疾患のセルフチェック法

デュシェンヌ型筋ジストロフィーのセルフチェック方法

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、発症年齢が2~3歳の幼児期と早い時期のため、初期症状である歩き始めるのが遅い、言語をなかなか喋れないなどの症状がでていても、遅れが軽いために見過ごされてしまう傾向にあります。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、他の種類の筋ジストロフィーと比べると、進行が早く重症化しやすい特徴があります。ベッカー型筋ジストロフィーは青年期に発症し、症状は比較的軽いのです。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーであるのならば、早く発見するに越したことはありません。
早期に発見して、早期から治療に取り組むことが大切です。
そこで、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのセルフチェックについて解説いたします。

  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィーのチェックシート
  2. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断
  3. デュシェンヌ型筋ジストロフィーのステージ(病期)
  4. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療
  5. まとめ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーのチェックシート

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、家族歴が特にない、血液検査をしていないとなかなか発見されません。デュシェンヌ型筋ジストロフィーが疑われるのは、下記の状況がある時です。
この3つの状況が無いかをチェックしてください。

筋肉機能に問題がある
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの特徴的なガワーズ徴候といって、床から立ち上がる時に手を膝に押し当てないと立ち上がれない。腰を左右に揺すって歩く動揺性歩行や、つま先立ちで歩行する。階段を登っても、一段ごとに両足を揃えてしまい、交互に足を出して登ることができない。

クレアチンキナーゼ(CK)の値が高い
クレアチンキナーゼの値は血液検査で分かります。たまたま他の疾患で血液検査をして見つかることがあります。クレアチンキナーゼの値が正常の10倍以上と高いと、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを強く疑われます。

ASTとALTの値が高い
ASTとALTは肝酵素です。血液検査で分かります。肝酵素のASTとALTは、筋繊維に含まれるので、筋ジストロフィーだと上昇するのです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断

デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断するには2つの検査を行います。
遺伝子検査と筋生検です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因が遺伝子の変異にあることから、遺伝子検査は必ず必要になってきます。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンと呼ばれる筋肉の細胞を作るタンパク質の遺伝子が変異することで起こるのです。

ジストロフィン遺伝子について
遺伝子は、私たちの体を作っている細胞に染色体という形で入っています。遺伝子の情報を元にして様々なタンパク質が作られ、生命活動を行っているのです。
ジストロフィン遺伝子は、タンパク質を作り出す働きをします。
しかし、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者は、この遺伝子が変異していて欠損があるのです。
欠損があるために正常に働かず、ジストロフィンというタンパク質をつくることができないのです。
ジストロフィンは、筋肉細胞で重要な働きをするものです。
ジストロフィンが無いと、細胞を包む膜が破壊されてしまい、その結果筋肉細胞が死んでしまうことになるのです。
筋肉細胞が死ぬと、それを補うために新しい細胞が再生します。
しかし、遺伝子に欠損があるのでジストロフィンを作ることができず、いずれ細胞が破壊されてしまうのです。
破壊されるスピードが再生するスピードを大きく上回ると筋力が低下していきます。筋肉が萎縮消失してしまい、様々な運動機能の障害がでてくるのです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーのステージ(病期)

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、遺伝子が変異することで、筋肉細胞で重要な役割をするジストロフィンを作ることができません。
そのため、筋力はどんどん低下していき、症状が進行していきます。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのステージを解説いたします。

ステージ1 無症状期
発達障害がみられることがあるが、歩行に障害はありません。
家族歴や血液検査で偶然にクレアチンキナーゼ(CK)の値が高いことで診断されることがあります。

ステージ2 歩行可能前期
床から立ち上がる時に手を膝に押して当てて立ち上がるガワーズ徴候、腰を左右に揺すって歩く動揺性歩行、つま先で立ち歩行が見られることもあります。階段昇降はできます。

ステージ3 歩行可能後期
歩行が困難になり、階段昇降や床から起き上がることができなくなります。

ステージ4 歩行不能前期
自力で歩くのは短時間ならできます。姿勢保持は可能です。背骨が左右に湾曲する側弯が出ることもあります。

ステージ5 歩行不能後期
上肢の機能と姿勢保持機能に制限がでてきます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは筋肉が壊れることで、全身に機能障害や合併症がでる疾患です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの平均寿命は1980年代には10歳代後半でしたが、現在では医療が普及したおかげで30歳代半ばやもっと長く生きる人も出てきています。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因となる変異した遺伝子を持っていても、女性は発症しないことが多く、発症するのはほとんどが男性です。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断されると、その時点から生涯にかけて医療が必要になってきます。デュシェンヌ型筋ジストロフィーに必要なケアは多岐に渡っています。

①リハビリテーション
②ステロイドなど薬物治療
③呼吸ケア
④心筋障害治療
⑤拘縮・変形・外傷などの外科的治療
⑥消化管障害・嚥下機能障害・栄養障害に対する治療
⑦発達障害の治療
⑧歯学的異常の治療
⑨心理社会的ケア

まとめ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーを疑うのは、筋肉機能に問題がある、クレアチンキナーゼ(CK)の値が高い、ASTとALTの値が高い場合です。
セルフチェックする場合は、この3つを目安にしてください。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断には、遺伝子検査と筋生検が用いられます。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーには症状が進行していくステージ(病期)があり、それに沿った様々な医療が必要になってくるのです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断プロセスに関する詳しい解説はこちら

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断プロセスの基本情報を掲載。男性、女性の発症。初期症状。原因や酒類、遺伝などの因果関係など病気に関する情報、診断のガイドラインなどを説明しています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断プロセス

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