肝機能の「長期的な変化」が糖尿病リスクを予測か──日立コホート研究

 2型糖尿病は、発症前の段階でいかにリスクを捉えるかが重要となる。健康診断では肝機能検査が毎年行われているが、その数値は多くの場合、一過性の変動として単年ごとに評価されるにとどまってきた。日立コホート研究による約2万人・13年超の追跡解析から、若年期に一時的な肝機能高値を示し、その後数値が改善している人においても、将来の2型糖尿病リスクが高い傾向にあることが示された。肝機能の「一時点の値」ではなく長期的な変化のパターンに着目する重要性が浮き彫りになった。研究は、東海大学医学部基盤診療学系の深井航太氏らによるもので、詳細は12月14日付で「Scientific Reports」に掲載された。

 肝機能障害と2型糖尿病との関連は、インスリン抵抗性や脂肪肝を介した双方向の関係が示唆されている。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、γ‐グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)などの肝酵素は日常診療で広く測定されている指標であるが、これまでの研究の多くは単一時点の測定値に基づいており、肝機能の長期的変化を十分に捉えられていなかった。本研究では、年次健診データを有する日立コホート研究を用い、肝酵素の推移パターンを分類し、2型糖尿病発症との関連および基準値超過の頻度が与える影響を検討することを目的とした。

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 日立コホート研究は、茨城県日立市の準都市工業地帯にある日立健康管理センタの従業員に提供される企業の年次健康診断に基づいている。本研究では、日立コホート研究において、ベースライン時に2型糖尿病を有さない30~64歳の2万4,380人を対象とし、計29万6,171件の健康診断データを解析した。肝機能酵素として、ALT、AST、GGTを年1回測定した。肝酵素の長期推移をトラジェクトリ解析(group-based trajectory modeling;GBTM)により分類し、各軌跡群と2型糖尿病発症との関連をロジスティック回帰で検討した。年齢・性別、代謝指標、生活習慣因子を調整した。

 ベースライン時の平均年齢は42.9歳だった。平均12.8年の追跡期間中に、3,840人(15.8%)が2型糖尿病を発症した。トラジェクトリ解析により、ALTは6群、ASTは3群、GGTは4群の推移パターンが同定された。

 ALTが持続的に高値を示す群や、若年成人期に上昇を示す推移群では、2型糖尿病発症リスクが有意に高かった。ALTが一貫して高値で推移した群(群6)のオッズ比は7.97(95%信頼区間〔CI〕 7.40~8.57)、若年成人期に高値を示した群(群5)では4.23(95%CI 4.00~4.48)であり、いずれも一貫して低値の群(群1)と比べて高リスクであった(傾向P値、P<0.01)。

 さらに、ALTおよびASTが基準値を繰り返し超過するほど2型糖尿病リスクは上昇し、閾値が高いほど、また超過頻度が多いほど関連は強かった。GGTについては、ALTほど強い関連ではなかったものの、基準値を2回以上超過した場合、2型糖尿病リスクが2倍以上に上昇していた。

 著者らは、「ALTの高値が持続している人はもちろん、『以前高かった』人でも糖尿病発症リスクは約4倍に上昇していた。健康診断の結果は単年値ではなく経時的な推移を重視すべきであり、若年期からリスクの兆候を捉えることが、将来的な予防につながる可能性がある」と述べている。

 なお、本研究の限界として、特定コホートに基づくため一般化が制限されること、薬物治療や生活習慣の変化などの影響が考慮されていない点などを挙げている

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HealthDay News 2026年2月2日
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