全身性エリテマトーデスについて

「全身性エリテマトーデス」は、2016年にアメリカでも芸能人のセレーナゴメスさんが治療のために活動を休止したことや、2014年にドラマで石原さとみさんが発症してしまう役を演じたことから、病名を知っている人も少なくないでしょう。
免疫の異常によって発症するため、だれが発症してもおかしくありません。難病として指定されている全身性エリテマトーデスについて、基本的なことから知っていきましょう。
  1. 全身性エリテマトーデスとはどういうものか??
  2. 全身性エリテマトーデスの症状
  3. 全身性エリテマトーデスの治療法
  4. まとめ
全身性エリテマトーデスとはどういうものか?

全身性エリテマトーデスとは
本来身体を守るはずの免疫細胞が異常となってしまい、自分自身を攻撃してしまう自己免疫性疾患です。

「SLE」と略して呼ばれ、オオカミに噛まれた痕のような紅斑が出ることから「ループス」(ラテン語でオオカミを意味します。)とも名付けられています。20~40代の女性に多く発症する病気です。

原因は不明とされており紫外線を多く浴びたり、風邪などのウイルス感染、ホルモンバランスの崩れなどが誘因となっているとされています。

数年前までは、全身性エリテマトーデスを発症してからの寿命は5年と言われていましたが、ステロイドなどの使用によって生存率が上昇しています。

現在では、全身性エリテマトーデス発症後5年での生存率は95%を超え、普通に生活される方が増えています。

合併症を併発した場合死に至ることもあるので、注意が必要です。

全身性エリテマトーデスの検査と診断
全身性エリテマトーデスかもと疑いが出た場合は、下記の検査が行われます。様々な症状を表す疾患であることから、診断は慎重に行われており、現在日本では二種類の診断基準が使われています。

・血液検査
血液(抗核抗体、血算、赤沈)検査で、かかっている場合抗核抗体、抗ds-DNA抗体が要請になることが多いです。

・尿検査
蛋白尿や尿潜血が出ていないかを調べます。

その他に症状によって、生体検査・CT検査・MRI検査・髄液検査・脳波検査が行われます。

全身性エリテマトーデスの症状

初期症状は、発熱・だるさ・関節痛など風邪に似ています。なかなか改善しないことから発症が分かることが多いです。

・全身症状
38度を超える発熱が1週間以上続く・37.5度前後の微熱が2週間以上続くなどの発熱症状、全身の倦怠感や疲労感があります。また、食欲不振や体重減少なども出てきます。

・皮膚症状
蝶が羽を広げたような蝶型紅斑が出ることが有名です。また、顔や耳・首に丸い円盤のようなディスコイド疹が見られた理り、指が白く冷たくなるレイノー現象も起こります。

・関節症状
手・指・ヒザ・ヒジが腫れて痛む関節炎が起こります。また、日によって痛む場所が変化する移動型関節炎が見られることもあります。

・日光過敏症
紫外線に当たった後に赤い発疹・水ぶくれが出たり、発熱する場合があります。日光過敏症が全身性エリテマトーデスの始まりであることもあります。

・口内炎
痛みのない口内炎を発症します。鼻咽腔にもまれに発症することがあります。

・脱毛
円形脱毛のように部分的に毛が抜ける・全体の髪の量が減るなどの脱毛症状が出ます。また、髪が傷みやすく、途中から切れやすくなる人もいます。

・臓器障害
心臓・肺・消化器官・血液など全身のあらゆる臓器に障害を起こしますが、人によって症状や部位が異なります。また、臓器障害の出ない人もいます。

腎臓の場合、半数近くがかかってしまうループス腎炎と言われるネフローゼ症候群や急性進行性糸球体腎炎によるむくみや血尿などの症状があります。

心臓や肺では、漿膜炎が起こり、深呼吸すると胸が痛んだり、すぐに息切れしてしまうなどの症状が出ます。

他に、腹痛や吐き気が出た場合、腸間膜の血管炎や、ループス腹膜炎・ループス膀胱炎などの可能性もあります。

・中枢神経症状
中枢神経症状のCNSループスは重篤な症状とされています。うつ・失見当識・妄想という精神症状と、けいれん・脳血管障害などが見られます。

全身性エリテマトーデスの治療法

原因のわからない全身性エリテマトーデスですが、炎症を抑えて過剰な免疫を抑制することが夕刻な治療法になります。ステロイドの点滴薬・飲み薬が基本となり、炎症の状態が改善してきたら徐々に薬の量を減らしていきます。自己判断は絶対に禁物です。

ステロイドによって食欲が増進してしまうため糖尿病になりがちなため注意が必要です。さらに骨粗しょう症にもなりやすいので、合わせて薬が処方されることもあります。

日光を浴びることを極力避け、なるべくストレスをためないことも気を付けましょう。

全身性エリテマトーデスの予後は、症状が出なくなっている寛解期と再び症状が現れてしまう再燃を繰り返して慢性の経過をたどってしまいます。

しかし、閉経した女性の場合は再発する確率が少なくなっています。慢性化させず、再発させないためにもステロイド剤の服用と、医療機関への定期受診が大切です。

まとめ

全身性エリテマトーデスは何が原因で発症するかわからない難病のため、とても不安に思うかもしれません。

しかし、全身性エリテマトーデス発症したという国内外の芸能人の写真を見ると、実に多くの人がかかっていることが分かります。また、発症後も歌ったり踊ったりとされている方も多く、同じ全身性エリテマトーデスの人にとって希望が持てるでしょう。

以前とは違って生存率も高くなっており寛解期には、妊娠出産も可能ですので、きちんと投薬を受け、合併症を防ぐための定期診断を忘れず上手に付き合っていきましょう。

全身性エリテマトーデス(SLE)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

全身性エリテマトーデスは膠原病の一種で難病指定されている病気です。
どういう症状があれば全身性エリテマトーデスが疑われるのでしょうか?今回は全身性エリテマトーデスの基本的な概要と、セルフチェックについてご紹介します。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは?こんな症状に注意!セルフチェックについて

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  • 骨折

    高齢者の手首骨折、進行したフレイルより骨の脆弱性を反映か

     高齢者に多い橈骨遠位端骨折(DRF、手首の骨折)は、骨の脆弱性を示す骨折として知られている。今回、国内の大規模データを用いた研究で、DRFは、進行した全身的なフレイルよりも、身体機能が比較的保たれた高齢者における骨のフレイルを反映している可能性が示唆された。また、DRF後は大腿骨近位部(股関節)骨折の発生率が高く、骨粗鬆症治療を開始する介入機会となる可能性も示された。研究は、静岡社会健康医学大学院大学と名古屋市立大学大学院医学研究科整形外科学分野の研究グループによるもので、柴田隆太郎氏、佐藤洋子氏、田中仁啓氏らが実施した。詳細は、8月27日付で「Journal of Bone and Joint Surgery」に掲載された。

     高齢化が進む日本では、転倒に関連する筋骨格系疾患は要介護状態の主な原因となっている。DRFを受傷した人では、その後に別の骨粗鬆症性骨折を起こすリスクが高く、特に大腿骨近位部骨折は寝たきりや死亡などにつながる。一方、DRFが骨の脆弱性だけでなく、全身的なフレイルも反映するのかは明らかになっていない。そこで著者らは、静岡県の大規模な医療保険請求データを用いて、DRF後の死亡、二次骨折、要介護状態、入院などの長期予後を検討した。

