• 初潮から閉経までの期間が長いと認知機能障害のリスクが低い――JPHC研究

    初潮から閉経までの期間が長い女性は認知機能障害のリスクが低いとするデータが報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Maturitas」10月号に掲載された。

     動物を用いた実験で、女性ホルモンのエストロゲンには、脳の中の記憶に関係する海馬という場所の神経伝達機能を活性化する作用があることが報告されている。しかしヒトにおいては、女性ホルモンが認知機能と関連するとの疫学研究があるものの、一致した結果は得られていない。エストロゲンの血中濃度は、月経周期や妊娠・出産・閉経などの影響を受けるため、それらの因子が研究の結果に影響を与えていることが考えられる。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     今回発表された研究は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した女性から、うつと診断された人を除外した670人のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、670人中227人が認知機能障害(軽度認知障害が196人と認知症が31人)と診断された。

     この227人について、アンケート調査から得た月経に関連する情報(初潮年齢、月経規則性、月経周期、出産回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経年齢、初潮から閉経までの期間など)と、認知機能障害の発症リスクとの関連を検討した。認知機能に関連する因子(年齢、BMI、教育歴、喫煙習慣、余暇・運動活動状況、高血圧や糖尿病・うつの既往)の影響は調整した。

     その結果、初潮から閉経までの期間が長いほど、認知機能障害のリスクが有意に低下することがわかった(傾向性P=0.032)。具体的には、初潮から閉経までの期間が33年以下の人の認知機能障害発症リスクを1とした場合、38年以上の人のリスクは0.62となり、38%の有意なリスク低下が認められた(P<0.05)。なお、34~37年の人のリスクは0.89だが、この低下率は有意でなかった。

     続いて認知機能障害を軽度認知障害と認知症に分けて解析すると、軽度認知障害については結果が変わらず、初潮から閉経までの期間が長いほどリスクが低下していた。一方、認知症に関してはリスク低下が有意でなくなった。この点について著者らは「認知症と診断された女性が31人と少なかったため、今後人数を増やして検討する必要がある」と述べている。

     以上の結果から、エストロゲンの曝露期間が長いほど認知機能障害を防ぐように働く可能性が示唆された。研究グループは本報告を「女性関連要因と認知機能障害との関連を明らかにした初めての研究」としており、「女性関連要因は時代や社会的背景などで変化することから、今後も研究の蓄積が必要」とまとめている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年10月15日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 認知症予防には「良好な睡眠」を含めた複合的な対策が必要――新オレンジプランのデータを解析

    健康な日本人を1年半追跡した研究から、気持ちの持ち方(気分)や睡眠習慣が認知機能の変化と関連しており、認知症予防には多因子に対する複合的な対策が必要であることがわかった。国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンターの松田博史氏らの研究グループが報告した。研究の詳細は「Alzheimer’s & Dementia(New York)」8月2日オンライン版に掲載された。

     この研究は、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の統合レジストリである「IROOP」(Integrated registry of orange plan)のデータを解析したもの。認知症のリスク因子に関する研究手法はこれまで横断研究や短期間の観察研究が多かったが、本研究では18カ月という比較的長期間にわたる影響を縦断的に検討した。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     研究の対象は、テレビ・新聞などで募集されIROOPに登録された者のうち、ベースライン時とその後に1回以上、軽度認知機能障害に関するテストと生活習慣に関するアンケートに回答した40歳以上の健康な日本人473人(平均年齢59.6±10.1歳、男性175人、女性298人)。認知症患者や精神疾患の既往歴がある人は除外した。

     アンケートは米国のレジストリ(Brain Health Registry)で使われている質問票を基に作成し、約220の質問項目で構成。「自分の人生に満足しているか?」といった気分に関する質問、「1年前と比較して今の健康状態をどう評価するか?」といったQOLに関する質問、「過去1カ月間、通常何時に就寝したか?」といった睡眠に関する質問などを設定した。

