日本人の糖尿病関連腎臓病、研究で病原性変異が明らかに

 糖尿病関連腎臓病(DKD)は2型糖尿病の長期合併症であり、心血管系合併症や死亡率の高さに関連している。今回、日本国内におけるDKD患者の病原性変異について明らかにした研究結果が報告された。研究は東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科の羽柴豊大氏らによるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に4月8日掲載された。

 DKDは、長期の糖尿病罹病期間と糖尿病網膜症の合併に基づき、腎生検を必要とせずに臨床的に診断される。糖尿病患者の中には、同様に血糖コントロールを行っているにもかかわらず、腎機能障害を発症する患者としない患者がいることから、遺伝的要因が糖尿病およびDKD発症の根底にある可能性がある。実際、2021年には米国の1型および2型糖尿病を患うDKD患者370名を対象とした研究から、白人患者の22%で病原性変異が特定されている。しかし、この割合は民族やデータベースの更新状況によって異なっている可能性も否定できない。このような背景を踏まえ、著者らは最新のデータベースを用いて、日本の2型糖尿病を伴うDKD患者のサンプルから全ゲノム配列解析(WGS)を実施し、病原性変異を持つ患者の割合を決定することとした。

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 本研究には、東京大学糖尿病性腎疾患コホートよりWGSの検体提供に同意した79人(平均年齢72歳)のDKD患者が組み入れられた。全体の25名(31.6%)に糖尿病網膜症が認められ、9名(11.4%)に腎臓病の家族歴があった。

 WGSの結果、27人(34.1%)の患者で、24の遺伝子(29の部位)に位置する病原性変異が同定された。すべての変異はヘテロ接合型であり、ホモ接合型は検出されなかった。同定されたヘテロ接合型病原性変異は、大きく、糸球体症関連(23.7%)、尿細管間質性腎炎関連(36.8%)、嚢胞性腎疾患/繊毛病関連(10.5%)、その他疾患関連(28.9%)に分類された。

 27人の患者で同定された変異のうち、常染色体顕性(優性)遺伝パターンに関連し、疾患の発症に潜在的に影響を及ぼすものを「診断的変異」と定義した。診断的変異は7つの遺伝子(ABCC6、ALPL、ASXL1、BMPR2、GCM2、PAX2、WT1)において10人(12.7%)の患者で認められた。これらの遺伝子はすべて常染色体顕性遺伝性疾患と関連していた。

 本研究の結果について著者らは、「日本では、相当数のDKD患者において腎臓関連のヘテロ接合型病原性変異が特定された。これらの知見は、この変異に民族間の差異が存在する可能性を示唆しており、データベースの更新が変異検出に与える影響を浮き彫りにしている」と述べている。今回、DKD患者で認められた変異の臨床的意義については、「依然として不明であり、その意義をさらに検討するためにはより大規模なコホート研究が必要」と付け加えた。

 本研究の限界点として、サンプル数が少なく、日本国内の単一施設のコホート研究であったことから、一般化に制約があることが挙げられる。また、WGS解析はDKD集団のみを対象としており、健常者や腎障害のない糖尿病患者との比較が行われなかったため、本研究は記述的研究にとどまるものとされている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2025年5月19日
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