• カラオケで認知機能と嚥下機能が改善――理研

    カラオケを練習すると認知機能が改善する可能性が報告された。さらに、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる嚥下障害の予防も期待できるという。理化学研究所バトンゾーン研究推進プログラム(BZP)の宮﨑敦子氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」2月24日オンライン版に掲載された。

    認知機能訓練の1つとして、文章を声に出して読み上げたり計算問題を解いたりする「学習療法」と呼ばれる手法がある。カラオケは歌詞を声に出して歌うため、学習療法に似た側面を持つ。また、舌や呼吸筋の訓練にもなり、嚥下機能や呼吸機能を維持・改善する可能性もある。宮﨑氏らは、カラオケの持つこのような特徴が、実際に効果を発揮するのかどうかを調べるために、高齢者対象の介入試験を行った。

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    研究の対象は、都内2カ所の介護施設に居住する65歳以上の高齢者26人。カラオケの練習をする群(14人)と、カラオケの練習はしないかわりに認知機能訓練にもなると言われているスクラッチアートをする群(12人)に分け、12週間介入した。ベースライン時の年齢、教育歴、FABスコア(認知機能の指標)、舌圧(舌の機能評価の指標)、呼吸機能、SMI(骨格筋量指数)などに群間の有意差はなかった。

    カラオケの練習には、歌詞と歌い出しのタイミングがモニターに表示される機器ではなく、歌詞カードを見ながら歌う方式を用いた。その理由は、モニタータイプはコスト面から高齢者の個人所有に支障があること、および、歌い出しのタイミングを覚えることが認知機能の訓練につながる可能性があるため。

    カラオケ群の被験者には週に1時間、プロの指導者の下で練習してもらうほか、週に1曲、課題曲を示し個人的に練習してもらった。対照のスクラッチアート群に対しても週に1回、教室形式で練習してもらい、課題として週に1枚を完成してもらった。

    12週間の介入による両群の変化について、まず認知機能を比較すると、カラオケ群ではFABスコアのうちの葛藤的指示への反応(指示された内容と正反対のことを瞬時に実行できるかどうか)が0.46点上昇、対照群では0.30点低下し、群間に有意差が認められた(P=0.003)。また、抑制制御(指示された内容のうち実行しなくてよいものを瞬時に判断できるかどうか)は同順に0.69点、0.10点それぞれ上昇し、カラオケ群でより大きく改善していた(P=0.013)。

    次に、身体機能関連の変化を比較すると、舌圧はカラオケ群3.71kPa(キロパスカル)増加、対照群は1.55kPa減少していた(P=0.050)。また、呼吸機能のうち吸気1秒量(1秒間で吸い込める空気の量)は同順に0.18L増加、0.29L減少で、群間に有意差が認められた(P=0.036)。

    これらの結果を踏まえ、研究グループでは、「カラオケの練習は認知機能訓練の学習療法と同様の効果があることが示された。また、舌圧や呼吸機能を改善したことから、嚥下機能の維持・向上も期待できる」とまとめている。

    なお、本検討では、カラオケによってFABスコアの葛藤的指示への反応が改善したが、学習療法の効果を検討した先行研究では、有効性が示されていない。学習療法ではなく、カラオケの練習で効果が得られた理由について、宮﨑氏は「歌詞カードを見て正しいタイミングで歌い出すには、不適切な行動の抑制(間違ったタイミングで歌わないこと)が必要であり、その訓練が効果発現につながったのではないか」と述べ、「モニターにナビゲーションが表示されるカラオケで、同様の効果を得られるかは不明」としている。

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    HealthDay News 2020年4月13日
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  • 地域住民の認知機能が、知的活動と運動教室で改善――鳥取大

    知的活動と身体運動および認知症や生活習慣に関する教育を組み合わせたプログラムの実施によって、地域高齢者の認知機能や身体機能が改善するというデータが、鳥取県の伯耆町で行われた研究から報告された。鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座の河月稔氏、浦上克哉氏らの研究グループによるもので、「Annals of Clinical and Translational Neurology」2月18日オンライン版に論文が掲載された。