     統計解析の結果、18カ月での認知機能の変化と関連する因子として、ベースラインの認知機能、テレビの視聴時間、慢性痛、電話をする友人の存在、人生への満足度など、計18項目が特定された。特に睡眠に関する項目として、就寝時刻、起床時刻、昼寝の時間という3項目が抽出され、良好な睡眠が認知機能の維持に有益であることが示された。また気分と認知症の関連については、既にIROOPの横断研究でもその関連性が示されているが、今回の研究で縦断的な変化にも影響を及ぼすことが確認された。

     これらの新たな知見から、本論文では「この研究で特定された潜在的なリスク因子を、個人が日常生活でそれらを意識できるように広く公表されるべき」と述べ、また「認知症の原因が他因子にわたることを考慮すると、生活習慣に関わる要因のみに焦点を当てるのではなく、複数の要因をカバーする複合的な予防戦略が必要」と結論している。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年9月2日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 糖尿病とがんの併発が認知症リスクをより高める――JPHC研究

    近年、糖尿病が認知症やがんの危険因子であることが注目されているが、糖尿病とがんを併発した場合、認知症のリスクがより高くなる可能性が報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Psychiatry and Clinical Neurosciences」6月21日オンライン版に掲載された。

     糖尿病、認知症、がんは、いずれも高齢者に多い疾患のため、人口の高齢化によりこれらを併発する患者が増加する。ただし、単に加齢によって偶発的な併発が増えるのではなく、糖尿病が認知症やがんを増やすという関係が明らかになってきた。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     例えば、糖尿病患者ではアルツハイマー病が約1.5倍、血管性認知症が約2.5倍多いとされている。糖尿病患者が認知症になると低血糖のリスクが上昇するなどのために血糖コントロールが困難になりやすい。また糖尿病とがんの関係については、男性糖尿病患者のがん発症リスクが1.27 倍、女性は1.21倍というJPHC研究の報告がある。その一方で、がんが認知症の危険因子かどうかという点についてはこれまでの報告の結果が一致しておらず、また糖尿病とがんを併発した場合の認知機能への影響も十分に検討されていない。

     今回発表された報告は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した1,244人(脳卒中罹患者は除外)のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、1,244人中421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断された。

     年齢、性別、教育歴、アルコール摂取、喫煙、運動、魚摂取量で調整した上で、軽度認知障害・認知症のリスクを検討すると、糖尿病では認知症リスクの有意な上昇が認められた。さらに糖尿病とがんを併発していると認知症リスクはより顕著となり、両者とも罹患していない場合に比べオッズ比が約16倍になった。また両者を併発している場合は、軽度認知障害のリスクも有意に上昇することがわかった。なお、がん単独では軽度認知障害・認知症の有意なリスク上昇はみられなかった。

     糖尿病でがんのリスクが上昇する機序としては、インスリン抵抗性の関与が想定されている。また、がんの罹患後にインスリン抵抗性が亢進するとの報告や、インスリン抵抗性が認知症の発症に関与するとの報告もあることから、今回の結果について研究グループでは、「がんと糖尿病を併発した群は他の群よりもインスリン抵抗性が高く、結果として認知症リスクが上昇した可能性が考えられる」と考察している。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年8月26日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 蛋白尿とeGFR低値が認知機能低下と関連か 日本人高齢男性を分析、滋賀医大グループ

    日本人高齢男性では、蛋白尿の存在と推算糸球体濾過量(eGFR)の低下はいずれも認知機能の低下と関連する可能性があることが、滋賀医科大学客員教授の藤吉朗氏(和歌山県立医科大学衛生学講座教授)らの研究グループによる横断研究で示された。これらの関連は、従来の循環器疾患危険因子とは独立して認められたという。詳細は「Journal of Epidemiology」5月25日オンライン版に掲載された。

     蛋白尿(アルブミン尿)やeGFR値の低下で定義される慢性腎臓病(CKD)は、認知機能低下や認知症の危険因子と考えられている。しかし、蛋白尿およびeGFR低値と認知機能との関連については、明らかでない部分も多い。藤吉氏らの研究グループは今回、地域在住の高齢男性を対象に横断研究を実施し、蛋白尿およびeGFR値の低下と認知機能低下との関連について調べた。

