軽度認知障害(MCI)の症状や原因、セルフチェック方法。また認知症へ進行しないための予防策や治療方法にはどのようなものがあるのか、詳しく解説しています。
  1. 軽度認知障害(MCI)とはどんな病気?
  2. 軽度認知障害(MCI)の定義
  3. 軽度認知障害(MCI)の症状

軽度認知障害(MCI)とはどんな病気?

2015年、厚生労働省が発表した推計では、2012年時点の日本の認知症患者数は約462万人。
65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症の患者となります。

軽度認知障害(MCI)は認知症予備軍と言われています。
健常者と認知症の中間にあり、認知症へと移行するリスクが極めて高い軽度認知障害(MCI)ですが、認知症は区別されています。

そもそも認知症は定義は【取得したはずの知能が、脳の組織や細胞の変形、変性あるいは破壊によって障害を受け、知能が衰えたり、崩壊、失われた状態】とされていて、「記憶」「決定」「理由づけ」「実行」など認知機能の衰えにより、日常生活が送れなくなってしまいます。

一方、認知症予備軍である軽度認知障害(MCI)は、認知機能に多少の問題があるものの、日常生活は問題なく送ることができます。

高齢化社会が進んでいる現代、認知症や軽度認知障害(MCI)への関心が高まりつつありますが、認知機能の衰えにより、日常生活が送れなくなってしまう認知症と比較しても、軽度認知障害(MCI)は気が付きにくく、生理的な物忘れと分別しにくいのが特徴でもあります。

軽度認知障害(MCI)の定義

軽度認知障害(MCI)の基本的な定義としては、

  • 認知症ではない
  • 本人または家族から、「記憶」「決定」「理由づけ」「実行」など認知機能低下の訴えがある
  • 全般的な知的機能は正常、またはおおむね正常である
  • 日常生活には支障をきたしておらず、問題がない
  • 年齢や教育レベルの影響だけでは説明できない記憶障害がある

以上5つの定義があり、これらの項目、全てにあてはまると軽度認知症(MCI)として診断されます。

軽度認知障害(MCI)の症状

では、軽度認知障害(MCI)では、どのような症状が発症するのでしょうか?
「記憶」「決定」「理由づけ」「実行」など認知機能のうち、ひとつの機能が低下すると言われている軽度認知障害(MCI)において、主に低下する3つの認知機能、具体的な例と共に症状を紹介します。

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▼軽度認知障害(MCI)において、主に低下する3つの認知機能

  • エピソード記憶とは

「家族で食事をした」「旅行へ行った」など、本人が体験した出来事に関する記憶のこと。どこへ行ったか、何をしたか、どんな感情を抱いたかなど、エピソードに関する様々な付随情報。

  • 注意分割機能とは

「魚を焼きながら野菜を切る」「会話をしながらメモをとる」など、注意を切り替え、一度に2つ以上のことを同時に進行させるために必要な能力。マルチタスク機能。

  • 行動管理能力(思考力)とは

脳内に蓄積された記憶や知識を元に、計画を練ったり、目標の設定、判断など生活の中での行動を管理し考える能力。

軽度認知障害(MCI)の段階では、エピソード記憶、注意分割機能、行動管理能力(思考力)、上記3つの認知機能が低下しやすいと言われています。

▼軽度認知障害(MCI)に見られる症状

  • 物の置き忘れやしまい忘れが増える

財布やリモコン、鍵など、日常的に使用する物をどこに置いたか思い出せない。
使ったもののしまい忘れも増える。
戸締まりやガス栓を閉め忘れることも…。

  • 最近の出来事や身近な人物、物の名前が思い出せない

家族の名前や知っている物の名前を思い出せず、代名詞での会話が増える。
エピソードを思い出せないことから、会話が噛み合わない、口数が減る。
食事をしたり、外出したなど、数時間前の出来事を忘れてしまいがち。

