• 太ったシェフのイラストを食事に添えると、認知症の人の食事量が増える

     認知症の高齢者の食事摂取量を増やすユニークな方法が報告された。太ったシェフのイラストをトレイに添えておくと、完食をする人が増えるという。日本大学危機管理学部の木村敦氏、医療法人社団幹人会の玉木一弘氏らの研究結果であり、詳細は「Clinical Interventions in Aging」に9月1日掲載された。

     認知症では食事摂取量が少なくなりがちで、そのためにフレイルやサルコペニアのリスクが高まり、転倒・骨折・寝たきりといった転帰の悪化が起こりやすい。認知症の人の食欲を高めて摂取量を増やすため、これまでに多くの試みが行われてきているが、有効性の高い方法は見つかっていない。

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     一方、肥満者に減量を促す一つの手法として、食卓に健康を想起させる、例えばランニングシューズなどの画像を添えると、摂取量が減るという研究結果が報告されている。その際、研究参加者の大半は、自分の食欲が食卓に添えられている画像の影響を受けたとは気付いていないという。木村氏らは、減量とは反対に摂取量を増やすという目的にも、この手法を応用できるのではないかとの仮説を立て、以下の検討を行った。

     研究対象は、都内の特別養護老人ホームに居住する認知症のある高齢者21人(アルツハイマー病6人、レビー小体型認知症2人、混合型認知症13人)。咀嚼・嚥下機能や視機能の低下、研究期間中に提供される食品へのアレルギーや不耐症のある人は除外されている。BMIは平均20.6±2.8で、1人の男性は25.4であり肥満に該当した。提供する食事は、BMIを含む健康指標を医師と管理栄養士が考慮して決定された。

     研究期間は4週間で、各週の平日の昼食に調査を行った。最初の1週間はベースライン調査であり、特に画像を添えずに通常どおりに摂取してもらった。2週目は普通体型のシェフのイラストをトレイに添えて提供、3週目は太ったシェフのイラスト、4週目には花のイラストを添えた。イラストの大きさは150×100mm、紙の色は白で統一し、シェフや花のイラストの下に「食事を楽しみましょう」という文字を記した。なお、被験者が不安や混乱を来すリスクを避けるため、試行条件のランダム化は行わなかった。

     評価項目は、完食した回数、および簡易栄養食欲調査票(SNAQ-J)で評価した主観的な食欲関連指標の変化。SNAQ-Jは、食欲や満腹感、食べ物の味などを5点満点で評価してもらうというもの。なお、被験者が完食したか否かは、研究目的・仮説を知らされていないケアスタッフが、目視で確認した。

     では結果だが、まず完食回数は、1週目が2.8±1.9回、2週目は3.2±1.8回、3週目は3.5±1.8回、4週目は3.0±1.9回であり、分散分析から週ごとの完食回数に有意な差があることが明らかになった(P=0.031)。また、イラストを添えなかった1週目と、太ったシェフのイラストを添えた3週目との間には有意差が存在した。

     SNAQ-Jについては、各下位尺度の中で、食欲や満腹感などは試行条件間の有意差がなかった。ただし食べ物の味については、1週目から順に、3.0±0.7、3.5±0.7、3.7±0.5、3.6±0.5であり、何らかのイラストを添えた3条件ではベースラインの1週目より有意に高値だった。

     著者らは本研究を、「画像を利用して、認知症高齢者の体重減少と栄養失調を予防できる可能性を示した、初のパイロット研究」とし、「太ったシェフのイラストという、食欲に関連するステレオタイプの視覚情報が、摂食行動を刺激することが示唆された」と結論付けている。ただし、「試行順序をランダム化していないこと、食事摂取量を目視による完食回数のみで評価していて、摂取エネルギー量や摂取栄養素量への影響を評価していないことなど、いくつかの限界点があるため、今後のさらなる研究が求められる」と付け加えている。

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    HealthDay News 2023年10月30日
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  • 主観的な記憶力の低下が自動車事故リスクに独立して関連

     主観的に記憶力が低下したと感じている高齢者は、客観的な認知機能低下の有無にかかわらず、自動車運転中の事故リスクが高い可能性を示すデータが報告された。国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターの栗田智史氏らの研究であり、論文が「JAMA Network Open」に8月25日掲載された。

     高齢期は、買い物や人に会いに行くなど、自立した生活を送る上では自身で車を運転できることが望ましいが、加齢とともに車の運転に必要な視聴覚機能や認知機能が低下し、自動車事故が発生しやすくなることが報告されている。そのため、事故リスクを早期に把握し、何らかの対策を取ることが重要と考えられる。国内では既に、高齢ドライバーの免許更新時に認知機能検査を実施し、認知症の疑いがないかを判定している。

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     一方で、認知症でなくても、主観的な認知機能(記憶力)と歩行速度の低下により判定される「MCR(motoric cognitive risk syndrome)」と呼ばれる状態は、将来の認知症のリスクが約3倍高いと報告されている。このMCRは、評価のために専門のスタッフを必要とせず、比較的容易な検査で判定できるという特徴がある。MCRと自動車事故との関連が認められれば、自動車事故のリスクを把握するための実用性の高い新たな手段になる可能性があることから、栗田氏らは、MCRと自動車事故やヒヤリハット経験の有無との関連を検討した。