     近年、全国各地で認知症予防教室が行われているが、その内容は自治体によって異なり有効性に差があるという報告も見られる。鳥取県の琴浦町では約15年前から、知的活動と身体運動およびコミュニケーションを中心とした認知症予防教室を開催しており、その取り組みを背景として今回の研究では、伯耆町において知的活動、身体運動、認知症や生活習慣に関する教育を組み合わせた独自の認知機能低下予防プログラムを開発し、認知機能低下が疑われる高齢者を対象に効果を検証した。

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     伯耆町に住む要介護認定を受けていない軽度の認知機能低下が疑われる65歳以上の高齢者136人(平均年齢77.3±6.3歳、男性が34.6%)を2群に分け、1群は6カ月の介入に続き6カ月の観察期間の順、もう1群はその逆の順序で介入するという非盲検クロスオーバー法により、認知機能や身体機能などの変化を検討した。なお、運動ができない心疾患患者と、座位から立ち上がれない人は除外した。

     介入期間中、参加者は11~15人ずつのグループに分かれ、グループごとに、作業療法士、保健師または看護師、認知症予防について知識のあるアドバイザーが各1人という3人からなるチームが指導にあたった。指導は1週間に1回、計24回で、1回につき、知的活動と身体運動を各50分間、休憩あるいは認知症と生活習慣についての講義を20分行った。講義は4週間に1回の頻度で計6回行い、講義を実施しない日は休憩時間とした。知的活動は、近時記憶、作業記憶、計算力、思考力、判断力、遂行力、注意力、視空間認知能力の8領域を刺激するプログラムとし、内容や難易度は指導者の裁量で適宜調整した。身体運動は有酸素運動と筋力運動を中心とするもので、強度は3~4 METsとした。

     認知機能の評価には、タッチパネル式コンピューターを用いた認知機能検査であるTDASを用いた。TDASスコアは0~101点で評価され、点数が低いほど認知機能が良好と判定される。

     全対象者のベースライン時のTDASスコアは7.0±5.7点だった。介入期間の前後および観察期間の前後でのTDASスコアの変化を比較すると、前者は-1.05±3.92点と低下、後者は0.74±4.78点と上昇しており、介入による認知機能の有意な改善が認められた(P<0.05)。

     認知機能だけでなく身体機能の改善も認められた。例えば、握力は介入期間前後で0.88±2.92kg増加したのに対し、観察期間前後では-0.87±2.96kgと低下した(P<0.01)。30秒間に椅子から立つ・座るという動作を何回できるかというテストも同順に、1.97±3.59回の増加と0.52±3.01回の増加で有意差があった(P<0.05)。座った状態での前屈も、2.07±5.17cmの増加と-0.46±4.11cmの減少で、やはり有意差が見られた(P<0.01)。

     なお、この介入に要したコストは、伯耆町管轄の施設や設備を利用したため、主に教室指導者の人件費と知的活動の消耗品費であり、クラス1回当たり2万円未満であった。

     これらの検討を踏まえ、著者らは「知的活動と身体運動、認知症や生活習慣に関する教育を組み合わせ開発したこのプログラムは、軽度の認知機能低下が疑われる高齢者の認知機能・身体機能を改善する効果があると考える。低コストであり、他の地域でも容易に導入可能と考えている」と結論をまとめている。

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    HealthDay News 2020年3月30日
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  • お茶の成分がストレスによる脳萎縮を予防――マウスでの研究

    ストレスに長期間さらされていると、脳が萎縮したり認知機能が低下することが、動物実験で示されている。またヒトにおいても、たび重なるストレスと脳の前頭前野などの容積に関連が見られるとする研究報告がある。このような影響を避けるにはストレスがかからない環境に移ることが一番だが、それを簡単に実行できる人はあまりいない。が、ひょっとしたら、お茶を飲むことが脳の萎縮の予防につながるかもしれない――という研究結果が「Nutrients」1月8日オンライン版に掲載された。