  • 料理や買い物に時間がかかるようになった

同時に複数の作業を進行するのが困難となり、料理や買い物に時間がかかるようになる。
料理の味付けや味覚に変化がある。

  • 大人数での会話に入れない

大人数で会話をしていると、会話の内容や相手の表情を読み取れなくなる。

  • 予定や約束を忘れる

約束していた予定を忘れる。
スケジュール手帳を見なければ予定を思い出せない。
また、約束を覚えているものの、場所や日時を間違える。

  • お金の管理や計算ができなくなる

単純な計算ができない。
お金の管理能力がなくなる。

  • 同じ話を繰り返す。同じものを何度も買う。

同じ話を繰り返したり、買う必要のないものを何度も買って帰る。

  • 時間の感覚がない

今日の日にちや、今が何時なのかがわからない。
また、時間の流れを掴めない。

  • 服装に気を遣わなくなる

同じ服ばかりを選んだり、身だしなみに気を遣わなくなる。
季節にそぐわない服装を選ぶ。

  • 意欲や興味がなくなる(抗うつ状態)

今まで興味があったことに対して、関心がなくなる。
楽しめていたことが楽しめなくなる。

このように、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)では、認知症と似た症状が表れます。

軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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  • 認知症

    専門医への紹介を要したせん妄、認知症・せん妄既往・大量飲酒が関連

     せん妄は、注意・意識・認知機能が急性に変化し、患者の安全や治療経過に影響する。今回、専門チームへの紹介を経て診断されたせん妄には、認知症、せん妄既往歴、大量飲酒が関連することが、2万人超の入院患者を対象とした研究で明らかになった。研究は、奈良県立医科大学附属病院精神医療センターの松田恵美氏、同大学健康管理センター・精神医学講座の山室和彦氏らによるもので、詳細は7月30日付の「PCN Reports」に掲載された。

     せん妄は、入院中の合併症で、短期間に注意力や意識、認知機能の障害が生じ、高齢者や身体的に弱い患者に多い。入院期間延長や死亡リスクの上昇と関連し、患者の発症しやすさに、手術、感染症、薬剤などが重なって発症すると考えられる。実臨床では見逃される例もあり、全入院患者を対象に、院内スクリーニング項目と紹介後のせん妄診断との関連を検討したデータは限られていた。著者らは、入院患者のリスク因子の分布と、専門チームの診断に関連する因子を検討した。

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     研究では、2022年6月~2023年11月に奈良県立医科大学附属病院に入院した全ての連続患者2万980人を対象とし、除外基準は設けなかった。入院後3日以内に、厚生労働省の診療報酬制度に基づく院内チェックリストを用いて、年齢、認知症、せん妄既往、大量飲酒、薬剤使用、手術歴などを評価した。せん妄が疑われた場合は、主治医が認知症ケアチームまたは精神科に紹介し、専門チームがICD-10およびDSM-5-TRに基づき診断した。さらに、ロジスティック回帰分析により、関連因子を年齢と性別で調整して検討した。

     対象2万980人のうち、認知症ケアチームまたは精神科へのコンサルテーションは509人(2.4%)に行われ、209人(全対象の1.0%)がせん妄と診断された。この1.0%は、紹介後にせん妄と診断された患者の割合を示す。入院時のスクリーニングでは、1万1,823人(56.4%)が70歳以上に該当した。また、4,446人(21.2%)はいずれのリスク因子にも該当しなかった。

     年齢別にみると、この診断の割合は概ね年齢が高い群ほど高く、40歳未満では0%だったのに対し、80歳超では1.57%となった。また、認知症やせん妄既往歴は高齢群ほど多くみられた。一方、大量飲酒は中年層で多く、最も高齢の層では少なかった。

     未調整ロジスティック回帰分析では、年齢が1歳高くなるごとに、せん妄と診断されるオッズが3.2%高く、オッズ比(OR)は1.032(95%信頼区間〔CI〕1.020~1.043)だった。一方、年齢と性別を調整した多変量解析では、認知症(OR 3.995、95%CI 2.647~6.029)、せん妄既往歴(OR 3.649、95%CI 2.158~6.170)、大量飲酒(OR 1.648、95%CI 1.002~2.710)が、せん妄診断と独立して関連していた。一方、70歳以上、器質性脳疾患、せん妄リスクを高める薬剤の使用、全身麻酔下の手術などは、せん妄診断と独立して関連しなかった。