     この研究は、国立長寿医療研究センターによる大規模コホート研究「National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromes(NCGG-SGS)」の横断データを用いて行われた。2015~2018年に愛知県大府市などで実施した高齢者機能健診に参加した65歳以上の高齢ドライバー1万2,475人(平均年齢72.6±5.2歳、女性43.1%)を解析対象とした。

     主観的な記憶力は、「記憶に関して問題を抱えているか」、「以前より、物を置いた場所を忘れることが増えたか」、「親しい友人、知人の名前を忘れることがあるか」など5項目の質問に対して一つでも「はい」と回答した場合に「低下している」と判定した。歩行速度の低下は、NCGG-SGSのデータベースから算出した基準値により判定した。また、自動車事故は過去2年間の有無、ヒヤリハット経験は12項目について過去1年間の有無を評価した。このほか、同センターが作成した認知機能評価ツールを用いて、認知機能低下の有無を客観的に評価した。

     解析は、主観的な記憶力の低下および歩行速度の低下の有無を組み合わせて全体を4群に分類して行った。4群の対象者特性を比較すると、眼疾患の既往、難聴、日中の過度な眠気は主観的記憶低下のみ群、MCR群(両方とも低下している群)において有意に多く、客観的認知機能低下については健常群(主観的認知機能の低下と歩行速度の低下がともにない群)、主観的記憶低下のみ群、歩行速度低下のみ群、MCR群の順で多く見られた。

     結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、教育歴、眼疾患や難聴の有無、服薬数、睡眠時間、日中の眠気、客観的な認知機能低下の有無)の影響を調整したロジスティック回帰分析の結果、自動車事故、ヒヤリハット経験ともに、健常群を参照すると、主観的記憶低下のみ群、MCR群においてオッズ比が有意に増加した。具体的なオッズ比は、自動車事故に対しては主観的記憶低下のみ群がOR1.48(95%信頼区間1.27~1.72)、MCR群がOR1.73(同1.39~2.16)、ヒヤリハット経験に対しては同順にOR2.07(1.91~2.25)、OR2.13(1.85~2.45)であった。

     これらの傾向は、4群をさらに客観的認知機能低下の有無により8群に分けて解析した場合においても同様であり、歩行速度のみ低下している群においては、客観的認知機能低下を伴う場合に自動車事故のオッズ比が有意に増加した。

     これらの結果より、高齢ドライバーにおける主観的記憶低下、MCRの状態は、客観的に評価した認知機能低下の有無を問わず、過去の自動車事故、ヒヤリハット経験と関連することが示唆された。本研究は横断研究であり、主観的記憶低下、MCRの評価を自動車事故のリスク把握に適用できるかを検討するためには、縦断研究や主観的記憶力低下に伴う症状の探索により、本研究で得られた知見を確証する必要がある。

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    HealthDay News 2023年10月23日
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  • ドラム演奏で認知症の重症度が分かる――東京大学先端科学技術研究センター

     ドラムをたたく時の腕の上げ具合で、認知症の重症度を判定できる可能性が報告された。東京大学先端科学技術研究センターの宮﨑敦子氏らによるパイロット研究の結果であり、詳細は「Frontiers in Rehabilitation Sciences」に5月25日掲載された。著者らは、「この方法は簡便なだけでなく、既存の重症度評価ツールへの回答を拒否されるケースでも、ドラムたたきなら協力してもらえるのでないか」と述べている。

     現在、認知症の重症度は、ミニメンタルステート検査(MMSE)といった評価指標を用いて判定することが多い。ただし、認知症が重度になるほど、そのような検査の必要性を理解しにくくなり、検査への協力を得られなくなることが増える。また視覚や聴覚に障害のある場合も、その施行が難しくなったり、判定結果が不確かになりやすい。

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     一方、上肢の運動機能が認知症の重症度と関連しているとの既報研究がある。とはいえ上肢運動機能の評価にもハードルがある。そこで宮﨑氏らは、ドラム演奏中の腕の上げ具合によって、上肢運動機能を評価することを試みた。ドラム演奏には、スティックがドラムから跳ね返るためにほぼ筋力を使わずに行えること、リズム反応運動は認知症が重度になっても維持されていることが多いこと、ほかの人の動作の模倣が可能なため認知症の人にも何をすべきかが分かりやすいこと、などの長所がある。また同氏らは以前、ドラムをたたくことが認知機能の改善につながる可能性も報告している。

     この研究の解析対象は埼玉県内の特別養護老人ホームの居住者16人〔平均年齢86歳(範囲72~100)、女性12人〕。MMSEは平均14.56±6.89点で、認知症の重症度は軽度(MMSEが21~26点)が4人、中等度(同11~20点)が8人、重度(10点以下)が4人だった。