    腎機能低下に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     この研究は、滋賀県草津市からランダムに抽出した参加者(40~79歳)を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の男性1,094人のうち、追跡調査(2009~2014年)時に65歳以上で脳卒中の既往がなく、認知機能検査(cognitive abilities screening instrument;CASI)を受けた561人を対象としたもの。対象男性のうち48.1%(270人)がCKDの定義を満たしていた。

     参加者を、eGFR(mL/分/1.73m2)値(60以上、40~59、40未満)または蛋白尿(陰性、微量、陽性)でそれぞれ3つの群に分けてCASIスコアとの関連を調べた。なお、CASIスコア(0~100)は高いほど認知機能が良好であることを意味する。

     その結果、蛋白尿が多い群ほど、また、eGFR値が低い群ほど認知機能が有意に低いことが分かった。多変量で調整したCASIスコアの平均は、蛋白尿が陰性群で90.1、微量群で89.3、陽性群で88.4であり(傾向P値=0.029)、eGFR値が正常群で90.0、中等症群および進行群はいずれも88.5であった(同0.015)。

     さらに、参加者を蛋白尿とeGFR値により「CKDなし」(51.9%)、「eGFR低下(60mL/分/1.73m2未満)または蛋白尿のどちらか一方あり」(39.9%)、「eGFR低下かつ蛋白尿あり」(8.2%)に分けて解析したところ、CASIスコアの平均はそれぞれ90.4、89.4、87.5であった。

     これらの結果を踏まえ、藤吉氏らは「日本人の高齢男性において、蛋白尿の存在やeGFRの中等度低下であっても認知機能の低下と関連することが分かった。高齢者の認知機能の低下を早期に発見し、進行を抑えるためには、蛋白尿とeGFR値のモニタリングが重要な指標となることが示唆された」と結論づけている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年6月17日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 「軽い運動+アスタキサンチン摂取」で記憶力がさらに高まる? 筑波大の研究グループ

    強い抗酸化作用のある天然色素「アスタキサンチン」を摂取すると、低強度運動による記憶力の向上効果がさらに高まる可能性があることを、筑波大学体育系教授の征矢英昭氏らがマウスを用いた実験で突き止めた。軽い運動と抗酸化成分の摂取を組み合わせた新しい認知症の予防法の開発が期待されるという。研究の詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」5月13日オンライン版に掲載された。

     征矢氏らの研究グループは、動物を用いた研究で、低強度運動が成体海馬歯状回での神経新生を促進し、記憶力を高めることを明らかにしている(PNAS 2012、PLOS ONE 2015)。また、ヒトを用いた研究でも、海馬歯状回の活性化と記憶力の向上が低強度運動で生じることを確認している(PNAS 2018)。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     さらに、近年では、抗酸化作用を持つ天然サプリメントの併用が注目されている。征矢氏らは、既に、サケやエビに含まれる赤橙色の天然色素である「アスタキサンチン」を摂取すると動物の海馬歯状回の神経新生が促進し、記憶力が向上することを報告しているが、その効果が運動の併用でどうなるのかは不明だった。そこで研究グループは今回、マウスを用いた実験で、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用が海馬機能をより向上させるのか否かを検討した。

     研究では、まず、正常な成体マウスに、4週間にわたり低強度運動に加えてアスタキサンチンを加えた食餌を摂取させ、それぞれを単独に行ったマウスと比較して成体海馬の神経新生と空間学習記憶能への影響を調べた。その結果、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用した群では、それぞれを単独に行った群に比べて空間記憶能がより向上し、海馬歯状回の細胞増殖と新生成熟細胞の数がさらに増えたことが分かった。

     次に、網羅的な遺伝子発現解析の手法を用いて、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用による相乗的な海馬機能の向上に関わる分子メカニズムを検討した。その結果、海馬内のレプチンの遺伝子が関与している可能性が示され、これらの併用時には海馬内のレプチンタンパク質の発現量が相乗的に増加した。一方、これらを併用しても血漿内のレプチン量に有意な変化はみられなかった。

