-
8月 07 2024 日本の大学生の2割がロコモ
日本の大学生400人以上を対象とした研究の結果、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の有病率が20%を超えていることが示された。また、ロコモと関連する要因は男性と女性で違いがあることも明らかとなった。国際医療福祉大学理学療法学科の沢谷洋平氏、同大学医学部老年病学講座の浦野友彦氏らによる研究であり、「BMC Musculoskeletal Disorders」に5月10日掲載された。
ロコモは、運動器の障害により起立や歩行などの移動機能が低下した状態であり、ロコモが進行すると最終的には介護が必要となる。若年者にも一定の割合でロコモの兆候が見られると報告されているが、10代~20代の若年者を対象とする研究は不足している。また、男性と女性では筋力や体格に違いがあるため、ロコモと関連する要因も性別により異なる可能性がある。
治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、医療・福祉を学ぶ大学生413人(平均年齢19.1±1.2歳、男性192人)を対象とする横断研究を2023年4月~7月にかけて実施。日本整形外科学会の基準に準拠し、立ち上がりテスト(下肢筋力)、2ステップテスト(歩幅)、ロコモ25(体の状態・生活状況)の3つの「ロコモ度テスト」を行い、ロコモが始まっている「ロコモ度1」、ロコモが進行した「ロコモ度2」、ロコモがさらに進行して社会参加に支障をきたしている「ロコモ度3」に該当するかどうかを判定した。筋骨格系・身体組成の評価や、身体活動・栄養摂取習慣の調査などを行い、ロコモと関連する要因を男女別に検討した。
その結果、413人中86人(20.8%)がロコモと判定され、そのうちロコモ度1が83人、ロコモ度2が3人だった。性別の内訳は男性が31人(16.1%)、女性が55人(24.9%)であり、ロコモの有病率は女性の方が有意に高かった。
男性では、ロコモの人とロコモでない人の間で、片脚立ち(5秒以上)ができない人の割合および位相角(骨格筋の質の指標)に有意な差が見られた。一方、女性の場合は、体脂肪量、体脂肪率、骨格筋量指数(SMI)、運動器の痛み、握力に有意差が認められた。
次に、ロコモであることを従属変数、ロコモの人とロコモでない人で有意差のあった項目(女性の体脂肪量は除外)を独立変数とする二項ロジスティック回帰分析を行い、ロコモと関連する要因を解析した。その結果、男性では片脚立ちができないこと(オッズ比7.326、95%信頼区間2.035~26.370)、女性では運動器の痛み(同2.985、1.546~5.765)および高い体脂肪率(同1.111、1.040~1.186)が、ロコモと有意に関連していることが明らかとなった。
今回の研究で20.8%の人がロコモに該当したことから、若年期よりロコモの予防策を実施し、健康寿命を延ばすことの重要性が示された。著者らは、生活習慣の質はロコモの関連要因として示されなかったことを挙げ、中高年者との違いにも言及している。若年者のロコモの予防策として、「男性ではバランス能力を高めること、女性では体幹の筋肉を強化することが効果的である可能性がある」とし、さらに、「運動器の痛みについて整形外科専門医に相談し、適切な治療を受けることも重要だ」と述べている。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
8月 07 2024 女性では短時間睡眠がNAFLD発症と関連
女性では、短時間睡眠が非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)の危険因子であるとの研究結果が発表された。日本人を対象とする縦断研究として、福島県立医科大学医学部消化器内科学講座の高橋敦史氏らが行った研究であり、「Internal Medicine」に4月23日掲載された。
NAFLDの発症や進行には不健康な生活習慣が関連しており、食習慣や運動などの身体活動に関するエビデンスは確立されている。一方で、睡眠時間とNAFLDのリスクとの関連については研究結果が一致せず、明らかになっていない。
非アルコール性脂肪性肝炎に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、2013年5月~2018年12月に福島県で2回以上の健診を受けた日本人を対象に縦断研究を実施。対象者は、1回目の健診時に33~86歳で、NAFLDを発症しておらず、B型肝炎抗原検査とC型肝炎抗体検査が陰性だった1,862人。そのうち男性は533人(年齢中央値65歳)、女性は1,329人(同64歳)だった。ピッツバーグ睡眠質問票を用いて睡眠時間を評価し、6時間未満、6~7時間未満、7~8時間未満、8時間以上に分類した。NAFLDは腹部超音波検査で評価した。