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     研究には、静岡県内の約240万人を対象とした「静岡県国民健康保険データベース(SKDB)」を用いた。2012~2022年に初めてDRF(ICD-10コードでS52.5またはS52.6)と診断された65~89歳の患者を対象とし、上肢の打撲と診断された患者を対照群とした。両群の背景因子をそろえるため傾向スコアマッチングを行い、全死亡を主要評価項目とした。副次評価項目には、二次的な脆弱性骨折、入院、要介護状態の悪化、骨粗鬆症治療の開始を設定した。死亡はCox比例ハザードモデル、その他の転帰はPoisson回帰モデルで解析した。また、二次骨折や骨粗鬆症治療の開始が死亡に及ぼす影響を評価するため、因果媒介分析を行った。

     傾向スコアマッチング後の解析対象は4万7,178人(2万3,589組)で、平均年齢は77.6歳、女性が87.8%を占めた。DRF群では対照群に比べて全死亡リスクが低く、未調整のハザード比(HR)は0.90(95%信頼区間0.86~0.94)だった。ただし、要介護認定などの因子を調整するとHRは0.98(同0.93~1.02)となり、有意な差は認められなかった。一方、サブグループ解析では、要介護認定を受けている男性や要介護度が高い女性で、DRF群の死亡リスクが低かった。

     また、DRF群では対照群に比べて全入院および複数の二次的な脆弱性骨折の発生率が高かった。特に、大腿骨近位部骨折の発生率はDRF群で2.58件、対照群で2.00件(いずれも100人年当たり)であり、DRF群で有意に高かった(P<0.001)。一方、要介護状態の悪化の発生率は2.85件対2.80件(同)で、両群に有意差はなかった。1年以内に骨粗鬆症治療を開始した割合は17.6%対7.7%で、DRF群で高かった(P<0.001)。

     媒介分析では、二次的な大腿骨近位部骨折がDRFと死亡との関連の一部を媒介し、その割合は9.6%と推定された。一方、ビタミンD補充については保護的な媒介効果が認められ、媒介割合は3.5%だった。

     今回の研究から、高齢者のDRFは、進行した全身フレイルよりも、身体機能が保たれた状態で生じる骨の脆弱性を反映している可能性が示された。一方、DRF後には大腿骨近位部骨折などの二次的な脆弱性骨折が増えるにもかかわらず、DRF後1年以内に骨粗鬆症治療を開始した人は17.6%にとどまった。著者らは、DRFをその後の骨折を予防するための骨粗鬆症治療開始の重要な介入機会と捉える必要があるとしている。

     本研究の限界として、観察研究のため因果関係を確定できないこと、身体機能を要介護認定で推定しており直接評価していないこと、90歳以上を対象としていないことなどを挙げている。

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  • 心血管疾患

    禁煙が心電図上の左室肥大の退縮と関連か

     禁煙は心血管疾患のリスク低下につながる一方、禁煙後には体重増加や血圧上昇がみられることがあり、心血管系には好ましくない変化と考えられている。今回、こうした変化がみられたにもかかわらず、禁煙後に心電図上の左室肥大の指標が改善したとする研究結果が報告された。禁煙時と6年後を比較したところ、心電図で測定した左室電位と、左室肥大と判定された人の割合がいずれも低下していたという。研究は、国立病院機構鹿児島医療センター循環器内科の二宮雄一氏らによるもので、詳細は8月27日付の「PLOS ONE」に掲載された。

     左室肥大は心血管疾患の発症や死亡と関連する重要な指標であり、心電図による評価は心血管リスクの層別化にも広く用いられている。一方、喫煙は血管内皮機能障害や交感神経活動の亢進、動脈スティフネス(動脈の硬さ)などを介して心血管系に悪影響を及ぼし、喫煙者では左室重量や心筋壁厚が増加することが報告されている。しかし、禁煙によって左室肥大が退縮するかどうかは十分に明らかになっていない。そこで研究グループは、日本人の健診受診者を対象に、禁煙と心電図上の左室肥大の変化との関連を6年間にわたって検討した。

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     研究グループは、2005~2019年に健診を受けた日本人一般集団の健診記録23万4,596件を用いた。この中から、喫煙を中止し、禁煙時に高血圧ではなかった30~65歳の752人を抽出した。対象者は禁煙時と6年後の両時点で心電図データが得られることを条件とし、がん、内分泌疾患、構造的心疾患、心筋梗塞の既往などがある人は除外した。心電図上の左室肥大はSokolow-Lyon基準(SV1+RV5>3.5 mV)で判定した。また、体重、BMI、血圧、脂質、腎機能などのデータを収集し、追跡期間中の降圧薬使用の有無によって対象者を分けて比較した。禁煙時と6年後の各指標の変化を解析し、心電図上の左室肥大の退縮に関連する因子を多変量解析で検討した。

     対象者752人の92.4%が男性で、平均年齢は47.8歳だった。6年間の追跡後、平均体重は65.7 kgから68.1 kgに、収縮期血圧は112.8 mmHgから122.0 mmHgに、いずれも有意に上昇した(いずれもP<0.0001)。追跡期間中に降圧薬の使用を開始した人は103人(13.7%)だった。

     一方、心電図で測定した左室電位(SV1+RV5)は、禁煙時の平均2.47 mVから6年後には2.41 mVに有意に低下した(P<0.0001)。心電図上の左室肥大と判定された人の割合も、8.4%から6.5%に低下した。

     降圧薬の使用状況別にみると、左室電位は、降圧薬を使用した人では2.68 mVから2.45 mVに(P<0.0001)、使用しなかった人では2.44 mVから2.40 mVに低下した(P=0.01)。また、多変量解析では、降圧薬の使用が心電図上の左室肥大の退縮と独立して関連していた。

     著者らは、禁煙によって喫煙に伴う交感神経活動の亢進や動脈スティフネスなどが改善し、左室への圧負荷が軽減した可能性を指摘している。また、血管内皮機能の改善や酸化ストレスの低下が、左室肥大の退縮に関与した可能性もあるという。ただし、今回の研究は心電図による評価であり、実際の心筋量が減少したかどうかは明らかではない。また、対象者の92.4%が男性であり、女性を含む集団に結果を一般化できるかは不明である。

     二宮氏は、「禁煙後には体重増加や血圧上昇がみられることがあるが、それにもかかわらず心電図上の左室肥大の指標が改善したことは興味深い結果だ。今回の結果は、禁煙が心血管系にもたらす長期的な有益性を支持する新たな知見と考えている」としている。

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    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。
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  • 高齢者

    高齢者の脆弱性骨折、部位によって介護ニーズやフレイルの程度に違い

     高齢者では、転倒などの軽微な外力でも骨折する脆弱性骨折が起こりやすく、骨折後の身体機能や生活の質の低下につながることがある。今回、日本の高齢者における脆弱性骨折約14万6,000件を調べた研究から、骨折部位によって介護ニーズやフレイルの程度が異なることが示された。研究は静岡社会健康医学大学院大学と名古屋市立大学大学院医学研究科整形外科学分野の研究グループによるもので、柴田隆太郎氏、佐藤洋子氏、田中仁啓氏らが実施した。詳細は、8月19日付で「Age and Ageing」に掲載された。

     脆弱性骨折は高齢者に多く、骨折部位によって患者の身体機能やフレイルの程度が異なる可能性が指摘されている。しかし、その実態は十分に明らかになっていない。このような背景から、著者らは日本の大規模データベースを用い、骨折部位と介護ニーズやフレイルの程度との関連を解析した。

