• パンデミックで食生活が不健康に変化した人の特徴は?

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、食生活が不健康に変化した人と健康的に変化した人の割合や、その変化に関連する因子が報告された。独居者などで不健康な変化が見られた一方、運動頻度や睡眠時間の増減など、食生活の不健康な変化にも健康的な変化にも関連している因子が複数存在していた。長野県立大学健康発達学部食健康学科の新保みさ氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に6月14日掲載された。

     COVID-19パンデミック以来、人々の食生活が変化したとする研究結果が海外から多く報告されているが、その変化と関連する因子を検討した研究は少なく、特に日本での研究はほとんど行われていない。パンデミックに伴う外出禁止/自粛などの措置の厳格さや食習慣は国ごとに異なるため、日本人を対象としたデータが必要とされている。この状況を背景として新保氏らは、20~64歳の成人6,000人を対象とする以下のオンラインアンケート調査を行った。

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     調査実施の時期は、国内で第三波が拡大し始めた2020年11月。オンライン調査会社の登録者約3万6,000人に調査協力を呼びかけ、得られた回答から信頼性が低いと判断されたものを除外し、年齢と性別を人口構成比に近づけた上で無作為に6,000人〔年齢中央値45(四分位範囲34~53)歳、BMI21.5(同19.5~24.1)kg/m2〕を抽出した。

     「1年前(2019年11月)と比べて食生活は変化したか」との質問に対して、71.6%が「変化なし」、20.3%が「健康的になった」、8.2%が「不健康になった」と回答した。アンケートではこのほかに、配偶者や同居者、教育歴、職業、世帯収入およびパンデミックによるその変化、既往症、本人または身近な人のCOVID-19感染歴、体重や運動頻度・睡眠時間・喫煙習慣とそれらのパンデミックによる変化、ヘルスリテラシー、ストレスの強さ、およびCOVID-19への恐れなどを質問した。

     多重ロジスティック回帰分析により、これらの因子と食生活の変化との関連を検討したところ、以下の有意な関連が示された。

     まず、独居者は、食生活が不健康に変化した人が多かった〔オッズ比(OR)1.62〕。世帯収入が多いことは食生活の健康的な変化に関連していた(OR1.08)。また、世帯収入の増加も健康的な変化に関連していた(OR1.58)。ただし、世帯収入の減少は、不健康な変化(OR1.53)と健康的な変化(OR1.42)の双方に関連していた。また、体重の減少も、不健康な変化(OR2.21)と健康的な変化(OR2.32)の双方に関連していた。一方、体重の増加は不健康な変化(OR3.11)とのみ関連していた。

     職場の同僚にCOVID-19患者が発生したことは不健康な変化(OR1.88)に関連する一方、友人にCOVID-19患者が発生したことは健康的な変化(OR2.05)に関連していた。ヘルスリテラシーの高さは健康的な変化(OR1.02)、ストレスは不健康な変化(OR1.05)に関連。このほか、運動頻度や睡眠時間については、それらが増えた場合と減った場合の双方が、健康的な変化と不健康な変化のいずれにも関連していた。また、COVID-19への恐れも同様に、健康的な変化と不健康な変化に関連していた。

     これらの結果を基に著者らは、「日本人成人におけるCOVID-19パンデミックに伴い、食生活が健康的になる人もいれば不健康になる人、変化しない人がいて、その変化に関連する因子が示された。COVID-19に対する恐れや運動頻度・睡眠時間の変化など複数の因子は、健康的な変化と不健康な変化に共通する関連因子だった。本研究で得られたこれらの知見を一般化するために、さらなる研究が必要」と総括。その上で、「COVID-19パンデミックによって生まれた『ニューノーマルな生活様式』は、今後もしばらく続くと考えられる。そのような新生活様式の下で人々が健康的な食生活を実践するための施策推進が求められる」と述べている。

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    HealthDay News 2021年8月2日
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  • 高血圧治療とCOVID-19リスクは逆相関する――都道府県別の検討

     日本国内で高血圧治療を受けている患者数の人口比と、新型コロナウイルス陽性者の人口比とが逆相関するとのデータが報告された。国立病院機構宇多野病院脳神経内科の木下真幸子氏らが、全都道府県の状況を比較検討した結果であり、詳細は「International Journal of Infectious Diseases」に6月2日掲載された。著者らは、高血圧に対する治療が新型コロナウイルス感染に対して保護的に働いている可能性を述べている。

