高齢入院患者の睡眠薬継続使用、院内転倒リスク上昇と関連
高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下につながり得るため、医療現場で重要な課題となっている。日本の急性期病院に入院した高齢患者6万人超を対象とした研究で、睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連することが示された。一方、ベンゾジアゼピン系・Z薬とオレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオンとの間で、転倒リスクに有意な差は認められなかった。研究は、日本医科大学医療管理学の西野拓也氏らによるもので、詳細は6月8日付の「PLOS One」に掲載された。
高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下、入院期間の延長などにつながる重要な問題だ。また、入院中の高齢患者では睡眠障害が多くみられるため、睡眠薬の選択は転倒予防の観点からも重要とされている。従来から使用されてきたベンゾジアゼピン系・Z薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)は転倒リスクを高めることが知られている。一方、オレキシン受容体拮抗薬やラメルテオンは代替薬として使用が広がっているものの、院内転倒との関連については結果が一致していなかった。こうした背景から著者らは、日本の急性期病院に入院した高齢患者を対象に、睡眠薬の継続使用と院内転倒との関連を検討した。

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著者らは、2018~2024年に日本の急性期病院2施設へ入院した65歳以上の患者を対象に後ろ向き解析を実施した。長期入院患者では転倒や睡眠薬使用の機会が増える可能性を考慮し、入院7日目まで転倒のなかった患者6万1,663人を対象に、その後の転倒発生を追跡した。入院4~7日目に2日以上睡眠薬を使用していた患者を、ベンゾジアゼピン系・Z薬(BZ/Zs)群、オレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオン(ORA/Ram)群、両者の併用群に分類し、持続的な睡眠薬使用がなかった患者を対照群とした。その上で、入院8~37日目に発生した初回の院内転倒を評価し、患者背景や併用薬、日常生活動作(ADL)などを調整した上で各群の転倒リスクを比較した。
対象となった6万1,663人のうち、3,884人(6.3%)が入院8日目以降に転倒を経験した。睡眠薬使用群では対照群と比べて患者背景に違いがみられた。特にORA/Ram群では、高齢でADLが低下した患者が多く、炎症反応や腎機能障害を示す検査値も高かった。
30日間の追跡期間における転倒の絶対リスクは、対照群2.3%に対し、BZ/Zs群3.5%、ORA/Ram群4.9%、併用群4.4%であった。調整後解析では、対照群と比べてBZ/Zs群で転倒発生ハザードが42%高く(調整ハザード比1.42)、ORA/Ram群でも46%高かった(同1.46)。併用群でも同様の傾向が認められた(同1.42)。この関連は競合リスク解析でも一貫していた。
さらに、傾向スコアマッチングにより患者背景をそろえてBZ/Zs群とORA/Ram群を直接比較した解析では、転倒発生ハザードに有意差は認められなかった(調整ハザード比0.98)。
著者らは、高齢入院患者における睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連していた一方、BZ/Zs群とORA/Ram群との間で転倒リスクに有意差は認められなかったとしている。その上で、睡眠薬の種類を変更するだけでは転倒予防は難しく、患者の脆弱性そのものに着目した対策が重要になる可能性があると考察している。
なお、著者らは、本研究が観察研究であるため因果関係は証明できず、睡眠薬が必要となる患者の背景因子による影響を完全には除外できない点を限界として挙げている。また、本研究は薬剤クラス間の同等性を検証するように設計された研究ではなく、BZ/Zs群とORA/Ram群の転倒リスクが同等であることを示したものではないとしている。
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