     静岡県立大学茶学総合研究センターの海野けい子氏らは、お茶に最も多く含まれているアミノ酸で緑茶の旨味成分の1つである「テアニン」の機能性に着目し、これまでにテアニンがマウスのストレスを軽減し認知機能低下を抑制することなどを報告してきている。今回の研究では、テアニンがストレスによる脳萎縮を抑制するかを、東北大学加齢医学研究所の住吉晃氏らとの共同研究により磁気共鳴画像法を用いて検討した。

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     4週齢のマウスを5日間グループで飼育し環境に慣れさせた後、そのままグループで飼育する群と、仕切板により1匹ずつ個室で飼育した後に途中から仕切板を外して2匹の相部屋に移す群に分けた上で、さらにそれぞれを2分し、一方は通常の水、もう一方はテアニンを20μg/mL含む水溶液を与えるという計4条件で飼育した。個室から2匹相部屋に移す条件では、2匹のマウスが互いに相手を侵入者と見なしストレスがかかった状態になる。このストレス状態の期間は、0、1、2、4、6カ月の5パターン設定した。一連の実験は、ストレスに対する感受性が強い「SAMP10」というマウスと、比較対照として動物実験で一般的に使われる「ddY」という計2種類のマウスを用いて行った。

     まずSAMP10マウスの脳の容積を前記の4条件別に見ると、ストレスを負荷し通常水で飼育した群は、ストレスを負荷しテアニン水溶液で飼育した群や、ストレスを負荷せずに通常水で飼育した群に比較して、海馬(記憶を司り、アルツハイマー病では初期から萎縮する部位)や新皮質(脳の高次機能を司る部位)が有意に小さいことがわかった。

     次にこの変化を経時的に見ると、ストレス負荷1カ月の時点で新皮質が有意に萎縮したが(112.75±8.26mm3)、テアニン水溶液で飼育した群では2カ月目で回復した(123.75±7.57mm3)。また海馬ではストレスを6カ月間負荷した時点で、通常水で飼育した群(23.01±0.79mm3)とテアニン水溶液で飼育した群(26.02±1.46 mm3)に有意差が生じていた。

     これらの結果は、ストレスによってSAMP10マウスの海馬や新皮質で萎縮が生じるが、テアニンがその抑制や回復に寄与したものと考えられる。なお、グループ環境で8カ月間飼育した(ストレスを負荷しなかった)群では、通常水(25.75±1.69 mm3)、テアニン水溶液(25.54±1.91 mm3)の違いによる海馬の容積に差がなかった。

     一方、ddYマウスではストレス負荷1カ月時点で、通常水で飼育した群とテアニン水溶液で飼育した群のいずれも海馬容積が有意でないながら軽度に縮小する傾向が見られたが、2カ月目以降、両群ともに回復した。グループ環境で8カ月間飼育した群では、通常水で飼育したマウス(23.93±1.04 mm3)はテアニン水溶液で飼育したマウス(27.81±1.16 mm3)に比べ、海馬の容積が有意に小さかった。ddYマウスの検討では、海馬で見られたこれらと同様の変化が新皮質においても認められた。

     上記のほか研究グループでは、ストレス負荷がSAMP10マウスの遺伝子に及ぼす影響を検討した。その結果、Npas4やLcn2といった遺伝子の発現がストレスの影響を受けて変化し、テアニン水溶液で飼育したマウスではそれらの変化が抑制されることがわかった。

     海野氏らはこれらの結果を踏まえ、「ストレス負荷によって、ストレスに敏感なマウスの脳容積が減少する。これに対し、茶葉の主要アミノ酸であるテアニンは、ストレス応答遺伝子発現を修正することで脳萎縮を防ぐことが示唆される」とまとめている。

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    HealthDay News 2020年1月27日
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  • ダークチョコを毎日食べると認知機能が向上

    ダークチョコレートを毎日食べると、神経成長因子(NGF)という蛋白質が増加し認知機能も向上するという研究結果が報告された。しかもチョコレートの摂取を中止した後もしばらく認知機能が高い状態が維持されるという。ただしホワイトチョコレートにはこの効果はないとのことだ。島根大学医学部環境生理学の住吉愛里氏らの研究によるもので、「Nutrients」11月16日オンライン版に掲載された。

