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デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連する基本情報

皆さんは「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」という病名を聞いたことがあるでしょうか。

カタカナを含んだ長い病名になります。「筋ジストロフィー」だけならば聞いたことがあるかもしれません。おそらく筋肉の病気だということは推測できるかもしれませんが、病気の詳しい内容は知らない人が多いです。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの病気について、症状や治療も含めて解説したいと思います。

  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィーとはどのような病気か?
  2. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状チェック
  3. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療
  4. デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて役立つサイト
  5. まとめ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとはどのような病気か?

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋ジストロフィーの一種です。筋ジストロフィーは、筋肉の疾患の総称をのことをいいます。
筋ジストロフィーは、手足の筋肉の組織が徐々に壊死と再生を繰り返して壊れていき、筋力が低下してしていく病気です。
原因は、正常の筋肉に必要な遺伝子が変異することが関わっています。
進行すると筋肉や関節が固まってしまい、歩行などの運動機能に障害がでてきます。
心臓や呼吸などの内臓機能にも問題を起こします。呼吸をする筋肉が衰えると、人工呼吸器を使うことになるのです。

筋ジストロフィーは、発症年齢などによって、さまざまな型に分かれています。
筋ジストロフィーの主な型に、デュシェンヌ型筋ジストロフィーとベッカー型筋ジストロフィーがあります。どちらも女性は発症せず、男性が発症することがほとんどです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは?
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、小児に発症する筋ジストロフィーの中でもっとも頻度が高いものです。幼児期に発症し、進行が早く重症にいたります。

ベッカー型筋ジストロフィーとは?
ベッカー型筋ジストロフィーは筋ジストロフィーの中でも症状は軽いものです。青年期に発症します。

遺伝子について
デュシェンヌ型筋ジストロフィーには、変異した遺伝子が関わっています。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因は、変異した遺伝子を親から受け継ぐことで発症してしまうのです。
親から受け継いだ遺伝子は、X染色体上に保有されます。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーがほとんど男性にしか発症しないのは、男性のX染色体が1本しかないからです。
女性はX染色体が2本あるため、片方のX染色体に変異した遺伝子が保有されても、もう片方のX染色体にある遺伝子が正常であれば、異常な部分は補われます。
その結果、変異遺伝子を持っている女性でも、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症することがないのです。
男性はX染色体が1本のため、変異した遺伝子を補うことができないのです。

筋肉の壊死と再生
筋肉というのは、筋繊維という組織が集まってできています。
筋繊維はとても細く、20個集まってようやく1mmの太さになるくらいなのです。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーをふくめて筋ジストロフィーを発症すると、この筋繊維がとても壊れやすくなります。
筋肉の組織の一部が死んでしまうことを壊死(えし)というのですが、壊死と再生を繰り返すことになります。
筋繊維が壊れても再生できると筋肉が減ることはありませんが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーをふくめた筋ジストロフィーの人の筋肉は、破壊するスピードが速く、壊死と再生を頻繁に繰り返すのです。
そのため、筋肉の再生が追い付かなくなってしまい、筋肉量が減っていくのです。
筋肉の再生を繰り返す時に、筋肉が線維化して硬くなると柔軟性がなくなり、関節も硬くなってしまいます。
関節が硬くなると運動機能に障害が出てくるようになってしまうのです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状チェック

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは2~3歳という幼児期に発症します。
病気に気づくきっかけは、運動機能がスムーズにいかない特徴があります。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーかも!? 症状をチェックしよう
以下の症状に思い当たる項目が多い場合、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである可能性が考えられます。
気づいた時は、早めに病院を受診してください。

①  歩き始めるのが遅い
②  走れない
③  階段を上れない
④  転倒することが多い
⑤  ガワーズ徴候(膝に手をつかないと立ち上がれない)
⑥  仮性肥大(ふくらはぎがししゃものような形になり太くなる)
⑦  関節拘縮(関節が硬くなる)
⑧  呼吸機能が落ちる
⑨  心臓機能が落ちる

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、5歳頃になると運動機能が徐々に低下していきます。
10歳になると、歩くのが困難になるので、車いすを使ってサポートすることになるのです。
思春期になると、呼吸するための筋肉が衰えるので、うまく呼吸ができなくなります。人工呼吸器を使ってサポートすることになるのです。
心臓の筋肉も徐々に低下するので、心臓の合併症を起こしやすくなります。
どんどん体全体の筋肉が低下していきます。
歩くことができるステージ1から体を動かすこともままならないステージ8まで、障害の度合いによって分けられています。

車いすと人工呼吸器でサポートをするので、生命予後や寿命は延びていますが、30歳以上になって生存している人は少ないのが現状です。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療