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     本研究は、日本の静岡県国保データベース(SKDB)を用いて、人口ベースの後ろ向きコホート研究として行われた。SKDBは静岡県の230万人超の住民をカバーし、健康保険・介護保険のレセプトや健診データなどを統合している。対象は、2012年4月1日~2022年9月30日のデータから、65歳以上で初回の単一部位の脆弱性骨折を起こした患者とした。骨折部位は橈骨遠位端(手首)、上腕骨近位部(肩)、脊椎、骨盤、大腿骨近位部、大腿骨遠位部(膝)の6部位に分類した。フレイルは、介護保険の認定レベルと電子フレイル指数(eFI)を用いて評価した。eFIは、ICD-10コードに基づいて定義した35項目の慢性疾患・健康上の問題がどの程度蓄積しているかをもとに算出し、健常、軽度フレイル、中等度フレイル、重度フレイルの4群に分類した。フレイルの程度別に骨折部位の分布を比較し、骨折部位ごとに「要介護認定なし」を基準としたロジスティック回帰分析を用いて粗オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。また、年齢・性別で調整した解析も行った。

     解析対象となった脆弱性骨折は14万6,052件で、患者の平均年齢は81.5歳、女性が78.2%を占めた。骨折部位は脊椎骨折が8万184件と最も多く、次いで大腿骨近位部が3万1,521件、橈骨遠位端が1万9,504件だった。骨折部位によって年齢にも違いがみられ、橈骨遠位端骨折の平均年齢は77.8歳だったのに対し、大腿骨近位部骨折は84.9歳、骨盤骨折は82.6歳だった。

     介護保険の認定状況をみると、橈骨遠位端骨折患者の86%は要介護認定を受けていなかった。その一方、大腿骨近位部骨折と大腿骨遠位部骨折では要介護認定を受けていない患者の割合がそれぞれ47%と49%にとどまっていた。要介護認定を受けていない人を基準とした解析では、重度の介護ニーズがある人で橈骨遠位端骨折のオッズは低く(OR 0.50、95%CI 0.46~0.55)、大腿骨近位部骨折(OR 8.06、95%CI 7.82~8.31)や大腿骨遠位部骨折(OR 10.55、95%CI 9.61~11.57)、骨盤骨折(OR 2.52、95%CI 2.32~2.72)のオッズは高かった。年齢・性別で調整すると関連は弱まったものの、重度の介護ニーズと橈骨遠位端、大腿骨近位部、大腿骨遠位部の骨折との有意な関連は認められた。eFIによる解析でも同様の傾向が認められた。

     著者らは、橈骨遠位端骨折は比較的生活機能が保たれた高齢者に多く、将来の骨折を防ぐための骨粗鬆症の評価・治療につなげる機会となり得ると指摘している。一方、骨盤や大腿骨遠位部の骨折はフレイルが進行した高齢者に多く、施設内の転倒予防や介助方法の見直しなど、フレイルの程度に応じた対策が重要だとしている。こうした骨折部位ごとの特徴を踏まえることが、高齢化が進む日本での骨折・介護予防や医療・介護資源の適切な配分にもつながる可能性があるとしている。

     なお、本研究の限界点として、行政データを用いたため身体機能を直接評価できなかったこと、年齢・性別以外の交絡因子を十分に調整していないこと、静岡県のデータに基づくため一般化に限界があることが挙げられる。

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  • 大腸がん

    手術支援ロボットHugoTM RAS Systemによる大腸がん手術118例の周術期・短期成績

     近年、さまざまなメーカーから手術支援ロボットが登場し、外科手術への導入が進んでいる。今回、HugoTM RAS System(Hugo)を用いた大腸がん手術118例の周術期・短期成績を検討した単施設後ろ向き研究の結果が報告された。術中合併症や開腹手術への移行は認められず、良好な短期成績が示されたという。報告は、京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏、板谷喜朗氏らによるもので、詳細は8月21日付で「Surgery Today」に掲載された。

     Hugoは、米メドトロニック社が開発した手術支援ロボットで、複数のアームを独立して配置できるモジュール型の構造を特徴とする。日本では2023年に消化管外科手術への適応拡大が承認され、保険診療で使用されている。大腸がん手術へのHugoの導入については、これまでにも実施可能性を示す症例報告や症例集積が報告されているが、症例数は少なく、臨床成績に関するエビデンスは限られていた。そこで著者らは、Hugoを用いた大腸がん手術の周術期・短期成績を評価し、実臨床における安全性と実施可能性を検討した。

    【大腸がんの治験について相談したい方へ】
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     京都大学医学部附属病院で2024年4月~2026年4月にHugoを用いたロボット支援手術を受けた大腸がん患者を対象に、単施設の後ろ向きコホート研究を実施した。臨床病理学的特徴、手術関連因子、術後短期成績を、結腸がんと直腸がんに分けて評価した。手術は、日本内視鏡外科学会の認定を受け、da Vinci Surgical System(DVSS)によるロボット支援手術を40例以上経験した術者が執刀するか、その直接監督下で実施した。

     解析対象は118例で、内訳は結腸がん57例、直腸がん61例だった。結腸がんでは、手術時間の中央値は281分、ドッキング時間は11分、コンソール時間は192分で、出血量の中央値は0 mLだった。他臓器の合併切除などの拡大手術は9例で実施された。Clavien-Dindo分類Grade IIの術後合併症は3例、Grade IIIは2例に認められ、術後在院日数の中央値は11日だった。

     直腸がんでは、手術時間の中央値は328分、ドッキング時間は8分、コンソール時間は221分で、出血量の中央値は0 mLだった。側方リンパ節郭清や他臓器合併切除など、標準的な全直腸間膜切除術(TME)を超える「beyond-TME」の手術は13例で実施された。環周切除断端(CRM)陽性例および切除断端陽性例は認められなかった。Grade IIの術後合併症は6例、Grade IIIは1例に認められた。術後在院日数の中央値は14日だった。

     結腸がん、直腸がんのいずれにおいても、術中合併症は認められず、腹腔鏡手術や開腹手術への移行もなかった。

     著者らは、Hugoによる大腸がん手術は実施可能で、安全性も良好だったと結論付けている。また、本研究はこれまで報告されたHugoによる大腸がん手術の単施設症例集積として最大規模であり、Hugoの大腸がん手術への適用可能性を支持する臨床的エビデンスを提供するとしている。

     一方、本研究は単施設・単群の観察研究で、腹腔鏡手術やDVSSとの直接比較は行っていない。また、ロボット支援手術の経験が異なる術者が含まれ、学習曲線の初期にあたる症例も含まれていた。著者らは、今後は症例数のさらなる蓄積や多施設研究を行い、Hugoによる手術の長期的な腫瘍学的成績を検討する必要があるとしている。

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  • 脂質異常症

    脂質低下療法後の受診頻度、心血管イベントや死亡と有意に関連せず

     脂質異常症の治療では、薬物療法と定期的な受診が行われる。では、受診頻度が高いほど、心血管イベントや死亡のリスクは低くなるのだろうか。今回、日本の国保データベースを用いた研究で、脂質低下療法を開始した患者では、月1回程度の受診と2~3カ月に1回程度の受診で、心血管イベントや死亡のリスクに統計学的に有意な差は認められなかった。研究は、藤枝市立総合病院・藤枝市家庭医療センターの松永拓氏、名古屋医療センター臨床研究センターの中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は8月2日付の「Journal of Health, Population and Nutrition」に掲載された。

     脂質異常症は心血管疾患や脳血管疾患の主要なリスク因子であり、生活習慣の改善や薬物療法による管理が重要となる。定期的な受診は服薬状況の確認や治療調整に役立つ一方、受診間隔が心血管イベントや死亡のリスクに及ぼす影響は明らかでない。日本では1人当たりの年間受診回数が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中央値を上回っており、脂質異常症では月1回程度の受診が多い。2022年にはリフィル処方制度も導入されたが、受診間隔の延長が治療効果に及ぼす影響には不明な点が残る。そこで本研究では、脂質低下療法開始後の受診頻度と長期的な心血管・脳血管イベント、死亡との関連を検討した。