     さらに、低強度運動+アスタキサンチン併用による相乗効果のメカニズムを確かめるため、レプチンを欠損した遺伝性肥満マウス(ob/obマウス)を用いて低強度運動とアスタキサンチンの併用効果を検討した。その結果、ob/obマウスでは、通常のマウスでみられたこれらの併用による記憶力の向上は認められなかった。一方、低強度運動を行っている期間中にob/obマウスの脳内にレプチンを投与したところ、消失していた併用効果が再び現れた。このことから、脂肪細胞由来ではなく脳由来のレプチンが、この相乗効果の発現に必要であることが示唆された。

     これらの結果を踏まえ、征矢氏らは「抗酸化能を持つアスタキサンチンを摂取すると、低強度運動による海馬の神経新生の促進と空間記憶能の向上効果がさらに高まることがマウス実験で確認された。また、このような相乗効果には、脳由来のレプチンが関与することも示唆された」と結論。近年、アルツハイマー病の治療標的として外因的なレプチンが注目を集めており、「アルツハイマー病患者の認知機能低下に対して、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用することで海馬のレプチンを高めることができれば、認知機能の改善につながる可能性が考えられる」と述べている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年5月27日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 2型糖尿病のインスリン抵抗性とアルツハイマー病の関係は? これらをつなぐ機序の一端を解明、東大研究グループ

    2型糖尿病はアルツハイマー病のリスク因子として知られているが、これらを関連づける機序の一端が、東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授の岩坪威氏と同大学認知症先進予防治療学の若林朋子氏らの研究グループにより明らかになった。アルツハイマー病の発症には、糖尿病に伴うインスリン抵抗性が重要な鍵となるが、高脂肪食などの食事でインスリン抵抗性が生じると、脳内アミロイドβ(Aβ)の除去速度が低下して、その蓄積が増える可能性があることを突き止めたという。研究の詳細は「Molecular Neurodegeneration」4月12日オンライン版に掲載された。

     これまでの疫学研究から、2型糖尿病患者はアルツハイマー病になりやすく、そのリスクは約2倍に上ることが示されている。また、2型糖尿病の中心的な病態であるインスリン抵抗性が、脳内のAβ沈着と関連することも報告されている。これまで、アルツハイマー病モデルマウスのインスリンシグナルを遺伝的に阻害するとAβの蓄積が抑えられるとの報告もあるが、インスリンシグナルの変化とアルツハイマー病のAβ蓄積との因果関係は明らかになっていない。

    アルツハイマーに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     そこで、岩坪氏らは、2型糖尿病とアルツハイマー病を関連づける機序として「インスリンシグナルの障害」に注目。加齢に伴い、脳内にAβがアミロイド斑として蓄積するアルツハイマー病モデルマウスを用いて、高脂肪食を与え続けて引き起こしたインスリン抵抗性と、インスリンシグナル伝達に重要な分子「IRS-2(インスリン受容体基質2)」を欠損させて引き起こしたインスリン抵抗性によるAβ蓄積への影響を調べる実験を行った。

     その結果、モデルマウスに高脂肪食を与え続けたところ、臓器での炎症性シグナルやストレスシグナルが増加し、末梢や脳でインスリン抵抗性が引き起こされ、同時に脳内のAβ蓄積も増えていた。一方、高脂肪食の摂取後にAβの蓄積が増えても、その後、普通食やカロリー制限食など食事制限を行うことでインスリン抵抗性は改善し、Aβの蓄積量も減少することが分かった。

     また、IRS-2を欠損したモデルマウスでは、インスリン抵抗性があることだけではAβの蓄積は増えなかったが、高脂肪食を与え続けると糖尿病の病態が悪化し、Aβの蓄積が増加することが明らかになった。

     岩坪氏らは「このことは、インスリンの働きが低下したことそのものではなく、高脂肪食などの食事によってインスリン抵抗性が引き起こされた場合にのみ、Aβの蓄積が促されることを示唆している」と説明している。その上で、「アルツハイマー病の発症には、インスリンシグナルの低下そのものではなく、インスリン抵抗性を発症する要因となる代謝ストレスが重要である可能性が示された」と結論づけている。

     さらに、岩坪氏らは、微小透析法という手法を用いて脳細胞の間隙にあるタンパク質を分析したところ、高脂肪食の摂取で糖尿病になると、血液中から脳へのインスリンの移行が低下し、脳でもインスリン抵抗性が生じている可能性が示されたという。また、糖尿病モデルマウスの脳内では、Aβの除去速度が低下することで、その蓄積が増えることも示唆された。

