• コーヒーが早食いによるメタボリックシンドロームを予防?

     早食いは肥満につながるとされ、健康のためにゆっくり食べることが推奨される。そんな中、新たに日本人を対象として行われた研究によると、1日1杯のコーヒーを飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームを予防できる可能性があるという。これは京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らによる研究結果であり、「Healthcare」に3月7日掲載された。

     メタボリックシンドロームは死亡やさまざまな疾患のリスクを上昇させる。食事のスピードとメタボリックシンドロームの関連が報告されているが、一度身に付いた習慣を変えるのは簡単なことではない。著者らは今回、カフェインやポリフェノール(クロロゲン酸)を含み、さまざまな健康効果が報告されているコーヒーに着目して、コーヒー摂取量、食事のスピード、メタボリックシンドロームの関連について調べた。

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     この研究は、「日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)」の京都における追跡調査(2013~2017年)に参加した3,881人(平均年齢57.5±9.9歳、女性2,498人、男性1,383人)を対象に行われた。「ろ過またはインスタントのコーヒー」と「缶、ペットボトル、パック入りのコーヒー」に分けて、コーヒー摂取量、食事のスピード(遅食い、普通、早食い)のほか、生活習慣や既往歴などが質問票により調査された。

     対象者のうち、15.3%(595人)がメタボリックシンドロームに該当した。また、早食いに該当した人は女性の33.8%(845人)、男性の39.8%(550人)だった。

     年齢や性別、運動・喫煙・飲酒、既往歴による影響を調整して、まずはコーヒー摂取量とメタボリックシンドロームとの関連が検討された。その結果、ろ過またはインスタントのコーヒーでは、摂取量が1日1杯以上の人は1日1杯未満の人と比較して、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低く(オッズ比0.695、95%信頼区間0.570~0.847)、男女別に見ても同様だった。一方、缶・ペットボトル・パック入りのコーヒーでは、女性に関して反対の結果が得られ、1日1杯以上の女性はメタボリックシンドロームのオッズが有意に高かった(同2.056、1.110~3.811)。食事のスピードとの関連については、早食いの人は遅食いの人と比べてメタボリックシンドロームのオッズが有意に高く(同1.689、1.227~2.324)、男女とも同様の結果だった。

     次に、ろ過またはインスタントのコーヒー摂取量と食事のスピードを組み合わせて、メタボリックシンドロームとの関連が分析された。コーヒー摂取量が1日1杯未満で早食いの人と比べた結果、1日1杯未満で遅食いの人ではメタボリックシンドロームのオッズが有意に低かった(同0.502、0.296~0.851)。一方、コーヒーを1日1杯以上飲む人では、遅食い(同0.448、0.289~0.693)、普通(同0.482、0.353~0.658)、早食い(同0.684、0.499~0.936)のいずれの場合でも、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低いことが明らかとなった。

     今回の研究について著者らは、コーヒーの詳細(カフェインレスかどうか、砂糖やミルクの有無など)や、飲むタイミングなどは評価していないことを説明。その上で、結論として「ろ過またはインスタントのコーヒーを1日1杯以上飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームの予防に役立つ可能性が示唆された」と述べている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2024年4月26日
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  • コロナワクチンに不安のあるがん患者の相談相手は?

     外来で化学療法を受けるがん患者を対象に、新型コロナワクチンに関して不安を感じることの内容やその相談相手などが調査された。その結果、相談相手としてプライマリケア医が最も多いことが明らかとなった。研究グループは、薬剤師が介入できる可能性も示唆されたとしている。これは順天堂大学医学部附属順天堂医院薬剤部の畦地拓哉氏らによる研究であり、「Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences」に3月4日掲載された。

     新型コロナワクチンは日本で2021年2月に承認され、がん患者において接種が推奨されている。しかし、がん患者のワクチン接種状況や副反応に焦点を当てた研究はほとんどない。患者はがん治療への影響も含めて多くの不安を抱えるため、医療職の関与が重要となる。

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     著者らは今回、順天堂大学医学部附属順天堂医院で外来化学療法を行い、2022年10月~2023年1月に薬剤師の服薬指導を受けたがん患者を対象としてオンライン横断調査を行った。無記名の質問紙を用いて、新型コロナワクチンの接種歴や副反応、ワクチン接種に関する不安の内容、相談相手や情報の入手源などを調べた。

     調査の回答者は60人(男性16人、女性44人)であり、年齢層は40歳未満が3人、40~49歳が15人、50~59歳が21人、60~69歳が13人、70~79歳が8人。主ながんの種類は、乳がん(21人)、卵巣がん(9人)、肺がん(6人)、膵がん(5人)、子宮がん(5人)などだった。