     新型コロナウイルスはアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)を足場として細胞内に侵入する。ACEは血圧調節にかかわっており、ACE2はACEと同族だが逆の働きを持つ。国内では高血圧の治療にACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が多用されている。これらの降圧薬はACE2を増加させるため、パンデミック当初は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症や重症化リスクを高める可能性が懸念されていたが、その後に否定され現在に至っている。ただし、高血圧自体がリスクを高める可能性については議論が続いており、また日本人対象の研究報告は十分でない。

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     木下氏らは、2017年の「患者調査」と新型コロナウイルス陽性者数報告のデータから、都道府県ごとに代表的な慢性疾患の患者数と陽性者数の人口比を算出。両者の間に有意な相関があるか否か検討した。なお、新型コロナウイルス陽性者数は、2020年4月の緊急事態宣言発出直前に当たる3月29日時点のデータを用いた。

     解析の結果、患者調査における疾病大分類のうち「循環器系の疾患」やそのサブカテゴリーである「高血圧」の人口当たり患者数が多いほど、新型コロナウイルス陽性者率が低いという逆相関の関係が明らかになった。具体的には、スピアマン順位相関係数が、循環器系の疾患では-0.469、高血圧では-0.456だった(いずれもP<0.01)。

     次に、高血圧患者数と新型コロナウイルス陽性者数の人口比を年齢で層別化して解析すると、35~44歳、45~54歳、55~64歳、75~84歳、および85歳以上の年齢層で、有意な逆相関が認められた。なお、高血圧以外に脳血管疾患や統合失調症などでも同様の有意な逆相関が認められたが、相関係数は高血圧が最も大きかった。

     この結果から著者らは、「今回検討した種々の疾患の中で、新型コロナウイルス感染リスクと最も強い逆相関が示された疾患は高血圧であり、年齢を調整しても有意性が保たれていた。高血圧が新型コロナウイルス感染リスクを高める基礎疾患の一つに挙げられていることを勘案すると、この予想外とも言える関連を最も無理なく説明可能な理由は、国内で頻用される降圧薬の潜在的な保護効果ではないか」と述べている。その具体的なメカニズムについては、既報からの考察として、ACE阻害薬やARBは一酸化窒素(NO)を誘導し血管内皮機能を改善すること、NOには抗ウイルス作用も認められること、また、ACE2にも血管や肺の保護作用があることなどを挙げている。

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    HealthDay News 2021年7月5日
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  • 緊急事態宣言で低下した身体活動量は宣言解除後も回復していない

     人々の身体活動が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う緊急事態宣言によって減少し、宣言解除後も以前のレベルにまで回復していない実態が報告された。鹿児島大学医学部保健学科の牧迫飛雄馬氏らが、昨春の国内パンデミック第一波前後の変化を調べた研究結果であり、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に4月30日、論文が掲載された。

     COVID-19のパンデミックとそれに伴う緊急事態宣言によって、人々の身体活動が減少したとするデータが多く報告されている。しかし、緊急事態宣言解除後に人々の身体活動がどの程度回復したのかについては、あまり調査が行われていない。

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     牧迫氏らは「Yahoo!クラウドソーシング」のオンラインアンケートシステムを用い、2020年10月19~28日に国内在住40歳以上の成人を対象とする調査を実施。COVID-19出現前(2019年10月)、1回目の緊急事態宣言中(2020年4月)、宣言解除後(2020年10月)の身体活動の変化を検討した。なお、宣言解除後の身体活動についてはアンケート時点の活動状況を回答してもらい、前二者についてはそれぞれの時期の活動状況を思い出して答えてもらった。

     アンケートに回答したのは3,048人で、極端な身体活動時間(1日960分以上、または最大値が最小値の10倍以上など)を報告した回答や、身体活動に影響を及ぼし得る疾患(脳卒中、パーキンソン病、認知症、うつ病など)のある人を除外した1,986人(40~69歳)の回答を解析対象とした。身体活動レベルは、国際身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire;IPAQ)で評価した。また、「緊急事態宣言後に体力の低下を感じるか?」との質問の回答により、体力低下の自覚の有無を把握した。

     解析対象者の平均年齢は50.1±6.9歳で、38.9%が女性だった。また、重点的な感染拡大防止策が必要とされた特定警戒都道府県(東京、大阪、北海道など13都道府県)の居住者が71.2%を占めていた。

     身体活動時間は、COVID-19出現前の2019年10月が中央値355分/週(四分位範囲150~660)であったのに対して、緊急事態宣言中の2020年4月は同240分/週(80~540)と32.4%有意に減少し、宣言解除後の2020年10月も同300分/週(120~600)と15.5%有意に少ないままだった(いずれもP<0.001)。

