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10月 30 2023 太ったシェフのイラストを食事に添えると、認知症の人の食事量が増える
認知症の高齢者の食事摂取量を増やすユニークな方法が報告された。太ったシェフのイラストをトレイに添えておくと、完食をする人が増えるという。日本大学危機管理学部の木村敦氏、医療法人社団幹人会の玉木一弘氏らの研究結果であり、詳細は「Clinical Interventions in Aging」に9月1日掲載された。
認知症では食事摂取量が少なくなりがちで、そのためにフレイルやサルコペニアのリスクが高まり、転倒・骨折・寝たきりといった転帰の悪化が起こりやすい。認知症の人の食欲を高めて摂取量を増やすため、これまでに多くの試みが行われてきているが、有効性の高い方法は見つかっていない。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。一方、肥満者に減量を促す一つの手法として、食卓に健康を想起させる、例えばランニングシューズなどの画像を添えると、摂取量が減るという研究結果が報告されている。その際、研究参加者の大半は、自分の食欲が食卓に添えられている画像の影響を受けたとは気付いていないという。木村氏らは、減量とは反対に摂取量を増やすという目的にも、この手法を応用できるのではないかとの仮説を立て、以下の検討を行った。
研究対象は、都内の特別養護老人ホームに居住する認知症のある高齢者21人(アルツハイマー病6人、レビー小体型認知症2人、混合型認知症13人)。咀嚼・嚥下機能や視機能の低下、研究期間中に提供される食品へのアレルギーや不耐症のある人は除外されている。BMIは平均20.6±2.8で、1人の男性は25.4であり肥満に該当した。提供する食事は、BMIを含む健康指標を医師と管理栄養士が考慮して決定された。
研究期間は4週間で、各週の平日の昼食に調査を行った。最初の1週間はベースライン調査であり、特に画像を添えずに通常どおりに摂取してもらった。2週目は普通体型のシェフのイラストをトレイに添えて提供、3週目は太ったシェフのイラスト、4週目には花のイラストを添えた。イラストの大きさは150×100mm、紙の色は白で統一し、シェフや花のイラストの下に「食事を楽しみましょう」という文字を記した。なお、被験者が不安や混乱を来すリスクを避けるため、試行条件のランダム化は行わなかった。
評価項目は、完食した回数、および簡易栄養食欲調査票(SNAQ-J)で評価した主観的な食欲関連指標の変化。SNAQ-Jは、食欲や満腹感、食べ物の味などを5点満点で評価してもらうというもの。なお、被験者が完食したか否かは、研究目的・仮説を知らされていないケアスタッフが、目視で確認した。
では結果だが、まず完食回数は、1週目が2.8±1.9回、2週目は3.2±1.8回、3週目は3.5±1.8回、4週目は3.0±1.9回であり、分散分析から週ごとの完食回数に有意な差があることが明らかになった(P=0.031)。また、イラストを添えなかった1週目と、太ったシェフのイラストを添えた3週目との間には有意差が存在した。
SNAQ-Jについては、各下位尺度の中で、食欲や満腹感などは試行条件間の有意差がなかった。ただし食べ物の味については、1週目から順に、3.0±0.7、3.5±0.7、3.7±0.5、3.6±0.5であり、何らかのイラストを添えた3条件ではベースラインの1週目より有意に高値だった。
著者らは本研究を、「画像を利用して、認知症高齢者の体重減少と栄養失調を予防できる可能性を示した、初のパイロット研究」とし、「太ったシェフのイラストという、食欲に関連するステレオタイプの視覚情報が、摂食行動を刺激することが示唆された」と結論付けている。ただし、「試行順序をランダム化していないこと、食事摂取量を目視による完食回数のみで評価していて、摂取エネルギー量や摂取栄養素量への影響を評価していないことなど、いくつかの限界点があるため、今後のさらなる研究が求められる」と付け加えている。
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軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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10月 25 2023 主観的な記憶力の低下が自動車事故リスクに独立して関連