デュシェンヌ型筋ジストロフィーが完治する治療法はありません。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療は、これ以上悪くならないように予防する、症状が出てきたときに症状に沿った対症療法を行うことが主になってきます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの検査と診断
血液検査
血液検査は、血液中のクレアチンキナーゼという酵素の濃度を測ります。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、クレアチンキナーゼが筋肉の細胞から漏れ出ることで、血中濃度が高くなるのです。

生検
筋肉の一部を採取して顕微鏡で筋肉中に含まれるジストロフィンの量を確認します。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合は、ジストロフィンの量が異常に少ないのです。
筋肉を観察することで、壊死した組織や以上に大きい筋繊維がみられることもあります。

心電図
不整脈など心臓に問題が無いかを調べます。

胸部レントゲン
脊椎の曲がり方や心不全による心臓が拡大していないかを調べます。

針筋電図
筋肉に針を刺すことで、筋肉がどの程度動くのかを調べることができます。

遺伝子検査
遺伝子に異常が無いかを調べます。デュシェンヌ型筋ジストロフィーかベッカー型筋ジストロフィーの患者の家族が、自分の遺伝子に異常が無いか検査を受けることもできるのです。
胎児に対しても生前検査ができ、その子が将来デュシェンヌ型筋ジストロフィーやベッカー型筋ジストロフィーに罹患する可能性についても知ることができます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法には運動などの理学療法や手術療法、薬物療法があります。

理学療法
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の壊死と再生を繰り返すので、筋力が低下していきます。
関節も硬くなるので、拘縮や変形などが進みます。
早い時期から理学療法などの運動や、足関節に装具の装用などをすることで、ある程度阻止することができるのです。
軽めのストレッチをして筋力を維持して予防することも大切です。
立つ、歩くなどの能力を維持するために、下肢装具が役に立つこともあります。

手術療法
筋肉が硬くなる、関節が硬くなることで痛みを伴うこともあるので、筋肉を緩める目的や脊柱の側彎症をもとに戻すためには手術をすることもあります。
呼吸が困難になってきたら、首の前側を気管切開して合成樹脂製のチューブを気管に通して人工呼吸器につなげる手術が必要になりこともあるのです。

薬物療法
心疾患の進行を予防する、高血圧の治療、筋力を改善するためにステロイドなどの薬物療法を行います。
心臓に問題を抱えている場合は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やベータ遮断薬が投与されることもあるのです。
いちじるしく筋力が低下している時には、プレドニゾロンが投与されることもあります。
一時的に筋力の改善はみられますが、長期間使用すると副作用の問題が出てきてしまうのです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて役立つサイト

デュシェンヌ型筋ジストロフィーだと診断された、あるいは疑いがある場合に役立つサイトをいくつか紹介します。

日本筋ジストロフィー協会
⇒詳細はこちら

病気やその周辺で困ったことなどが、電話やメールで相談できます。
筋ジストロフィーの人が日常生活を送るうえで便利なグッズの情報や、住宅改修例などの情報が掲載されているので、とても参考になります。

特定非営利活動法人 筋強直性ジストロフィー患者会
⇒詳細はこちら

筋ジストロフィーの診断を受けた患者さんや家族のコミュニケーションの場を提供する患者会です。
日本各地でセミナーや交流会を行っており、情報収集の手段を提供しています。

役立つサイト
筋ジスですが何か?
⇒詳細はこちら

ベッカー型筋ジストロフィーの方のブログです。難病でも仕事もやりたい事もやるというパワフルな生き方で元気づけられます。
大阪で「難病カフェ」も開催しています。

朝日新聞 筋ジストロフィーに関するトピックス
⇒詳細はこちら

筋ジストロフィーという不自由な体でも夢に向かって頑張っている人、筋ジストロフィーに関するニュースなどを知ることができます。

治験について
筋ジストロフィーの治療薬は現存していないので、治験を受けることによって、新薬の開発が進んでいきます。
治験によって効果と安全性が証明されたら、多くの筋ジストロフィーの方を救うことができます。

以下のページのように、患者登録をして治験を募集しているところもあります。参加できそうな場合は積極的に参加してみてください。

一般社団法人日本小児神経学会
⇒詳細はこちら

神経・筋疾患患者登録 Remudy
⇒詳細はこちら

まとめ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは完治することがない難病です。原因には遺伝が大きく関わっているので、筋ジストロフィーの家族がいる場合、運動障害などの気になる症状がある場合は、一刻も早く病院を受診することをおすすめします。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの基本情報についての詳しい解説はこちら

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは?気になる病気の症状や原因などの基本情報をまとめています。難病と指定されているこの病気のメカニズムや現在で考えらえる治療法を詳しく解説しています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは?症状の基本情報

参考サイト:リンク1リンク2
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