者が子どもの睡眠時間を判断したため、入眠潜時や中途覚醒時間の補正が正しくなされていなかった可能性があるという。
著者らは本研究が横断研究であり因果関係には言及できないと述べた上で、「日本の多くの子どもたちが睡眠負債や睡眠障害を抱えている可能性があり、睡眠習慣や睡眠障害が情緒・行動面の問題に関連している」と結論付けている。
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11月 28 2020 座位行動を睡眠に変えるとメンタル不調が減る可能性――明治安田厚生事業団
睡眠時間や身体活動が少ないとメンタル面に悪影響が現れることは、多くの人が理解している。しかし、1日は24時間だ。例えば睡眠時間を増やすには何か別の時間を減らさなければならない。では、何の時間を減らすことが効果的なのか?
この悩ましい問題の解決につながる研究結果が報告された。平日の座位行動や低強度身体活動(ゆっくり歩行や家事など)の時間を1時間減らし、それを睡眠時間に充てると、メンタル不調を抱えたり仕事への意欲が低下したりする確率が減ると試算された。一方で中~高強度の身体活動時間(運動やスポーツなど)を加減してもメンタル面への影響はそれほど大きくないという結果であった。明治安田厚生事業団体力医学研究所の北濃成樹氏、甲斐裕子氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine Reports」12月号に掲載された。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。北濃氏らは、生活習慣と健康との関係を継続調査している「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」の一環として、1日の行動とメンタルヘルスとの関連を検討した。データ解析には、ある行動に充てる時間を増やしてその他の行動の時間を減らすという、時間配分変更の影響を総合的に判定可能な、組成データ解析(compositional data analysis:CoDA)という統計手法を用いた。
研究参加者は明治安田新宿健診センターを受診した労働者のうち、10日間加速度計を装着して生活することに同意した1,647人。加速度計の記録と、睡眠時間に関する調査から、24時間をどのように過ごしているかを分析。メンタルヘルスは、心理的ストレスと、ワークエンゲイジメント(仕事への活力)を評価した。心理的ストレスの評価には、K6スコアという指標を用い、スコアが5点を超える場合を、心理的ストレスがある状態と判定。ワークエンゲイジメントの評価には、UWES-9スコアという指標を用い、スコアが3点未満の場合を、ワークエンゲイジメントが低下した状態と判定した。
加速度計の記録が不十分な人や精神疾患罹患者、睡眠薬服用者などを除いて、1,095人のデータを解析に用いた。平均年齢は50.2±9.5歳、女性が68.6%を占め、23.4%が営業職であり、大半は短大卒以上のフルタイム勤務者だった。
24時間の行動とメンタルヘルスの関連をゆがめる可能性のある因子(年齢、性別、BMI、学歴、経済状態、婚姻状況、飲酒・喫煙習慣、職種、雇用形態、残業時間)で調整後の解析で、平日の時間配分とメンタルヘルスに、有意な関連が認められた。具体的には、睡眠時間が長いほど心理的ストレスが低く〔K6スコア5点超のオッズ比(OR)0.20、95%信頼区間0.10~0.44〕、ワークエンゲイジメントが高く維持されていた(UWES-9スコア3点未満のOR0.41、同0.20~0.81)。一方、中~高強度身体活動の時間に関しては、メンタルヘルスと関連がなかった。また、休日の睡眠や身体活動の時間は、いずれもメンタルヘルスと関連がなかった。
さらに、座位行動や低強度身体活動の時間を減らして、それを睡眠に充てることで、メンタル面の問題を抱えにくい可能性があると明らかになった。例えば1日に60分の座位行動を睡眠に充てた場合、心理的ストレスを抱える確率が20.2%減少し、ワークエンゲイジメントが低下する確率が11.4%減少すると推計された。また60分の低強度身体活動を睡眠に充てた場合は、心理的ストレスを抱える確率が26.6%減少すると考えられた。
著者らは、「平日の時間配分が、労働者のメンタルヘルスと有意に関連していることが分かった。座位行動や低強度身体活動の時間を睡眠に割り振ることで、心理的ストレスをため込まずにワークエンゲイジメントを高めながら働くことにつながり、労働者のメンタルヘルス管理に有効な対策となる可能性がある」と結論付けている。またそのためにも、「企業経営者は長時間労働(残業)を、従業員は日常生活での座位行動(職場での座業、余暇時のテレビ視聴やパソコン利用など)をそれぞれ見直し、睡眠時間を充分確保する取組みが必要」と解説している。
