妊娠中のチーズ摂取が子どもの発達に好影響?
日本の大規模研究データを用いて、妊娠中の発酵食品の摂取と、子どもの3歳時点の発達との関連を調べる研究が行われた。その結果、妊婦の発酵食品の摂取量が多いことは子どもの発達の遅れのリスク低下と関連し、この関連は、特にチーズで強いことが明らかとなった。富山大学医学部小児科の平井宏子氏らによる研究であり、「PLOS ONE」に6月21日掲載された。
母親の腸内細菌叢は、新生児の腸内細菌叢の構成に影響し、さまざまな微生物が産生する神経伝達物質の作用を通じて、神経系に影響を及ぼすと考えられる。著者らは過去の研究で、妊娠中に母親が摂取する発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト、チーズ)と、子どもの1歳時点の発達との関係を調査し、妊娠中の発酵食品の摂取が子どもの発達に有益な影響を及ぼす可能性を報告している。
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今回の研究で著者らは、日本全国規模の出生コホート研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータ(リクルート期間:2011年1月から2014年3月)を用いて、妊娠中の発酵食品の摂取と、3歳時点の子どもの発達との関係を調査した。「食事摂取頻度調査票」を用いて、妊娠中の味噌、納豆、ヨーグルト、チーズの摂取量を算出した。子どもの3歳時点の発達は、「ASQ-3」という指標を母親に回答してもらい、5つの発達領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会)を評価した。解析対象者は、母子6万910組だった。
妊娠中の発酵食品の1日当たりの摂取量を四分位で4群(Q1~Q4)に分類し、妊婦の背景因子を調整した上で、3歳時点の発達との関連を多変量ロジスティック回帰で解析した。その結果、チーズの摂取量は、Q1群(0~0.7g)と比べ、Q2群(1.3~2.0g)、Q3群(2.1~4.3g)、Q4群(5.0~240.0g)で、5つの領域全てにおいて、発達の遅れのリスク低下と関連していた。また、味噌のQ4群(147~2,063g)とヨーグルトのQ4群(94~1,440g)は、コミュニケーション領域でのみ、発達の遅れのリスク低下と関連していた。これらの関連については、摂取していた母親から生まれた子どもでは、リスクが低いという有意な傾向が認められた。一方、納豆については、摂取量と発達との関連は認められなかった。
今回の研究の結論として著者らは、「妊娠中にチーズを摂取することと、子どもの3歳時点における発達の遅れのリスクが逆方向の関連を有することが明らかになった」としている。また、発酵食品の種類により異なる結果が得られたことに関しては、栄養成分などが発酵食品ごとに異なり、健康促進効果も異なると考えられることなどに言及。今後さらなる研究が必要とした上で、「発酵食品の摂取により妊婦の腸内環境を改善することは、子どもの発達に有益な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。
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