追跡期間の中央値は男性が39カ月、女性が47カ月であり、全体で483人(25.9%)がNAFLDを発症した。そのうち男性は159人(29.8%)、女性は324人(24.4%)だった。
NAFLD未発症のベースライン時点の生活習慣要因について、NAFLD発症者と非発症者で比較すると、男女ともに、NAFLD発症者は現在喫煙者の割合が有意に高かった。男性では、NAFLD発症者の方が、睡眠薬を使用している人、間食習慣のある人、朝食抜きの人の割合が有意に高く、運動習慣のある人の割合が有意に低かった。女性では、早食い人の割合がNAFLD発症者で有意に高かった。
同様に睡眠時間を比較したところ、女性では、NAFLD発症者の方が非発症者と比べて、6時間未満の人の割合が有意に高かった(23.8%対17.8%)。一方、男性では有意な差は見られなかった。女性について睡眠時間ごとに検討すると、6時間未満の人は7~8時間未満の人と比べて、NAFLD発症者の割合が有意に高かった(30.1%対21.2%)。
次に、睡眠時間とNAFLD発症との関連について、影響を及ぼし得る要因(年齢、性別、BMI、血圧、睡眠薬の使用、喫煙・運動・食事などの生活習慣、AST、ALT、γ-GTP、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、尿酸、HbA1c)を統計学的に調整した上で、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。その結果、睡眠時間が7~8時間未満の女性と比較して、6時間未満の女性におけるNAFLD発症のハザード比は1.55(95%信頼区間1.09~2.20)だった。すなわち女性では、短時間睡眠がNAFLDの独立した危険因子であることが明らかとなった。
著者らは今回の結果に関連して、女性の方が男性と比べて不眠症の有病率が高いことを挙げ、「将来のNAFLDの発症を予防するためには、十分な睡眠時間が必要だ」と述べている。また、糖尿病や肥満などの代謝異常を持つ脂肪肝として、MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)の概念が提唱されていることに言及し、さらなる研究の必要性を指摘している。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
8月 07 2024 オンライン特定保健指導、減量効果は対面に劣らない
2020年度に特定保健指導を受けた人のデータを用いて、オンライン面接と対面面接の効果を比較する研究が行われた。その結果、翌年までのBMI変化量に関して、オンライン面接は対面面接に劣らないことが明らかとなり、特定保健指導にオンライン面接を活用することの有用性が示唆された。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の金森悟氏、獨協医科大学研究連携・支援センターの春山康夫氏らによる研究であり、「Journal of Occupational Health」に5月10日掲載された。
特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、40~74歳の人を対象に、メタボリックシンドロームの予防や解消を目的として実施される。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、オンラインで特定保健指導を行う機会が増えたが、特定保健指導後の体重減量効果について、オンライン面接と対面面接で差があるのかどうかは分かっていなかった。
メタボリックに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、デパート健康保険組合に加入する被保険者の特定健診・特定保健指導データを用いた縦断研究を行った。対象者は、2020年度(2020年4月~2021年3月)にオンライン面接または対面面接による特定保健指導を受け、次年度に特定健診を受けた人1,431人(前年度の初回面接から90日以内の人は除外)とした。特定保健指導は保健師または管理栄養士が行い、動機付け支援の対象者には30分の初回面接、積極的支援の対象者には30分の初回面接後、継続して1、2、3カ月後に20分間の電話面接を行った。
オンライン面接を受けた人は455人(平均年齢49.9歳、男性47.0%)、対面面接を受けた人は976人(同51.1歳、同50.3%)だった。BMIは、オンライン面接群ではベースライン時の27.68から次年度の特定健診時は27.48に低下し、対面面接群では27.61から27.42に低下していた。