     参加者全員が輪になって座り、進行役の研究者が自分のドラムをたたきながらアイコンタクトや声掛けによって、ドラムたたきを促した。参加者は各自のペースでドラムをたたき始め、次第に周囲のリズムに合わせて、たたくスピードを変えていった。この間、腕時計型ウェアラブルセンサーにより、ドラムをたたく時に上肢がどれくらい高く上がっているか(挙上角度)と、たたくスピードを計測した。そのほか、認知機能と関連があり、かつ上肢運動機能に影響を及ぼし得る因子として、握力も測定した。

     年齢、性別、握力、上肢の挙上角度、ドラムをたたくスピードという五つの因子と認知症の重症度(MMSEスコア)との関連を検討すると、それらの因子は相互の関連が少なく、それぞれが個別にMMSEスコアへ影響を及ぼしていることが分かった(分散拡大係数が全て5未満)。

     次に、認知症の重症度判定に際して、それらのうちどの因子を用いた場合に、MMSEスコアをより正確に予測できるかを赤池情報量規準(AIC)という指標で検討。その結果、握力とともに上肢の挙上角度を予測モデルに組み入れた時に、最も予測能が高くなることが分かった(R2=0.6035、P=0.0009)。また、ドラムをたたくスピードはMMSEスコアとの関連が少なく、この手法による評価に影響がないことが確認された。

     以上より著者らは、「ドラム演奏時の腕の挙上角度から、認知症の重症度を評価できる可能性が示された」と結論付けている。また、「この評価法は簡便、安価、安全であり、医療や介護現場で容易に用いることができる。さらに、ドラム演奏による上肢運動機能や認知機能の改善も期待できるのではないか」と語っている。

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    HealthDay News 2023年6月19日
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  • 認知症の人に配偶者の死を伝えるべきか?――ケアマネージャー対象調査

     認知症の人の配偶者が亡くなった場合に、その事実を伝えるべきだろうか。また、伝えた場合や伝えなかった場合に、どのような問題が発生し得るのだろうか。このような疑問について、国内のケアマネージャーを対象に行った調査の結果が、「European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education」に2月8日掲載された。東京大学医学部医学倫理学分野・秩父市立病院の加藤寿氏らの研究によるもの。

     認知症の人に対しても自律的な人間として接し、患者本人の知る権利に配慮する必要がある。一方で、配偶者の死という人生で最大級のつらい出来事を知らされることで、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)が悪化したり、うつリスクが増大したり、記憶力低下のために配偶者の死という情報の伝達が繰り返されるという状況も起こり得る。介護の現場では、こうした問題への対応は、しばしばケアマネージャー(CM)がキーパーソンとなって判断されている。そこで加藤氏らは、2019年3~12月に国内で開催された介護関連学会の会場で、CM対象の質問紙調査を行った。

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     質問紙は、3人の臨床医と24人のCMによるパイロット研究によって妥当性を確認した後に使用した。回答方法は自記式で匿名とした。707人に配布され、513人(72.6%)から回答を得られ、508人の回答を解析対象とした。75.8%が女性であり、7割以上が10年以上の経験を有していた。

     CMの81.3%が、認知症の人の配偶者の死の経験を有していた。その中で、本人への配偶者の死の伝達(以下、情報開示)をした割合は、0~30%が28.1%、40~70%が30.5%、80~100%が34.9%であり、広い範囲に均等に分布していた。情報開示経験のある人の中で、BPSDの悪化に遭遇した経験のある割合は18.4%、うつ病悪化に遭遇した経験のある割合は26.0%だった。

     次に、情報開示に関する考え方を問うと、「開示すべき」が39.6%、「開示した方が良い」が43.1%、「開示の必要はない」が14.4%、「開示しない方が良い」が1.2%となった。情報開示の際に考慮すべき事柄を複数回答で選択してもらうと、家族の意向(51.0%)、患者の知る権利(48.2%)、認知症のステージ(25.0%)、本人の性格(24.8%)、うつ病の有無(24.4%)、BPSDの有無(23.2%)、夫婦関係(20.1%)、家族構成(6.1%)、医療提供者の意見(5.3%)などとなった。また、家族が開示に否定的な場合の対応については、「家族の意向を尊重する」が38.6%、「開示のメリットとデメリットを伝えて再考を促す」が39.8%、「患者の知る権利を尊重して開示を提案・説得する」が15.4%だった。

     続いて、認知症の人の配偶者の死の経験を有するCMを、情報を開示する頻度が高い(60%以上)群と低い(50%以下)群に二分した上で、属性や上記の質問への回答の傾向を検討。その結果、年齢や性別、CM経験年数に有意差はなく、また、配偶者の死の経験数、開示によるBPSDやうつ病の悪化に遭遇した経験を有する割合にも有意差が見られなかった。