     不安の内容として、「がん治療がスケジュール通りにできないのではないか?」(29人)、「がんなので特別な副作用がでないか?」(24人)などの回答が多かった。一方、調査時点でワクチンを2回以上接種していた人の割合は96.7%(58人)であり、これは同時期の日本全体の接種率よりも高かった。副反応は注射部位の痛みが最も多く、全身症状は発熱と倦怠感が多かったが、がんの治療スケジュールに影響があった人はほとんどいなかった。

     ワクチンについての相談相手・情報入手源としては、プライマリケア医(25人)、家族・親族(22人)、インターネット(15人)、テレビ・ラジオ(13人)、友人・知人(12人)の回答が多かった。その他、医療職に関する回答は、プライマリケア医以外の医師と看護師はどちらも4人、病院薬剤師は1人のみで、薬局薬剤師やケアマネジャーの回答はなかった。

     さらに、各相談相手について、今後ワクチン接種に不安を感じたときにどの程度相談しやすいかが検討された。6段階の回答を点数化・平均し、医療職間で比較すると、最も相談しやすいのはプライマリケア医(3.55点)、次に看護師(3.20点)だったが、どちらも病院薬剤師(2.85点)との統計的な有意差はなかった。また、病院薬剤師とプライマリケア医以外の医師(2.50点)や薬局薬剤師(2.27点)との間にも有意差は認められなかった。

     以上、病院薬剤師は相談相手としての回答自体は少なかったが、プライマリケア医、看護師の次に相談しやすいとされたことについて著者らは、「外来化学療法時の服薬指導や有害事象のモニタリングを通じて築かれた信頼関係による可能性がある」と説明。また、がん患者の多くはプライマリケア医に相談した場合にも、ワクチンに対して不安を抱いていることが示されたという。患者はワクチン接種後の発熱や治療薬との相互作用などを不安に感じるが、「一般集団との間で副反応に有意差がないことを経験として伝えることも不安を和らげる上で有益」とし、薬剤師が介入できる可能性を示す結果だったと総括している。

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  • 妊婦の抑うつ、不安、オキシトシンが子どもへの情緒的絆に影響

     妊娠中の母親の抑うつや不安、唾液中オキシトシン濃度が、子どもに対する情緒的な絆に影響する可能性を示唆する研究結果が新たに報告された。この研究は大阪大学大学院ウィメンズヘルス科学教室の渡邊浩子氏、金粕仁美氏らによるもので、「Archives of Women’s Mental Health」に2月26日掲載された。

     子どもに対する情緒的な絆を「ボンディング」という。この情緒的な絆が十分に形成されない状態は、ボンディング障害やボンディング不全と呼ばれる。周産期のメンタルヘルスにおいてボンディング障害は重要な問題であり、産褥期に子どもに対する拒絶や怒りの感情を経験することもある。育児行動にも影響を及ぼすことから、ボンディングの改善は子ども虐待の防止にもつながる。

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     著者らは今回の研究で、京都府の1つの医療機関において、初産婦、20~40歳、精神疾患の既往がないなどの基準を満たす妊婦を対象に、妊娠中のメンタルヘルスやホルモン濃度と産後のボンディングとの関連を検討した。妊娠中期に抑うつと不安の状態を評価し、血中コルチゾール濃度と唾液中オキシトシン濃度を測定した。ボンディングは、「赤ちゃんをいとしいと感じる」「赤ちゃんのことが腹立たしくいやになる」などの質問(10項目)からなる「赤ちゃんへの気持ち質問票(MIBS-J)」を用いて、産後2~5日、1カ月、3カ月の時点で評価した。なお、MIBS-Jは得点が低いほどボンディングが良好であることを示す。

     評価対象者66人(平均年齢31.8±3.8歳)のうち、妊娠中に抑うつのあった人(エジンバラ産後うつ病質問票による評価で9点以上)は14人(21.2%)、不安のあった人(状態・特性不安検査による評価で42点以上)は19人(28.8%)だった。ホルモン濃度の中央値(四分位範囲)は、コルチゾールが21.0(16.6~24.1)μg/dL、オキシトシンが30.4(19.2~114.2)pg/mLという結果が得られた。

     ボンディングの指標であるMIBS-Jの得点の中央値(四分位範囲)は、産後2~5日が2.00(1.00~3.00)、1カ月が1.00(0.00~3.00)、3カ月が0.00(0.00~2.00)だった。すなわち、ボンディングは産後2~5日および1カ月の時点では低いが、3カ月の時点で有意に高くなることが示された。