     この研究は島根大学の健康な学生20人(20~31歳、男性14人)を対象に行われた(介入中に2人が脱落)。全体を無作為に2群に分け、1群にはカカオパウダーを含むダークチョコレート(24.0g/日)、別の1群にはカカオを含んでいないホワイトチョコレート(24.5g/日)を支給し、30日間毎日食べてもらった。この間、カフェイン入り飲料は1日3杯までとし、支給したもの以外のチョコレートの摂取を禁止した。認知機能および血中NGF濃度は、連日摂取の介入前、介入終了時、そしてカカオ成分であるテオブロミンの血中濃度が通常レベルに戻ると考えられる介入終了から3週間経過した時点の計3回、計測した。

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     認知機能は以下の2つの方法で判定した。テスト1は、赤、黄、青、緑という文字が4色の異なる色(赤、黄、青、緑)で印字されたもの(文字の色と文字の読みは無関係)を見て、文字の読みまたは色を瞬時に答えるというもの。テスト2は、無作為に並んでいる0~9の数字の中から、指示された数字だけを時間内にできるだけ多くチェックするというもので、1分間の休憩を挟み3回繰り返した。

     これらの測定結果を時系列で見ると、まず、介入前の認知機能と血中NGF濃度は両群同等だった。その後30日間の介入期間中、チョコレートの摂取やカフェイン入り飲料の摂取制限は、両群ともによく守られており群間差がなかった。

     次に、介入終了時にダークチョコレート群ではNGF濃度が有意に上昇していることが確認された(P=0.0059)。そして、テスト1の文字読みの正答数が有意に増加していた(P=0.017)。またテスト2では3回目のトライの正答率が有意に向上していた(P=0.014)。ところがその一方、ホワイトチョコレート群ではいずれも有意な変化がなかった。

     続いて介入終了から3週間後の結果だが、ダークチョコレート群ではNGF濃度は介入前のレベルに戻っていた。しかし、認知機能は引き続き有意に高い状態に維持されていた。なお、テスト1の文字の色読みの正答数は、ダークチョコレート群では介入前より有意に増加していた(P=0.012。ホワイトチョコレート群はP=0.050)。

     この他、同時に検討されたテオブロミン濃度はダークチョコレート群の介入期間のみ、血中レベルが有意に高かった。血中カフェイン濃度、脳由来神経栄養因子(BDNF)、前頭前野血流量は、両群ともに有意な変化は見られなかった。

     これらの結果について著者らは、「ダークチョコレートの連日摂取によって、血中NGFとテオブロミンのレベルが上昇し、認知機能の向上が認められた」とまとめるとともに、「連続摂取が終了しNGF、テオブロミンレベルが介入前値に戻った後も、認知機能の高い状態が継続していたことは興味深く、分子メカニズムの検討が必要」としている。

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    HealthDay News 2019年12月9日
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  • 初潮から閉経までの期間が長いと認知機能障害のリスクが低い――JPHC研究

    初潮から閉経までの期間が長い女性は認知機能障害のリスクが低いとするデータが報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Maturitas」10月号に掲載された。

    動物を用いた実験で、女性ホルモンのエストロゲンには、脳の中の記憶に関係する海馬という場所の神経伝達機能を活性化する作用があることが報告されている。しかしヒトにおいては、女性ホルモンが認知機能と関連するとの疫学研究があるものの、一致した結果は得られていない。エストロゲンの血中濃度は、月経周期や妊娠・出産・閉経などの影響を受けるため、それらの因子が研究の結果に影響を与えていることが考えられる。

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    今回発表された研究は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した女性から、うつと診断された人を除外した670人のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、670人中227人が認知機能障害(軽度認知障害が196人と認知症が31人)と診断された。