     これらを踏まえ、同氏らは「脳や末梢臓器における小胞体ストレスや慢性炎症をターゲットとすることにより、Aβの蓄積を抑えられる可能性が示唆された。今後は、より詳細な代謝ストレスの経路を特定し、介入法を見出すことでアルツハイマー病の予防法や治療法の開発につなげたい」と期待を示している。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年4月22日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 中年期のHDL-C高値で認知症リスク減 JPHC研究

    中年期にHDL-コレステロール(HDL-C)値が高いと、後年に軽度認知障害(MCI)や認知症を発症するリスクは低い可能性があることが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究で示された。詳細は「Translational Psychiatry」1月18日オンライン版に掲載された。

     これまでの研究で、認知症の3分の1はリスク因子を修正することで発症を予防できると考えられている。また、中年期のHDL-C値はMCIや認知症を早期発見する予測因子として注目されているが、これらの関連は明らかになっていなかった。研究グループは今回、JPHC研究に参加した40~59歳の男女約1,100人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、これらの関連を検討した。

    HDL-Cに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     研究では、ベースラインとした1990年に長野県佐久地域に在住していた40~59歳の男女約1万2,000人のうち、1995~1996年の健診でHDL-Cを測定し、かつ2014~2015年に実施した「こころの検診」に参加した1,114人を対象とした。

     「こころの検診」時に、対象者のうち386人がMCI、53人が認知症と診断された。対象者をHDL-C値で4群に分け、喫煙や飲酒などのリスク因子で調整して解析した結果、MCIリスクは、HDL-C値が最も低い群を基準として最も高い群で53%低下したことが分かった(オッズ比0.47、95%信頼区間0.28~0.79)。また、症例数が少なかった認知症については、HDL-C値が最も低い群とそれ以外の3群をまとめた群で比較したところ、認知症リスクは、基準以外の群では63%低下したことが明らかになった(同0.37、0.16~0.88)。

     研究グループは、認知機能の改善に関与する遺伝子がHDL-C値の上昇と関連することや、HDL-C高値は認知機能の低下につながる脳梗塞の発症予防に有用とする報告があると指摘。その上で、「今回の研究から、中年期のHDL-C値は約20年後の認知機能と関連する可能性が示された。また、認知症リスクはHDL-C値が2番目に高い群でも低下していたことから、HDL-C値が低い人は、適度な運動や適量飲酒、禁煙などでHDL-C値を高めるような生活習慣に改善すると認知症予防につながる可能性が示された」と述べている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年2月25日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 生活習慣病とADL低下は認知症リスク因子の可能性 日本人の大規模オンライン調査結果

    国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などの研究グループが実施した大規模調査から、「風呂に入る」「洋服を着る」などの日常生活動作(ADL)に支障が出ることと、糖尿病やがんの既往、抑うつ、慢性的な痛み、聴力の損失は認知症のリスク因子である可能性のあることが分かった。

    研究を率いたNCNP脳病態統合イメージングセンターのセンター長を務める松田博史氏は「認知症の予防には、日常生活レベルを保つために社会活動に積極的に参加すること、そして生活習慣病の予防や治療を適切に行うことが不可欠だ」と話している。
    詳細は「PLOS ONE」5月17日オンライン版に掲載された。

    2015年の厚生労働省の発表によると、日本の認知症患者数は2025年までに700万人を突破すると推計され、早急な対策が求められている。
    一方で、認知症、中でもアルツハイマー病(AD)の根治薬の開発が困難を極める中、軽度認知障害(MCI)や早期ADの患者を対象とした臨床試験を行うためにも効率的な患者の登録方法の確立が求められている。

    こうした背景の中、2016年7月に、日本医療研究開発機構(AMED)の支援により、NCNPなどは認知症の発症予防を目指したインターネット健常者登録システム(IROOP)の運用を開始した。
    認知症予防を目的に、公的機関が主導して40歳以上の健康な男女を対象に数万人規模のインターネット登録システムを運用するのは日本で初めて。
    研究グループは今回、IROOPの登録者を対象に、認知機能の低下と関連する因子について調べた。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報をsmtで検索
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

