• 「軽い運動+アスタキサンチン摂取」で記憶力がさらに高まる? 筑波大の研究グループ

    強い抗酸化作用のある天然色素「アスタキサンチン」を摂取すると、低強度運動による記憶力の向上効果がさらに高まる可能性があることを、筑波大学体育系教授の征矢英昭氏らがマウスを用いた実験で突き止めた。軽い運動と抗酸化成分の摂取を組み合わせた新しい認知症の予防法の開発が期待されるという。研究の詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」5月13日オンライン版に掲載された。

     征矢氏らの研究グループは、動物を用いた研究で、低強度運動が成体海馬歯状回での神経新生を促進し、記憶力を高めることを明らかにしている(PNAS 2012、PLOS ONE 2015)。また、ヒトを用いた研究でも、海馬歯状回の活性化と記憶力の向上が低強度運動で生じることを確認している(PNAS 2018)。

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     さらに、近年では、抗酸化作用を持つ天然サプリメントの併用が注目されている。征矢氏らは、既に、サケやエビに含まれる赤橙色の天然色素である「アスタキサンチン」を摂取すると動物の海馬歯状回の神経新生が促進し、記憶力が向上することを報告しているが、その効果が運動の併用でどうなるのかは不明だった。そこで研究グループは今回、マウスを用いた実験で、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用が海馬機能をより向上させるのか否かを検討した。

     研究では、まず、正常な成体マウスに、4週間にわたり低強度運動に加えてアスタキサンチンを加えた食餌を摂取させ、それぞれを単独に行ったマウスと比較して成体海馬の神経新生と空間学習記憶能への影響を調べた。その結果、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用した群では、それぞれを単独に行った群に比べて空間記憶能がより向上し、海馬歯状回の細胞増殖と新生成熟細胞の数がさらに増えたことが分かった。

     次に、網羅的な遺伝子発現解析の手法を用いて、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用による相乗的な海馬機能の向上に関わる分子メカニズムを検討した。その結果、海馬内のレプチンの遺伝子が関与している可能性が示され、これらの併用時には海馬内のレプチンタンパク質の発現量が相乗的に増加した。一方、これらを併用しても血漿内のレプチン量に有意な変化はみられなかった。

     さらに、低強度運動+アスタキサンチン併用による相乗効果のメカニズムを確かめるため、レプチンを欠損した遺伝性肥満マウス(ob/obマウス)を用いて低強度運動とアスタキサンチンの併用効果を検討した。その結果、ob/obマウスでは、通常のマウスでみられたこれらの併用による記憶力の向上は認められなかった。一方、低強度運動を行っている期間中にob/obマウスの脳内にレプチンを投与したところ、消失していた併用効果が再び現れた。このことから、脂肪細胞由来ではなく脳由来のレプチンが、この相乗効果の発現に必要であることが示唆された。

     これらの結果を踏まえ、征矢氏らは「抗酸化能を持つアスタキサンチンを摂取すると、低強度運動による海馬の神経新生の促進と空間記憶能の向上効果がさらに高まることがマウス実験で確認された。また、このような相乗効果には、脳由来のレプチンが関与することも示唆された」と結論。近年、アルツハイマー病の治療標的として外因的なレプチンが注目を集めており、「アルツハイマー病患者の認知機能低下に対して、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用することで海馬のレプチンを高めることができれば、認知機能の改善につながる可能性が考えられる」と述べている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2019年5月27日
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  • 1日に摂取する食品数が多いほど女性の死亡リスク減 JPHC研究

    日本人女性は、1日に摂取する食品の種類が多いほど全死亡や循環器疾患による死亡リスクが減少する可能性があることが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究で明らかになった。一方で、男性では摂取する食品数と死亡リスクとの間に関連は認められなかったという。研究の詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」3月19日オンライン版に掲載された。

     日本の食生活指針では、1日の食事は穀類や野菜、果物、牛乳や乳製品、豆類、魚などのさまざまな種類の食品をバランスよく摂取することが推奨されている。しかし、食品の種類の多さと死亡リスクとの関連については明らかになっていない。研究グループは今回、JPHC研究に参加した45~74歳の男女約8万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、1日に摂取する食品の種類の数と死亡リスクとの関連を調べた。

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     研究では、ベースライン(1990年および1993年)に全国10地域に在住した成人男女のうち、研究開始から5年後に実施した食物摂取頻度調査票に回答した45~74歳の男女7万9,904人を対象に2012年まで追跡した。調査票の結果に基づき、対象者がアルコール以外の133項目の食品や飲料を1日に何種類摂取しているのかを算出し、中央値で14.9年の追跡期間中の死亡リスクとの関連を調べた。

     対象者を1日に摂取する食品数によって5つの群に分けて解析した結果、女性では、食品数が最も少ない群と比べて、最も多い群では死亡リスクは19%(傾向P値=0.002)、循環器疾患による死亡リスクは34%、その他の死亡リスクは24%低いことが分かった(いずれも傾向P値=0.01)。一方、男性ではこれらの関連は認められなかった。

     また、食品群別に解析したところ、男性では摂取する果物の種類が多いほど、女性では大豆製品の種類が多いほど全死亡リスクが低い傾向がみられた。一方で、男性では摂取する肉類の種類が多いほど全死亡リスクには上昇傾向がみられた。しかし、男女ともに、摂取する魚や野菜の種類の多さと全死亡リスクとの間に関連は認められなかった。

     これらの結果について、研究グループは「多様な食品をバランス良く摂取することは、全死亡リスク、循環器疾患やその他の死亡リスクの低減につながる可能性がある」と結論づけている。また、摂取する食品数と死亡リスクとの関連に性差がみられた理由について、研究グループは「男性では女性に比べて飲酒や喫煙の頻度が高く、これらの要因を統計学的に調整しても、その影響が上回ってしまい、関連がみえにくくなった可能性が考えられる」と指摘している。

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    HealthDay News 2019年5月13日
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