     ただし、情報開示の際に考慮すべき事柄として、「本人の性格」を挙げた割合は、開示頻度が高い群は21.7%であるのに対して、開示頻度が低い群は37.2%であり、後者で多く選択された(P=0.007)。同様に「BPSDの有無」を考慮する割合も17.1%、38.8%の順であり、開示頻度が低い群で高かった(P<0.001)。反対に「夫婦関係」を挙げた割合は、開示頻度が高い群が34.9%、開示頻度が低い群は19.8%であり、前者の群で高かった(P=0.007)。

     著者らによると本研究は、認知症の人の配偶者の死の情報開示に関する初のCM対象調査だという。結論としては、「情報開示は家族の意向が反映されることが多いが、BPSDやうつ病悪化のリスクも考慮されているようだ。回答者の8割以上が開示に肯定的であるにもかかわらず、実際に開示する頻度はそこまで高くなかったことは、現場のジレンマを表しているのではないか」と総括されている。

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    HealthDay News 2023年5月1日
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  • 便秘で認知機能低下が速まる可能性――AD、MCI患者での検討

     便秘のあるアルツハイマー病(AD)や軽度認知機能障害(MCI)の患者は、認知機能低下速度が速い可能性を示すデータが報告された。評価指標により影響の程度は異なるものの、最大で2.74倍の低下速度の差が認められたという。東北大学加齢医学研究所の中瀬泰然氏らによる後方視的研究の結果であり、詳細は「CNS Neuroscience & Therapeutics」に8月8日掲載された。

     近年、腸の機能と脳の機能が互いに影響を及ぼし合う、「腸脳軸」または「腸脳相関」と呼ばれる関連が注目されており、例えば、腸内細菌叢の組成の変化が炎症反応などを介して中枢神経にダメージを与えることなどが報告されている。一方、便秘や認知症はともに高齢者に多く、両者が相互に関連して悪化・進行する可能性も考えられるが、その実態は不明な点が多い。

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     中瀬氏らの研究は、2015~2020年に東北大学病院加齢・老年病科の初診患者のうち、ADまたはMCIと診断され、脳MRI検査や認知機能の評価が2021年までに2回以上実施されていて経時的な変化を追跡可能であり、かつ便秘の有無が把握されている患者84人を対象に行われた。便秘については、ガイドラインの診断基準に則して20人が便秘あり、64人はなしと診断された。認知機能の変化は、認知症のスクリーニングに用いられているMMSEという指標と、ADの経過の把握に用いられるADAS-Cogという計2種類の指標で評価した。また脳MRI検査では、記憶に関わる海馬の体積と、虚血によって生じる深部白質病変などを評価した。

     解析対象者の主な特徴は、年齢77.4±6.5歳、女性57.1%、AD45.2%、要介護者23.8%、MMSE24.7±3.7、ADAS-Cog11.8±5.2であり、19.0%に副作用で便秘を起こしやすい抗コリン薬が処方されていた。便秘あり群となし群を比較すると、便秘あり群では心疾患が多い、脂質異常症が少ない、ホモシステインが高いという有意差が見られたが、その他に評価した、年齢、女性やAD・要介護者の割合、MMSE、ADAS-Cog、教育歴、海馬体積、深部白質病変などの群間差は非有意だった。

     平均17.4±10.7カ月の追跡期間中のMMSEの変化は、便秘の有無にかかわらず追跡期間との有意な相関が見られなかった。しかしADAS-Cogについては便秘あり群、なし群ともに、追跡期間の長い患者ほどより大きく低下しているという有意な相関が認められた。そしてADAS-Cog低下速度は、便秘なし群に比べてあり群の方が2.74倍速いと計算された。

     一方、脳MRI検査が2回施行されていた患者は67人(解析対象の79.8%)であり、便秘あり群17人、なし群50人だった。追跡期間中に海馬の体積は両群ともに有意に減少しており、減少速度に有意差はなかった。しかし深部白質病変については、その拡大速度が便秘あり群で1.65倍速いと計算された。

     次に、ADAS-Cogおよび深部白質病変の1年あたりの変化と、便秘、脂質異常症、心疾患、ホモシステイン、糖尿病との関連を検討。その結果、便秘のみが有意に相関することがわかった〔スピアマン順位相関係数がADAS-Cogは0.2387(P=0.0288)、深部白質病変は0.2252(P=0.0395)〕。ただし、混合効果モデルでは、便秘も含めて全てが非有意だった。

     著者らは、本研究について、単一施設での後方視的研究であり、認知機能に影響を及ぼし得る身体活動量やApoE4の影響を考慮していないといった限界点を挙げた上で、「ADおよびMCI患者の便秘と、深部白質病変拡大に伴う認知機能低下速度との間に、有意な相関が認められた」と結論付けている。この相関の背景については、AD患者では腸内細菌叢の組成が変化すること、またAD患者は身体活動量や水分摂取量の低下によって便秘になりやすく、便秘も腸内細菌叢の組成を変化させ、腸内細菌叢の組成の変化は炎症反応を惹起し、中枢神経に影響が及ぶ可能性が考えられるとしている。さらに、腸管粘膜の障害がホモシステイン高値、酸化ストレス亢進、血管内皮機能低下につながり、神経変性を加速させるという経路も想定されるとの考察を加えている。