    対象は、2017年8月までに初回の全ての質問票に回答し、10単語記憶検査を完了した1,038人(平均年齢59.0±10.4歳、男性400人)と追跡時に行った質問票に回答し、2回目の10単語記憶検査を完了した353人(同60.2±10.0歳、男性139人)。

    質問票では健康状態全般や気分、QOL(生活の質)、睡眠習慣、食習慣、病歴、現在抱えている疾患などについて尋ね、10単語記憶検査から得られた記憶機能の指数(memory performance index;MPI)と関連する質問項目を調べた。

    ステップワイズ重回帰分析の結果、「風呂に入る」「洋服を着る」「スケジュールを立てる」などのADLの支障度とそれに伴う気分の落ち込み、意欲の低下が認知機能の低下と関連する因子であることが分かった。
    さらに、糖尿病やがん、頭部外傷の既往、慢性的な痛み、聴力を失うことが認知症のリスク因子として浮かび上がった。

    これらの結果から、研究グループは「日常生活が難しくなると自宅に引きこもりがちになるため、社会活動への参加は認知症予防につながると考えられる。
    また、認知症にならないためには、糖尿病などの生活習慣病の予防が重要であることも示された」と結論づけている。
    IROOPでは今後も半年ごとにアンケートを実施したり認知機能検査を無料で提供し、データ分析も行う予定だという。

    軽度認知症の基本情報についての詳しい解説はこちら

    軽度認知障害(MCI)の症状や原因、セルフチェック方法。また認知症へ進行しないための予防策や治療方法にはどのようなものがあるのか、詳しく解説しています。

    軽度認知症に関する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2018年6月18日
    Copyright c 2017 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 短い教育歴や生活習慣病は認知症のリスク因子か 日本人対象の症例対照研究で検討、富山大

    日本人では、短い教育歴や糖尿病などの生活習慣病は認知症のリスク因子である可能性のあることが、富山大学大学院疫学・健康政策学教授の関根道和氏と中堀伸枝氏らの研究グループが実施した地域住民を対象とした症例対照研究により明らかとなった。

    詳細は「BMC Geriatrics」4月27日オンライン版に掲載された。

    欧米の研究では、教育歴や職歴などの社会経済的因子と認知症リスクの関連が明らかになっている。
    また、社会経済的地位が低いと認知症リスクが上昇するという関係には、生活習慣因子や糖尿病などの生活習慣病が介在すると考えられている。

    研究グループは、2014年に実施された富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いて分析を行った。
    同調査は、同県在住の65歳以上の高齢者1,537人を無作為に抽出し、同意が得られた1,303人(回答率84.8%)を対象としたもの。
    今回の研究では、認知症患者137人と認知症のない1,039人(対照群)を対象に、病歴や生活習慣に関する因子(喫煙歴、飲酒習慣など)、社会経済的因子(教育歴および職歴)と認知症との関係を調べた。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報をsmtで検索
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

    年齢と性を調整して教育歴と認知症の発症リスクとの関係をロジスティック回帰分析で検討したところ、教育歴が短い(6年以下)人では、教育歴が長い(10年以上)人と比べて認知症リスクは3.27倍であった。
    さらに、生活習慣因子や病歴、職歴で調整して解析すると、認知症リスクは3.23~3.56倍に上昇したと、研究グループは報告している。

    また、認知症リスクの上昇と有意に関連する因子として男性、高齢(85歳以上)、習慣的な飲酒習慣、糖尿病やパーキンソン病、脳卒中、狭心症および心血管疾患の既往歴が挙げられた。
    認知症リスクは、糖尿病があると2.03倍、脳卒中の既往があると2.59倍、狭心症や心筋梗塞の既往があると1.81倍であった。

    さらに、今回の研究では、教育歴および職歴と、喫煙や飲酒などの生活習慣因子および生活習慣病との関係は認められず、社会経済的地位の低さと認知症リスクの関係に対する生活習慣病の媒介効果は最小限にとどまることが示された。