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     研究グループは、静岡県市町国保データベースを用いて、2012年4月1日~2021年9月30日に脂質低下療法を開始した40歳以上の患者を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した。治療開始前1年間の評価があり、開始前6カ月以内に健診を受けた患者を対象とし、心イベント・脳血管イベントの既往、がん、維持透析、インスリン自己注射を行っている患者は除外した。治療開始後2年間の受診回数により、22回以上の高頻度受診群(月1回程度に相当)と8~12回の低頻度受診群(2~3カ月に1回程度に相当)に分類。6カ月ごとの区間で2回未満の受診となった患者も除外した。傾向スコアマッチング(1:3)を行い、治療開始後2年以内にイベントが発生した患者を除外した上で、低頻度群1,435人、高頻度群4,412人を解析した。平均5.3年間追跡し、心イベント、脳血管イベント、死亡の発生を比較した。

     平均5.3年間の追跡期間中、心イベント、脳血管イベント、死亡を合わせた複合アウトカムの発生率は、低頻度受診群、高頻度受診群ともに5.6%で、両群間に有意差は認められなかった(ハザード比〔HR〕1.08、95%信頼区間〔CI〕0.84~1.38、P=0.571)。さらに、治療開始後1年以内に健診で測定されたLDL-C(悪玉コレステロール)は、低頻度受診群113.64 mg/dL、高頻度受診群114.39 mg/dLで、両群間に有意差はなかった(P=0.478)。

     個別のアウトカムでは、心イベントの発生率は低頻度受診群3.8%、高頻度受診群3.6%(HR 1.13、95%CI 0.83~1.54)、脳血管イベントはそれぞれ1.3%、1.2%(HR 1.13、95%CI 0.67~1.90)、死亡は1.7%、1.9%(HR 0.94、95%CI 0.60~1.48)で、いずれも有意差は認められなかった。

     著者らは、病状が安定している一部の患者では、受診間隔を2~3カ月に延ばすことが合理的な選択肢になり得るかもしれない。受診間隔の延長は、リフィル処方制度の利用や医療資源の効率化につながる可能性がある。ただし、心血管リスクが高い患者や治療強化が必要な患者では、延長の可否を個別に判断する必要があると指摘している。

     一方、本研究の限界として、服薬状況や受診頻度に影響する未測定の要因を把握できず、因果関係を検証できないことなどを挙げている。また、心血管イベントや脳血管イベントの既往がある患者には結果を一般化できないとしている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2026年9月28日
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  • 敗血症

    外傷後敗血症はまれでも死亡リスク高く――日本の外傷患者12万人超で検討

     外傷後に生じる重篤な合併症の一つが敗血症であり、発症すると患者の予後に大きな影響を及ぼす。今回、日本の外傷患者12万人超を対象とした研究で、外傷後敗血症はまれである一方、発症した患者では院内死亡率が著しく高いことが明らかになった。研究は、順天堂大学救急・災害医学講座の宮里篤之氏(現在は沖縄県立南部医療センター・こども医療センター所属)、近藤豊氏らによるもので、詳細は8月18日付で「BMJ Open」に掲載された。

     敗血症と外傷はいずれも主要な死因の一つで、日本では近年、両者の死亡率が低下している。一方、外傷に敗血症を合併すると予後が不良となることが報告されており、海外の研究では、敗血症を発症した外傷患者で死亡率が高く、ICU滞在期間も長いことが示されている。また、外傷後敗血症の臨床的なリスク因子も報告されている。しかし、日本における外傷後敗血症の疫学やリスク因子については明らかになっていない。こうした背景から著者らは、日本外傷データバンク(JTDB)を用いて、日本における外傷後敗血症の疫学的特徴とリスク因子を後ろ向きに解析した。

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    本研究では、JTDBに2004~2019年に登録された鈍的または穿通性外傷の患者のうち、Abbreviated Injury Scale(AIS)スコア3以上で、集中治療室(ICU)入室後72時間以上生存した成人患者を対象とした。解析に必要なデータに欠測がある患者は除外した。外傷後に敗血症を発症した患者の院内死亡率を主要評価項目とし、敗血症発症に関連するリスク因子を多変量ロジスティック回帰分析で検討した。

     対象となった12万6,433人のうち、外傷後に敗血症を発症した患者は972人(0.77%)だった。敗血症を発症した患者の院内死亡率は42.4%で、非発症患者の4.6%と比べて有意に高かった(P<0.001)。また、入院期間の中央値は敗血症発症患者で47日、非発症患者で20日と、敗血症を発症した患者で有意に長かった(P<0.001)。

     敗血症群では、胸部外傷(39.9%対29.5%)、腹部・骨盤外傷(25.8%対8.6%)、下肢外傷(37.3%対22.0%)が非敗血症群より多く、Injury Severity Score(ISS)が25を超える重症外傷の割合も43.3%対19.3%と高かった。また、搬入後24時間以内に輸血を受けた患者の割合も59.3%対21.5%と高かった(いずれもP<0.001)

     多変量ロジスティック回帰分析の結果、高齢(調整オッズ比〔aOR〕1.02、95%信頼区間〔CI〕1.02~1.03)、男性(同1.48、1.27~1.73)、重症度の高い外傷(同1.58、1.39~1.80)、搬入後24時間以内の輸血(同2.78、2.36~3.26)、腹部・骨盤外傷(同2.28、1.91~2.73)、下肢外傷(同1.66、1.42~1.94)は、外傷後敗血症の発症と独立して関連していた。一方、頭部外傷は敗血症発症リスクの低下と関連していた(同0.67、0.55~0.80)。ISSで層別化した解析でも、多くの因子で同様の傾向が認められた。

     また、非敗血症群ではISSが高くなるほど死亡率が上昇したのに対し、敗血症群ではISSにかかわらず死亡率が一貫して高かった。

     著者らは、外傷後敗血症はまれである一方、発症すると外傷の重症度にかかわらず死亡率が高くなることから、早期のリスク評価と介入が重要だと指摘している。また、男性、高いISS、搬入後24時間以内の輸血、腹部・骨盤外傷、下肢外傷が敗血症発症のリスク因子だったことから、これらの因子を持つ患者では外傷の重症度にかかわらず敗血症に注意する必要があるとしている。一方、頭部外傷が敗血症リスクの低下と関連した点については、さらなる検証が必要としている。

     なお、研究の限界として、敗血症の発症時期や感染源、治療介入の時期、併存疾患などの情報が不足していること、担当医の臨床判断に基づく敗血症判定による誤分類や過小診断の可能性などを挙げている

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  • 鼻炎

    季節性アレルギー性鼻炎、外来受診患者数年間2470万人・処方薬費1829億円

     アレルギー性鼻炎(AR)の有病率は世界的に増加しているが、日本におけるその経済的負担については、全国規模のデータが限られている。今回、全国のレセプトデータを用いて季節性ARの受診状況や処方薬費を調べた研究から、外来受診患者数は年間2470万人、処方薬費は1829億円と推計された。研究では、これらを季節性ARにかかる医療支出の最低限の規模を示す推計としている。研究は、千葉労災病院耳鼻咽喉科の郡山みな美氏らによるもので、詳細は8月1日付の「Allergology International」に掲載された。

     ARの医療費に関する研究は欧米からの報告が多く、季節性ARと通年性ARを区別することが難しいため、季節性ARに特化した経済的負担は十分に明らかになっていない。日本では、スギやヒノキ花粉による季節性ARが最も多く、「国民病」とも呼ばれている。こうした日本特有の季節性ARの医療負担を明らかにするため、研究グループは全国のほぼ全人口をカバーする厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて春の季節性ARを中心に評価した。