    この227人について、アンケート調査から得た月経に関連する情報(初潮年齢、月経規則性、月経周期、出産回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経年齢、初潮から閉経までの期間など)と、認知機能障害の発症リスクとの関連を検討した。認知機能に関連する因子(年齢、BMI、教育歴、喫煙習慣、余暇・運動活動状況、高血圧や糖尿病・うつの既往)の影響は調整した。

    その結果、初潮から閉経までの期間が長いほど、認知機能障害のリスクが有意に低下することがわかった(傾向性P=0.032)。具体的には、初潮から閉経までの期間が33年以下の人の認知機能障害発症リスクを1とした場合、38年以上の人のリスクは0.62となり、38%の有意なリスク低下が認められた(P<0.05)。なお、34~37年の人のリスクは0.89だが、この低下率は有意でなかった。

    続いて認知機能障害を軽度認知障害と認知症に分けて解析すると、軽度認知障害については結果が変わらず、初潮から閉経までの期間が長いほどリスクが低下していた。一方、認知症に関してはリスク低下が有意でなくなった。この点について著者らは「認知症と診断された女性が31人と少なかったため、今後人数を増やして検討する必要がある」と述べている。

    以上の結果から、エストロゲンの曝露期間が長いほど認知機能障害を防ぐように働く可能性が示唆された。研究グループは本報告を「女性関連要因と認知機能障害との関連を明らかにした初めての研究」としており、「女性関連要因は時代や社会的背景などで変化することから、今後も研究の蓄積が必要」とまとめている。

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  • 認知症予防には「良好な睡眠」を含めた複合的な対策が必要――新オレンジプランのデータを解析

    健康な日本人を1年半追跡した研究から、気持ちの持ち方(気分)や睡眠習慣が認知機能の変化と関連しており、認知症予防には多因子に対する複合的な対策が必要であることがわかった。国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンターの松田博史氏らの研究グループが報告した。研究の詳細は「Alzheimer’s & Dementia(New York)」8月2日オンライン版に掲載された。

     この研究は、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の統合レジストリである「IROOP」(Integrated registry of orange plan)のデータを解析したもの。認知症のリスク因子に関する研究手法はこれまで横断研究や短期間の観察研究が多かったが、本研究では18カ月という比較的長期間にわたる影響を縦断的に検討した。

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     研究の対象は、テレビ・新聞などで募集されIROOPに登録された者のうち、ベースライン時とその後に1回以上、軽度認知機能障害に関するテストと生活習慣に関するアンケートに回答した40歳以上の健康な日本人473人(平均年齢59.6±10.1歳、男性175人、女性298人)。認知症患者や精神疾患の既往歴がある人は除外した。

     アンケートは米国のレジストリ(Brain Health Registry)で使われている質問票を基に作成し、約220の質問項目で構成。「自分の人生に満足しているか?」といった気分に関する質問、「1年前と比較して今の健康状態をどう評価するか?」といったQOLに関する質問、「過去1カ月間、通常何時に就寝したか?」といった睡眠に関する質問などを設定した。

     統計解析の結果、18カ月での認知機能の変化と関連する因子として、ベースラインの認知機能、テレビの視聴時間、慢性痛、電話をする友人の存在、人生への満足度など、計18項目が特定された。特に睡眠に関する項目として、就寝時刻、起床時刻、昼寝の時間という3項目が抽出され、良好な睡眠が認知機能の維持に有益であることが示された。また気分と認知症の関連については、既にIROOPの横断研究でもその関連性が示されているが、今回の研究で縦断的な変化にも影響を及ぼすことが確認された。

     これらの新たな知見から、本論文では「この研究で特定された潜在的なリスク因子を、個人が日常生活でそれらを意識できるように広く公表されるべき」と述べ、また「認知症の原因が他因子にわたることを考慮すると、生活習慣に関わる要因のみに焦点を当てるのではなく、複数の要因をカバーする複合的な予防戦略が必要」と結論している。

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  • 糖尿病とがんの併発が認知症リスクをより高める――JPHC研究

    近年、糖尿病が認知症やがんの危険因子であることが注目されているが、糖尿病とがんを併発した場合、認知症のリスクがより高くなる可能性が報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Psychiatry and Clinical Neurosciences」6月21日オンライン版に掲載された。