     著者らは、今回、認知症やせん妄既往などに着目し、早期にリスクを見極めて予防につなげる意義を指摘する。ただし、本研究で把握したのは、認知症ケアチームまたは精神科への紹介後に診断されたせん妄に限られる。紹介されず主治医が対応した症例や見逃し例は含まれないため、結果は入院患者全体のせん妄発症因子ではなく、紹介後の診断に関連する因子として解釈する必要がある。

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    HealthDay News 2026年9月7日
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  • 認知症

    認知症の有病率と発症率は2012年以降低下か――久山町研究からのメッセージ

     高齢化が進む中でも、認知症は必ずしも増え続けるとは限らない。今回、久山町研究の長期疫学データから、認知症の有病率と発症率が2012年以降低下していることが示された。健診と保健指導が継続的に行われてきた地域特性を踏まえると、本研究は生活習慣病管理と認知症予防の関係を考える上で、重要な示唆を与える。研究は、九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野の小原知之氏、同衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らによるもので、詳細は、12月29日付で「Alzheimer’s Research & Therapy」に掲載された。

     高齢化が進む中、認知症の増加とその社会的負担は大きな課題とされてきた。一方で、認知症の有病率の推移については、増加を示す研究と横ばい・低下を示す研究が混在しており、見解は一致していない。こうした違いを理解するには、認知症の有病率だけでなく、発症率や発症後の生存率を併せて検討する必要がある。特にアジア地域では、同一地域を長期間追跡した研究は限られている。久山町研究では、1985~2012年にかけて認知症有病率が増加し、その背景として認知症発症率の上昇と発症後生存率の改善が関与していることが報告されている。本研究はその知見を踏まえ、37年にわたる調査データを用いて、日本の地域住民における認知症の有病率、発症率、発症後生存率の2012年以降の推移を検討した。

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     久山町研究は、1961年から福岡県久山町の住民を対象に継続されている、日本を代表する地域住民コホート研究である。国勢調査によると、久山町の年齢構成や職業構成、栄養摂取状況は、過去60年間にわたり日本全体とほぼ同じ水準にあるとされている。本研究では同地域において、65歳以上の住民を対象に、1985年、1992年、1998年、2005年、2012年、2017年、2022年の7時点で認知症に関する悉皆調査を実施した(全ての受診率:92%以上)。さらに、認知症のない65歳以上の住民を対象に、1988年(803人)、2002年(1,231人)、2012年(1,519人)の3つのコホートを設定し、それぞれ10年間追跡した。認知症有病率の推移はロジスティック回帰モデルを用いて検討した。認知症の発症率と発症後生存率については、Cox比例ハザードモデルを用いて性別と年齢を調整してコホート間で比較した。

     認知症の有病率は、1985年から1998年まで横ばいで推移したが、その後は2012年にかけて有意に上昇した(1985年6.7%、1992年5.7%、1998年7.1%、2005年12.5%、2012年17.9%、傾向P値<0.01)が、その後2017年15.8%、2022年12.1%と有意に減少した(傾向P値<0.01)。これらの関係は年齢で調整しても同様の傾向が認められた。

     認知症の有病率は、発症率と発症後の予後によって規定される。この有病率が時代とともに変化した要因を明らかにするために、1988年、2002年、および2012年のコホートを比較した。その結果、年齢・性別調整後の認知症発症率は、1988年コホート(1988~1998年)から2002年コホート(2002~2012年)にかけて有意に上昇した(調整ハザード比〔aHR〕1.68、95%信頼区間〔CI〕1.38~2.06)。一方、同発症率は2002年コホートから2012年コホート(2012~2022年)にかけて有意に低下した(aHR 0.60、95%CI 0.51~0.70)。

     つぎに、認知症発症後の予後の時代的変化を検討したところ、認知症発症後5年生存率は、1988年コホートから2002年コホートにかけて有意に改善していた(47.3%から65.2%、P<0.01)。一方、同生存率は2002年コホートから2012年コホートにかけては明らかな変化を認めなかった(65.2%から58.9%、P=0.42)。

