禁煙が心電図上の左室肥大の退縮と関連か

 禁煙は心血管疾患のリスク低下につながる一方、禁煙後には体重増加や血圧上昇がみられることがあり、心血管系には好ましくない変化と考えられている。今回、こうした変化がみられたにもかかわらず、禁煙後に心電図上の左室肥大の指標が改善したとする研究結果が報告された。禁煙時と6年後を比較したところ、心電図で測定した左室電位と、左室肥大と判定された人の割合がいずれも低下していたという。研究は、国立病院機構鹿児島医療センター循環器内科の二宮雄一氏らによるもので、詳細は8月27日付の「PLOS ONE」に掲載された。

 左室肥大は心血管疾患の発症や死亡と関連する重要な指標であり、心電図による評価は心血管リスクの層別化にも広く用いられている。一方、喫煙は血管内皮機能障害や交感神経活動の亢進、動脈スティフネス(動脈の硬さ)などを介して心血管系に悪影響を及ぼし、喫煙者では左室重量や心筋壁厚が増加することが報告されている。しかし、禁煙によって左室肥大が退縮するかどうかは十分に明らかになっていない。そこで研究グループは、日本人の健診受診者を対象に、禁煙と心電図上の左室肥大の変化との関連を6年間にわたって検討した。

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 研究グループは、2005~2019年に健診を受けた日本人一般集団の健診記録23万4,596件を用いた。この中から、喫煙を中止し、禁煙時に高血圧ではなかった30~65歳の752人を抽出した。対象者は禁煙時と6年後の両時点で心電図データが得られることを条件とし、がん、内分泌疾患、構造的心疾患、心筋梗塞の既往などがある人は除外した。心電図上の左室肥大はSokolow-Lyon基準(SV1+RV5>3.5 mV)で判定した。また、体重、BMI、血圧、脂質、腎機能などのデータを収集し、追跡期間中の降圧薬使用の有無によって対象者を分けて比較した。禁煙時と6年後の各指標の変化を解析し、心電図上の左室肥大の退縮に関連する因子を多変量解析で検討した。

 対象者752人の92.4%が男性で、平均年齢は47.8歳だった。6年間の追跡後、平均体重は65.7 kgから68.1 kgに、収縮期血圧は112.8 mmHgから122.0 mmHgに、いずれも有意に上昇した(いずれもP<0.0001)。追跡期間中に降圧薬の使用を開始した人は103人(13.7%)だった。

 一方、心電図で測定した左室電位(SV1+RV5)は、禁煙時の平均2.47 mVから6年後には2.41 mVに有意に低下した(P<0.0001)。心電図上の左室肥大と判定された人の割合も、8.4%から6.5%に低下した。

 降圧薬の使用状況別にみると、左室電位は、降圧薬を使用した人では2.68 mVから2.45 mVに(P<0.0001)、使用しなかった人では2.44 mVから2.40 mVに低下した(P=0.01)。また、多変量解析では、降圧薬の使用が心電図上の左室肥大の退縮と独立して関連していた。

 著者らは、禁煙によって喫煙に伴う交感神経活動の亢進や動脈スティフネスなどが改善し、左室への圧負荷が軽減した可能性を指摘している。また、血管内皮機能の改善や酸化ストレスの低下が、左室肥大の退縮に関与した可能性もあるという。ただし、今回の研究は心電図による評価であり、実際の心筋量が減少したかどうかは明らかではない。また、対象者の92.4%が男性であり、女性を含む集団に結果を一般化できるかは不明である。

 二宮氏は、「禁煙後には体重増加や血圧上昇がみられることがあるが、それにもかかわらず心電図上の左室肥大の指標が改善したことは興味深い結果だ。今回の結果は、禁煙が心血管系にもたらす長期的な有益性を支持する新たな知見と考えている」としている。

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HealthDay News 2026年10月13日
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