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    HealthDay News 2022年10月24日
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  • 心血管疾患リスクが高くても身体活動量が多い高齢者は脳体積が大きい

     高齢者では身体活動量が多いほど脳の体積が大きく、心血管疾患リスクの高い集団においてもその関連が見られたとするデータが報告された。国立長寿医療研究センター予防老年学研究部の牧野圭太郎氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Cardiovascular Medicine」に7月13日掲載された。

     中~高強度の身体活動が認知機能に対して保護的に働くことは複数の研究で示されている。ただし、高齢な人々や心血管疾患リスクが高い人々は、中~高強度の身体活動が困難であることも少なくないため、低強度の身体活動の有益性に関するエビデンスが求められている。そこで牧野氏らは、認知機能と密接に関連する脳の体積を指標として、強度別の身体活動量との関連を検討した。

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     同研究センターが行っている地域住民対象のコホート研究(NCGG-SGS)の参加者の中で、MRI検査によって脳体積が計測されている、愛知県高浜市の60歳以上の一般住民1,220人のデータを対象に横断的な検討を行った。この対象者のうち、認知症や精神神経疾患、心血管疾患の病歴を持つ人、重度の認知機能低下者(MMSEと呼ばれる検査の得点が21点未満)、要支援/介護認定者、および解析に必要なデータが欠損している人などを除外し、725人(平均年齢69.6±6.0歳、女性52.3%)を解析対象とした。就寝と入浴時以外は加速度計を身に着けて生活してもらい、日常生活における身体活動の強度と時間を把握。また脳体積は、皮質灰白質、皮質下灰白質、大脳白質と呼ばれる、3つの部位で評価した。

     まず、世界保健機関(WHO)の心血管疾患リスク予測チャートに則して、対象者を低リスク群(向こう10年間の心血管イベントリスクが9%以下)222人、中リスク群(同10~14%)269人、高リスク群(同15%以上)234人に分類して脳体積を比較。その結果、3つの部位の全てにおいて、低リスク群に比較し中リスク群と高リスク群は体積が小さく、かつ大脳白質については、中リスク群より高リスク群の方が小さいという有意差が認められた。

     次に、加速度計の記録に基づき、中~高強度身体活動と低強度身体活動それぞれの1日あたりの平均時間を四分位で4つのレベルに分類し、交絡因子(年齢、性別、教育歴、頭蓋内容積)を調整したうえで、脳体積との関連を検討。すると、中~高強度身体活動の時間が長いほど、皮質灰白質(傾向性P=0.041)や大脳白質(同0.021)の体積が大きいという有意な関係が認められ、さらに大脳白質に関しては、低強度身体活動の時間が長いほど体積が大きいという関係も確認された(同0.009)。

     続いて、前記の心血管疾患リスクの高低で対象者を3群に分類したそれぞれの群で、身体活動量と脳体積との関連を検討したところ、低リスクや中リスクの群では、中~高強度身体活動、低強度身体活動ともに脳体積との有意な関連が見られなかった。それに対して高リスク群では、中~高強度身体活動の時間が長いほど大脳白質の体積が大きいばかりでなく(同0.045)、低強度身体活動の時間が長いほど大脳白質の体積が大きいという有意な関連が認められた(同0.015)。

     まとめると、地域在住高齢者では強度にかかわらず身体活動量が多いほど大脳白質の体積が大きいことが明らかになった。心血管疾患リスクで層別化すると、ハイリスク集団では中~高強度身体活動だけでなく低強度身体活動についても、大脳白質との関係が有意だった。著者らは、本研究の限界点として、横断研究であり因果関係には言及できないこと、アルツハイマー病の既知のリスク因子であるApoE4などの影響を評価していないことなどを挙げた上で、「心血管リスクが高い高齢者では低強度の身体活動が、脳の老化抑制のための実行可能性の高い介入戦略となり得るのではないか」と述べている。

     なお、身体活動と脳体積との関連の機序としては、身体活動が神経栄養因子の放出を誘導したり炎症を抑制したりすることを介して、神経変性を防ぐように働くのではないかとしている。また、心血管リスクの高い群で身体活動と大脳白質の関連が有意だったことに関しては、そのような集団では白質病変が進行していたり、心血管リスク因子が炎症を亢進させているケースが多いことから、その分、身体活動による恩恵を受けやすく、両者の関連性が強調された可能性があると考察している。

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    HealthDay News 2022年9月26日
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  • 高齢者宅へのIH調理器導入のタイミングが遅すぎる可能性

     高齢者世帯の火災予防のために、調理用コンロをIH調理器に交換するよう勧められることがあるが、その交換のタイミングが総じて遅すぎるのではないかとする論文が発表された。認知機能が低下している高齢者では、マニュアルを見ながらでもIH調理器をほとんど操作できず、認知機能が正常の高齢者でも困難だという。東北大学未来科学技術共同研究センター/高齢者高次脳医学研究プロジェクトの目黒謙一氏らの研究によるもので、詳細は「Dementia & Neuropsychologia」に4月11日掲載された。