     対象者の33.8%が体力低下を自覚していた。体力低下を自覚していた群は自覚していなかった群に比較して、女性の割合が高く、特定警戒都道府県の居住者が多かった。また、緊急事態宣言中の身体活動時間は、体力低下を自覚している群でより大きく減少していた〔270分/週(100~600)対180分/週(60~480)、P<0.01〕。COVID-19出現前および緊急事態宣言解除後については、体力低下の自覚の有無による身体活動時間の有意差はなかった。

     体力低下の自覚がない群ではCOVID-19出現前に比較して、緊急事態宣言中の身体活動時間が20.6%減少し、宣言解除後も11.8%少なかった。一方、体力低下を自覚している群では、緊急事態宣言中は50.5%減と半分以下に減少し、宣言解除後も25.0%少なかった(すべてP<0.01)。

     著者らはこの解析結果を解釈する際の留意点として、年齢や性別、収入などの交絡因子を調整していないこと、過去の身体活動を思い出し法で評価しているため正確でない可能性があること、体力変化の評価法が客観的手法でないことなどを挙げている。その上で、「緊急事態宣言下で日本人の身体活動は大きく減少し、特に体力低下を自覚した人で顕著に低下していた。また、緊急事態宣言解除後も、以前の身体活動レベルに戻ることが困難であることが示された」と結論付けている。

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    HealthDay News 2021年6月7日
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  • パンデミックで収入が減ると歯の痛みが増える――国内Web調査

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴い、仕事や収入が減った人や失業した人は、歯の痛みを訴えることが多いというデータが報告された。この関連の背景には、精神的ストレスや歯科受診の延期、間食の増加などが関与しているという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山祐輔氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of Dental Research」に4月1日掲載された。

     経済状況や精神的ストレスが、歯痛などの口腔疾患の発症と関連していることが以前から指摘されている。現在のCOVID-19パンデミックは、経済状況の悪化やストレスの増大に加えて、歯科受診延期などの行動の変化を生じさせ、人々の口腔衛生に影響を及ぼしている可能性がある。松山氏らの研究は、その実態を明らかにするためのもの。

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     この研究は、COVID-19パンデミックの社会・医療への影響を把握するために2020年8月25日~9月30日に実施された大規模Web調査「JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究」のデータを利用して行われた。解析対象者の年齢は15~79歳で、有効回答数2万5,482件、男性が49.7%だった。

     結果について、まずCOVID-19パンデミックによる収入や就労の変化を見ると、25.1%の人は世帯収入が減り、19.5%は仕事量が減少、1.1%は失業していた(仕事量の減少および失業は調査時に就業していた人における値)。次に、口腔衛生に関連する質問項目については、全体の27.3%は間食が増え、13.9%が歯科受診を延期し、3.0%は歯磨きの回数が減ったと回答した。また8.3%は、ストレスの負荷が強い状態(K6スコアという合計24点の指標で13点以上)と判定された。

     直近1カ月間に歯痛があった人の割合は9.8%だった。年齢、性別、2019年の世帯収入、1年以内の歯科検診受診、居住地域、および社会的経済状況の変化の影響を統計学的に調整後、収入や就労状況の変化が歯痛と有意に関連していることが明らかになった。

     具体的には、世帯収入の変化がない人に比べて世帯収入が減った人の歯痛のオッズ比(OR)1.42(95%信頼区間1.28~1.57)、仕事が減った人は仕事量が変わらない人に比べてOR1.58(同1.41~1.76)、失業を経験した人は就労を続けられている人に比べてOR2.17(同1.64~2.88)だった。また媒介分析により、世帯収入の減少と歯痛との関連の21.3%(同14.0~31.6)は精神的ストレス、12.4%(同7.2~19.6)は歯科受診の延期、9.3%(同5.4~15.2)は間食の増加によって説明可能であることが分かった。

     なお、パンデミック後に世帯収入が増加したケースも、歯痛のオッズ比が高いことと関連していた(OR1.31、同1.04~1.66)。ただし世帯収入が増加したのは全体の3.0%とわずかであり、媒介分析などの詳しい解析は不能だった。

     以上から著者らは、「COVID-19パンデミックの影響で経済状況が悪化した人には、歯痛が多いことが明らかになった。経済状況の悪化が精神的ストレスや健康行動の変化につながり、歯痛を引き起こした可能性がある」と結論付けている。また、「国内には何らかの歯科処置を必要とする人(例えば詰め物が外れた状態など)が4000万人近くいるとされており、パンデミックによってそれらの人に痛みが現れる可能性もある。収入減や失業などに対する経済的政策が、歯科疾患の悪化を抑制し得るのではないか」と付け加えている。

