便秘が心不全再入院リスクと関連――DPCデータを用いた大規模研究

 心不全による再入院のリスクに便秘が関与している可能性が報告された。東京都立多摩総合医療センター循環器内科/東京大学ヘルスサービスリサーチ講座の磯貝俊明氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation Reports」11月号に掲載された。

 便秘は血圧変動などを介して心不全リスクを高める可能性が想定されているが、心不全の予後との関連を調べた研究は限られている。磯貝氏らは、便秘が心不全による再入院リスクに関連しているとの仮説の下、診断群分類(DPC)医療費請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。

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 解析対象は、2016年4月~2022年3月に国内のDPC対象病院へ心不全のために初回入院し、生存退院した20歳以上の患者から、先天性心疾患、血行再建術や心臓移植が施行された症例、末期腎不全合併症例などを除外した55万6,792人(平均年齢80.0±12.3歳、女性49.2%)。退院時に下剤が処方されていた患者を「便秘あり」と定義すると22.0%が該当した。便秘あり群は高齢で(82.7±10.1対79.2±12.8歳)、女性が多かった(53.5対48.0%)。

 主要評価項目として設定した「退院後1年以内の心不全による再入院」は、10万2,221人に発生しており、発生率は便秘あり群24.0%、なし群18.6%だった。副次評価項目として設定した「退院後1年以内の心不全による再入院および全ての再入院中の死亡」という複合エンドポイントは11万4,661人に発生し、発生率は前記の順に26.6%、20.6%だった。

 60項目の共変量(年齢、性別、BMI、併存疾患、入院中の管理・治療、退院時処方薬、入院した年度、入院期間、退院時の日常生活動作〔ADL〕、病院の特徴〔大学病院か否か、年間心不全入院患者数〕など)を調整したCox比例ハザードモデルでの解析により、便秘あり群は便秘なし群に比べ、高い心不全再入院リスクと関連していた(調整後ハザード比〔aHR〕1.08〔95%信頼区間1.06~1.10〕)。また、死亡も含めた副次評価項目についても便秘と有意な関連が認められた(aHR1.09〔1.07~1.10〕)。

 著者らは、本研究がDPCデータに基づく解析のため把握不能な臨床指標があること、退院後の増悪時に初回の入院先とは異なる病院に入院したケースを追跡できていないことなどを研究限界として挙げた上で、「心不全患者の便秘有病率は高く、便秘を有することは再入院リスクと関連している。今後の研究では、便秘に対する介入が再入院リスクの抑制につながるかどうかの検証が求められる」と総括している。

 なお、便秘が心不全の増悪リスクを高める機序については、排便時のいきみによる血圧上昇、不快感のストレスによる交感神経系の亢進、便秘に伴う腸内細菌叢の変化を介した動脈硬化の進展などが考えられるという。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2025年2月10日
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