     2018年の消防庁の統計によると、全火災事故の約13.9%がコンロの取り扱いに関連している。また、高齢者では鍋を焦がしてしまうという体験と、記憶力や判断力、実行機能の低下が有意に関連していることが報告されている。このような高齢者のコンロの取り扱いミスによる火災リスクを抑制する対策として、自治体によってはIH調理器への交換を推奨している。しかし、認知機能の低下した高齢者でもIH調理器を使用可能かどうか明らかでない。目黒氏らは、宮城県涌谷町の高齢者を対象として、この点を検討した。

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     研究参加者は、75歳以上の地域在住高齢者166人。臨床的認知症尺度(CDR)により、66人はスコア0で「健康」、79人はスコア0.5で「認知症の疑い」、21人はスコア1以上で「認知症」と判定された。また、本人と家族へのインタビューから、過去の火災につながるような体験(鍋を焦がす、タバコやストーブの消し忘れ、畳を焦がすなど)の有無を把握し、その頻度と重大性から、火災を引き起こすリスクを判定。その結果、98人は該当する経験がなく「安全」、39人は「低リスク」、29人は「高リスク」と分類された。

     研究参加者に、「IH調理器を使って、インスタント麺を作るのに必要な水をできるだけ速く沸騰させるように」との課題を与え、実行可能かを判定した。なお、調理器のマニュアルは自由に読んでよいこととし、読みやすいように拡大したものを手渡した。また、手順が分からず先に進めない場合は、研究スタッフが作成した説明書を参照してもらったり、スタッフが助言をした。

     やかんを置き、主電源、加熱ボタンの順にオンにし、パワーを最大にして、沸騰したら電源をオフにするという手順を全て完了できたのは、健康な群では約15%、認知症疑い群では約8%であり、認知症群では0%だった。この3群で課題を完了できた人の割合に有意差はなかったが、全体的に課題を完了できない人の多さが際立つ結果となった。なお、健康な群であっても、過去の体験から火災「高リスク」と分類された群には、課題を完了できた人が1人もいなかった。

     次に、認知症群を除外して健康な群と認知症疑い群を、完了できた/できなかった人に二分して、認知機能(MMSE)を比較。すると、課題を完了できた人の認知機能スコアの方が有意に高かった(26.1±2.9対24.5±3.1、P<0.05)。また、実行機能(数字記号置換テスト)の結果も、課題を完了できた人の方が有意に高かった(35.1±11.4対29.7±8.8、P<0.05)。ただし実行機能の別の指標(TMT-A)は有意差がなかった。

     著者らは本研究の限界点として、課題を実行できるか否かを1機会のみで確認し、学習効果を評価していないことなどを挙げている。その上で、「火災予防のためにIH調理器を導入するタイミングは、火災につながる何らかのインシデントがあってからでは遅すぎる。また、IH調理器に交換する前に、高齢者の認知機能や実行機能を評価すべきではないか」と述べている。

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    HealthDay News 2022年8月8日
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  • TRFと共同開発のダンスがコロナ禍の高齢者の認知機能を改善――東大先端研

     ダンス・ボーカルユニットのTRFと東京大学先端科学技術研究センターの研究グループが共同開発した高齢者向けのダンスが、認知機能や実行機能の改善に有効であることを示す、無作為化比較試験の結果が報告された。同研究センター身体情報学分野の宮﨑敦子氏(研究時点の所属は理化学研究所)らによる論文が、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に5月19日掲載された。

     運動に認知機能や実行機能(物事を考えて行動する機能)の低下を防ぐ効果があることが知られており、高齢者に対して運動が奨励されている。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより屋外での運動が制限される状況が長引いている。これを背景として宮﨑氏らは、屋内でも行えるダンスを開発し、認知機能や実行機能に及ぼす影響を検討した。

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     ダンスは有酸素運動であるとともに、曲に合わせて振り付けを模倣するというデュアルタスク(二つの作業の同時処理が必要な)運動でもあり、認知機能などの維持・改善により効果的な可能性が想定される。本研究では、30年以上の経験を持つダンス・ボーカルユニットであるTRFとともに、30分のダンスプログラムを開発し介入に用いた。

     研究対象者は2020年10~11月にかけて、webを通じて東京と神奈川から募集された60歳以上の健康な地域住民。COVID-19や心疾患・呼吸器疾患の既往者、認知機能の指標である日本語版ミニメンタルステート検査(MMSE-J)が30点中24点未満の人を除外した90人が参加。これを無作為に、ダンス群、ノルディックウォーキング群(以下、歩行群と省略)、対照群の3群に分類した。なお、全員に分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む菓子(BCAAとして約8gを週3回摂取)による栄養介入を行った。

     ダンス群と歩行群に割り当てられた人には、1回30分(準備体操と整理体操を含めて45分)、週に3回、4週間にわたる継続を求め、実施回数が9回未満の場合は解析から除外した。ダンス群には、120~125ビートの曲に乗せたダンス動画が収録されているDVDを4枚支給し、1週間に1枚のペースで続けてもらった。