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    HealthDay News 2021年5月17日
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  • 対策が徹底された病院内のCOVID-19感染リスクは高くない―国立国際医療C

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進められているが、集団免疫が得られるまでは、感染防御対策の継続が求められる。一方でパンデミック以来、医療機関での感染リスク回避のために患者の受診抑制が起きていることが懸念されている。では、医療機関内は本当にCOVID-19感染リスクが高いのだろうか。

     国内でのCOVID-19発生初期から多数の患者を受け入れてきた国立国際医療研究センター(NCGM)の田中暁人副臨床検査技師長らが「Journal of Infection」に1月28日報告したデータによると、必ずしも医療機関での感染リスクが高いとは言えないようだ。昨年7月時点で、同センター職員の新型コロナウイルス抗体陽性率は、一般住民よりもむしろ低いレベルだったという。調査を統括した大曲貴夫国際感染症センター長は、「適切な院内感染対策により医療従事者の感染リスクを大幅に低減できることを支持するデータが得られた」と述べるとともに、同センターが策定し公開している院内感染対策マニュアルの利活用を医療機関に呼び掛けている。

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     この調査は、同センター職員のうち、主としてCOVID-19関連業務従事者を対象に参加を募り、同意が得られた1,228人(参加率78%)を対象に行われた。平均年齢36±11歳で71%が女性であり、看護師が49%、医師19%、その他の医療専門職14%、事務・管理職10%。850人(69%)はCOVID-19に関する業務を行ったことがあり、その4割(343人)は感染リスクの高い業務に従事していた。

     調査では、アボット社とロシュ社の定性試薬を用いて血中IgG抗体を測定した。いずれかの試薬で陽性と判定されたのは2人のみで、抗体陽性率は0.16%であった。この値は、ほぼ同じ時期(同年6月)に東京で行われた住民調査のデータを基に、同じ定義で算出した0.41%よりも低かった。陽性者はいずれも業務上、COVID-19患者とのかかわりはなかった。

     国内の感染症治療の基幹病院として、同センターは患者の受け入れだけでなく、チャーター機で中国・武漢から帰国した人の検診、ダイヤモンド・プリンセス号の医療支援、PCR検査センターなど、COVID-19に関連した多くの施策にかかわってきた。同時に、個人用保護具の適切な使用、頻回の手洗い、全員が常時マスクをする(ユニバーサルマスキング)、訪問者の制限や来院時の体温チェック、出勤前の検温といった院内感染を防ぐ包括的な対策を流行初期から導入してきた。

     他方、国内で患者数が最多である東京、その中で大規模な繁華街・歓楽街を擁する新宿にある同センター病院の職員は、普段の生活においても感染リスクに直面している。院内感染管理室の杦木優子副看護師長は、流行状況に応じて日常生活上の予防行動の要点をまとめ、ことわざ(例えば「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰いゆ」「浅い川も深く渡れ」など)を添えて毎週、職員に周知している。著者らは、こうした取り組みが職員の予防意識を高め、行動変容を促し、感染を抑えているとみている。

     これらの経験を基に同センターでは、「NCGMにおけるCOVID-19院内感染対策マニュアル」を策定して外部に発信している。内容は随時改訂されており、最新版は3月10日改訂のバージョン4.2。同院のサイトから自由にアクセス可能だ。

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    参考情報:リンク先NCGMにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(疑い含む)院内感染対策マニュアル V.4.2
    HealthDay News 2021年4月12日
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  • 日本人はCOVID-19に対する意識が低い?――英国やスペインとの比較

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する国民の意識を、国際比較した研究結果が報告された。日本人はCOVID-19に対する不安が少なく、感染回避行動をとる人の割合が低いことなどが明らかになった。千葉大学社会精神保健教育研究センターの椎名明大氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of General Psychiatry」に2月18日掲載された。

     COVID-19パンデミックに対する国民の反応は国ごとに異なる可能性があり、実効性のある対策を取るには、その違いを把握することが欠かせない。椎名氏らは、日本と英国、スペインの一般住民を対象に同じ内容のアンケート調査を実施し、回答を比較検討した。英国は日本同様に島国という地理的条件が共通しているが、感染者数は英国の方が圧倒的に多い。またスペインは他国と地続きであり、かつ感染者数は英国よりもさらに多いという、国ごとの特徴がある。