BMIの変化を目的変数、面接方法を説明変数とし、傾向スコアを用いた逆確率重み付け推定法で統計学的に解析した結果、オンライン面接は対面面接と比較して劣っていないことが明らかとなった。具体的には、BMIの変化量の差は-0.014(95%信頼区間:-0.136~0.129)で有意差はなく(P=0.847)、この信頼区間の上限は、事前に検討した非劣性マージン(対面面接と比べてBMIの低下量が劣っていないと許容できる上限)の0.175を下回っていた。
以上から著者らは、「特定保健指導において、オンライン面接でも減量効果は変わらないことが示唆されたことから、オンライン面接の活用可能性を広げることができると考えられる」と述べている。また、時間やアクセスの制約を減らすことができるため、オンライン面接を積極的に利用することで、特定保健指導の実施率が高まる可能性があることを付け加えている。
肥満症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。
-
8月 07 2024 うつ病と心血管疾患発症の関連、女性でより顕著
日本人400万人以上のデータを用いて、うつ病と心血管疾患(CVD)の関連を男女別に検討する研究が行われた。その結果、男女とも、うつ病の既往はCVD発症と有意に関連し、この関連は女性の方が強いことが明らかとなった。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らによる研究であり、「JACC: Asia」2024年4月号に掲載された。
うつ病は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などのCVD発症リスク上昇と関連することが示されている。うつ病がCVD発症に及ぼす影響について、性別による違いを調べる研究はこれまでにも行われているものの、その明確なエビデンスは得られていない。
うつ病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。そこで著者らは、日本の外来・入院医療のレセプト情報データベース(JMDC Claims Database)より、2005年1月~2022年5月における健診データが利用でき、18~75歳の人のうちCVDや腎不全の既往のある人などを除いた412万5,720人(年齢中央値44歳、男性57%)を対象とする後方視的コホート研究を行った。初回健診以前にうつ病と診断されていた人を、うつ病の既往ありと定義した。CVDには心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動を含め、これらの複合を主要評価項目として男女別に解析した。
対象者のうち、うつ病の既往のあった人は男性が9万9,739人(4.2%)、女性が7万8,358人(4.5%)だった。平均追跡期間1,288±1,001日(最短1日~最長5,534日)において、CVDは男性で11万9,084件(1万人年当たり発症率140.1)、女性で6万1,797件(同111.0)発症した。
うつ病とCVD発症との関連について、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足の影響を統計学的に調整して解析した結果、うつ病の既往のCVD発症に対するハザード比は、男性で1.39(95%信頼区間1.35~1.42)、女性では1.64(同1.59~1.70)であり、男女ともに有意な関連が認められた。この関連には性別の影響が認められ、女性の方が男性と比べて関連が強いことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。また、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動のそれぞれとうつ病との関連、および性別の影響を解析した場合も、同様の結果が得られた(全て交互作用P<0.05)。
さらに、サブグループ解析として50歳以上と50歳未満に分けて検討した結果と、肥満の有無で分けて検討した結果のいずれにおいても、うつ病の既往とCVD発症との関連は、女性の方が強いことが明らかとなった。また、複数の感度分析を行った結果も一貫していた。
今回の研究により、うつ病とその後のCVD発症の関連は、女性の方がより顕著であることが示された。著者らは、考えられるメカニズムの一つとして、妊娠や閉経など、ホルモンが変化する重要な時期にうつ病を経験しやすいため、女性では心血管系への影響がより大きくなる可能性があると説明。一方で、男女差が生じるメカニズムの完全な解明には、さらなる研究が必要だとしている。著者らは、「うつ病とCVDの関連についての性差をよりよく理解し、うつ病の男性と女性のそれぞれに最適なケアを提供することで、心血管系の健康につながる可能性がある」と述べている。
慢性心不全のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。