重度歯周炎、高齢者の脳卒中リスク上昇――医療費増加とも関連

 口腔の健康状態は、脳卒中発症だけでなく、その後の医療負担にも影響するのだろうか。今回、高齢者1,997人を対象とした5年間の追跡研究で、重度歯周炎は脳卒中発症リスクの上昇と関連し、脳卒中後の医療費増加にも関与する可能性が示された。研究は愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の齋藤瑞季氏、嶋﨑義浩氏らによるもので、詳細は6月12日付で「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。

 歯周炎は口腔内の慢性炎症性疾患であり、歯周病菌や炎症反応が血管に影響することで、心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている。脳卒中との関連を示した報告もある一方、因果関係については十分な結論が得られていない。また、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討した研究はあるものの、脳卒中後の医療費や入院日数との関係を評価した研究はほとんどない。こうした背景から著者らは、日本の後期高齢者を対象に、歯周炎と脳卒中発症との関連に加え、脳卒中後の医療費や入院日数との関連を検討した。

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 著者らは、2014年に三重県で実施された後期高齢者歯科健診のデータと、2014~2019年度のレセプトデータを用いて解析を行った。対象は75歳または80歳で、20本以上の歯を有し、脳卒中や心疾患の既往がない1,997人とした。歯周炎の重症度はCommunity Periodontal Index(CPI)を用いて評価し、歯周炎なし、中等度歯周炎、重度歯周炎の3群に分類した。参加者を5年間追跡し、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討したほか、追跡期間中に脳卒中を発症した参加者については、脳卒中関連医療費および入院日数との関連も評価した。また、生存曲線が交差していたため、制限付き平均生存時間(restricted mean survival time:RMST)解析も併用した。

 5年間の追跡期間中に232人(11.6%)が脳卒中を発症した。脳卒中発症との関連を検討したところ、重度歯周炎を有する高齢者では発症リスクが高い傾向がみられた。ただし全追跡期間での解析では有意な関連は認められず、追跡開始から22カ月までの解析でも明確な関連は示されなかった。一方で、23カ月以降の解析では重度歯周炎と脳卒中発症との有意な関連が認められた(ハザード比 1.65、95%信頼区間〔CI〕 1.08~2.53)。

 また、RMST解析でも、重度歯周炎群では脳卒中を発症せずに過ごせる期間が短く、追跡期間中における非歯周炎群と比べたRMST差は−0.80カ月(95%CI:−1.21~−0.39)だった。

 さらに、脳卒中を発症した80歳の参加者では、歯周炎のない群と比べて、中等度または重度歯周炎群で脳卒中後の医療費および入院日数が有意に増加していた。医療費は中等度歯周炎群で4.18倍、重度歯周炎群で6.32倍、入院日数はそれぞれ7.14倍、21.85倍だった。一方、75歳ではこれらの関連は認められなかった。

 著者らは、歯周炎が脳卒中リスクや脳卒中後の医療負担の増加に関与する可能性があるとしている。その背景として、歯周病菌による慢性炎症や動脈硬化の促進を挙げ、口腔健康の維持の重要性を強調している。また、80歳で医療費や入院日数との関連がより明確に認められたことについては、加齢に伴う身体機能低下により、脳卒中後の回復に時間を要しやすくなる可能性を挙げている。

 なお、本研究は80歳群で医療費や入院日数との関連を認めたが、解析対象者数が少なく信頼区間も広かった。著者らは、結果の解釈には注意が必要であり、さらなる大規模研究による検証が求められるとしている。

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HealthDay News 2026年7月13日
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