    これらの結果から、研究グループは「生活習慣病は教育歴とは独立した認知症のリスクであると考えられ、認知症予防には糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病の管理が重要になると思われる」と話している。

    軽度認知症の基本情報についての詳しい解説はこちら

    軽度認知障害(MCI)の症状や原因、セルフチェック方法。また認知症へ進行しないための予防策や治療方法にはどのようなものがあるのか、詳しく解説しています。

    軽度認知症に関する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2018年6月18日
    Copyright c 2017 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • アルブミン尿は認知症の有意なリスク因子 久山町研究

    福岡県久山町の一般住民を対象とした疫学調査(久山町研究)から、日本人の高齢者においてアルブミン尿はアルツハイマー病(AD)および血管性認知症(VaD)の有意なリスク因子である可能性があると、九州大学大学院衛生・公衆衛生学分野教授の二宮利治氏らの研究グループが「Journal of the American Heart Association」1月20日オンライン版に発表した。

    一方で、アルブミン尿と推算糸球体濾過量(eGFR)低値を組み合わせるとVaDのみ発症リスクが上昇することも分かった。

    これまでの前向き疫学研究で、アルブミン尿と推算糸球体濾過量(eGFR)低値は認知機能の低下や認知症の発症と関連する可能性が示唆されているが、結論には至っていない。
    研究グループは、日本人の高齢者で慢性腎臓病(CKD)の有病率が上昇している背景も鑑み、久山町研究のデータを用いてアルブミン尿およびeGFR低値が認知症の発症リスクに与える影響について分析した。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

    今回の研究では、2002年および2003年に60歳以上で認知症のない一般住民1,562人(うち男性が672人)を対象に、前向きに2012年11月まで(中央値で10.2年)追跡した。
    対象者を尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)またはeGFR値で層別化し、Cox比例ハザードモデルを用いて全ての認知症と病型別(AD またはVaD)の発症率を比較検討した。

    追跡期間中に358人が認知症を発症した。こ
    のうち238人がAD、93人がVaDであった。
    対象者をUACRで四分位(6.9mg/g以下、7.0~12.7mg/g、12.8~29.9mg/g、30.0mg/g以上)に分けて最も低い群を参照として認知症の発症リスクを比較した結果、性や年齢、BMI、喫煙習慣、eGFRなどの因子で調整した解析によりUACRが高値なほど認知症リスクは有意に高まることが分かった〔ハザード比は参照群(1.00)に対し、それぞれ1.12(95%信頼区間0.78~1.60)、1.65(1.18~2.30)、1.56(1.11~2.19)〕。
    認知症の病型別の解析でも同様の結果が得られた〔AD:ハザード比はそれぞれ1.20(0.77~1.86)、1.75(1.16~2.64)、1.58(1.03~2.41)、VaD:同1.03(0.46~2.29)、1.94(0.96~3.95)、2.19(1.09~4.38)〕。

     一方で、対象者をeGFR値で高値群(60mL/分/1.73m2以上)と低値群(60mL/分/1.73m2未満)に分けて認知症の発症リスクを比較したところ、eGFR低値はVaD発症のリスク因子であったが、ADに関してはこうした関連は認められなかった。
    また、UACRが12.8mg/g以上かつeGFR値が60mL/分/1.73m2未満の群では、UACRが12.8mg/g未満かつeGFR値が60mL/分/1.73m2以上の群と比べてVaDリスクは3.3倍に上ることも分かった。

     以上の結果を踏まえて、研究グループは「今回の結果から、アルブミン尿を呈する高齢者は認知症(ADおよびVaD)リスクが高い集団であるとともに、eGFRの低下が同時に認められる場合はVaDリスクがさらに高い可能性が示唆された。
    今後のさらなる研究の蓄積が待たれるが、こうした集団に対しては注意深く認知症の発症を観察する必要があるかもしれない」と述べている。

    軽度認知症の基本情報についての詳しい解説はこちら

    軽度認知障害(MCI)の症状や原因、セルフチェック方法。また認知症へ進行しないための予防策や治療方法にはどのようなものがあるのか、詳しく解説しています。

    軽度認知症に関する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2018年2月5日
    Copyright c 2017 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。