• 魚をよく食べる人は血小板数が低く、生活習慣が良好

     魚の摂取頻度と血小板数が低いことに関連性のあることが報告された。日本大学病院循環器内科の谷樹昌氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine」に8月23日掲載された。魚摂取頻度が高い人には健康的なライフスタイルの人が多いことも示されている。

     疫学研究から、魚の摂取量が多いほどアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクが低いことが示唆されており、その主要なメカニズムとして、魚油に豊富なエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)による抗炎症作用が想定されている。また、炎症マーカーと見なされることもある血小板数が、魚油の摂取によって低下するという報告もある。ただし、魚の摂取頻度と血小板数との関連については明らかでない。一方、ASCVDリスクは喫煙、飲酒、運動、睡眠などの生活習慣によって大きく変化することも知られている。そこで谷氏らは、魚の摂取頻度を含む生活習慣関連因子と血小板数との関連を詳細に検討した。

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     研究対象は、2019年度1年間の日本大学病院健診センター受診者1万1,673人から、ASCVD既往、降圧薬・血糖降下薬・脂質改善薬・抗血小板薬の処方、血小板数45万/μL以上、データ欠落、および研究参加への不同意に該当する人を除外した9,329人(平均年齢46.9±12.9歳、男性59.3%、BMI23.3±3.8)。魚の摂取頻度は、週0日が5.1%、週1日が28.8%、週2日が31.7%、週3日が23.3%、週4日が6.0%、週5日が3.1%、週6日が0.9%、週7日が1.1%であり、平均2.15±1.28日/週だった。n-3PUFAの推計摂取量は平均5.05±3.13g/週、血小板数は中央値22.7万/μL(四分位範囲19.7~26.0万)だった。

     解析の結果、魚摂取頻度はn-3PUFA摂取量と有意に正相関しており(ρ=0.962)、血小板数とは有意な負の相関(ρ=-0.103)が確認され、n-3PUFA摂取量と血小板数との負の相関(ρ=-0.100)も認められた(いずれもP<0.0001)。また、魚摂取頻度が高いほど、有酸素運動や高強度運動を習慣としている人、および非喫煙者が多く、睡眠時間は長いという有意な関連が存在した(全て傾向性P<0.0001)。

     次に、解析対象全体を血小板数20万以下、20.1~25万、25.1~30万、30万/μL超の4群に群分けして、各群の特徴を比較。すると血小板数高値群は、代表的な炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)が高く、ヘモグロビン(Hb)や魚摂取頻度、n-3PUFA摂取量が低く、睡眠時間が短いといった相違が見られた。その一方で、ASCVDの既知のリスク因子である年齢や男性の割合、BMI、血圧、糖・脂質代謝関連指標、腎機能、尿酸値には有意差がなかった。

     続いて、血小板数30万/μL超を従属変数、単変量解析で血小板数との有意な関連が認められた因子を独立変数とする多変量解析を施行。その結果、CRP1.0mg/dL以上〔オッズ比(OR)2.841(95%信頼区間1.685~4.790)〕、Hb10g/dL未満〔OR4.571(同2.624~4.796)〕、喫煙〔OR1.242(1.003~1.539)〕が独立した正の関連因子として抽出された。反対に、有酸素運動〔OR0.775(0.620~0.968)〕、睡眠時間〔OR0.884(0.810~0.964)〕は独立した負の関連因子であり、かつ魚摂取頻度も独立した負の関連因子として抽出された〔1週間の摂取頻度0日を基準として、1~7日でOR0.310~0.642(週6日のみ非有意)〕。なお、高強度運動は有意な関連がなかった。

     以上の結果に基づき著者らは、「魚の摂取頻度が高いことがn-3PUFA摂取量の多さや健康的な生活習慣と有意な関連があり、かつ血小板数が低値であることと有意に関連していた。これらの相互作用によって、魚摂取がASCVDリスクを抑制するのではないか」と述べている。なお、本研究が横断的デザインであることから、「これら諸因子の因果関係を検証するため、さらなる研究が必要」とも述べられている。

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    HealthDay News 2023年10月2日
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  • ワーケーションで動脈硬化予防?