ただし留意点として、本研究が主に首都圏の企業に勤める比較的活動量の多い労働者での検討であるため結果を一般化できるとは限らないこと、横断研究であり因果関係には言及できないことなどを挙げている。なお、欧米からは、中~高強度身体活動に充てる時間を増やすことがメンタル不調改善に有効という、本研究とは異なる結果が報告されている。その相違の理由については、「日本は世界的に見て睡眠時間が短い国であるため、睡眠時間を増やすことによるメリットが強く現れるのではないか」と考察している。
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6月 26 2018 肥満と睡眠呼吸障害で高血圧と糖尿病の頻度が増加 短時間睡眠との関連みられず、京都大
肥満と睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing;SDB)は高血圧や糖尿病と関連し、その関連の程度には性差や閉経前後で差がみられることが、京都大学大学院呼吸器内科学の松本建氏と同大学院呼吸管理睡眠制御学特定教授の陳和夫氏らの研究グループの調べで分かった。7千人を超える対象者で客観的な睡眠時間とSDB〔ほとんどは閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)と考えられる〕を同時に測定し、肥満や高血圧、糖尿病との関連を調べた研究は世界初のもの。
SDBや肥満が重症化すると睡眠時間は短縮したが、短時間睡眠自体はこれらの生活習慣病の発症と関連しない可能性も示された。
詳細は「SLEEP」5月9日オンライン版に掲載された。OSAは日中の過度な眠気を引き起こすだけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病と関連する可能性があり、最近では短時間睡眠との関連も報告されている。
また、肥満はOSAの最大の要因であるが、近年、肥満があると睡眠時間が短くなることが報告されるようになった。
さらに、短時間睡眠は生活習慣病の原因になるとの報告もみられるが、これらの報告の睡眠時間はほとんどが自己申告によるもので、客観的な睡眠時間ではなかった。
このように、OSAと肥満、短時間睡眠は相互に関連する可能性があるが、これら3つの要因を同時に客観的に測定し、これらの相互の関連を調べた大規模な報告はなされていない。睡眠呼吸障害に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報をsmtで検索
お近くの治験情報を全国から検索できます。研究グループは今回、同大学と滋賀県長浜市が連携して約1万人の市民を対象に健診データの収集や解析を進めている「ながはま0次予防コホート事業」のデータを用いて、SDBの有無や程度と客観的な指標に基づく睡眠時間を測定し、SDBと短時間睡眠、肥満を同時に考慮した場合の高血圧や糖尿病との関連について検討した。
研究では、睡眠時間は腕時計型の加速度計と睡眠日誌による客観的な指標を用いて測定し、SDBはパルオキシメーターを用いて評価した。
2013~2016年に参加した9,850人のうち加速度計で5日間以上(平日4日以上かつ休日1日以上)測定し、パルオキシメーターで2日間以上測定し得た7,051人(71.6%)を対象に解析を行った。
なお、中等症~重度のSDBの定義は、客観的に評価した睡眠時間で、睡眠1時間当たりの基準値に対して酸素飽和度が3%以上低下した回数が15回以上とし、肥満の定義はBMI 25kg/m2以上とした。その結果、睡眠時間は性や閉経前後で差はみられなかったが、治療対象となる中等症以上のSDBの頻度は男性で23.7%と高く、女性では閉経前の1.5%に対して閉経後には9.5%に上昇することが分かった。
解析の結果、SDBや肥満が重症化すると睡眠時間は短くなることが分かった。
また、中等症以上のSDBは男女ともに高血圧の発症頻度の上昇と関連したが(SDB正常者に対して男性3.11倍、閉経前女性3.88倍、閉経後女性1.96倍)、糖尿病に関しては、中等症以上のSDBは女性でのみ関連を示し、特に閉経前女性でその発症頻度は28.1倍と著明に上昇した(閉経後女性では3.25倍)。さらに、肥満は男女ともに高血圧や糖尿病と関連したが、短時間睡眠自体とこれらの生活習慣病との間には関連はみられなかった。