     こうした結果から、2000年代になって認知症有病率が急増した背景には、認知症の発症率が時代とともに上昇したことに加えて、認知症発症後の予後が改善したことがあるとみられる。一方、2012年以降、認知症の有病率が低下した背景には、近年のコホートで認知症発症率が低下したことが影響している可能性がある。

     著者らは、「本研究において認知症の有病率と発症率が2012年以降減少傾向にある背景には、高血圧や糖尿病など危険因子の管理状況の改善と喫煙率の低下や運動習慣の増加など健康的な生活習慣の普及が関与している可能性が考えられる。高齢化が進む社会において、認知症の発症リスクを低減してその社会的負担の増大を抑制するためには、生活習慣病の予防とその適切な管理に加え、健康的な生活習慣を心がけることが重要」と述べている。

     なお、著者らは、本研究の限界点として、単一地域での調査であるため一般化が難しい点を挙げている。また、近年の診断環境の変化や頭部外傷や難聴など未評価の危険因子があること、COVID-19流行が結果に影響した可能性を述べている。

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    HealthDay News 2026年2月9日
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  • 認知症

    緑茶は脳を守る?12年間の追跡調査が示した認知症のリスク低下

     お茶は世界中で広く消費されている飲料であり、含まれるカテキンやポリフェノールにはさまざまな健康効果が報告されている。今回、新たに、緑茶の摂取量が多いほど認知症のリスクが低下することを示す研究結果が報告された。緑茶の摂取が1杯増加するごとに4.8%のリスク減少が示唆されたという。研究は新潟大学大学院医歯学総合研究科環境予防医学分野の中村和利氏らによるもので、詳細は「The Journal of Nutrition, Health and Aging」に6月24日掲載された。

     お茶には抗酸化作用や抗炎症作用に加え、様々な神経保護作用があることが報告されている。特に緑茶は紅茶の約4倍のカテキンを含み、認知症予防効果が期待される。最近のメタアナリシスでは、お茶の摂取量が多いほど認知症リスクが減少する線形の関連が示されたが、対象の多くは紅茶であり、緑茶に特化した研究は限られている。著者らは、2011年から実施している「村上コホート研究」の一環として8年間の追跡調査を行い、コーヒー摂取が認知症リスクと明確な逆相関を示すことを明らかにした。一方で、この調査では緑茶の摂取と認知症リスクとの関連や、緑茶とコーヒー摂取の相互作用については明らかにできなかった。そこで今回、中高年の日本人を対象に、緑茶摂取と認知症リスクの関連性、およびコーヒー摂取との相互作用を明らかにすることを目的として、村上コホート研究の12年間の追跡調査結果を解析した。

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     村上コホート研究では、新潟県の村上市、関川村、粟島浦村に在住の40~74歳の住民14,364人を対象とした。ベースライン調査は2011~2013年にかけて実施され、自記式のアンケート調査により、性別、年齢、BMI、既往歴などの情報を収集した。お茶(緑茶、紅茶、ウーロン茶)とコーヒーの摂取量に関しては、質問票を用いて1日あたりの摂取量を定量的に評価した。認知症の症例は介護保険データベースを用いて特定した。

     本研究の最終的な解析対象は13,660人(平均年齢59.0歳、男性48.1%)で、参加者の平均追跡期間は11.5年であった。緑茶の1日あたりの摂取量を四分位(94mL未満、94~299mL、300~599mL、600mL以上)に分類し、性別、年齢、既往歴などを調整して解析した結果、緑茶の摂取量が多いほど認知症のハザード比(HR)が低下する傾向が示された(多変量傾向P値=0.0178)。最低四分位を基準とした場合、最高四分位の多変量HRは0.75となり、認知症リスクの低下が認められた。緑茶の摂取量が1杯増加するごとに(1杯=150 mLと定義)、認知症の多変量HRは0.952(95%信頼区間0.92-0.99、傾向P値=0.0160)となった。この値は、緑茶を1杯多く飲むことで認知症リスクが約4.8%低下することを示している。

