医療用麻薬の量が睡眠の質に関連か、非がん性慢性疼痛患者の新知見

オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)はその多くが医療用麻薬に指定され、強い鎮痛作用を持つ。今回、がん以外の慢性的な痛みを抱える患者(非がん性慢性疼痛)において、オピオイドの使用量が睡眠の質と関連する可能性が示された。オピオイド未使用と比較して、高用量のオピオイド使用では総睡眠時間が短く、夜中に目が覚める時間が長い傾向がみられた一方、低用量のオピオイド使用では、睡眠の質が良好な傾向がみられたという。順天堂大学医学部麻酔科・ペインクリニック講座の池宮博子氏らによる研究で、詳細は9月8日付けで「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。
非がん性慢性疼痛の治療においても医療用麻薬が用いられることがあるが、その使用には慎重な判断が求められる。特に、高用量を長期間使用することの有益性は限定的とされ、睡眠への影響についても様々な報告があり、専門家の間でも一定の見解は得られていない。睡眠は生活の質に大きく影響するため、臨床的意義は大きい。このような背景を踏まえ、著者らは非がん性慢性疼痛で強オピオイドを6か月以上の長期にわたり使用している患者の睡眠状態を明らかにするため、比較研究を行った。

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本研究では、順天堂大学医学部附属順天堂医院の麻酔科・ペインクリニックを定期受診している慢性の非がん性疼痛患者29人を対象とした。患者はオピオイドの使用状況に基づき、オピオイド未使用群(11人)、弱オピオイド使用群(8人)、強オピオイドを1日モルヒネ換算量60mg未満で使用する群(5人)、および60mg以上で使用する群(5人)の4群に振り分けられた。痛みの強度や不安・抑うつ(HADS)、痛みを悲観的に考える傾向(PCS)、ストレス(JPSS)などの心理状態を質問票で評価した。また、主観的な睡眠状態も質問票であるAISで評価した。そして、総睡眠時間、中途覚醒時間、睡眠効率などの客観的睡眠指標は、ウェアラブル機器を用いて7晩にわたり測定した。睡眠データは、オピオイド未使用群を基準群として線形混合効果モデルで解析した。モデル1は年齢、性別、痛みの強度、測定日で補正し、モデル2ではさらにPCS、HADS、JPSSを加えて補正した。
弱オピオイド使用群の患者は全員トラマドール塩酸塩を使用していた。強オピオイド群で1日60mg未満の患者はフェンタニル貼付剤またはモルヒネ塩酸塩を使用し、1日60mg以上の患者はフェンタニル貼付剤、オキシコドン塩酸塩、またはモルヒネ塩酸塩を使用していた。
解析の結果、モデル1では高用量群で総睡眠時間が短く(平均411 vs. 290分、P<0.001)、中途覚醒時間が長く(平均106 vs. 189分、P<0.01)、睡眠効率が低い(平均79.8 vs. 64.0%、P<0.001)ことが示された。モデル2でも同様の傾向は維持されたが、一部で統計的有意性がみられなかった。一方で、低用量群では、モデル2で中途覚醒時間が短く(平均121.4 vs. 47.6分、P<0.001)、睡眠効率が高い(平均77.1 vs. 88.8%、P<0.001)傾向がみられた。
主観的な不眠症状は、強オピオイド使用群の両群で認められ、とくに高用量群で顕著だった。
本研究について著者らは、「今回の結果は、非がん性慢性疼痛の患者さんで高用量の強オピオイドを使用する場合、睡眠への影響を評価する重要性を示している。一方、強オピオイド低用量群で見られた、睡眠効率が比較的高く、中途覚醒時間が短いという結果は、オピオイドの鎮痛効果と良好な睡眠を両立させるためには、慎重な用量調整が重要である可能性を示唆している」と述べている。

肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。