主観的に記憶力が低下したと感じている高齢者は、客観的な認知機能低下の有無にかかわらず、自動車運転中の事故リスクが高い可能性を示すデータが報告された。国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターの栗田智史氏らの研究であり、論文が「JAMA Network Open」に8月25日掲載された。
高齢期は、買い物や人に会いに行くなど、自立した生活を送る上では自身で車を運転できることが望ましいが、加齢とともに車の運転に必要な視聴覚機能や認知機能が低下し、自動車事故が発生しやすくなることが報告されている。そのため、事故リスクを早期に把握し、何らかの対策を取ることが重要と考えられる。国内では既に、高齢ドライバーの免許更新時に認知機能検査を実施し、認知症の疑いがないかを判定している。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。一方で、認知症でなくても、主観的な認知機能(記憶力)と歩行速度の低下により判定される「MCR(motoric cognitive risk syndrome)」と呼ばれる状態は、将来の認知症のリスクが約3倍高いと報告されている。このMCRは、評価のために専門のスタッフを必要とせず、比較的容易な検査で判定できるという特徴がある。MCRと自動車事故との関連が認められれば、自動車事故のリスクを把握するための実用性の高い新たな手段になる可能性があることから、栗田氏らは、MCRと自動車事故やヒヤリハット経験の有無との関連を検討した。
この研究は、国立長寿医療研究センターによる大規模コホート研究「National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromes(NCGG-SGS)」の横断データを用いて行われた。2015~2018年に愛知県大府市などで実施した高齢者機能健診に参加した65歳以上の高齢ドライバー1万2,475人(平均年齢72.6±5.2歳、女性43.1%)を解析対象とした。
主観的な記憶力は、「記憶に関して問題を抱えているか」、「以前より、物を置いた場所を忘れることが増えたか」、「親しい友人、知人の名前を忘れることがあるか」など5項目の質問に対して一つでも「はい」と回答した場合に「低下している」と判定した。歩行速度の低下は、NCGG-SGSのデータベースから算出した基準値により判定した。また、自動車事故は過去2年間の有無、ヒヤリハット経験は12項目について過去1年間の有無を評価した。このほか、同センターが作成した認知機能評価ツールを用いて、認知機能低下の有無を客観的に評価した。
解析は、主観的な記憶力の低下および歩行速度の低下の有無を組み合わせて全体を4群に分類して行った。4群の対象者特性を比較すると、眼疾患の既往、難聴、日中の過度な眠気は主観的記憶低下のみ群、MCR群(両方とも低下している群)において有意に多く、客観的認知機能低下については健常群(主観的認知機能の低下と歩行速度の低下がともにない群)、主観的記憶低下のみ群、歩行速度低下のみ群、MCR群の順で多く見られた。
結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、教育歴、眼疾患や難聴の有無、服薬数、睡眠時間、日中の眠気、客観的な認知機能低下の有無)の影響を調整したロジスティック回帰分析の結果、自動車事故、ヒヤリハット経験ともに、健常群を参照すると、主観的記憶低下のみ群、MCR群においてオッズ比が有意に増加した。具体的なオッズ比は、自動車事故に対しては主観的記憶低下のみ群がOR1.48(95%信頼区間1.27~1.72)、MCR群がOR1.73(同1.39~2.16)、ヒヤリハット経験に対しては同順にOR2.07(1.91~2.25)、OR2.13(1.85~2.45)であった。
これらの傾向は、4群をさらに客観的認知機能低下の有無により8群に分けて解析した場合においても同様であり、歩行速度のみ低下している群においては、客観的認知機能低下を伴う場合に自動車事故のオッズ比が有意に増加した。
