犬を飼う高齢者、要介護認知症リスク低下と関連――医療・介護費抑制の可能性も
ペットとの暮らしは、高齢者の健康維持に役立つのだろうか。今回、国内の高齢者1万1,224人を対象に約7.5年間追跡した研究で、犬を飼っている人では、飼っていない人と比べて要介護認知症の発症リスクが低いことが示された。さらに、犬を飼うことが高齢者の健康維持に加え、公的な医療・介護費の抑制につながる可能性も示唆された。研究は、国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優氏、東京大学大学院薬学系研究科医療政策・公衆衛生学分野の齋藤良行氏らによるもので、詳細は7月22日付の「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載された。
ペットとの触れ合いは、身体活動量や精神的健康の向上など、さまざまな健康効果との関連が報告されている。中でも犬を飼うことは、高齢者のフレイルや要介護状態、要介護認知症の発症リスク、死亡リスクの低下と関連することが示されてきた。一方で、犬を飼うことが健康につながるのか、それとも健康な人ほど犬を飼いやすいのかは明らかでなく、因果関係ははっきりしていなかった。また、医療・介護費への影響も十分に検討されていなかった。そこで著者らは、日本の高齢者1万1,224人を約7.5年間追跡し、犬を飼っていることと要介護認知症や死亡との関連を調べ、さらに公的な医療・介護費への影響も評価した。

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研究では、東京都大田区の65~84歳の地域在住高齢者を対象とした「大田区 元気シニア・プロジェクト」のデータを使用した。2016年に無作為抽出された1万5,500人に質問票を送り、回答が得られた1万1,925人のうち、追跡データが得られた1万1,224人を解析対象とした。犬の飼育状況は、現在飼っている、過去に飼っていた、飼ったことがない、の3群に分類した。約7.5年間追跡し、要介護認知症の発症と死亡を調べた。解析では、年齢や健康状態、経済状況、社会的交流など、犬を飼っている人と飼っていない人の違いを考慮した。さらに、犬を飼う場合と飼わない場合について、4年間の医療・介護費と健康上の効果を計算モデルで比較し、費用対効果を評価した。
約7.5年間の追跡期間中、1,989人(17.7%)が要介護認知症を発症し、1,808人(16.1%)が死亡した。年齢や健康状態、社会的・経済的背景などを考慮して解析したところ、現在犬を飼っている人では、犬を飼ったことがない人と比べて要介護認知症の発症オッズ(発症のしやすさを示す指標)が47%低かった(オッズ比〔OR〕0.53、95%信頼区間〔CI〕0.43~0.66)。死亡についても、オッズが37%低かった(OR 0.63、95%CI 0.51~0.79)。
さらに、因果関係の可能性を検討した解析でも、現在犬を飼っている人では要介護認知症の発症オッズが48%低かった(OR 0.52、95%CI 0.27~0.98)。
費用対効果の分析では、健康上の効果をQALY(質調整生存年:寿命だけでなく健康状態も考慮して、どれだけ質の高い生活を送れるかを表す指標)で評価した。その結果、犬を飼う高齢者では、飼わない高齢者と比べて、家計が負担する犬の飼育費を除いた公的な医療・介護費が1,000人当たり4年間で約1億2,272万円削減され、QALYは142.4増加すると推計された。
著者らは、犬との暮らしは高齢者の要介護認知症の発症リスク低下や医療・介護費の抑制につながる可能性があり、健康増進政策の一環として活用できる可能性があるとまとめている。一方、犬の飼育状況を評価したのは研究開始時のみで、その後の変化を把握できていないことや、観察研究であるため因果関係を完全には証明できないことなどを研究の限界として挙げている。
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