全身性エリテマトーデスの診断基準・検査方法・プロセスについて

皮膚や血管、関節や内臓。全身にさまざまな炎症が起きる自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)。若い女性が発症しやすいと言われているこの病気の症状は多様で、代表的な症状に皮膚の発疹や全身倦怠感、長期間の発熱などがあるものの、人によって症状も程度も異なるため、慎重な診断が行われます。

では、全身性エリテマトーデスを診断する基準や検査方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
この記事では全身性エリテマトーデスの診断プロセスや検査方法について紹介します。

  1. 全身性エリテマトーデスの診断基準について
  2. 全身性エリテマトーデスを検査する方法は?
  3. 全身性エリテマトーデス(SLE)の疑いがあれば何科を受診すればいい?
  4. まとめ

全身性エリテマトーデスの診断基準について

全身性エリテマトーデスの診断基準として、一般的に使用されているのは、アメリカリウマチ学会が作成した『全身性エリテマトーデス(SLE)における診断基準(1997年度改訂版)』です。
11の項目のうち、4項目以上に該当すれば全身性エリテマトーデス(SLE)に分類されます。

※また、症状が現れた時期については問われません。診断時に該当する症状が現れていなくても、現れたことがあれば該当するとされているようです。

【全身性エリテマトーデスの診断に用いられる11の項目】

~皮膚の症状~

1.頬部紅斑
頬のあたり(ほうれい線や鼻の周り)に赤く現れる発疹で、蝶のようなカタチの蝶形紅斑が多く見られます。

2.円坂状皮疹
コインのような形状の紅斑で、ディスコド疹と呼ばれることも。
顔や頭、耳、くび、四肢、前胸部などに現れやすく、痕が残るケースも珍しくはありません。また、頭にできた円坂状皮疹で脱毛が起きることもあるようです。

3.日光過敏
日差しや紫外線を浴びると、皮膚に水ぶくれができたり、発疹ができたりする症状。

4.口腔、鼻咽頭の潰瘍
一般的には痛みを伴わないと言われています。

~関節や心臓の症状~
5.関節炎

全身性エリテマトーデス(SLE)が原因となる関節炎は末梢性の非壊滅性関節炎といって、痛みや腫れ、関節液貯留があるものの、骨や関節の破壊や変形を伴わないケースが多いと言われています。
この末梢性の非壊滅性関節炎が2箇所以上あるかどうかを判断します。

6.漿膜炎
胸膜炎~胸痛・胸膜摩擦音・胸水
心膜炎~心電図・心膜摩擦音・心のう水
上記のいずれかが見られる。

~内臓や神経の症状~
7.腎障害
尿蛋白が-0.5g/日以上または3+以上、細胞性円柱のいずれかの症状がある。
尿蛋白-0.5g/日以上または3+以上、細胞性円柱

8.神経学的病変
痙攣発作や精神症状が見られる。
全身性エリテマトーデスには、うつ状態と類似した精神的な症状が現れるケースも少なくはありません。

9.血液学的異常

  • 溶血性貧血
  • 白血球減少(4,000/mm3以下)
  • リンパ球減少(1,500/mm3以下)
  • 血小板減少(10万/mm3以下)

上記のいずれかが見られる。

10.免疫学的異常

  • 抗DNA抗体
  • 抗Sm抗体
  • 抗リン脂質抗体

上記のいずれかが見られる。

11. 抗核抗体陽性

ただし、今回紹介した診断基準(1997年改訂版)の項目には『免疫学的項目の補体低値』が導入されていないため、診断基準の見直しが必要となるのでは?とされています。

全身性エリテマトーデスを検査する方法は?

全身性エリテマトーデスの診断は、現在の日本において上記で紹介した診断基準にのっとり診断を行っていきます。

それぞれの項目を検査するために、医師による問診では、
どんな症状が気になっていて、いつ頃から症状があるのか?
他の病気がないか?
過去に出た症状で気になるものはないか?
血縁者の中に膠原病患者はいないか?
などを尋ねられます。

また、触診、視診はもちろん、

  • 血液学的異常や免疫学的異常をチェックする血液検査
  • 腎障害の有無を判断するために、尿検査

そのほかにも抗核抗体検査といって、細胞核成分の抗体についてスクリーニング検査を行ったり、血液の中にあるたんぱく質の一種『補体』の量を検査する補体価検査を行ったりすることも。

全身性エリテマトーデス(SLE)の疑いがあれば何科を受診すればいい?

全身性エリテマトーデス(SLE)の症状は、皮膚や神経・関節・内臓。また、精神的な症状が現れることがあるので、気になる症状に合わせて、皮膚科や神経外科、心療内科などを受診される人が多いと思います。

まずは気になる症状に特化した病院・専門科を受診して、「エリテマトーデスの疑いがある」と診断された場合は、膠原病の診察・治療が可能な医者がいる病院を受診しましょう。

ただ、受診した病院で全身性エリテマトーデスの可能性に触れられなかったものの、不安を拭いきれないという方は、膠原病の診察可能な医療機関を探してみてください。

まとめ

多様な症状が現れたり、医師でも診断しにくかったりする膠原病、全身性エリテマトーデスは早期発見、早期治療こそが改善のカギになります。

皮膚科や内科、神経外科など疑わしい症状に特化した医療機関へ受診したものの、改善されないという方は、セカンドオピニオンを検討してみてはいかがでしょうか?

全身性エリテマトーデスの予防方法に関する詳しい解説はこちら

膠原病であり、難病指定でもある全身性エリテマトーデス(SLE)。
皮膚の発疹や長期間続く発熱。また関節の痛みや倦怠感、内臓障害など、さまざまな症状が全身に現れ、日本では6万人以上の患者さんがいるとされています。
世界的大スター・マイケル・ジャクソンも、この全身性エリテマトーデス(SLE)を患っていました。
そんな全身性エリテマトーデス(SLE)を予防したり、症状の悪化を防いだりするには、どんな方法が有効とされているのでしょうか?

全身性エリテマトーデス(SLE)の予防方法は?悪化を防ぐために注意できること

参考サイト:リンク1リンク2リンク3
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