女性の腰痛にはストレスから来る“冷え”が関与?――日本人対象横断研究
女性の腰痛に関連のある因子をWeb調査で検討した結果が報告された。敦賀市立看護大学の萬代望氏と関西医療大学の渡邉真弓氏、武田時昌氏、新潟大学の富山智香子氏、福島県立医科大学の二階堂琢也氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Research Notes」に1月30日掲載された。“冷え”を訴え、実際に体温が低い人に腰痛が多く、その背後には精神的ストレスが関係している可能性が想定されるという。
腰痛は、日本人女性が訴える慢性症状として肩こりに次いで2番目に多いと報告されている。整形外科的疾患の症状として腰痛が現れることもあるが、詳しい検査をしても原因が見つからない「非特異的腰痛」が少なくない。非特異的腰痛の予防・改善には、その発症に関連のある因子を特定することが求められる。そこで萬代氏らは、食事・運動・睡眠習慣、メンタルヘルス状態、女性に多い貧血、および日本独特な表現であって、やはり女性に多い“冷え”という症状などとの関連を、Web調査により横断的に検討した。
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Web調査パネルの登録者30万人から、年齢と居住地を人口構成にマッチさせた上で無作為に抽出した1,000人の回答を解析対象とした。そのうち354人(35.4%)が腰痛を有していた。
交絡因子を考慮せずに、腰痛なし群とあり群を比較すると、腰痛あり群は高齢であり、BMI・呼吸数・鎮痛薬使用頻度・喫煙率・短時間睡眠・何らかの食事制限を行っている割合が高く、夜間排尿回数が多くて貧血や月経不順の有病率が高かった。また、メンタルヘルスの不調(倦怠感や怒りなど)を有する割合が高かった。そのほかに、“冷え”があるとする割合、暖房器具やサウナの利用状況などにも群間差が認められた。
次に、これらの中で有意差の認められた因子を説明変数とする多変量解析を施行。その結果、腰痛のあることに独立して関連する因子として、鎮痛薬の使用頻度、貧血でありながら治療を受けていないことなどのほかに、“冷え”を有すること〔オッズ比1.201(95%信頼区間1.047~1.378)〕や、サウナを利用しないこと〔OR2.854(同1.662~4.900)〕が抽出された。
このほか、測定部位別の体温・皮膚温の比較では、腋窩〔36.18±0.36対36.13±0.42℃、P<0.000〕と額〔36.11±0.35対36.03±0.39℃、P=0.003〕の温度が、腰痛のある群の方で有意に低値であることが分かった。手足の温度は有意差がなかった。
著者らは、「腰痛のある女性は体温が低く、“冷え”という症状は腰痛の独立した関連因子であり、腰痛のある女性にはメンタルヘルス不調が多く見られた。精神的ストレスが、血液循環の低下や体温の低下を引き起こし、“冷え”や腰痛につながっている可能性があるのではないか」との考察を述べている。また、「これまで“冷え”をテーマとした研究はあまり行われていないが、腰痛との関連を示唆する報告もあり、腰痛の予防と治療において、メンタルヘルス状態と“冷え”という症状の評価と介入が必要と考えられる」と付け加えている。
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