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     研究では、2018~2019年のNDBを用い、診断・薬剤コードから季節性AR患者と季節性AR関連処方を抽出した。季節性AR関連処方には抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド、点眼薬、免疫療法などの1450製品をカウントした。春季ARは疑い病名を除き、2018年と2019年の両年の1~4月に季節性ARの診断があり、各年14日以上の季節性AR関連薬の処方を受けた患者と定義。通年性ARのみの患者は除外し、季節性ARをできるだけ正確に抽出した。夏季AR(5~8月)、秋季AR(9~12月)も同様に定義した。各季節の患者数、10万人当たり患者数、受診回数、処方薬費を算出し、都道府県別の春季AR患者数とスギ・ヒノキ花粉飛散量との関連も評価した。

     春季AR患者は年間1290万人で、女性が男性の1.36倍だった。人口10万人当たりでは1万783人で、年齢別では5~9歳で最も多く、20~29歳で最も少なかった。30~39歳以降は年齢とともに増加する傾向がみられた。平均受診回数は年間3.05回で、83%が無床診療所を受診していた。年間の処方薬費は1018億円、患者1人当たり7,874円だった。

     都道府県別の春季AR患者数には地域差があり、人口10万人当たりの患者数が全国平均を20%以上上回ったのは群馬、東京、山梨、静岡の4都県だった。一方、13県では20%以上下回った。都道府県別の患者数とスギ・ヒノキ花粉飛散量には中等度の相関が認められた(Spearmanの順位相関係数 r=0.61)。

     夏季AR患者は570万人、秋季AR患者は610万人で、女性が男性より多かった(女性/男性比はそれぞれ1.45、1.46)。平均受診回数は夏季3.49回、秋季3.73回で、処方薬費はそれぞれ387億円、424億円だった。春季、夏季、秋季のAR患者数は計2470万人、処方薬費は計1829億円と推計された。

     著者らは、今回の推計値はレセプトの疑い病名を除外するなど、厳しい基準で患者抽出をしたものであり、医療機関を受診した季節性AR患者にかかる医療費の最低限の規模を示すものと指摘。市販薬で対処するなど医療機関を受診しない患者はNDBでは把握できないため、季節性ARの経済的負担全体はさらに大きい可能性があるとしている。

     なお、本研究では、14日未満の処方患者や医療機関を受診しなかった患者を把握できないこと、レセプト情報のみでは臨床症状の情報がわからないため季節性AR以外の目的の処方や、通年性AR合併の場合、どちらに対して処方されたかを完全に区別できないことなどを限界点として挙げている。

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  • うつ病

    第2世代抗精神病薬の低Na血症リスクに薬剤間差――5万人超の大規模研究

     第2世代抗精神病薬(SGA)の副作用の一つとして低Na(ナトリウム)血症が知られている。今回、米国の副作用報告データベースで、個々のSGAと低Na血症の報告との関係を調べ、その結果を日本の大規模な医療データベースで検証したところ、アリピプラゾールを使用した患者では、オランザピンを使用した患者と比べて低Na血症リスクが48%低いことが分かった。研究は藤田医科大学薬物治療情報学の波多野正和氏らによるもので、詳細は8月13日付の「JAMA Network Open」に掲載された。

     抗精神病薬に関連する低Na血症は患者の3~6%に生じるとされ、軽度であっても入院期間の延長や再入院、死亡と関連することが報告されている。SGAは第1世代抗精神病薬と比べて低Na血症リスクが低い可能性が示されているものの、SGAの薬剤間でリスクにどの程度の違いがあるかは明らかになっていない。このような背景から、著者らは、米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)を用いて個々のSGAと低Na血症との関連を探索するとともに、日本の大規模なレセプトデータベースを用いてSGA間の低Na血症リスクを検討した。

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     研究は2段階で行われ、まずFAERSのデータを用いて、個々のSGAと低Na血症との関連を探索した。そこで得られた結果を検証するため、日本の515病院・約4,800万人のデータを収載するメディカル・データ・ビジョン社の医療データベースから、抗精神病薬を新たに処方された18~69歳の患者を抽出し、使用開始後180日以内の低Na血症発症リスクを比較した。オランザピンはFAERSで低Na血症の報告数が最も多く、臨床でも広く使用されていることから基準薬とした。患者背景は傾向スコアに基づく重み付けで調整した。低Na血症は、血清Na値が135 mEq/L未満、または抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などの診断が記録された場合と定義した。

     解析の結果、アリピプラゾール、アセナピン、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドンの7剤で、オランザピンより低Na血症の報告が少ないシグナルが認められた。特に、ブレクスピプラゾール(報告オッズ比〔ROR〕0.13、95%信頼区間〔CI〕0.08~0.19)とルラシドン(同0.19、0.14~0.24)のRORが低かった。

     日本の医療データベースでは、抗精神病薬を処方された96万1,010人のうち、条件を満たした5万5,394人を解析した。アセナピン、ルラシドン、パリペリドンは対象患者が1,000人未満だったため、コホート解析から除外された。解析対象者の平均年齢は50.4歳で、低Na血症は366人(0.7%)に発症した。患者背景を調整した解析では、アリピプラゾールはオランザピンと比べて低Na血症リスクが48%低かった(調整ハザード比0.52、95%CI 0.35~0.76)。一方、ブレクスピプラゾールでは調整後に有意差がなくなり、その他の薬剤でもオランザピンとの有意差は認められなかった。感度分析でも主要な結果は概ね一貫していた。

     著者らは、SGAでは低Na血症リスクに薬剤間差がある可能性があり、特にアリピプラゾールはオランザピンと比べて低Na血症リスクが低いことが、複数の解析で示されたと考察。低Na血症のリスクが高い患者では、抗精神病薬の選択に役立つ可能性があるとしている。一方、残余交絡やアウトカムの把握方法の違いなどの影響を否定できず、個々の抗精神病薬と低Na血症との関連を明らかにするには、さらなる研究が必要だとしている。

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  • ニュース

    手術開始時刻で手術時間に差、午前は午後より長く

     手術の開始時刻は、手術の成績に影響するのだろうか。今回、手術開始時刻が手術時間に影響する可能性を示す研究結果が報告された。主要な泌尿器科手術2,627例を後ろ向きに解析したところ、午前に開始した手術は午後に開始した手術より時間が長かった一方、周術期合併症や全生存期間には差が認められなかった。研究は、広島大学腎泌尿器科学の小畠浩平氏、日向信之氏らによるもので、詳細は8月8日付の「World Journal of Urology」に掲載された。

     手術開始時刻が手術の効率や患者の転帰に影響する可能性が指摘されている。これまで、遅い時間帯の手術で合併症や死亡、入院期間などのリスクが高まるとの報告がある一方、手術時間や周術期成績に明らかな差はないとする研究もあり、結果は一貫していない。泌尿器科手術におけるエビデンスも限られている。このような背景から著者らは手術開始時刻と主要な泌尿器科手術の臨床転帰との関連を検討した。

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     著者らは、広島大学病院で主要な泌尿器科手術を受けた2,627例を対象に後ろ向き解析を実施した。手術開始時刻により、8~12時の「午前群」と12時以降の「午後群」に分類。手術時間、出血量、周術期合併症、全生存期間(OS)などを比較した。傾向スコアマッチング(PSM)で年齢、性別、BMI、併存疾患、腫瘍関連因子、術式、手術アプローチ、術者経験などの患者背景を調整し、手術開始時刻と手術時間の関連を線形回帰分析でも検討した。

     PSM前は、午前群で高齢者や併存疾患のある患者が多く、手術時間や出血量が多かった。悪性疾患ではOSも午前群で不良だった。PSM後は各群954例となり、患者背景をそろえると、出血量、周術期合併症、OSに差は認められなかった。