なお、従来から明らかな肥満と高血圧、糖尿病の関連は約20%がSDBを間接的に媒介したものであることも分かった。以上の結果を踏まえ、研究グループは「今回の研究から、SDBによって睡眠時間が短縮している人がいることや、治療を要するSDBがある人は高血圧や糖尿病に注意が必要で、特に閉経前の女性では糖尿病を慎重に調べる必要がある可能性が示された。
また、肥満と高血圧や糖尿病との関連はSDBが間接的に媒介していたことから、SDBがある肥満者の治療には減量だけでなくSDB治療を加えると有益な可能性もある。
中でも、薬物治療の効果が不十分な高血圧や糖尿病の患者ではSDBの存在も考慮する必要がある」と結論づけている。
調査は現在も継続中で、睡眠時間とSDBの程度やその変化が高血圧や糖尿病に与える影響を縦断的に解析する予定だという。治験に関する詳しい解説はこちら
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5月 02 2018 長時間の残業と睡眠不足で2型糖尿病リスク増 約3万人の会社員を対象に分析、帝京大ら
残業時間が月当たり45時間を超え、かつ睡眠が十分に取れていない人は2型糖尿病になりやすい可能性のあることが、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の桑原恵介氏らの研究グループの調べで分かった。一方で、残業時間が月に45時間を超えていても、1日に5時間を超える睡眠を取っているとこうしたリスクは上昇しない可能性も示された。
研究グループは「長時間働く人は睡眠不足になりがちだが、睡眠を十分に取ることで長時間労働による健康への悪影響が打ち消される可能性がある。
睡眠時間を取るように工夫して欲しい」と話している。
詳細は「Journal of Epidemiology」2月3日オンライン版に掲載された。長時間労働は睡眠不足や心的ストレスとも関連することから、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患リスクを高めると考えられている。
しかし、労働時間と2型糖尿病の発症リスクを関連づけるエビデンスは限られており、一定の見解は得られていない。2型糖尿病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。研究グループは以前、4つの企業に勤める約4万人の会社員(16~83歳)を対象に行った横断研究から、残業時間と糖尿病の有病率はU字型の関連を示したことを報告している(PLOS ONE 2014; 9: e95732)。
研究グループは今回、会社員の睡眠状況にも着目し、同じ集団のデータを用いて、労働時間と睡眠時間がそれぞれ、あるいは相互に2型糖尿病リスクに及ぼす影響について前向きに調べる観察研究を行った。対象は、職域多施設研究(J-ECOHスタディ)に参加した12社のうち4社で、2008年または2010年に健診を受けた会社員3万3,050人(30~64歳、平均年齢は44.9歳、このうち2万8,489人が男性)。
対象者を月当たりの残業時間で4つの群に分けて2型糖尿病リスクとの関連を調べ、さらに、生活習慣に関する詳しいデータが得られた1社(2万7,590人)において、月当たりの残業時間(45時間未満または45時間以上)と1日の睡眠時間(5時間未満または5時間以上)で4つの群に分けて、残業時間および睡眠時間と2型糖尿病との関連を調べた。平均で4.5年間追跡した結果、1,975人が2型糖尿病を発症していた。
対象者を月当たりの残業時間で4つの群に分けて解析したところ、最も短い群(40時間または45時間未満)と比べて最も長い群(100時間以上または100時間超)で2型糖尿病リスクに差はみられなかった(ハザード比0.97、95%信頼区間0.64~1.38)。
一方で、睡眠時間と2型糖尿病リスクとの間にはU字型の関連がみられた。また、1社において、残業時間と睡眠時間を組み合わせてこれらの関連をみたところ、複数の交絡因子で調整した解析により、残業が月当たり45時間以上かつ睡眠時間が5時間未満だった人では、残業時間が45時間未満で睡眠時間が5時間以上だった人と比べて、2型糖尿病リスクは1.42倍(ハザード比、同1.11~1.83)に上ることが分かった。
一方で、45時間以上の残業をしていても、睡眠時間が5時間以上だった人では2型糖尿病リスクの上昇はみられなかった(同0.99、0.88~1.11)。これらの結果を踏まえて、研究グループは「全体で見ると、長時間労働は2型糖尿病リスクの上昇と関連しなかったが、長時間労働に睡眠不足が加わるとこのリスクは高まった」と結論づけている。
また、「長時間の残業で高まった交感神経の活動は血糖値の上昇を引き起こす可能性がある。
交感神経の過剰な活動を抑えるためにも睡眠を十分に取ることが大切だ」と付け加えている。糖尿病の基本情報についての詳しい解説はこちら
糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。
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4月 20 2018 血中レプチン濃度が睡眠の質と関連する可能性 日本人の肥満合併2型糖尿病患者で検討、大阪市立大
肥満を伴う2型糖尿病患者では、血中レプチン濃度が高いほど睡眠の質が良好である可能性があり、血中レプチン濃度の測定が睡眠の質の評価に有効なマーカーとなる可能性があると、大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学講師の森岡与明氏らの研究グループが発表した。食欲のコントロールに働くレプチンはこうした患者において睡眠の質を改善する新しい治療標的となる可能性があるという。
詳細は「Journal of Diabetes Investigation」2月26日オンライン版に掲載された。睡眠の質が悪いと肥満や2型糖尿病、メタボリック症候群になりやすいことが知られている。研究グループは今回、脂肪細胞から分泌され、食欲のコントロールに働くホルモンであるレプチンに着目。レプチンが睡眠障害と肥満との関連に関与するとの報告があることから、2型糖尿病患者を対象に血中レプチン濃度と睡眠の質との関連を調べる研究を行った。
対象は、2011年10月~2016年6月に、血糖コントロール目的で同大学病院に入院した2型糖尿病患者182人(年齢中央値は61歳、男性が100人)。
肥満合併群(113人、BMI 25以上)と非肥満群(69人)に分けて解析した。
対象患者の空腹時血中レプチン濃度を測定し、携帯型単一チャネル睡眠脳波計を用いて睡眠に関連する指標〔総睡眠時間、レムおよびノンレム睡眠時間、睡眠効率、睡眠の第一周期におけるデルタパワー(徐波量)、無呼吸低呼吸指数(AHI)〕を評価した。睡眠に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。その結果、血中レプチン値(中央値)は対象患者全体では6.6ng/mLであり、肥満合併群では9.9ng/mL、非肥満群では3.6ng/mLであった。
未調整での解析の結果、肥満合併群では血中レプチン濃度は睡眠の第一周期におけるデルタパワーと有意に関連したが(P=0.008)、非肥満群ではこうした関連は認められなかった。また、年齢やBMI、睡眠無呼吸指標など睡眠の質に影響を及ぼす可能性がある因子で調整した多変量解析の結果、肥満合併群では血中レプチン濃度はデルタパワーと正の関連を示したが、総睡眠時間との間には関連はみられなかった。一方で、非肥満群ではデルタパワーと総睡眠時間はいずれも血中レプチン濃度と関連しなかった。
以上の結果を踏まえて、研究グループは「肥満を合併した2型糖尿病患者では、血中レプチン濃度は睡眠の質のマーカーとして知られる睡眠の第一周期におけるデルタパワーと独立して関連する可能性が示された。
これらはBMIやAHIといった指標とは独立して関連しており、肥満患者ではレプチンがオレキシン産生神経の活性抑制などの直接的な作用を介して睡眠の質と関連する可能性が示唆される」と述べている。治験に関する詳しい解説はこちら
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2月 28 2018 睡眠の質が血糖コントロールに及ぼす影響は? 約3,200人の日本人2型糖尿病患者を解析
日本人の2型糖尿病患者は一般集団と比べて睡眠時間が短く、入眠までの時間が長いなど睡眠の質が低下しており、特に血糖コントロールが不良な患者でこの傾向が強い可能性のあることが、横浜市立大学附属市民総合医療センター内分泌・糖尿病内科の阪本理夏氏と同科部長の山川正氏らの研究グループの検討で分かった。詳細は「PLOS ONE」1月24日オンライン版に掲載された。
睡眠時間と肥満や高血圧、冠動脈疾患などの発症リスクとの間にはU字型の関連が報告されている。
これまでの研究で睡眠時間は2型糖尿病の発症にも影響を及ぼし、長過ぎても短か過ぎても2型糖尿病の発症リスクは上昇することが報告されているが、いずれも欧米の研究が多く、日本人におけるこれらの関連性は明らかにされていない。