     また、緑茶とコーヒーの摂取量の組み合わせに基づき、摂取量が異なる9つのグループを作成して解析を行った。全体として、緑茶およびコーヒーの摂取量が増加するにつれて認知症のHRが低下する傾向が示された一方で、緑茶600mL/日以上かつコーヒー300mL/日以上という、それぞれの最高四分位の組み合わせにおいては、認知症リスクの低下との有意な関連は認められなかった(交互作用のP値=0.0210)。

     本研究について著者らは、「日本の中高年者において、緑茶の摂取量が多いほど認知症リスクの低下と関連しており、コーヒー摂取との相互作用も確認された。ただし、両方を過剰に摂取することは推奨されず、今後は緑茶摂取量の上限と認知症予防効果についての研究が求められる」と述べている。

     なお、本記事は『The Journal of Nutrition, Health and Aging 2025;29(8):100615』掲載論文(CC BY 4.0ライセンス)に基づいて作成された。

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    HealthDay News 2025年8月4日
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  • 認知症

    一人暮らしの認知症者は疎外されやすい?

     認知症者に対する社会的距離は、認知症の行動および心理的症状(BPSD)を有する一人暮らしの患者でより大きくなることが示唆された。この研究は東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵氏らによるもので、研究結果の詳細は「PLOS One」に1月22日掲載された。

     認知症者とその介護者は、疾患へのスティグマ(「先入観に基づいてレッテルをはり、偏見をもち、差別する」という、一連の心と行動)による社会的排除に直面している。スティグマは、病気そのものが引き起こす苦痛よりもさらに大きな苦痛をもたらすことがあり、深刻な人権侵害であると言われている。

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     スティグマの研究では、スティグマを社会的距離(他の個人との望ましい親密さ、または距離の程度)で測定する方法がある。今回の井藤氏らの研究では、地域住民の認知症者に対する社会的距離がどのような要因によって変化するのかを検討した。

     参加者は、オンライン調査会社に登録している国内、地域在住の40歳から90歳までの男女2,589人(平均年齢62.0±10.5歳、女性49.8%)である。この調査では、世帯形態、BPSDの有無の組み合わせが異なる4種類のビネットがあり、それぞれ80代の女性が正常老化から認知症を診断され、軽度、中等度、重度と進行していく様子が描かれていた(A〔家族と同居、BPSDなし〕、B〔家族と同居、BPSDあり〕、C〔独居、BPSDなし〕、D〔独居、BPSDあり〕)。参加者はいずれかひとつのビネットを受け取り、それぞれの病期で、社会的距離を測定するための質問に回答した。

     その結果、全てのビネットで、認知症が進行するほど社会的距離が大きくなることが示された。また、すべての病期を通して、ビネットA「家族と同居、BPSDなし」の場合の社会的距離がもっとも小さく、ビネットD「独居、BPSDあり」の場合の社会的距離が最も大きかった。

     社会的距離の差が最も大きかったビネットA「家族と同居、BPSDなし」とD「独居、BPSDあり」について、社会的距離に影響を与える要因を探索した。世帯収入、居住地域、認知症に関する知識、認知症患者との接触などを変数とする多変量分析を行った結果、軽度認知症段階では、「認知症に関する知識が多いこと」が社会的距離の縮小と関連していた(ビネットA〔95%信頼区間-0.28~-0.01、p=0.036〕、D〔同-0.26~-0.02、p=0.026〕)。「認知症患者との接触経験があること」は、認知症の全病期を通して、社会的距離の縮小と関連していた(ビネットA〔p=0.001~0.007〕、D〔p<0.001~p=0.006〕)。

     井藤氏らは本研究について、「今回の結果は、スティグマに対する介入としての教育の有効性を示すと同時に、その限界をも示すものである。中等度以上の認知症者に対するスティグマに対しては、教育だけではなく適切な準備状況がある社会的接触が必要であり、特に、社会的排除のハイリスク群である、独居でBPSDを示す者に対する方策が重要」と述べている。また、著者らは本研究の限界について、「社会的望ましさのバイアスが働いた結果、参加者はスティグマを過小に報告した可能性がある」と付け加えている。

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    HealthDay News 2025年3月10日
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  • 認知症

    抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連

     抗てんかん薬が早期に処方されていた患者は、そうでない患者に比べて認知症発症リスクが低下する可能性を示唆するデータが報告された。横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科学の池谷直樹氏らが国内のレセプトデータを用いて行った解析の結果であり、「Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に9月10日、短報として掲載された。

     アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患による認知症(変性性認知症)は、脳内でのアミロイドβやタウタンパク質の蓄積が主要な原因と考えられており、それらの変化は変性性認知症発症のかなり以前から生じていることが知られている。また、変性性認知症と関連しててんかん様の症状を来すことがあり、そのような病態に対しては抗てんかん薬が変性性認知症治療に対して現在使われている薬剤とは別の機序で、進行抑制に寄与する可能性が、基礎実験や小規模な症例報告で示されている。しかし、これまで大規模なデータを用いた研究で、その効果が示されたことがなかった。これを背景として池谷氏らはレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いたコホート研究を行った。

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     2014年8月と5年後の2019年8月の外来患者データから、年齢が55~84歳で、2019年時点でてんかんと診断されているが、2014年時点ではてんかんと診断されていない(=新たにてんかんを発症した)患者を抽出した上で、2014年時点で認知症と診断されている患者を除外。その患者群から、傾向スコアマッチングにより背景因子(年齢や性別、併存疾患)を調節し、抗てんかん薬の処方の有無が異なるデータセットを作成した。

     評価項目は2019年時点での変性性認知症の診断とし、血管性認知症は評価対象から除外した。なお、データセットは2件作成され、主要解析(コホート1)には、新たにてんかんを発症し、2014年時点で抗てんかん薬が処方されていた患者を含め、抗てんかん薬早期処方の影響の評価を可能とした。二つ目のデータセット(コホート2)は感度分析に用いられ、2014年と2019年のいずれか、あるいは両時点でてんかんの診断がある患者を含めた。

     コホート1は各群4,489人(両群ともに女性48.0%)であり、2019年時点で変性性認知症と診断された患者は、抗てんかん薬処方あり群が340人(7.6%)、処方なし群が577人(12.9%)であって、オッズ比(OR)0.533(95%信頼区間0.459~0.617)と、抗てんかん薬処方あり群において変性性認知症の診断が有意に少なかった。コホート2は各群2万3,953人(両群ともに女性48.3%)であり、2019年時点で変性性認知症と診断された患者は、抗てんかん薬処方あり群1,128人(4.7%)、処方なし群1,906人(8.0%)であって、OR0.556(同0.514~0.601)と、コホート1同様に抗てんかん薬処方あり群において変性性認知症の診断が有意に少なかった。

     なお、探索的分析として、処方されていた抗てんかん薬のタイプ(広域スペクトルと狭域スペクトル)別に変性性認知症の診断率を比較した結果、明確な違いは認められなかった。

     著者らは、NDBを用いた観察的横断研究であることを解釈上の留意点として述べた上で、「てんかん診断前の抗てんかん薬の使用はその後の変性性認知症の発症率の低さと関連していた。これは、てんかんの早期症状(脳波異常などを含む)を基に、認知症の発症を抑える目的で、抗てんかん薬を早期処方することを正当化する根拠となり得る」と結論付け、「前向き研究が必要とされる」と付け加えている。

     なお、本研究結果は匿名レセプト情報等を基に、著者らが独自に解析・作成した結果であり、厚生労働省が作成・公表している統計等とは異なる。

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    HealthDay News 2024年11月11日
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  • 認知症

    日本人の認知機能にはEPA/DHAに加えARAも重要―脳トレとの組合せでの縦断的検討

     パズルやクイズなどの“脳トレ”を行う頻度の高さと、アラキドン酸(ARA)やドコサヘキサエン酸(DHA)という長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の摂取量の多さが、加齢に伴う認知機能低下抑制という点で、相加的に働く可能性を示唆するデータが報告された。また3種類のLCPUFAの中で最も強い関連が見られたのは、DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)ではなくARAだという。サントリーウエルネス(株)生命科学研究所の得田久敬氏、国立長寿医療研究センター研究所の大塚礼氏らの研究結果であり、詳細は「Frontiers in Aging Neuroscience」に8月7日掲載された。