     手術時間については午前群で長く(P=0.001)、手術室への入室時刻が1時間遅くなるごとに、手術時間は2.5分短縮した(P<0.001)。午前・午後早期(12~15時)・午後遅期(15時以降)の3群で比較しても、手術時間は有意に異なった(P=0.003)。一方、午後早期と午後遅期の間には有意差はなかった。

     著者らは、主要な泌尿器科手術では、手術開始時刻が午後になるほど手術時間が短くなる一方、周術期合併症やOSには影響しなかったと結論づけた。手術時間の差は臨床的には小さく、手術開始時刻が臨床転帰に及ぼす影響は限定的と考察している。手術時間が午前群で長かった理由については、午前中は時間的な制約が少ないことや、1日の手術を重ねるにつれて術者・チームが“ウォーミングアップ”し、手術が効率化する可能性を指摘。また、午後遅くなるほど手術時間が延びる傾向はみられなかったことから、時間経過に伴う術者の疲労が手術時間を延ばした主な要因とは考えにくく、午前の手術環境や時間的な余裕、症例の割り当てなどが影響した可能性があるとみている。

     なお、本研究の限界点として、後ろ向きの単施設研究で因果関係を判断できないこと、手術チームの構成や研修医の参加、症例の複雑さなどを十分に把握できていないことを挙げている。

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    脊髄くも膜下麻酔後の悪心・嘔吐――機械学習で関連因子を解析

     術後悪心・嘔吐(PONV)は、手術後にみられる頻度の高い合併症の一つで、患者満足度の低下や入院期間の延長にもつながる。今回、脊髄くも膜下麻酔で手術を受けた患者のPONVについて、5種類の機械学習アルゴリズムを用いた解析で、術後のフェンタニル使用が最も強く関連する因子として特定された。研究は、東北大学大学院歯学研究科歯科口腔麻酔学分野の星島宏氏らによるもので、詳細は8月5日付の「PLOS One」に掲載された。

     脊髄くも膜下麻酔下で下肢や下腹部の手術、帝王切開を受けた患者におけるPONVの発生率は5~42%と報告されている。これまでの研究では、女性、麻酔の穿刺レベル、術中低血圧などがリスク因子として挙げられているが、全身麻酔後のPONVで知られているリスク因子とは異なることから、見解は一致していない。近年、医療分野ではAI技術が進展し、機械学習を用いた解析も広がっている。そこで著者らは今回、脊髄くも膜下麻酔下で手術を受けた患者を対象に、機械学習を用いてPONVのリスク因子を検討した。

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     本研究は後ろ向き観察研究で、東北大学病院で2010~2022年に脊髄くも膜下麻酔下の手術を受けた20歳以上の患者を対象とした。診療記録から、性別、年齢、BMI、手術・麻酔時間、麻酔方法、使用薬剤、術後フェンタニル使用など31項目を収集した。PONVの有無による背景因子の偏りを抑えるため傾向スコアマッチングを行った。PONVの発生確率を予測するアンサンブルモデルを構築し、ランダムフォレスト、勾配ブースティングマシン、k近傍法、多層パーセプトロン、決定木の5種類の機械学習アルゴリズムを組み合わせた。各因子の予測への寄与度はShapley値を用いて評価した。

     解析対象となった4,574人のうち、269人(5.9%)がPONVを発症した。傾向スコアマッチング後、PONV群269例と非PONV群269例の計538例を解析した。

     機械学習によるアンサンブルモデルのPONV識別能を示すAUCは0.81で、比較対象としたモデルを上回った。PONVへの寄与度は、術後のフェンタニル使用が最も高く、次いで手術時間、BMI、総尿量、麻酔時間の順だった。

     PONVの関連因子として、患者関連では女性、BMI(25未満)が、麻酔・手術関連では手術時間(60分未満)、麻酔時間(100分未満)、帝王切開、術後フェンタニル使用、脊髄くも膜下腔へのフェンタニル/モルヒネ投与、硬膜外麻酔の穿刺レベル(Th7~12)が特定された。一方、年齢、出血量、輸血量、輸液量、脊髄くも膜下麻酔の穿刺レベル、鎮静薬や昇圧薬などの使用には明確な関連は認められなかった。

     著者らは、今回のAI解析はPONVのリスク因子を特定するのに十分な精度を示し、将来的なPONVの発生予測に活用できる可能性があるとしている。一方、本研究では、傾向スコアマッチング後の症例数が少なく一部の因子を十分に解析できなかったこと、単施設研究で外部検証を行っていないこと、帝王切開の割合が高いこと、鎮静薬の影響を十分に考慮できなかったことなどを限界として挙げている。

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  • 認知症

    専門医への紹介を要したせん妄、認知症・せん妄既往・大量飲酒が関連

     せん妄は、注意・意識・認知機能が急性に変化し、患者の安全や治療経過に影響する。今回、専門チームへの紹介を経て診断されたせん妄には、認知症、せん妄既往歴、大量飲酒が関連することが、2万人超の入院患者を対象とした研究で明らかになった。研究は、奈良県立医科大学附属病院精神医療センターの松田恵美氏、同大学健康管理センター・精神医学講座の山室和彦氏らによるもので、詳細は7月30日付の「PCN Reports」に掲載された。

     せん妄は、入院中の合併症で、短期間に注意力や意識、認知機能の障害が生じ、高齢者や身体的に弱い患者に多い。入院期間延長や死亡リスクの上昇と関連し、患者の発症しやすさに、手術、感染症、薬剤などが重なって発症すると考えられる。実臨床では見逃される例もあり、全入院患者を対象に、院内スクリーニング項目と紹介後のせん妄診断との関連を検討したデータは限られていた。著者らは、入院患者のリスク因子の分布と、専門チームの診断に関連する因子を検討した。

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     研究では、2022年6月~2023年11月に奈良県立医科大学附属病院に入院した全ての連続患者2万980人を対象とし、除外基準は設けなかった。入院後3日以内に、厚生労働省の診療報酬制度に基づく院内チェックリストを用いて、年齢、認知症、せん妄既往、大量飲酒、薬剤使用、手術歴などを評価した。せん妄が疑われた場合は、主治医が認知症ケアチームまたは精神科に紹介し、専門チームがICD-10およびDSM-5-TRに基づき診断した。さらに、ロジスティック回帰分析により、関連因子を年齢と性別で調整して検討した。

     対象2万980人のうち、認知症ケアチームまたは精神科へのコンサルテーションは509人(2.4%)に行われ、209人(全対象の1.0%)がせん妄と診断された。この1.0%は、紹介後にせん妄と診断された患者の割合を示す。入院時のスクリーニングでは、1万1,823人(56.4%)が70歳以上に該当した。また、4,446人(21.2%)はいずれのリスク因子にも該当しなかった。

     年齢別にみると、この診断の割合は概ね年齢が高い群ほど高く、40歳未満では0%だったのに対し、80歳超では1.57%となった。また、認知症やせん妄既往歴は高齢群ほど多くみられた。一方、大量飲酒は中年層で多く、最も高齢の層では少なかった。

     未調整ロジスティック回帰分析では、年齢が1歳高くなるごとに、せん妄と診断されるオッズが3.2%高く、オッズ比(OR)は1.032(95%信頼区間〔CI〕1.020~1.043)だった。一方、年齢と性別を調整した多変量解析では、認知症(OR 3.995、95%CI 2.647~6.029)、せん妄既往歴(OR 3.649、95%CI 2.158~6.170)、大量飲酒(OR 1.648、95%CI 1.002~2.710)が、せん妄診断と独立して関連していた。一方、70歳以上、器質性脳疾患、せん妄リスクを高める薬剤の使用、全身麻酔下の手術などは、せん妄診断と独立して関連しなかった。