    糖尿病、認知症、がんは、いずれも高齢者に多い疾患のため、人口の高齢化によりこれらを併発する患者が増加する。ただし、単に加齢によって偶発的な併発が増えるのではなく、糖尿病が認知症やがんを増やすという関係が明らかになってきた。

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    例えば、糖尿病患者ではアルツハイマー病が約1.5倍、血管性認知症が約2.5倍多いとされている。糖尿病患者が認知症になると低血糖のリスクが上昇するなどのために血糖コントロールが困難になりやすい。また糖尿病とがんの関係については、男性糖尿病患者のがん発症リスクが1.27 倍、女性は1.21倍というJPHC研究の報告がある。その一方で、がんが認知症の危険因子かどうかという点についてはこれまでの報告の結果が一致しておらず、また糖尿病とがんを併発した場合の認知機能への影響も十分に検討されていない。

    今回発表された報告は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した1,244人(脳卒中罹患者は除外)のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、1,244人中421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断された。

    年齢、性別、教育歴、アルコール摂取、喫煙、運動、魚摂取量で調整した上で、軽度認知障害・認知症のリスクを検討すると、糖尿病では認知症リスクの有意な上昇が認められた。さらに糖尿病とがんを併発していると認知症リスクはより顕著となり、両者とも罹患していない場合に比べオッズ比が約16倍になった。また両者を併発している場合は、軽度認知障害のリスクも有意に上昇することがわかった。なお、がん単独では軽度認知障害・認知症の有意なリスク上昇はみられなかった。

    糖尿病でがんのリスクが上昇する機序としては、インスリン抵抗性の関与が想定されている。また、がんの罹患後にインスリン抵抗性が亢進するとの報告や、インスリン抵抗性が認知症の発症に関与するとの報告もあることから、今回の結果について研究グループでは、「がんと糖尿病を併発した群は他の群よりもインスリン抵抗性が高く、結果として認知症リスクが上昇した可能性が考えられる」と考察している。

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    HealthDay News 2019年8月26日
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  • 蛋白尿とeGFR低値が認知機能低下と関連か 日本人高齢男性を分析、滋賀医大グループ

    日本人高齢男性では、蛋白尿の存在と推算糸球体濾過量(eGFR)の低下はいずれも認知機能の低下と関連する可能性があることが、滋賀医科大学客員教授の藤吉朗氏(和歌山県立医科大学衛生学講座教授)らの研究グループによる横断研究で示された。これらの関連は、従来の循環器疾患危険因子とは独立して認められたという。詳細は「Journal of Epidemiology」5月25日オンライン版に掲載された。

     蛋白尿(アルブミン尿)やeGFR値の低下で定義される慢性腎臓病(CKD)は、認知機能低下や認知症の危険因子と考えられている。しかし、蛋白尿およびeGFR低値と認知機能との関連については、明らかでない部分も多い。藤吉氏らの研究グループは今回、地域在住の高齢男性を対象に横断研究を実施し、蛋白尿およびeGFR値の低下と認知機能低下との関連について調べた。

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     この研究は、滋賀県草津市からランダムに抽出した参加者(40~79歳)を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の男性1,094人のうち、追跡調査(2009~2014年)時に65歳以上で脳卒中の既往がなく、認知機能検査(cognitive abilities screening instrument;CASI)を受けた561人を対象としたもの。対象男性のうち48.1%(270人)がCKDの定義を満たしていた。

     参加者を、eGFR(mL/分/1.73m2)値(60以上、40~59、40未満)または蛋白尿(陰性、微量、陽性)でそれぞれ3つの群に分けてCASIスコアとの関連を調べた。なお、CASIスコア(0~100)は高いほど認知機能が良好であることを意味する。

     その結果、蛋白尿が多い群ほど、また、eGFR値が低い群ほど認知機能が有意に低いことが分かった。多変量で調整したCASIスコアの平均は、蛋白尿が陰性群で90.1、微量群で89.3、陽性群で88.4であり(傾向P値=0.029)、eGFR値が正常群で90.0、中等症群および進行群はいずれも88.5であった(同0.015)。