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     アンケートはインターネット上で20歳以上の成人対象に行われ、日本から4,000人、英国とスペインからは各2,000人が回答した。年齢(10歳ごと)と性別で層別化され、各群の回答者数が等しくなるように調整された。アンケート実施時期は、日本では2020年3月下旬(パンデミック第一波中)、他の2カ国は4月中旬だった。

     結果について、最初に各国の感染状況を比較すると、家族や親戚に感染した人がいるとの回答は、日本が0.4%、英国25.1%、スペイン39.0%であり、職場に感染した人がいるとの回答は同順に、1.1%、17.2%、18.9%だった。

     次に、COVID-19に関する知識レベルの主観的評価を見ると、日本は他の2カ国に比較して有意に低いことが分かった(英国とスペインは有意差なし)。COVID-19に対する不安は、英国が最も高くて次がスペインで、日本は最も低く、それぞれの差が有意だった。また、他者へ感染させることの不安も、日本は他の2カ国より有意に低かった(英国とスペインは有意差なし)。

     COVID-19関連の情報へのアクセス頻度を比較すると、公式発表、マスコミ、ソーシャルネットワークサービス(SNS)などの全てについて、日本は他の2カ国よりも有意に低かった。例えば、「公式発表を一度も聞いたことがない」との回答が、日本は他の2カ国の約2倍だった。また、日本ではほぼ全ての情報源について、信頼していない人の割合が高かった。なお、SNSについては3カ国とも信頼性が低いと判断されていた。

     感染予防対策のうちマスク着用率は英国で低く、57.7%が「マスクを着用したことがない」と回答した。その割合はスペインでは16.1%、日本では9.5%だった。手洗いに関しては、英国で頻繁に手を洗うとの回答と、手を洗ったことがないとの回答が拮抗するなど、一貫した傾向が見られなかった。

     外出自粛に関しても、日本は消極的だった。具体的には、混雑している場所を避ける、公共交通機関を利用しない、通学や通勤を控えるとの回答が、他の2カ国より有意に少なかった。

     これらの結果に基づき、著者らは以下の考察を述べている。まず、日本の一般住民のCOVID-19に対する意識が他の2カ国より全般的に低いことは、パンデミックの規模が大きく異なることで説明可能としている。また、調査時期が日本の方がやや早かったことも、結果に影響を与えた可能性があるという。

     一方、マスク着用率が英国で極めて低いことについては、「パンデミックの規模では説明できない。政府の推奨が影響を及ぼしたのかもしれない」と述べている。この調査が実施された時点では、世界保健機関(WHO)がマスク着用を積極的に推奨しておらず、英国政府も同様の方針をとっていた。それに対して日本はパンデミック以前からマスク着用率が高く、かつ花粉症対策でマスクを着用していた人も少なくなかった。

     結論として著者らは、「COVID-19パンデミック中の一般住民の認識と行動に関する、国際的な違いが明らかになった。これらの違いは、パンデミック対策を国ごとに個別化する必要があることを示唆している」と記している。

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  • マスク着用と外出自粛で熱中症は増えた?減った?

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、今や常識とも言える不要不急の外出自粛とマスク着用。外出自粛は夏季の屋外での熱中症発生件数を抑制し、反対にマスク着用は熱中症リスクを高める可能性がある。では、昨年の夏、これらの影響はどのように現れたのだろうか。消防庁の熱中症による救急搬送件数のデータを用いて、この点を詳細に検討した結果が報告された。慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の野村周平氏らの研究によるもので、「Science of The Total Environment」に1月7日、短報として掲載された。

     野村氏らはこの研究に、消防庁公表の2008~2020年の熱中症による救急搬送件数と、気象庁公表の気温、湿度、風速、気圧、日照時間、降水量などのデータを用いた。それらの数値を基に、準ポアソン回帰モデルという統計的手法により、理論的に予測される7~9月の各週の熱中症救急搬送件数を、都道府県別、年齢層別、重症度別に計算。その予測値の95%信頼区間を逸脱した場合を異常値と定義した。

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     解析の結果、全国レベルでは、2020年の夏季に異常値は見られなかった。しかし、都道府県別や年齢層別、重症度別の解析では、いくつかの異常値が認められた。

     例えば、都道府県別では、95%信頼区間の上限を超える週はなかったが、下限を下回った週が14県で観測された。その大半は8月10~16日の週であった。なお、8月10~16日は、全国の熱中症による救急搬送件数が2020年で最も多い週だった。