これらの結果より、高齢ドライバーにおける主観的記憶低下、MCRの状態は、客観的に評価した認知機能低下の有無を問わず、過去の自動車事故、ヒヤリハット経験と関連することが示唆された。本研究は横断研究であり、主観的記憶低下、MCRの評価を自動車事故のリスク把握に適用できるかを検討するためには、縦断研究や主観的記憶力低下に伴う症状の探索により、本研究で得られた知見を確証する必要がある。
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ドラム演奏で認知症の重症度が分かる――東京大学先端科学技術研究センター
ドラムをたたく時の腕の上げ具合で、認知症の重症度を判定できる可能性が報告された。東京大学先端科学技術研究センターの宮﨑敦子氏らによるパイロット研究の結果であり、詳細は「Frontiers in Rehabilitation Sciences」に5月25日掲載された。著者らは、「この方法は簡便なだけでなく、既存の重症度評価ツールへの回答を拒否されるケースでも、ドラムたたきなら協力してもらえるのでないか」と述べている。
現在、認知症の重症度は、ミニメンタルステート検査(MMSE)といった評価指標を用いて判定することが多い。ただし、認知症が重度になるほど、そのような検査の必要性を理解しにくくなり、検査への協力を得られなくなることが増える。また視覚や聴覚に障害のある場合も、その施行が難しくなったり、判定結果が不確かになりやすい。
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一方、上肢の運動機能が認知症の重症度と関連しているとの既報研究がある。とはいえ上肢運動機能の評価にもハードルがある。そこで宮﨑氏らは、ドラム演奏中の腕の上げ具合によって、上肢運動機能を評価することを試みた。ドラム演奏には、スティックがドラムから跳ね返るためにほぼ筋力を使わずに行えること、リズム反応運動は認知症が重度になっても維持されていることが多いこと、ほかの人の動作の模倣が可能なため認知症の人にも何をすべきかが分かりやすいこと、などの長所がある。また同氏らは以前、ドラムをたたくことが認知機能の改善につながる可能性も報告している。
この研究の解析対象は埼玉県内の特別養護老人ホームの居住者16人〔平均年齢86歳(範囲72~100)、女性12人〕。MMSEは平均14.56±6.89点で、認知症の重症度は軽度(MMSEが21~26点)が4人、中等度(同11~20点)が8人、重度(10点以下)が4人だった。
参加者全員が輪になって座り、進行役の研究者が自分のドラムをたたきながらアイコンタクトや声掛けによって、ドラムたたきを促した。参加者は各自のペースでドラムをたたき始め、次第に周囲のリズムに合わせて、たたくスピードを変えていった。この間、腕時計型ウェアラブルセンサーにより、ドラムをたたく時に上肢がどれくらい高く上がっているか(挙上角度)と、たたくスピードを計測した。そのほか、認知機能と関連があり、かつ上肢運動機能に影響を及ぼし得る因子として、握力も測定した。
年齢、性別、握力、上肢の挙上角度、ドラムをたたくスピードという五つの因子と認知症の重症度(MMSEスコア)との関連を検討すると、それらの因子は相互の関連が少なく、それぞれが個別にMMSEスコアへ影響を及ぼしていることが分かった(分散拡大係数が全て5未満)。
次に、認知症の重症度判定に際して、それらのうちどの因子を用いた場合に、MMSEスコアをより正確に予測できるかを赤池情報量規準(AIC)という指標で検討。その結果、握力とともに上肢の挙上角度を予測モデルに組み入れた時に、最も予測能が高くなることが分かった(R2=0.6035、P=0.0009)。また、ドラムをたたくスピードはMMSEスコアとの関連が少なく、この手法による評価に影響がないことが確認された。
以上より著者らは、「ドラム演奏時の腕の挙上角度から、認知症の重症度を評価できる可能性が示された」と結論付けている。また、「この評価法は簡便、安価、安全であり、医療や介護現場で容易に用いることができる。さらに、ドラム演奏による上肢運動機能や認知機能の改善も期待できるのではないか」と語っている。
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認知症の人に配偶者の死を伝えるべきか?――ケアマネージャー対象調査
