糖尿病性腎症の診断プロセスについて
糖尿病でもっとも危惧されている点が「合併症」。
その中でも糖尿病3大合併症のひとつとして知られているのが「糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)」です。
では、この糖尿性腎症の疑いがあった場合どのような検査を行い、診断していくのでしょうか?
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糖尿病性腎症の早期診断基準
糖尿病性腎症を患った方のほとんどは、すでに糖尿病と診断されていますが、腎症は初期段階で自覚症状が少ないため、身体症状に気がついたときには病気もかなり進行しているケースが多く見られます。症状だけでなく、医療機関で自分の『数値』を知ることも重要なポイントです。
そのため試験紙法で検査し尿蛋白が陽性1+程度だった糖尿病患者の方は、尿中アルブミンを指標として診断を行っていきます。
※尿中アルブミンとは、尿に出てくるタンパクのことです。糖尿病性腎症は腎臓の機能が悪くなり、老廃物の濾過が正常に行われないので尿中にタンパクが混ざります。(吹き出しでお願いします)
尿中アルブミンの指数が腎症診断に有効な方法として広く知られているのです。
糖尿病性腎症の検査内容
糖尿病性腎症において、早期診断基準は『尿中アルブミン』が挙げられていますが、尿検査以外の検査も存在します。
次に尿中アルブミンの詳しい数値や尿検査以外の方法についても触れていきましょう。
尿検査で尿中アルブミンを測定する
前述で紹介したように、糖尿病性腎症の検査としてまず行われるのが尿検査によって尿中アルブミンを測定する方法です。
糖尿病性腎症は、5段階の病期に分けられています。
- 第1期(腎症前期)/正常アルブミン尿(30未満)
- 第2期(早期腎症期)/微量アルブミン尿(30~299)
- 第3期(顕性腎症期)/顕アルブミン尿(300以上)または持続性蛋白尿(0.5以上)
- 第4期(腎不全期)/問わない
- 第5期(透析療法期)/透析治療中
尿中アルブミンが30mg/gCr以上が微量アルブミン尿として、第2期である早期腎症と診断されます。また尿中アルブミンが増加して、300mg/gCr以上になった場合は第3期である顕性腎症・アルブミン尿(持続性蛋白尿)と診断します。
第3期である顕性腎症以降になると、腎臓機能の低下が見られるため、血中クレアチニンから診断するケースが増えてくるようです。
血液検査で血値クレアチニン値を測定する
腎症の経過や症状は人それぞれ異なり、また糖尿病も患っているため、尿検査と合わせて血液検査で血清クレアチニン値(eGFR)も測定します。
尿中アルブミンの数値に異常が見られない人も、血清クレアチニン値に異常が見られるケースもあるからです。
※血清クレアチニン値とは筋肉で作られる老廃物の一種で、腎臓の糸球体から排泄されます。よって血中のクレアチニンが増加している場合は、糸球体の濾過機能が低下しているサインとして知られているのです。(吹き出しでお願いします)
ただし、筋肉量が多い人は高く、逆に筋肉量が少ない人は低くなるので、年齢と性別によって判断基準も異なってきます。
まずは自分のeGFRを確認してみましょう!こちらのサイトさまで、簡易計算ができるので参考にしてみてください。
⇒自分のeGFRを確認する
医師による問診
糖尿病性腎症を診断するうえで、
- 尿検査で尿中アルブミンを測定する
- 血液検査で血値クレアチニン値を測定する
上記2つの方法は絶対的に行うと考えていてもよいでしょう。
また、数値だけでなく、
- 糖尿病の経過
- 生活習慣
- 身体症状
など医師による問診も合わせて行い、腎症を診断していきます。
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糖尿病性腎症の検査はどのタイミングで検査すべきか?
糖尿病性腎症は糖尿病の3大合併症の中でいちばん発症率が高い病期と言われています。そのうえ、糖尿病性腎症は初期の段階で自覚症状が少ないため、早期発見・早期治療が難しい傾向にあるのです。
「もしかして…腎症かも?」と疑いが出てから検査を行うのではなく、
糖尿病の定期的な受診の中で、合併症発症への不安を打ち明け、定期的に検査を行ってもらうのが、最善の策だと考えられています。
糖尿病の経過観察に合わせて、合併症を発症していないか確認してもらいましょう。
また検査だけでなく、生活習慣や食生活に注意することで糖尿病性腎症のリスクを抑えられます。
まとめ
糖尿病性腎症が重症化すると、透析療法が必要となったり生活の中での制限も厳しくなります。
あわせて、他の病気の発症率もアップする可能性が出てくるのです。
- 日頃の生活習慣に気を配る
- 正しい知識を身につける
- 定期的な検査を行う
上記のポイントを抑えて、糖尿病性腎症を予防しましょう。
日本透析医学会が2015年に行った調査では、国内で透析療法を受けている患者数が32万人を超え、そのうちの44%が糖尿病性腎症が原因となって透析を開始したという結果が出ています。ここでは、食生活や生活習慣などを中心とした糖尿病性腎症の予防方法について取り上げます。