研究グループは今回、日本人の成人糖尿病患者を対象に睡眠の質を評価し、血糖コントロール状況との関連を調べる観察研究を行った。2型糖尿病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。研究グループは、糖尿病患者を対象に睡眠や食生活の質と血糖コントロール状況などの関連を調べる観察研究(Sleep and Food Registry in Kanagawa;SOREKA研究)に参加した20歳以上の2型糖尿病患者3,249人を対象に、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて睡眠の質や睡眠状況を評価した。
対象患者の年齢は65歳、BMIは24.6、HbA1c値は7.1%であった(いずれも中央値)。
なお、PSQIスコアが高いほど睡眠の質の悪化を示し、今回はスコアが5を超える場合を「睡眠の質が悪い」と定義した。PSQIを用いた調査の結果、対象患者のPSQIスコアは平均で5.94±3.33であり、47.6%はスコア6以上で睡眠の質が悪いと判定された。
PSQIの各項目をみると「睡眠時間」のスコアが最も高く、「睡眠の質」、「入眠時間」が続いた。対象患者をHbA1c値で4群(6.5%以下、6.6~7.0%、7.1~7.8%、7.9%以上)に分けて比較した結果、PSQIスコアはHbA1c値が最も高い群(7.9%以上)でその他の3群と比べて有意に高値を示した(P<0.001)。
また、HbA1c値が最も高い群では他の3群と比べて睡眠時間が6.23±1.42時間と有意に短く(他3群は約6.44~6.5時間)、入眠時間は25.3±31.8分と有意に長かった(同じく約20分)。
さらに、年齢や性、BMI、喫煙習慣などの因子で調整した解析でも、HbA1c値が最も高い群では低い群と比べてPSQIスコアが有意に高く、睡眠時間は短いことが分かった。以上の結果から、研究グループは「日本人の2型糖尿病患者は、特に血糖コントロールが不良な場合に睡眠時間が短く、入眠するまでの時間が長いなど睡眠の質が低下する可能性がある。
糖尿病と睡眠は相互に影響を及ぼし合う可能性があり、糖尿病患者は疾患管理とともに適切な睡眠の質を保つことも重要になる」と述べている。糖尿病の基本情報についての詳しい解説はこちら
糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。
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2月 25 2018 寝る前にTo-Doリストを書き出すと良く眠れる
意外かもしれないが、翌日やらなくてはならないことのリスト(To-Do リスト)をベッドに入る前に書いておくと、早く眠りにつける可能性が高まることが、米ベイラー大学のグループによる研究から明らかになった。詳細は「Journal of Experimental Psychology」1月号に掲載された。
明日やらなければならないことを考えはじめて眠れなくなるという経験は誰にでもあるだろう。
今回の研究を率いた同大学睡眠神経科学・認知科学研究所のMichael Scullin氏は「現代社会は年中無休で次々と予定が入る。
ベッドに入ってからも終わらせることができなかったタスクが頭から離れず不安を感じてしまうことは珍しくない」と話す。Scullin氏らによると、不安に思っていることを書き出すと不安が軽減され、眠りにつきやすくなることが、これまでの研究で明らかにされているという。
そこで同氏らは今回、寝る前にTo-Do リストを書き出す行為によって寝つきの悪さを改善できるかどうかについて検討した。治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。対象は、18~30歳の健康な大学生57人。
同研究所の研究室に平日の夜に宿泊してもらい、対象者をベッドに入る5分前に(1)数日以内にやらなければならないことを全て書き出す群(To-Do リスト群)と(2)この数日間に成し遂げたことについて日記をつける群(日記群)にランダムに割り付けた。
平日の夜に実施されたのは、週末は就寝時間が不規則となりやすいことに加え、平日の方が翌日に持ち越されるタスクが多い可能性が高いためだという。なお、対象者は全員10時半にベッドに入るよう指導され、電子機器や宿題などの持ち込みは禁止された。
その夜の睡眠の状態を「睡眠ポリグラフィー」と呼ばれる検査装置を用いて観察した結果、日記群と比べてTo-Do リスト群ではベッドに入ってから入眠までの平均時間が短いことが分かったという。
Scullin氏は「有望な結果ではあるが、今後より大規模な研究で検証する必要がある」と説明。また、今回の研究は若く健康な成人を対象としていたことに触れ、「今回の研究結果が不眠症患者にも当てはまるかどうかは不明だ」としている。
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