     年齢層別では、8月23~30日に青森県で、小児・若年層(18歳未満)での救急搬送が95%信頼区間の上限を超えていた。一方、95%信頼区間の下限を下回った週が、小児・若年層では15県、労働年齢層(18~65歳未満)では16県、高齢者層(65歳以上)では3県で認められた。それらの大半は、8月10~16日の週に集中していた。

     重症度別では、8月23~30日の富山県における軽症(入院を要さない)患者、7月20~26日の和歌山県と愛媛県における中等症(軽症または重症に該当しない)患者、および、7月13~19日の京都府と7月20~26日の鳥取県での重症(3週間以上の入院を要する)患者が、95%信頼区間の上限を超えていた。一方、95%信頼区間の下限を下回った週の存在が、軽症患者については15都道府県、中等症患者については3都道府県、重症患者については5都道府県で認められた。

     これらの結果を著者らは、「気温などを調整した上で、全国レベルでは、2020年の熱中症救急搬送件数に大幅な増減はなかった。しかし都道府県別では救急搬送件数が理論値の上限を超過している所もあった。年齢層別では、小児・若年層と労働年齢層の救急搬送件数が例年より少なく、重症度別では軽症患者が例年より少ない傾向が見られた」と総括している。

     加えて、例年にないこのような傾向は、「COVID-19パンデミック以降の、野外活動制限や公共行事の中止が大きく働いた可能性があることを意味している」と著者らは述べている。実際に、学校や公的イベント会場での熱中症救急搬送の発生率は、ここ4年間で一番少なかったとしている。

     一方、「本研究で明らかになった熱中症救急搬送件数の一部の減少傾向は、マスク着用が熱中症リスクに繋がらないことを意味するわけではない」と、解釈に限界があることに言及。その上で、「日本の夏の暑さは年々厳しくなってきている。COVID-19パンデミックの終息が見通せず、マスク着用が常識の『ニューノーマル』な社会において、外出自粛による熱中症リスクの低下をマスク着用が相殺する可能性があることに、引き続き注意が必要だ」と結論付けている。

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    HealthDay News 2021年3月1日
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  • COVID-19による隔離中に遠隔リハビリが有用――藤田医大

     新型コロナウイルスに感染して隔離状態にある人のために開発された、遠隔リハビリテーションの有用性に関する論文が、12月10日発行の「JMIR Rehabilitation and Assistive Technologies」に掲載された。市販のデバイスを用いたシステムであり、低コストかつ操作が簡便で臨床導入へのハードルが低いことが特徴。藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座の向野雅彦氏、大高洋平氏らが報告した。

     隔離状態が長引くと身体機能低下の懸念が生じる。それに対し予防的なリハビリテーション(以下、リハビリ)が有効と考えられるが、ウイルス伝播のリスクを伴うため、従来のようにスタッフが患者に接して行うリハビリ介入は困難である。また既に存在する遠隔リハビリシステムは、操作に慣れるまで繰り返し直接的な指導が必要であり、現在の隔離状態には適していない。さらに既存システムは一般に高価であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより医療資源が逼迫している現状にそぐわない。

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     大高氏らは、昨年3月に同大学病院がダイアモンドプリンセス号のウイルス検査陽性者を受け入れた際にこれらの問題に気付き、新たな遠隔リハビリシステムを開発した。そのシステムは、患者が使用するタブレットとパルスオキシメーター、および医療者が使用するパソコンで構成されている。タブレットには、会議ソフトウェア(Zoom、Skype)とリモート制御ソフト、およびパルスオキシメーター制御アプリケーションがインストールされており、テレビ電話の要領での会話や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)などの監視が可能。

     今回の報告は、このシステムを実際にCOVID-19患者に適用し、有用性を評価した研究である。対象はCOVID-19と診断され、同院の個室に入院し隔離状態とされた10人。平均年齢は60±18歳で、4人が男性。中等度の肺炎を呈した患者が3人、軽度の肺炎が5人で、他は無症候であり、平均在院期間は9.9±8.0日だった。SpO2は、研究開始時が94.4±2.6%、研究終了時は95.1±2.0%。機能的自立度評価法(FIM)のスコアは122.4±4.5点。

     これら10人の患者のうち、4人はタブレットやスマートフォンの使用経験がなかったが、開始に際して病室での直接的なサポートを要したのは1人のみで、他の9人はサポート不要だった。また、最初のSkype通話からリハビリ指導までに要した準備時間は、平均3.0±1.1分と短かった。

