肺がんの診断プロセス・検査内容について

肺がんと確定診断がでるまでには、様々な検査が行われます。検診などで肺がんの疑いが出ていても、精密検査の結果によっては問題がないこともあります。そこで、「肺がん」と診断がつくまでのプロセスを肺がんの検査内容と合わせて解説していきます。

  1. 肺がんの診断
  2. 肺がん診断の検査項目
  3. 肺がんの検査はどのタイミングで受けるべき?
  4. まとめ
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肺がんの診断

検診や健康診断の結果、または自覚症状で肺がんの発生が疑われる場合に精密検査が行われます。肺がんのリスクになるものや、肺がんでみられる症状には以下のようなものがあります。

<肺がんのリスク要因>

  • 喫煙
  • 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の既往歴あり
  • アスベスト、ヒ素、クロロメチルエーテル、ラドン、ニッケル、クロム酸を取り扱う職業の就業歴あり
  • 肺がんの既往歴あり
  • 肺結核の既往歴あり
  • 50歳以上(肺がん検診は40歳から推奨)
  • 家族の肺がん既往歴あり

<肺がんでみられる症状>

  • 喀痰
  • 血痰
  • 咳こみ
  • 呼吸困難
  • 発熱
  • 胸痛 
    など

肺がん診断の検査項目

肺がんの検査では、まず肺がんを疑った時に行う一般的な検査と、肺がんの診断をしたり、治療開始前に行ったりする確定検査の2種類があります。

<肺がんの疑いがある場合に行う検査>

  • 胸部X線検査(胸部レントゲン検査)
  • 胸部CT検査
  • 喀痰細胞診
  • 腫瘍マーカー(血液検査)

<確定診断に使われる検査>
確定診断では、肺がんが疑われる場所の細胞や組織を採取して、細胞診と呼ばれる細胞の組織を顕微鏡で観察する検査で肺がんの判断を行います。そのために行われるのが生検と呼ばれる細胞を採取する検査です。

気管支鏡検査(経気管支生検)
鼻や口から内視鏡を挿入して、気管・気管支の状態把握と細胞採取を行う方法です。肺組織のうち気管支の太い場所にがんが発生している「肺門型肺がん(中枢型肺がん)」の疑いがある場合に勧められます。

また、検診時に肺結節がみつかり確定診断を行う場合にも用いられます。

胸腔鏡検査(胸腔鏡下生検)
胸腔鏡検査は、麻酔を使って皮膚に数センチの穴をあけ、そこから観察や細胞採取を行います。主に、胸膜に近い場所に肺がんの疑いがある場合に用いられる方法です。

また、気管支鏡検査(経気管支生検)や経皮肺検査(経皮生検)で診断が難しい場合にも用いられることがあります。患者さんに大きな負担を与える検査のため、施行には十分な考慮が必要です。

経皮肺検査(経皮生検)
体の外側から直接針を刺して、病変が疑われる場所の細胞を採取する方法です。気管支鏡検査(経気管支生検)で診断が難しかった肺結節や、左右の肺の間にある縦郭(じゅうかく)に肺がんの疑いがある場合に有効な検査です。

しかし、ほかの検査方法に比べて気胸や腫瘍細胞が広がるなどの合併症のリスクがあるため、施行の際は十分に考慮することが求められます。主な合併症は気胸が16~52%、出血が8~23%程度となっています。

開胸生検
全身麻酔を使い手術と同じ要領で開胸を行い、細胞を採取する方法です。胸腔鏡検査(胸腔鏡下生検)と同様に、患者さんに与える負担が非常に大きいため、他の検査では診断ができない、他の病気との鑑別のためなど、検査の必要性を十分に考慮したうえで実施されます。

<細胞診の種類>

喀痰細胞診
痰を採取して、その中にがん細胞が含まれていないかどうかを調べます。

擦過細胞診
病変の細胞をブラシで擦りとり、それをスライドガラスにこすりつけて標本をつくる方法です。

洗浄細胞診
主に手術中に行われる方法で、胸腔に生理食塩水を入れてその洗浄液内にある細胞を調べる方法です。

胸水細胞診
胸水内に含まれる細胞を調べる方法です。

穿刺吸引細胞診
病変に注射針などを指して、細胞を吸引して検査する方法です。

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肺がんの検査はどのタイミングで受けるべき?

肺がんは日本人のがんによる死亡率の中でもトップであることから、定期的に検査を受けることが推奨されています。肺がんの検査を受けるタイミングが分からない方は、以下のタイミングを参考に受診しましょう。

肺がんの症状が出ている場合は早めに呼吸器内科を受診
肺がんは、自覚症状が乏しく特に肺がん初期の場合は自覚症状がほとんどないということは珍しくありません。逆に、症状が出ている場合は病態が進んでいる可能性が高いともいえます。

自覚症状には個人差がありますが、喀痰、血痰、咳こみ、発熱、呼吸困難などの症状を自覚している場合は、早めに呼吸器内科を受診するようにしましょう。

40歳を過ぎたら1年に1回は肺がん検診を受けましょう
厚生労働省では、40歳を過ぎたら肺がん検診を受けるように推奨されています。肺がんの好発年齢は高齢になるほど高くなりますが、発症は40歳後半から増える傾向にあります。自覚症状の少ない初期の段階で、肺がんを見つけて治療することが大切なため、自覚症状がなくても1年に1回は定期的に検診を受けることが重要です。

特に、喫煙者や肺がんリスク要因を持っている人は早期発見・早期治療に繋がる肺がん検診をしっかりと受診しましょう。

まとめ

肺がんは、初期段階で見つけて治療を開始すれば約8割が完治する病気です。しかし、肺がん初期は自覚症状が乏しく、症状を自覚するようになった段階ではすでに病態が進行している可能性が高くなっています。そのため、40歳を超えてからは地方自治体や保健所が行っている肺がん検診や、会社の健康診断などを使って1年に1回の定期的な肺がん検診を受けるようにしましょう。

肺がんの予防法に関する詳しい解説はこちら

がんの中でも最も高い死亡率となっている肺がんは、がんを発症する前の段階から発症のリスクを減らしておくことが大切です。そこで今回は肺がん予防効果が高いといわれている「禁煙」と「肺がん検診」を中心に、予防方法についての基本情報を説明していきます。

肺がんの予防方法について

参考サイト:
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