     著者らは、今回、認知症やせん妄既往などに着目し、早期にリスクを見極めて予防につなげる意義を指摘する。ただし、本研究で把握したのは、認知症ケアチームまたは精神科への紹介後に診断されたせん妄に限られる。紹介されず主治医が対応した症例や見逃し例は含まれないため、結果は入院患者全体のせん妄発症因子ではなく、紹介後の診断に関連する因子として解釈する必要がある。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

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    HealthDay News 2026年9月7日
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  • ニュース

    国産手術支援ロボット「hinotori」、膵体尾部切除術でda Vinciと概ね同等の周術期成績

     国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori」は2020年に製造販売承認を受け、国内の消化器外科領域でも導入が進んでいる。今回、hinotoriを用いたロボット支援下膵体尾部切除術(RDP)の周術期成績をda Vinci Surgical System(da Vinci)と比較した研究で、両者は概ね同等の周術期成績を示した。また、hinotori群では入院費がda Vinci群と比べて有意に低く、この差は手術時期をそろえた解析でも認められた。研究は、獨協医科大学埼玉医療センター外科の川﨑圭史氏、吉富秀幸氏らによるもので、詳細は7月30日付の「Asian Journal of Endoscopic Surgery」に掲載された。

     hinotoriは、メディカロイド社が開発した国産の手術支援ロボットで、名称は漫画家・手塚治虫氏の「火の鳥」に由来する。世界で広く使用されている手術支援ロボット「da Vinci」と比べ、hinotoriには、アームとトロカーのドッキングが不要、トロカー間距離の自動計測、8軸の関節機構、術者が自由に調整できる3次元ビューアーなどの特徴がある。これまでにhinotoriを消化器外科領域で使用した報告はいくつかあるものの、da Vinciと短期的な周術期成績を比較した研究は限られていた。また、両システムの周術期にかかる費用を比較した報告はなかった。このような背景から著者らは、hinotoriを用いたRDPについて、短期的な周術期成績と安全性をda Vinciと比較して検討した。

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     研究では、獨協医科大学埼玉医療センターで2025年6月までにRDPまたは脾温存RDPを受けた73例を対象とした。da Vinciを用いたRDPは2020年7月、hinotoriを用いたRDPは2023年10月に導入された。hinotori導入後は、患者の臨床的要因や術者の好みではなく、機器の使用状況や手術スケジュールを主に考慮して使用するロボットを選択した。両システムによる手術は、同じ3人の認定を受けた専門医が担当した。患者背景、手術関連因子、術後経過などを後ろ向きに解析し、hinotori群とda Vinci群で周術期成績を比較した。また、手術器具費と入院費も比較した。

     hinotori群は22例、da Vinci群は51例で、年齢、性別、術前の全身状態や腫瘍の特徴など、患者背景に有意な差は認められなかった。手術時間の中央値はhinotori群381.0分、da Vinci群428.0分、出血量はそれぞれ100.0mL、62.5mLで、いずれも有意差は認められなかった。

     一方、術後合併症では、臨床的に意義のある術後膵液瘻(CR-POPF)の発生率がhinotori群で有意に低かった(0%対19.6%、p=0.027)。また、Clavien-Dindo分類IIIa以上の合併症もhinotori群で有意に少なかった(0%対27.4%、p=0.007)。術後入院期間もhinotori群で有意に短く(9.0日対13.5日、p=0.003)、手術費用と材料費を除いた入院費も有意に低かった(149万9,810円対173万5,355円、p=0.005)。手術器具の費用は両群でほぼ同等だった。

     さらに、両システムが使用可能となった2023年10月以降の症例に限定して再解析したところ、CR-POPFの発生率と術後入院期間の群間差は有意ではなくなった。一方、入院費はhinotori群で引き続き有意に低かった。

     著者らは、hinotoriを用いた膵体尾部切除術は安全に実施可能で、短期的な周術期成績はda Vinciと概ね同等だったと考察している。入院費は2023年10月以降の症例に限定した再解析でもhinotori群で有意に低かったが、今後はより大規模な多施設研究による検証が必要としている。

     一方、著者らは、症例数が少ないことや、hinotoriの導入時期がda Vinciより遅かったことによる時間的バイアス、ロボットシステムの導入・保守費用などを含まない費用分析を研究の限界として挙げている。

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  • 高齢者

    犬を飼う高齢者、要介護認知症リスク低下と関連――医療・介護費抑制の可能性も

     ペットとの暮らしは、高齢者の健康維持に役立つのだろうか。今回、国内の高齢者1万1,224人を対象に約7.5年間追跡した研究で、犬を飼っている人では、飼っていない人と比べて要介護認知症の発症リスクが低いことが示された。さらに、犬を飼うことが高齢者の健康維持に加え、公的な医療・介護費の抑制につながる可能性も示唆された。研究は、国立環境研究所環境リスク・健康領域の谷口優氏、東京大学大学院薬学系研究科医療政策・公衆衛生学分野の齋藤良行氏らによるもので、詳細は7月22日付の「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載された。

     ペットとの触れ合いは、身体活動量や精神的健康の向上など、さまざまな健康効果との関連が報告されている。中でも犬を飼うことは、高齢者のフレイルや要介護状態、要介護認知症の発症リスク、死亡リスクの低下と関連することが示されてきた。一方で、犬を飼うことが健康につながるのか、それとも健康な人ほど犬を飼いやすいのかは明らかでなく、因果関係ははっきりしていなかった。また、医療・介護費への影響も十分に検討されていなかった。そこで著者らは、日本の高齢者1万1,224人を約7.5年間追跡し、犬を飼っていることと要介護認知症や死亡との関連を調べ、さらに公的な医療・介護費への影響も評価した。

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     研究では、東京都大田区の65~84歳の地域在住高齢者を対象とした「大田区 元気シニア・プロジェクト」のデータを使用した。2016年に無作為抽出された1万5,500人に質問票を送り、回答が得られた1万1,925人のうち、追跡データが得られた1万1,224人を解析対象とした。犬の飼育状況は、現在飼っている、過去に飼っていた、飼ったことがない、の3群に分類した。約7.5年間追跡し、要介護認知症の発症と死亡を調べた。解析では、年齢や健康状態、経済状況、社会的交流など、犬を飼っている人と飼っていない人の違いを考慮した。さらに、犬を飼う場合と飼わない場合について、4年間の医療・介護費と健康上の効果を計算モデルで比較し、費用対効果を評価した。

     約7.5年間の追跡期間中、1,989人(17.7%)が要介護認知症を発症し、1,808人(16.1%)が死亡した。年齢や健康状態、社会的・経済的背景などを考慮して解析したところ、現在犬を飼っている人では、犬を飼ったことがない人と比べて要介護認知症の発症オッズ(発症のしやすさを示す指標)が47%低かった(オッズ比〔OR〕0.53、95%信頼区間〔CI〕0.43~0.66)。死亡についても、オッズが37%低かった(OR 0.63、95%CI 0.51~0.79)。

     さらに、因果関係の可能性を検討した解析でも、現在犬を飼っている人では要介護認知症の発症オッズが48%低かった(OR 0.52、95%CI 0.27~0.98)。

     費用対効果の分析では、健康上の効果をQALY(質調整生存年:寿命だけでなく健康状態も考慮して、どれだけ質の高い生活を送れるかを表す指標)で評価した。その結果、犬を飼う高齢者では、飼わない高齢者と比べて、家計が負担する犬の飼育費を除いた公的な医療・介護費が1,000人当たり4年間で約1億2,272万円削減され、QALYは142.4増加すると推計された。

     著者らは、犬との暮らしは高齢者の要介護認知症の発症リスク低下や医療・介護費の抑制につながる可能性があり、健康増進政策の一環として活用できる可能性があるとまとめている。一方、犬の飼育状況を評価したのは研究開始時のみで、その後の変化を把握できていないことや、観察研究であるため因果関係を完全には証明できないことなどを研究の限界として挙げている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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  • 高齢者