     遠隔リハビリの内容は、バイタルサインと基本的な運動能力の確認に続き、身体の動かし方を動画で伝えて患者に行ってもらい、改善点を理学療法士がSkypeなどで指導するというもの。1回のプログラムは準備時間も含めて20分だった。

     介入の有用性の検討には、TSQ(Telemedicine Satisfaction Questionnaire)という遠隔医療の満足度の評価のために開発された標準的指標を用い、患者と指導に当たった理学療法士から回答を得た。TSQは70点満点で、点数が高いほど満足度が高いと判定される。なお、患者に対してはTSQ以外に、独自に設けた5つの質問を追加し、5点満点のリッカートスコア(強い非同意が1点、強い同意が5点)で回答してもらった。

     患者のTSQスコアは65.2±6.9点(満点に対し93.1±9.8%)で、理学療法士のスコアは61点(同87.1%)だった。また患者に対する追加の質問とその回答のスコアは以下のとおり。「身体の動かし方がわかりやすい」4.3±1.1点、「安全に運動できる」4.5±0.7点、「室内環境が運動に適している」4.1±1.3点、「使用しているデバイスが運動プログラムの実行に適している」4.0±1.1点、「運動中の医療専門家との通信が役に立つ」4.7±0.7点であった。

     著者らは、検討対象者数が少ないこと、特に理学療法士が1人のみだったことなどの限界点を挙げた上で、「この遠隔リハビリシステムは、COVID-19パンデミックにより隔離状態にある感染者・患者に適用できる可能性がある」と結論付けている。

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    HealthDay News 2021年2月1日
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  • COVID-19によるストレスは学歴で異なる――日本人従業員での検討

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによるメンタルヘルスへの影響は、学歴によって異なる可能性が報告された。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の佐々木那津氏、川上憲人氏らがオンライン調査により明らかにしたもので、研究の詳細は「Journal of Epidemiology」に11月7日掲載された。

     2020年2~4月に発生した国内でのCOVID-19パンデミック第1波の際に、所得の低い人たちで心理的ストレスがより増大したことが別の研究で報告されている。また、自殺者数の推移を見ると、2~6月は前年比で平均10%以上少なかったが、8月に急増した。佐々木氏らはこの変化を、パンデミック第2波(6~8月)によって、地域社会におけるメンタルヘルスの悪化が蓄積した表れではないかと推測。この仮説を確かめるために、国内企業の正規雇用社員を対象に行った縦断的調査の結果を解析し、パンデミック第1波から第2波までの人々の心理的ストレスを評価、学歴との関連を検討した。

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     解析の基礎データとした調査は、オンラインによりこれまで3回行われている。初回は3月19~22日に実施され、1,448人が回答。失業者を除外し、5月22~26日に2回目、8月7~12日に3回目の調査が行われた。3回の調査の全てに回答した正規雇用社員は1,275人だった。

     心理的ストレスは、各調査を行った時点から過去30日間の状態を、18項目からなる質問(Brief Job Stress Questionnaire;BJSQ)に回答してもらい評価した。なお、BJSQスコアの合計は18~72点の間で、点数が高いほどストレスが強いことを意味する。

     全対象者を学歴により、16年以上の群(668人)と未満の群(607人)とに二分した。学歴の長い群は短い群に比べて、男性が多く(60.0対40.4%)、年齢が若く(40.0±10.2対43.2±10.6歳)、既婚者が多く(54.5対47.0%)、大企業での就業者が多い(勤務先が従業員数1,000人以上の企業の割合が41.1対24.5%)などの点で、群間に有意差が見られた。

     年齢階級、性別、婚姻状況で調整後のBJSQスコアは、学歴が長い群の初回調査は41.3±0.4、2回目の調査は40.9±0.5、3回目は41.5±0.5だった。一方、学歴の短い群では同順に、41.2±0.5、41.7±0.5、42.6±0.5だった。統計解析の結果、学歴が短いことは、初回調査から3回目の調査までの間のBJSQスコアの増加と有意に関連していることが明らかになった〔固定効果1.26(95%信頼区間0.28~2.24)、P=0.012〕。

     この結果を著者らは、「COVID-19パンデミック第2波の収束までの間に、学歴の短い会社員の心理的ストレスが悪化したことを示唆するもの」と述べている。またその理由を以下のように考察している。まず、学歴が短い人はテレワークに変えられない職業に就いていたり、予防に関する信頼できる情報へのアクセスの機会が限られていたりする可能性が高い。また、感染防御策が不十分なことの多い中小企業に勤務している割合が高く、社会経済の悪化による負荷を被りやすいと考えられる。これらの要因によって、ストレスが増大しやすいことが想定されるという。