     プロトコルから逸脱した2人(歩行群と対照群の各1人)を除く88人の平均年齢は67.81±5.64歳で、29.55%が女性だった。ベースライン時点では、年齢や女性の割合、MMSE-Jスコア、MoCAスコア(認知機能の評価指標)、FABスコア(実行機能の評価指標)、教育歴、就業状況、疾患有病率、BMI、SMI(骨格筋指数)、歩行速度、握力、ふくらはぎ周囲長など、評価した全ての項目について、有意な群間差がなかった。

     4週間の介入中に歩行群の2人が脱落し、最終的な解析は86人で行われた。認知機能の指標であるMoCAスコアのベースラインからの変化量は、ダンス群+2.0667点、歩行群+0.7037点、対照群-0.2414点であり、ダンス群は歩行群(P=0.0135)や対照群(P=0.0000)より、改善幅が有意に大きかった。歩行群と対照群の群間差は非有意だった。

     実行機能の評価指標であるFABスコアは、同順に、+0.7333点、+0.2963点、-0.5862点であり、ダンス群(P=0.0006)や歩行群(P=0.0369)は、対照群より改善幅が有意に大きかった。ダンス群と歩行群の群間差は非有意だった。

     このほか、歩行速度や模倣機能について、ダンス群の方が歩行群よりも有意に大きく改善していた。筋肉量や筋力の変化量は、群間の有意差がなかった。ただし、かかと上げテストは、ダンス群、歩行群ともに対照群よりも有意に大きく改善していた。また、ダンス群は視空間認知機能の改善幅が、歩行群や対照群より有意に大きいなどの違いも認められた。

     これらの結果を基に著者らは、「COVID-19パンデミックに伴い自宅での時間が長くなり運動量が減りがちな状況において、屋内で行えるダンスが認知機能を効果的に維持・改善し得る」と結論付けている。また、「若いころにダンスをする機会が少なかっただろう日本の高齢者にも、ダンスは受け入れられた。この事実から、ダンスは日本人の認知機能や身体機能を向上させる、強力なツールになると考えられる」と付け加えている。

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    HealthDay News 2022年6月27日
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  • ビタミンK不足で認知機能が低下?

     ビタミンKの摂取不足が認知機能の低下と関連していることを示唆するデータが報告された。東京都健康長寿医療センター研究所の井上聡氏、東浩太郎氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Nutrition」に1月31日掲載された。

     ビタミンKは、血液凝固の必須因子としての役割が最初に見いだされていた脂溶性ビタミンで、その後、骨代謝にも関与することが明らかになり、それらの作用を用いた疾患治療薬が臨床応用されている。さらに近年、ビタミンKレベルが認知機能に関連している可能性が報告され始めている。ただしそれらの研究では、ビタミンKレベルを専門的な検査で測定していたり、食事調査からビタミンK摂取量を推測するという手法を用いており、汎用性や精度の問題があった。

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     これに対して井上氏らは、既に国内で骨代謝関連検査として保険適用されている「低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)」という指標を用いて、その値と認知機能との関連を検討した。ucOCはビタミンKレベルのバイオマーカーであり、ucOC高値はビタミンK不足を意味する。

     研究対象は東京都板橋区在住の高齢者から無作為に抽出され、研究参加に同意した800人(平均年齢75.9±4.9歳、女性88.8%)。認知機能はミニメンタルステート検査(MMSE)で評価した。MMSEは30点満点で、スコアが低いほど認知機能が低下していることを意味する。本研究の参加者の平均は28.2±2.2であり、25.5%が28点未満、16.1%が27点未満だった。

     ucOCの三分位で3群に分け、認知機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙習慣、BMI、教育歴、高血圧・脳卒中・心臓病・糖尿病・脂質異常症・骨粗鬆症の既往)を共変量とするロジスティック回帰分析を施行。その結果、ucOCの第3三分位群は第1三分位群よりも、MMSE27未満で定義した「軽度認知障害(MCI)」の該当者が1.65倍、有意に多いことが分かった〔オッズ比(OR)1.65(95%信頼区間1.06~2.59)〕。なお、第2三分位群のMCIのオッズ比は、第1三分位群と有意差がなかった。

     ucOCのほかには、年齢がMCIのオッズ比上昇と有意に関連し〔1歳ごとにOR1.17(同1.12~1.22)〕、教育歴が長いことはオッズ比の低下と有意に関連していた〔10年以上は9年以下に対してOR0.37(同0.23~0.59)〕。その他、性別や喫煙習慣、BMI、高血圧・脳卒中・糖尿病などの既往は非有意だった。

     なお、MMSEの下位尺度別に検討すると、ucOCの第3三分位群は第1三分位群に比べて、見当識〔9点未満のOR7.46(同2.05~27.19)〕、計算〔5点未満のOR1.52(同1.04~2.24)〕、および言語〔8点未満のOR2.44(同1.00~5.94)〕という3指標が、低値に該当するオッズ比が有意に高かった。