    地域活動への参加、オーラルフレイルリスク低下と関連――3万人超の縦断研究

     日本の地域在住高齢者約3万人を3年間追跡した研究で、地域活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連することが示された。さらに、その関連は社会経済的地位(SES)が低い高齢者でより強く認められ、社会参加がオーラルフレイルの健康格差の縮小と関連する可能性が示唆された。研究は、北海道大学大学院保健科学研究院地域看護学/公衆衛生看護学教室の富岡那奈子研究員、田髙悦子教授らによるもので、詳細は7月24日付の「PLOS One」に掲載された。

     オーラルフレイルは、かむ力や飲み込む力など口腔機能の軽度な衰えが積み重なった状態で、要介護リスクとの関連が指摘されている。口腔健康には社会経済的格差が存在することが指摘されており、国民皆保険制度の下でもその解消は課題となっている。所得や教育歴などで示されるSESは健康を左右する重要な要因であり、SESが低い高齢者では健康状態の悪化との関連が報告されている。近年、人とのつながりや地域活動への参加などを示す社会関係資本が健康に及ぼす影響が注目されているが、この社会関係資本とオーラルフレイルとの関連や、SESによる違いについては十分に明らかになっていなかった。そのような背景から、著者らは、日本の地域在住高齢者を対象に、個人レベルおよび地域レベルの社会関係資本とオーラルフレイルリスクとの関連を検討し、その関連がSESによって異なるかを解析した。

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     研究では、2019年と2022年に実施された日本老年学的評価研究(JAGES)の縦断データを用いた。対象は、両調査に参加した自治体に住む65歳以上の高齢者のうち、ベースライン時に要介護認定を受けていない3万1,378人とした。オーラルフレイルリスクは、年齢、残存歯数、咀嚼機能、嚥下機能などを用いた予測モデルにより評価した。SESは等価世帯所得をもとに評価し、年間所得200万円未満を低SES群、200万円以上を中~高SES群とした。社会関係資本は、市民活動への参加、社会的結束、互助関係の3領域について評価した。さらに、本人の社会的つながりを示す「個人レベル」と、居住地域全体のつながりを示す「地域レベル」の両面から解析した。解析では、これらの社会関係資本とオーラルフレイルリスクとの関連を、多変量ロジスティック回帰分析により検討した。さらに、SESによって関連の強さが異なるかを解析した。

     3年間の追跡期間中、対象者の21.6%にオーラルフレイルリスクが認められた。SES別では、低SES群で24.6%、中~高SES群で19.9%となり、低SES群でリスク発生割合が高かった。

     社会関係資本との関連を解析したところ、個人レベルの社会関係資本が高い人ほど、オーラルフレイルリスクは低かった。特に、市民活動への参加が多い人ではリスク低下との関連が認められ、この関連は低SES群でより強かった。また、個人レベルの社会的結束や社会関係資本全体のスコアについても、オーラルフレイルリスク低下との関連が認められた。

     地域レベルの社会関係資本では、市民活動への参加が活発な地域ほどオーラルフレイルリスクが低かった。一方、社会的結束や互助関係などについては、地域レベルでの明確な関連は認められなかった。

     著者らは、社会参加、特に市民活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連する可能性を指摘している。特に低SESの高齢者で関連が強かったことから、社会参加、特に市民活動への参加を促す取り組みが、口腔健康における社会経済的格差の解明や対策を考える上で重要な手がかりになるとしている。

     なお、著者らは、本研究は観察研究であることから因果関係については結論できないこと、またオーラルフレイルは自己申告項目を用いた予測モデルで評価していることから臨床検査に基づくものではないことについて留意する必要があるとしている。

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  • 小児

    乳幼児期の睡眠不足、3歳時の発達遅延と関連――日本の出生コホート研究

     睡眠は、子どもの健やかな発達に欠かせない重要な要素である。今回、日本の全国出生コホート研究のデータを用いた解析から、乳幼児期の短い睡眠時間が3歳時の発達遅延と関連することが示された。また、睡眠場所が睡眠時間に関連する可能性も示された。研究は、鳥取大学医学部社会医学講座健康政策医学分野の増本年男氏らによるもので、詳細は7月8日付の「Frontiers in Public Health」に掲載された。

     これまでの研究で、子どもの短い睡眠時間は、肥満や不安・抑うつなどの精神的健康問題、感情調整の困難さと関連することが報告されている。また、乳幼児期は神経回路の形成が活発な時期であり、この時期の睡眠がその後の発達に影響する可能性も指摘されている。一方で、乳幼児期の睡眠時間と、その後の子どもの発達との関連については、研究結果が一貫しておらず、十分には解明されていない。また、睡眠時間に影響を及ぼす睡眠環境の要因についても、明らかになっていない。そこで研究グループは、日本の大規模出生コホート研究のデータを用いて、乳幼児期の睡眠時間と3歳時の発達との関連、さらに睡眠時間に影響する睡眠環境について検討した。

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     著者らは、日本の出生コホート研究「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査、The Japan Environment and Children’s Study:JECS)」のデータを用いて解析を行った。2011~2014年に全国19府県で登録された妊婦から生まれた子どものうち、出生情報などが得られた10万303人を主解析の対象とした。子どもの睡眠時間は、保護者への質問票により生後6カ月、1歳、1歳6カ月、3歳時点で評価した。年齢別の推奨睡眠時間(生後6カ月は12時間以上、1歳・1歳6カ月は11時間以上、3歳は10時間以上)を下回る場合を「短い睡眠時間」と定義した。また、子どもの発達は、生後6カ月、1歳、1歳6カ月、3歳時点で、保護者回答式の発達評価尺度であるAges and Stages Questionnaires, Third Edition(ASQ-3)を用いて評価した。主解析として、乳幼児期の睡眠時間と3歳時の発達遅延との関連について、個人差を考慮した統計解析を実施した。さらに、詳細調査の対象者を用いて、睡眠場所や騒音などの睡眠環境と睡眠時間との関連についても検討した。

     解析の結果、生後6カ月、1歳、3歳時点で睡眠時間が年齢別推奨範囲を下回っていた子どもでは、3歳時の発達遅延との関連が認められた。短い睡眠時間は、推奨睡眠時間以上の子どもと比べて、3歳時の発達遅延と関連していた(生後6カ月:オッズ比〔OR〕1.11、1歳:OR1.10、3歳:OR1.15)。

     また、ASQ-3の各領域について解析したところ、生後6カ月および3歳時の短い睡眠時間は、コミュニケーション、粗大運動(歩行などの全身運動)、微細運動(手先の細かな動作)、問題解決、個人・社会の全ての領域で発達遅延との関連が認められた。1歳時の短い睡眠時間は粗大運動および問題解決領域、1歳6カ月時の短い睡眠時間は粗大運動領域の発達遅延と関連していた。

     さらに、詳細調査の対象者を用いて睡眠環境との関連を調べた結果、睡眠場所が短い睡眠時間と関連していた。一方で、寝室へのペットの侵入、騒音、騒音による睡眠障害、就寝時間、喘息などの要因は、短い睡眠時間との有意な関連を示さなかった。

     今回の研究から、乳幼児期の短い睡眠時間は、3歳時の発達遅延と関連することが示された。また、睡眠場所などの睡眠環境が、子どもの睡眠時間に関連する可能性も示唆された。一方で、睡眠時間と発達との因果関係や、その背景にあるメカニズムについては明らかになっておらず、さらなる研究が必要だとしている。

     なお、睡眠時間や発達の評価は保護者への質問票に基づいており、客観的な測定ではない点などが研究の限界として挙げられる。

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