     一方、本研究の限界点として、世帯収入や自宅の所有権(持ち家か賃貸か)を調査しておらず、さらに調査対象が正規雇用社員のみであることを挙げ、「この結果を一般化できるとは限らない」としている。その上で、日本では低学歴が自殺リスク因子の一つであるとされていることから、「学歴の短い人のCOVID-19による精神的ストレスの軽減のため、信頼でき理解しやすい感染予防情報や、財政的支援を得るための情報などを提供していく必要がある」とまとめている。

     なお、1人の著者は、情報処理関連企業などとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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    HealthDay News 2021年1月4日
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  • COVID-19パンデミック時の自殺による超過死亡――警察庁データの解析

     2010年以降2020年9月までの国内の自殺による死亡者数を月別に解析した結果、2020年7~9月の女性の自殺死亡者数が統計的予測範囲を超過していたことが明らかになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる影響が大きいと考えられ、自殺という最悪の結果を防ぐために、女性のメンタルヘルスに対する早急な対策が必要と言えそうだ。

     この研究は慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の野村周平氏らが、警察庁の月別自殺死亡者数データを解析したもの。結果の詳細は「Psychiatry Research」1月号に掲載された。

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     国内の自殺件数は近年減少傾向にある。しかし、COVID-19パンデミックに伴う外出自粛や社会的距離の確保などが市民の社会的孤立につながり、不安やうつなどのメンタルヘルス上の問題を引き起こしている可能性が報告されている。さらに、経済へのダメージは2008年のリーマンショックを上回るとされている。具体的に国内でも10月16日時点で6万6,000人以上がCOVID-19により失業したと推計されており、失業率は3%を超えた。このような状況が自殺件数を押し上げている可能性がある。

     野村氏らは、2010年以降2020年9月までの自殺による死亡者数をもとに、準ポアソン回帰モデルという統計学的手法を用い、各月の自殺死亡者数の予測値を算出し、実際の自殺死亡者数と比較した。95%予測区間の上限を超えた場合を超過死亡(何らかの原因により通常の予測を超える死亡者数の上昇)が認められた月と判定した。一方で、95%予測区間の下限を下回った場合を過少死亡の月とした。また実際の死者数と予測値および95%予測区間との差分のレンジ、さらにそれらの予測値に占める割合を、超過・過少死亡数および割合として報告している。

     国内でCOVID-19の感染拡大が始まった2020年以降のデータを性別に見ると、女性は2月の過少死亡率が-0.6~-13.8%、4月も同-8.8~-18.0%と、このふた月は自殺による死亡者数が予測値の下限を有意に下回った。しかし7月には22.1~32.3%の超過死亡が観察され、8月にも19.3~33.0%、9月には19.8~33.6%の有意な超過死亡が発生していた。なお、2019年以前は自殺による超過死亡は確認されなかった。

     一方、男性はパンデミック以前の2018年3月(超過死亡率4.9~20.2%)と2020年1月(同1.5~14.2%)に自殺による死亡者数の有意な増加が観察されたが、パンデミック以降の異常値は2020年4月の同-3.6~-14.0%という低値のみが有意だった。

     この結果について著者らは、いくつかの考察を述べている。まず、女性・男性ともに国内のパンデミック初期にあたる2020年4月に、自殺による死亡者数が予測値よりも有意に少なかった点については、「危機の初期には自殺リスクが低下し、その後、上昇に転ずるという科学的エビデンスと一致している」という。

     また、調査対象期間の原死因を問わない全ての死亡の超過率は1%未満である一方で、女性の自殺による超過死亡率が20~30%に及んだことは、COVID-19パンデミックが女性の自殺リスクに与えた影響が極めて大きいことを示しているという。COVID-19パンデミックの自殺リスクへの影響が、9月時点では女性に対してのみ有意であることに関しては、経済の停滞により特に女性の就業環境が悪化していることや、パートナーからの暴力の増加などが背景にあるのではないかと述べている。

     就業環境については、COVID-19パンデミックにより世界的に女性は男性より解雇されやすいなどの不平等な状況が存在すること、また政策や政府による女性への経済援助が効果的なサポートであることに言及している。パートナーからの暴力についても、世界的にパンデミック発生後から増加しており、配偶者暴力相談支援センターなど相談窓口を充実させる必要性を述べている。加えて国内での著名人の自殺報道が、いわゆる後追い自殺を招くことを指摘し、多角的な自殺予防への取り組みが必要であるとまとめている。

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    HealthDay News 2020年12月21日
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