     認知機能の維持には、食習慣や運動習慣、脳を使うトレーニング“脳トレ”などを組み合わせた、多面的なアプローチが効果的であると考えられている。ただ、それらを並行して行った場合の認知機能に対する影響を、縦断的に追跡した研究報告は少ない。得田氏らは、栄養関連で比較的エビデンスの多いLCPUFAと脳トレの組み合わせが、加齢に伴う認知機能低下を抑制するのではないかとの仮説の下、以下の検討を行った。

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     この研究は、国立長寿医療研究センターが行っている「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いて行われた。2006~2008年に登録された認知症のない60歳以上の地域住民から、EPA製剤が処方されておらずデータ欠落のない906人を解析対象とした。対象者の主な特徴は、平均年齢70.2±6.7歳、男性50.8%で、認知機能を表すMMSEは30点満点中28.1±1.6点であり、3日間の食事記録(サプリメント摂取も含む)から推計したLCPUFAの1日当たり摂取量の中央値は、ARAが152mg、EPAが280mg、DHAが514mgだった。また、クロスワードパズルや数字パズルなどの脳トレを、週1回以上行っている割合は、35.8%だった。

     2年間の追跡で、MMSEが2点以上低下した場合を「認知機能の低下」と定義すると、180人(19.9%)がこれに該当。認知機能が低下した群はそうでない群に比べて、高齢で教育歴が短く、ベースライン時点のMMSEが高いことのほかに、ARA摂取量が少ない(140対154mg/日、P=0.005)という有意差が認められた。EPAとDHAの摂取量は認知機能低下と有意な関連を認めなかった。また、性別の分布、喫煙、アルコール摂取量、身体活動量、BMI、基礎疾患有病率、および脳トレの頻度も有意差がなかった。

     脳トレの頻度および3種類のLCPUFAの摂取量について、それぞれの三分位で3群に分け、交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙、アルコール摂取量、身体活動量、教育歴、収入、基礎疾患、抑うつ傾向、MMSEなど)を調整して、認知機能の低下との関連を検討すると、脳トレの頻度の高さ(傾向性P=0.025)と、ARA摂取量の多さ(傾向性P=0.006)が有意に関連していた。EPAやDHAの摂取量との関連は非有意だった。有意な関連の認められた脳トレ頻度の高低(週1回以上/未満)、および、ARA摂取量の多寡(中央値以上/未満)とで全体を4群に分けて、双方が少ない群を基準として認知機能の低下のオッズ比(OR)を算出した結果、他の3群は全てオッズ比が有意に低く、双方が多い群で最も低いオッズ比(OR0.415)が観察された(傾向性P=0.001)。

     ところで、本研究ではEPAやDHAと認知機能低下との関連が非有意だったが、海外からはEPAやDHAも認知機能に対して保護的に働くことを示唆するデータが複数報告されている。この違いの理由として、日本人は魚の摂取量が多いため、EPAやDHAの平均摂取量が海外の報告より約3倍以上高いことの影響が考えられる。そこで、本研究の対象者のうち、EPA、DHAの摂取量が下位3分の1の人に絞り込んで、上記と同様のサブグループ解析を施行した。その結果、DHAについては摂取量が多いほど認知機能低下のオッズ比が低いという有意な関連が認められ(傾向性P=0.023)、かつ、脳トレ頻度と組み合わせた4群での比較でも、双方が多いことによる相加的な影響が認められた(傾向性P=0.025)。一方、EPAに関してはこの対象の解析でも、有意性が見られなかった。

     著者らは、「脳トレ頻度の高さとARA摂取量が多いことの組み合わせは、高齢日本人の認知機能低下リスクを相加的に抑制する可能性がある。また、魚介類の摂取量が少ない高齢者では、DHAも同様に作用すると考えられる」と結論付けている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2024年10月28日
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  • 認知症