     次に、MIBS-Jの得点と関連する要因が検討された。産後2~5日では、産後の社会的支援、妊娠中の抑うつ、不安、オキシトシン濃度の4つが、MIBS-Jの得点と有意に関連していることが明らかとなった。産後1カ月の時点では、世帯収入、流産歴、産後の社会的支援、妊娠中の不安の4つが有意に関連していた。3カ月の時点では、有意な関連が見られたのは産後の社会的支援のみだった。妊娠中のコルチゾール濃度に関しては、いずれの時点でもMIBS-Jとの有意な関連は認められなかった。

     以上の結果から著者らは、「妊娠中の抑うつ、不安、唾液中オキシトシン濃度の低さは産後2~5日のボンディングの低下を予測し、妊娠中の不安は1カ月時点のボンディングの低下も予測する」と結論。妊娠中にこれらをスクリーニングすることで、ボンディング障害のリスクを評価し、介入できる可能性があると述べている。また、産後の社会的支援が全ての時点でボンディングの高さと関連していたことから、その重要性についても指摘している。

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  • 2型糖尿病患者の消化器症状は不眠症と関連

     糖尿病患者には、上部消化器症状(胸やけ、胃痛、胃もたれなど)や下部消化器症状(便秘、下痢など)がしばしば見られる。日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、これらの消化器症状が患者の不眠症と強く関連していることが判明した。これは京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の南田慈氏、岡田博史氏、福井道明氏らによる研究結果であり、「Journal of Diabetes Investigation」に3月5日掲載された。

     消化器症状は、糖尿病患者におけるQOL低下の一因である。一方、夜間頻尿により睡眠が中断されることや、糖尿病神経障害による痛み、夜間の血糖値の急激な変化、抑うつなどを伴うことで、糖尿病患者には不眠症が生じ得ることも報告されている。しかし、糖尿病患者における消化器症状と不眠症の関係についてはこれまでにほとんど検討されていない。

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     そこで著者らは、「KAMOGAWA-DMコホート研究」に参加している2型糖尿病患者を2014年1月~2022年1月に登録し、横断研究を行った。消化器症状の評価には、胸やけ、胃痛、胃もたれ、便秘、下痢の5つの症状を評価する「出雲スケール」を用いた(各症状とも3つの質問項目から0~15点で評価され、スコアが高いほど症状が悪い)。また、睡眠は「アテネ不眠症尺度」で評価し、合計スコア6点以上または睡眠薬を使用している場合を不眠症と定義した。

     解析対象者は175人(男性100人、女性75人)、年齢中央値は66歳(四分位範囲57~73歳)で、そのうち68人が不眠症に該当した。不眠症の人はそうでない人と比べ、収縮期血圧および拡張期血圧が有意に高かった。

     出雲スケールの結果を比較すると、総スコアの中央値(四分位範囲)は、不眠症の人の方がそうでない人よりも有意に高く、それぞれ14点(5.25~20.75点)と5点(2~10点)だった。症状ごとの結果も同様で、胸やけは2点(0~4点)と0点(0~1点)、胃痛は0点(0~4点)と0点(0~0点)、胃もたれは2点(0~4点)と0点(0~2点)、便秘は4点(2~6点)と2点(0~4点)、下痢は3点(1~5点)と1点(0~3点)であり、全て不眠症の人の方が有意に高かった。

     次に、不眠症と関連する要因がロジスティック回帰分析により検討された。年齢、性別、BMI、収縮期血圧、HbA1c、糖尿病神経障害、インスリン療法、夜間頻尿の影響を調整した解析の結果、出雲スケール総スコアの1点上昇ごとのオッズ比(95%信頼区間)は1.10(1.06~1.16)であり、不眠症と有意に関連することが明らかとなった。同様に、症状ごとのスコアについても有意な関連が認められ、オッズ比は胸やけ1.32(1.13~1.55)、胃痛1.38(1.16~1.63)、胃もたれ1.33(1.13~1.56)、便秘1.21(1.08~1.36)、下痢1.29(1.12~1.47)だった。

     以上の結果から著者らは、「消化器症状は2型糖尿病患者の不眠症と強く関連している」と結論。また、糖尿病患者の睡眠障害は血糖コントロールやQOLに影響を及ぼす可能性があることから、「消化器症状の管理に注意を払う必要がある」と指摘している。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2024年4月22日
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