除脂肪量でサルコペニアの低筋肉量をスクリーニング

 比較的簡便な体組成の評価方法である、生体インピーダンス(BIA)法で測定した除脂肪量指数〔FFMI(除脂肪量(kg)を身長(m)の二乗で除した値)〕が、サルコペニアの低筋肉量スクリーニングに利用できる可能性を示唆するデータが報告された。早稲田大学スポーツ科学研究センター招聘研究員・明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Directors Association」に9月27日掲載された。

 サルコペニアは筋肉量や筋力が低下した状態のことで、要介護などのリスクが上昇するため、早期介入による是正が重要。サルコペニア診断の低筋肉量判定には、二重X線エネルギー吸収測定(DXA)法または生体インピーダンス法による四肢筋肉量(ASM)の測定が必要とされる。このうち特に前者のDXA法は、測定機器が大型で可動性が乏しく健診会場などへ移動が困難なことや、コストや被曝の懸念があることが、現場での利用のハードルとなっている。後者のBIA法は機器に可動性があり、比較的低コストで被曝の懸念もないものの、ASMの測定が可能な機器はあまり普及していない。その一方で、除脂肪量指数(FFMI)であれば家庭用に普及している体組成計でも評価可能である。

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 これまで、FFMIが四肢筋量指数〔ASMI(四肢筋量(kg)を身長(m)の二乗で除した値)〕と相関するとの報告がある。ただし、FFMIでサルコペニアの低筋肉量スクリーニングが可能か否かという視点での研究は、まだ行われていない。川上氏らの研究は、このような背景の下で実施された。

 この研究には、早稲田大学の卒業生の健康状態を長期間観察している「WASEDA’S Health Study」のデータが用いられた。2015年3月~2020年2月に、BIA法とDXA法の両方で体組成が評価されていた、40~87歳の日本人成人1,313人が解析対象で、平均年齢は55±10歳、男性66.4%、BMI23.0±3.1、握力33.4±8.1kg、ふくらはぎ周囲長36.5±2.9cm。体組成の測定は、12時間以上の絶食後の午前中に実施した。

 アジアサルコペニアワーキンググループのサルコペニア診断基準に基づく低筋肉量該当者の割合は、BIA法で5.2%、DXA法で9.9%だった。BIA法によるFFMIとBIA法によるASMI(r=0.96)、およびBIA法によるFFMIとDXA法によるASMI(r=0.95)は、ともに強固な相関が見られた。より詳細に、年齢(60歳未満/以上)、肥満の有無(DXA法による体脂肪率が男性は25%以上、女性は30%以上を肥満と定義)でサブグループ化した解析の結果も、FFMIとASMIの相関係数(r)は0.93~0.95の範囲であり、いずれのサブグループでも強固な相関が認められた。

 次に、DXA法によるASMIで定義された低筋肉量該当者を、BIA法によるFFMIでどのくらいスクリーニングできるかをROC解析で検討。その結果、ROC曲線下面積(AUC)は、男性で0.95(95%信頼区間0.93~0.97)、女性では0.91(同0.87~0.94)と高い値を示した。低筋肉量該当者スクリーニングのためのFFMIの最適なカットオフ値は、男性17.5kg/m2(感度89%、特異度88%)、女性14.6kg/m2(感度80%、特異度86%)と計算された。

 以上より著者らは、「FFMIは年齢や肥満の有無にかかわりなく、BIA法やDXA法で測定されたASMIと強い正の相関を示した。FFMIを、サルコペニアの低筋肉量スクリーニングの代替マーカーとして利用できるのではないか。その際のFFMIのカットオフ値は男性18kg/m2未満、女性15kg/m2未満と推定される」と結論付けている。なお、本研究の限界点としては、対象者が単一大学の卒業生であり一般住民から無作為に抽出されたサンプルではないこと、使用したBIA測定器が1タイプのみであって他の機種では結果が異なる可能性のあることなどを挙げている。

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HealthDay News 2022年11月21日
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