認知症の人の配偶者が亡くなった場合に、その事実を伝えるべきだろうか。また、伝えた場合や伝えなかった場合に、どのような問題が発生し得るのだろうか。このような疑問について、国内のケアマネージャーを対象に行った調査の結果が、「European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education」に2月8日掲載された。東京大学医学部医学倫理学分野・秩父市立病院の加藤寿氏らの研究によるもの。
認知症の人に対しても自律的な人間として接し、患者本人の知る権利に配慮する必要がある。一方で、配偶者の死という人生で最大級のつらい出来事を知らされることで、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)が悪化したり、うつリスクが増大したり、記憶力低下のために配偶者の死という情報の伝達が繰り返されるという状況も起こり得る。介護の現場では、こうした問題への対応は、しばしばケアマネージャー(CM)がキーパーソンとなって判断されている。そこで加藤氏らは、2019年3~12月に国内で開催された介護関連学会の会場で、CM対象の質問紙調査を行った。
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質問紙は、3人の臨床医と24人のCMによるパイロット研究によって妥当性を確認した後に使用した。回答方法は自記式で匿名とした。707人に配布され、513人(72.6%)から回答を得られ、508人の回答を解析対象とした。75.8%が女性であり、7割以上が10年以上の経験を有していた。
CMの81.3%が、認知症の人の配偶者の死の経験を有していた。その中で、本人への配偶者の死の伝達(以下、情報開示)をした割合は、0~30%が28.1%、40~70%が30.5%、80~100%が34.9%であり、広い範囲に均等に分布していた。情報開示経験のある人の中で、BPSDの悪化に遭遇した経験のある割合は18.4%、うつ病悪化に遭遇した経験のある割合は26.0%だった。
次に、情報開示に関する考え方を問うと、「開示すべき」が39.6%、「開示した方が良い」が43.1%、「開示の必要はない」が14.4%、「開示しない方が良い」が1.2%となった。情報開示の際に考慮すべき事柄を複数回答で選択してもらうと、家族の意向(51.0%)、患者の知る権利(48.2%)、認知症のステージ(25.0%)、本人の性格(24.8%)、うつ病の有無(24.4%)、BPSDの有無(23.2%)、夫婦関係(20.1%)、家族構成(6.1%)、医療提供者の意見(5.3%)などとなった。また、家族が開示に否定的な場合の対応については、「家族の意向を尊重する」が38.6%、「開示のメリットとデメリットを伝えて再考を促す」が39.8%、「患者の知る権利を尊重して開示を提案・説得する」が15.4%だった。
続いて、認知症の人の配偶者の死の経験を有するCMを、情報を開示する頻度が高い(60%以上)群と低い(50%以下)群に二分した上で、属性や上記の質問への回答の傾向を検討。その結果、年齢や性別、CM経験年数に有意差はなく、また、配偶者の死の経験数、開示によるBPSDやうつ病の悪化に遭遇した経験を有する割合にも有意差が見られなかった。
ただし、情報開示の際に考慮すべき事柄として、「本人の性格」を挙げた割合は、開示頻度が高い群は21.7%であるのに対して、開示頻度が低い群は37.2%であり、後者で多く選択された(P=0.007)。同様に「BPSDの有無」を考慮する割合も17.1%、38.8%の順であり、開示頻度が低い群で高かった(P<0.001)。反対に「夫婦関係」を挙げた割合は、開示頻度が高い群が34.9%、開示頻度が低い群は19.8%であり、前者の群で高かった(P=0.007)。
著者らによると本研究は、認知症の人の配偶者の死の情報開示に関する初のCM対象調査だという。結論としては、「情報開示は家族の意向が反映されることが多いが、BPSDやうつ病悪化のリスクも考慮されているようだ。回答者の8割以上が開示に肯定的であるにもかかわらず、実際に開示する頻度はそこまで高くなかったことは、現場のジレンマを表しているのではないか」と総括されている。
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