     著者らは、「本研究はucOC値と認知機能との関連を調べた初の報告であり、ビタミンKが認知機能に重要な働きを担っている可能性を示している。ucOCというビタミンKレベル評価の簡便な検査が、認知機能に影響を及ぼす神経変性疾患のバイオマーカーとなり得るのではないか」と結論付けている。

     また、ビタミンKと認知機能との関連の機序については、「ビタミンKは多くの作用を持つことが明らかになっており、例えば核内受容体SXR(steroid and xenobiotic receptor)を介して抗炎症作用を発揮することからも、認知機能に対して保護的に働く可能性がある」と考察。ただし、ucOC高値は単にビタミンK摂取量が少ないことを表しているだけであり、残余交絡の存在も否定できないとして、「基礎研究や介入研究などによる検証が求められる」と述べている。

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    HealthDay News 2022年5月2日
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  • 75歳以上では飲酒が認知機能低下を防ぐ?――SONIC研究データの横断解析

     75歳以上の日本人高齢者を対象とする研究から、適度な頻度でアルコールを摂取している人の方が、認知機能が高いことを示すデータが報告された。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学講座の赤木優也氏、樺山舞氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Geriatrics」に2月28日掲載された。アルコールの種類別ではワインを飲んでいること、飲酒状況では機会飲酒(宴会等)があることが認知機能の高さと関連しているという。

     認知機能低下のリスク因子の一つとして、過度のアルコール摂取が挙げられる。ただし、そのエビデンスは主として壮年~中年期の成人を対象とした研究から得られたものであり、75歳以上の後期高齢者ではどうなのか、よく分かっていない。また、ワインの認知機能保護効果がよく知られているが、その効果を示した研究は地中海諸国で行われたものが多く、食事スタイルの影響を否定できない。加えて、人種的にアルコール耐性が低い日本人での効果は不明であり、さらに日本酒や焼酎の認知機能に対する影響はほとんど知られていない。

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     そこで赤木氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究「SONIC研究」の参加登録時データを用いて、飲酒頻度、飲酒量、アルコールの種類、機会飲酒の有無と認知機能との関係を横断的に解析した。なお、SONIC研究の参加者の年齢は、75~77歳または85~87歳のいずれかであり、本研究の解析対象(飲酒習慣に関するデータのない人を除外した1,226人)のうち60.6%が75~77歳だった。また、48.5%が男性だった。

     飲酒の頻度は、毎日が25.7%、週に1~6日が13.5%、週1日未満が5.4%で、55.5%は飲酒の習慣がなかった。飲酒量は、中程度(純アルコール40g/日未満)が34.8%、中程度を超えて多量未満(同40~60g未満/日)が5.8%で、多量飲酒(60g/日以上)が3.6%だった。アルコールの種類は、ビールが24.3%、焼酎13.1%、日本酒10.8%、ワイン4.4%、ウイスキー2.6%で、一部の人は複数の種類のアルコールを習慣的に摂取していた。

     認知機能は、日本語版モントリオール認知評価(MoCA-J)という指標で把握した。MoCA-Jは0~30の範囲でスコア化され、スコアが低いほど認知機能が低いことを表す。本研究の解析対象者は、平均22.7だった。

     認知機能(MoCA-Jスコア)に影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、喫煙習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中の既往、メンタルヘルス状態(WHO-5日本語版で評価)、教育歴、居住形態(同居/独居)、外出頻度、経済状況など〕を調整後、飲酒頻度が週に1~6日の人は、飲酒習慣のない人、および、毎日飲酒する人に比較して、MoCA-Jスコアが有意に高いという結果が得られた。一方、前記の因子で調整後に飲酒量で比較した場合、MoCA-Jスコアとの有意な関係は認められなかった。

     重回帰分析の結果、ワインの摂取と機会飲酒があることがMoCA-Jスコアの高さに、それぞれ独立して関連することが明らかになった(いずれもβ=0.09、p<0.01)。一方、ビール、焼酎、日本酒、ウイスキーを飲む習慣は、MoCA-Jスコアとの間に有意な関係がなかった。

     適度な飲酒習慣が高齢者の認知機能に対し保護的に働く可能性が示されたことの背景について著者らは、「飲酒関連の行動の一部には社会参加が含まれるため、社会活動による認知機能の保護効果が影響を及ぼしている可能性がある。ただし本研究では、外出頻度や居住形態の影響を調整後にも有意な関連が示された。よって、飲酒に関連する行動パターンそのものが、認知機能に対して保護的に働くのではないか」との考察を加えている。

     一方、研究の限界点として、解析対象が後期高齢者のみであるため、元来健康でヘルスリテラシーが高い集団である可能性があることや、生存バイアスの存在が否定できないことなどを挙げている。

     以上より著者らは結論を、「毎日ではない中程度の頻度での飲酒とワインの摂取、機会飲酒は、75歳以上の高齢日本人の認知機能の高さと関連していた。この因果関係を明らかにするための縦断研究が望まれる」と総括している。

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    HealthDay News 2022年3月28日
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