     都会を離れた落ち着いた環境でリモートワークをする「ワーケーション」によって、動脈硬化の進行が抑制されることを示唆するデータが発表された。米ハーバード大学医学部および奈良県立医科大学医学部客員教授の根来秀行氏らの研究によるもので、詳細は「Healthcare」に10月15日掲載された。

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降、在宅でのリモートワークが広がり、さらにワーケーションも注目されるようになった。ワーケーションは一般的に、リゾート地などの自然豊かな環境で心身を休めながら仕事をすることを指し、そのような新しい働き方による労働生産性への影響など、主に社会経済的な視点からの関心が寄せられている。その一方、労働者の健康への影響という視点での研究はまだ少ない。根来氏らは、このような背景から本研究を行った。

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     研究対象は、大手民間企業の従業員20人(平均年齢33.9±8.9歳、女性11人、BMI22.3±2.8、体脂肪率26.5±9.3%)。全員が在宅勤務経験者で、前年の職場健診で異常を指摘されていない非喫煙者。千葉県勝浦市または静岡県浜松市の海岸沿いにある会員制リゾートホテルにて、4泊のワーケーションを行ってもらい、その前後およびホテル滞在期間中に、動脈硬化の進行に関連する検査を行った。

     滞在中のスケジュールは以下のとおり。朝7時に起床し、朝食とシャワーを済ませ、リンパマッサージを受けた後に、ミーティングとリモートワーク。11時30分~12時はウォーキングやラジオ体操などを行い、その後、昼食と仮眠。午後の就業は16時までとし、18~19時はジョギングや筋力トレーニングなどを行い、20~21時に夕食。22時に入浴し、23時以降の飲食は水、お茶、牛乳のみ摂取可とした。また、夕食後は電子機器の使用を禁止した。

     動脈硬化関連の検査として、朝食前に、AVI(中心動脈の血管壁の硬さの指標)、API(末梢動脈の血管壁の硬さの指標)、血圧、心拍数を測定した。また、研究参加者に3軸加速度センサーと携帯型心電計を身に着けて過ごしてもらい、それらのデータから、身体活動量や自律神経機能を評価した。

     これらの検査値のうちAVIとAPIはいずれも、ワーケーション期間中はベースライン(ワーケーション前)より有意に低値だった。収縮期/拡張期血圧は、測定部位や測定日による違いはあったものの、ベースラインより有意に低い値が複数のポイントで確認された。心拍数は滞在2日目に有意に低値だった。

     身体活動量については、運動以外での活動量と高強度運動の活動量が、ベースラインより有意に高かった。低~中強度運動の活動量は有意差がなく、総消費エネルギー量についても、ワーケーション期間の方が高値ではあったが有意差はなかった。自律神経機能に関しては、ワーケーション期間の睡眠時の高周波(HF)成分がベースライン値より有意に高値だった。これは、睡眠中に副交感神経の活性が亢進していたことを意味する。睡眠時のHF成分の値が高いほどAPIが低いという、有意な逆相関も認められた。

     まとめると、ワーケーション期間は睡眠時の副交感神経活性が亢進し、中心動脈と末梢動脈へかかるストレスが低下していたことが明らかになった。ただし、これらの有意な変化は、ワーケーション終了後の測定では全て非有意となり、ベースラインと同レベルに戻っていた。

     著者らは本研究には、研究参加者が1社のみの従業員であること、サンプル数が少ないことなどの限界点があるとした上で、「ワーケーションに健康上のメリットが存在することが示唆される。この知見は、COVID-19パンデミックで増加した在宅勤務労働者の健康維持対策に生かせるのではないか」と結論付けている。一方、今後の検討課題としては、ワーケーション終了とともに各検査指標がベースライン値に戻っていたことから、「日常生活においても、ワーケーションと同様のライフスタイルを維持できるような環境の模索が必要と考えられる」としている。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2023年1月16日
    Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
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