    呼吸機能低下が認知機能低下に関連――SONIC研究

     スパイロメトリーという機器による簡便な呼吸機能検査の結果が、高齢者の認知機能と関連のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の橘由香氏、神出計氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月20日掲載された。著者らは、高齢者対象の保健指導に呼吸機能を鍛えるプログラムの追加を検討する必要性があるとしている。

     認知機能低下の主要な原因は加齢だが、喫煙や大量飲酒、糖尿病や高血圧といった生活習慣病など、介入可能なリスク因子も存在する。また、潜在的なリスク因子の一つとして近年、呼吸機能の低下が該当する可能性が指摘されている。ただし、呼吸機能の簡便な検査法であるスパイロメトリーで評価できる範囲の指標が、高齢者の認知機能と関連しているのかという点は明らかになっていない。これを背景として橘氏らは、兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いた検討を行った。

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     解析対象は、73±1歳の419人(73歳群)と83±1歳の348人(83歳群)という二つの年齢層の集団。各群ともに約半数が女性であり(73歳群は50.1%、83歳群は51.4%)、認知症と診断されている人は除外されている。認知機能は、教育歴の影響が調整される尺度であるモントリオール認知機能尺度の日本語版(MoCA-J)を用いて評価。MoCA-Jは30点満点で、スコアが高いほど認知機能が良好であると判定する。

     解析ではまず、スパイロメトリーによる最大呼気流量(PEF)の実測値と、年齢・性別・身長などが一致する人の平均に対する比(%PEF)から、気流制限の重症度を4段階に分類。ステージ1は%PEFが80%以上、ステージ2は50~80%未満、ステージ3は30~50%未満、ステージ4は30%未満としてMoCA-Jスコアを比較した。すると83歳群では、気流制限の程度が強いほどMoCA-Jスコアが低いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.002)。73歳群でもその傾向があったが有意ではなかった。

     次に、MoCA-Jが25点以下で定義した「軽度認知障害(MCI)」を従属変数とし、性別、喫煙歴、飲酒習慣、握力低値(男性26kg未満、女性18kg未満)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、冠動脈心疾患、脳卒中、および気流制限(FEV1/FVCが70%未満)を独立変数としてロジスティック回帰分析を施行。なお、握力低値を独立変数に含めた理由は、呼吸には筋力が必要であり、握力が呼吸機能と独立して関連していることが報告されているためである。

     解析の結果、83歳群では気流制限が、唯一の独立した正の関連因子として抽出された(オッズ比〔OR〕3.44〔95%信頼区間1.141~10.340〕)。反対に飲酒習慣は、MCIに対する唯一の保護的因子だった(OR0.37〔同0.189~0.734〕)。73歳群では性別(女性)が唯一の独立した正の関連因子であり(OR2.45〔同1.290~4.643〕)、保護的因子は特定されなかった。

     続いて、年齢層と性別とで4群に分けた上で、それぞれの群におけるMCIに独立した関連因子を検討。その際、独立変数として気流制限以外は前記と同様に設定し、呼吸機能に関しては気流制限の有無に変えて、%VC、FEV1/FVC、%PEFという三つの指標を個別に加えて解析した。その結果、4群全てにおいて、%PEFが高いことがMCIのオッズ比低下と関連していた(男性は73歳群と83歳群の両群ともにOR0.98、女性は両群ともに0.99)。%PEF以外では、83歳群の女性において、%VC(年齢・性別・身長などが一致する人の平均に対する肺活量の比)のみ、有意な関連因子だった(OR0.98)。

     著者らは、「われわれの研究結果は、%PEFの低下が地域在住高齢者の認知機能低下に関連していることを示唆している。また、喫煙歴はこの関連に影響を及ぼしていなかった。よって喫煙習慣の有無にかかわらず、高齢者の認知機能維持を目的とした保健指導プログラムに、呼吸機能訓練などを組み込むべきではないか」と総括。さらに、本研究ではスパイロメトリーを用いたが、「%PEFのみであれば患者自身が日常生活下で使用可能なピークフローメーターでも測定できる」とし、「%PEFの自己測定を、高齢者の呼吸機能の自己管理に加え、認知機能低下抑止のための行動変容にもつなげられるのではないか」とも付け加えている。

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    HealthDay News 2024年10月21日
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