AST・ALTは季節で変動、MASLDスクリーニング判定への影響示唆
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の評価では、ASTやALTなどの肝機能値が広く用いられている。今回、日本人の2型糖尿病患者約6,000人を対象とした研究で、AST・ALTは晩秋から初冬にかけて高く、夏に低い季節変動を示すことが分かった。さらに、この変動はMASLDスクリーニングの判定に影響する可能性も示された。ALTがスクリーニングの判定境界に近かった患者では、約9人に1人で測定季節によって判定が異なったという。研究は、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の土岐了大氏、国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也氏らによるもので、詳細は6月19日付の「Liver International」に掲載された。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、肝細胞障害の指標として用いられてきた。近年ではMASLDの評価で最初に行われる検査として広く活用されており、特に2型糖尿病患者ではその重要性が高まっている。一方、体重や血圧、HbA1cなどでは季節による変動が報告されている。これまでにも集団全体ではAST・ALTが冬に高く夏に低い傾向が報告されていたが、個人レベルでの季節変動や、その臨床的意義は明らかになっていなかった。そこで著者らは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、AST・ALTの季節変動がMASLDの評価や血糖コントロールに及ぼす影響を検討した。

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本研究では、全国の糖尿病診療施設で構成される日本糖尿病臨床データマネジメント研究会(JDDM)のレジストリに登録された2型糖尿病患者6,039人を対象とした。重度の肝障害患者を除外した上で、2014~2020年に測定された月ごとのASTおよびALT値を解析し、季節変動を評価した。AST・ALTの季節変動のパターンを評価するとともに、MASLDスクリーニングで用いられる30 IU/Lの閾値を基に、冬季と夏季で判定がどの程度変化するかを検討した。さらに、患者ごとのAST・ALTの季節変動幅を算出し、追跡終了時のHbA1cやHbA1c 7%未満の達成状況との関連を解析した。
解析の結果、AST、ALTはいずれも有意な季節変動を示し、晩秋から初冬にかけて最も高く、夏に最も低かった(P<0.001)。季節によって異常値となる割合も変動し、ASTの異常値の割合は夏の15.0%から秋には17.7%へ、ALTでは20.6%から23.2%へ上昇した。
MASLDスクリーニングで用いられるALT 30 IU/Lの閾値付近(年間平均20~40 IU/L)の患者では、約9人に1人で冬季と夏季の判定が異なった。
また、患者ごとのASTの季節変動幅が大きいほど、追跡終了時のHbA1cは高く、HbA1c 7%未満の目標を達成できない可能性も高かった。季節変動幅を4群に分けて比較すると、変動幅が最も大きい群では最も小さい群よりHbA1cが高く、変動幅の増加に伴ってHbA1cも高くなる傾向が認められた。一方、ALTでも同様の傾向がみられたが、関連はASTほど強くなかった。
著者らは、AST・ALTには再現性のある季節変動があり、特にMASLDスクリーニングの判定境界に近い患者では、測定時期によって判定が変わる可能性があると指摘している。また、季節変動幅が大きい患者ほど血糖コントロールが不良となる傾向がみられたことから、AST・ALTの解釈では季節を考慮することが重要であり、季節変動幅は肝・代謝系の不安定さを示す新たな指標となる可能性があるとしている。
なお、本研究は日本人の2型糖尿病患者を対象とした観察研究であり、食事や運動など生活習慣の影響を十分に評価できていないため、結果を他の集団に一般化することや因果関係の解釈には注意が必要としている。
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