     さらに、参加者を蛋白尿とeGFR値により「CKDなし」(51.9%)、「eGFR低下(60mL/分/1.73m2未満)または蛋白尿のどちらか一方あり」(39.9%)、「eGFR低下かつ蛋白尿あり」(8.2%)に分けて解析したところ、CASIスコアの平均はそれぞれ90.4、89.4、87.5であった。

     これらの結果を踏まえ、藤吉氏らは「日本人の高齢男性において、蛋白尿の存在やeGFRの中等度低下であっても認知機能の低下と関連することが分かった。高齢者の認知機能の低下を早期に発見し、進行を抑えるためには、蛋白尿とeGFR値のモニタリングが重要な指標となることが示唆された」と結論づけている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2019年6月17日
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  • 「軽い運動+アスタキサンチン摂取」で記憶力がさらに高まる? 筑波大の研究グループ

    強い抗酸化作用のある天然色素「アスタキサンチン」を摂取すると、低強度運動による記憶力の向上効果がさらに高まる可能性があることを、筑波大学体育系教授の征矢英昭氏らがマウスを用いた実験で突き止めた。軽い運動と抗酸化成分の摂取を組み合わせた新しい認知症の予防法の開発が期待されるという。研究の詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」5月13日オンライン版に掲載された。

    征矢氏らの研究グループは、動物を用いた研究で、低強度運動が成体海馬歯状回での神経新生を促進し、記憶力を高めることを明らかにしている(PNAS 2012、PLOS ONE 2015)。また、ヒトを用いた研究でも、海馬歯状回の活性化と記憶力の向上が低強度運動で生じることを確認している(PNAS 2018)。

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    さらに、近年では、抗酸化作用を持つ天然サプリメントの併用が注目されている。征矢氏らは、既に、サケやエビに含まれる赤橙色の天然色素である「アスタキサンチン」を摂取すると動物の海馬歯状回の神経新生が促進し、記憶力が向上することを報告しているが、その効果が運動の併用でどうなるのかは不明だった。そこで研究グループは今回、マウスを用いた実験で、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用が海馬機能をより向上させるのか否かを検討した。

    研究では、まず、正常な成体マウスに、4週間にわたり低強度運動に加えてアスタキサンチンを加えた食餌を摂取させ、それぞれを単独に行ったマウスと比較して成体海馬の神経新生と空間学習記憶能への影響を調べた。その結果、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用した群では、それぞれを単独に行った群に比べて空間記憶能がより向上し、海馬歯状回の細胞増殖と新生成熟細胞の数がさらに増えたことが分かった。

    次に、網羅的な遺伝子発現解析の手法を用いて、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用による相乗的な海馬機能の向上に関わる分子メカニズムを検討した。その結果、海馬内のレプチンの遺伝子が関与している可能性が示され、これらの併用時には海馬内のレプチンタンパク質の発現量が相乗的に増加した。一方、これらを併用しても血漿内のレプチン量に有意な変化はみられなかった。

    さらに、低強度運動+アスタキサンチン併用による相乗効果のメカニズムを確かめるため、レプチンを欠損した遺伝性肥満マウス(ob/obマウス)を用いて低強度運動とアスタキサンチンの併用効果を検討した。その結果、ob/obマウスでは、通常のマウスでみられたこれらの併用による記憶力の向上は認められなかった。一方、低強度運動を行っている期間中にob/obマウスの脳内にレプチンを投与したところ、消失していた併用効果が再び現れた。このことから、脂肪細胞由来ではなく脳由来のレプチンが、この相乗効果の発現に必要であることが示唆された。

    これらの結果を踏まえ、征矢氏らは「抗酸化能を持つアスタキサンチンを摂取すると、低強度運動による海馬の神経新生の促進と空間記憶能の向上効果がさらに高まることがマウス実験で確認された。また、このような相乗効果には、脳由来のレプチンが関与することも示唆された」と結論。近年、アルツハイマー病の治療標的として外因的なレプチンが注目を集めており、「アルツハイマー病患者の認知機能低下に対して、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用することで海馬のレプチンを高めることができれば、認知機能の改善につながる可能性が考えられる」と述べている。

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    HealthDay News 2019年5月27日
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  • 2型糖尿病のインスリン抵抗性とアルツハイマー病の関係は? これらをつなぐ機序の一端を解明、東大研究グループ

    2型糖尿病はアルツハイマー病のリスク因子として知られているが、これらを関連づける機序の一端が、東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授の岩坪威氏と同大学認知症先進予防治療学の若林朋子氏らの研究グループにより明らかになった。アルツハイマー病の発症には、糖尿病に伴うインスリン抵抗性が重要な鍵となるが、高脂肪食などの食事でインスリン抵抗性が生じると、脳内アミロイドβ(Aβ)の除去速度が低下して、その蓄積が増える可能性があることを突き止めたという。研究の詳細は「Molecular Neurodegeneration」4月12日オンライン版に掲載された。

    これまでの疫学研究から、2型糖尿病患者はアルツハイマー病になりやすく、そのリスクは約2倍に上ることが示されている。また、2型糖尿病の中心的な病態であるインスリン抵抗性が、脳内のAβ沈着と関連することも報告されている。これまで、アルツハイマー病モデルマウスのインスリンシグナルを遺伝的に阻害するとAβの蓄積が抑えられるとの報告もあるが、インスリンシグナルの変化とアルツハイマー病のAβ蓄積との因果関係は明らかになっていない。

    そこで、岩坪氏らは、2型糖尿病とアルツハイマー病を関連づける機序として「インスリンシグナルの障害」に注目。加齢に伴い、脳内にAβがアミロイド斑として蓄積するアルツハイマー病モデルマウスを用いて、高脂肪食を与え続けて引き起こしたインスリン抵抗性と、インスリンシグナル伝達に重要な分子「IRS-2(インスリン受容体基質2)」を欠損させて引き起こしたインスリン抵抗性によるAβ蓄積への影響を調べる実験を行った。

    その結果、モデルマウスに高脂肪食を与え続けたところ、臓器での炎症性シグナルやストレスシグナルが増加し、末梢や脳でインスリン抵抗性が引き起こされ、同時に脳内のAβ蓄積も増えていた。一方、高脂肪食の摂取後にAβの蓄積が増えても、その後、普通食やカロリー制限食など食事制限を行うことでインスリン抵抗性は改善し、Aβの蓄積量も減少することが分かった。

    また、IRS-2を欠損したモデルマウスでは、インスリン抵抗性があることだけではAβの蓄積は増えなかったが、高脂肪食を与え続けると糖尿病の病態が悪化し、Aβの蓄積が増加することが明らかになった。

    岩坪氏らは「このことは、インスリンの働きが低下したことそのものではなく、高脂肪食などの食事によってインスリン抵抗性が引き起こされた場合にのみ、Aβの蓄積が促されることを示唆している」と説明している。その上で、「アルツハイマー病の発症には、インスリンシグナルの低下そのものではなく、インスリン抵抗性を発症する要因となる代謝ストレスが重要である可能性が示された」と結論づけている。

    さらに、岩坪氏らは、微小透析法という手法を用いて脳細胞の間隙にあるタンパク質を分析したところ、高脂肪食の摂取で糖尿病になると、血液中から脳へのインスリンの移行が低下し、脳でもインスリン抵抗性が生じている可能性が示されたという。また、糖尿病モデルマウスの脳内では、Aβの除去速度が低下することで、その蓄積が増えることも示唆された。

    これらを踏まえ、同氏らは「脳や末梢臓器における小胞体ストレスや慢性炎症をターゲットとすることにより、Aβの蓄積を抑えられる可能性が示唆された。今後は、より詳細な代謝ストレスの経路を特定し、介入法を見出すことでアルツハイマー病の予防法や治療法の開発につなげたい」と期待を示している。

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    HealthDay News 2019年4月22日
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