日本人では睡眠時間と内臓脂肪面積との関連が男性と女性で大きく異なる

 睡眠時間と内臓脂肪面積の関係は、男性と女性で大きく異なることを示すデータが報告された。8時間以上の長時間睡眠の男性には内臓脂肪型肥満が有意に多く、一方で長時間睡眠の女性には内臓脂肪型肥満が有意に少ないという。東京大学医学部の齊藤活輝氏、同予防医学センターの山道信毅氏らが行った日本人対象横断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月24日掲載された。

 肥満は体に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、さまざまな疾患のリスクを高める。特に、内臓の周囲に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、よりハイリスクな状態であることが知られている。近年、BMI(Body Mass Index;肥満指数)高値で定義される肥満と睡眠時間との間に関連のあることが分かり、そのメカニズムとして、睡眠不足によってストレスホルモンや食欲関連ホルモンの分泌、深部体温に影響が生じることなどの関与が想定されている。ただし、BMI高値より正確な肥満指標である内臓脂肪面積高値で定義される内臓脂肪型肥満と睡眠時間の関係については、特にアジアからのデータの報告はほとんどなかった。齊藤氏らはこの点を明らかにするため、日本人成人を対象とする以下の研究を実施した。

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 研究対象は、2008~2020年の人間ドック(千葉県)の健診受診者のうち、CT検査による内臓脂肪面積のデータや睡眠時間などに関するアンケート記録がある2,538人(平均年齢56.4±10.8歳、男性75.6%、BMI24.5±3.4)。内臓脂肪面積は男性116.5±47.1cm2、女性70.0±41.2cm2であり、100cm2以上を内臓脂肪型肥満とすると、男性の59.8%、女性の21.1%が該当した。睡眠時間は6.15±1.07時間であり、性別で比較すると男性の方が有意に長かった(6.18±1.06対6.05±1.08時間、P=0.004)。

 内臓脂肪型肥満群とそうでない群を性別に比較すると、男性・女性ともに内臓脂肪型肥満群は有意に高齢であり、血圧が高く、また、糖・脂質代謝指標の悪化が認められた。喫煙習慣と飲酒習慣については男性でのみ有意差があり、内臓脂肪型肥満群で現喫煙者・前喫煙者が多く、また、習慣的飲酒者が多かった。睡眠時間については男性・女性ともに、内臓脂肪型肥満の有無による有意差がなかった。

 次に、多重ロジスティック回帰分析にて、内臓脂肪型肥満と関連のある因子を検討。男性・女性ともに、年齢、BMI、中性脂肪は有意な正の関連があり、そのほかに男性では尿酸値と正の関連、HDL-Cと負の関連、女性ではHbA1cと正の関連が認められた。睡眠時間に関しては、6~7時間の群を基準として8時間以上の場合、男性は正の関連〔オッズ比1.19(95%信頼区間1.06~1.34)〕、女性は負の関連〔オッズ比0.83(同0.70~0.98)〕が認められた。

 年齢、BMI、収縮期血圧、HbA1c、HDL-C、LDL-C、中性脂肪、尿酸値、喫煙・飲酒習慣の傾向スコアを用いた共変量調整後の解析では、睡眠時間6~7時間の群を基準として8時間以上の場合、男性ではオッズ比1.64(同1.10~2.45)、女性ではオッズ比0.34(同0.12~0.97)となり、やはり男性は長時間睡眠者に内臓脂肪型肥満が多く、女性はその反対という結果が得られた。睡眠時間が5~6時間や5時間未満の短時間睡眠の群や、7~8時間の群では、性別によらずオッズ比の有意な上昇や低下は観察されなかった。

 この結果に基づき著者らは、「日本人の睡眠時間と内臓脂肪型肥満の関連は、男性と女性で大きく異なることが明らかになった」と結論付け、その背景として、「職業や収入、健康意識に関する性差といった社会的因子や、性ホルモンなどの内因的物質による影響が関係している可能性が考えられる。今後、前向き研究を含め、多角的視野からのさらなるデータ解析が必要である」との考察を加えている。また、欧米からは短時間睡眠の人にも肥満が多いというデータが報告されているが、今回の研究ではそのような関連は見られなかった。この点に関しては、人種/民族の違いのほかに、「それらの先行研究はBMIと睡眠時間の関係を評価しているものが多く、BMI高値で定義される肥満と内臓脂肪型肥満との乖離の影響も考えられる」としている。

 重要な健康指標であり、多くの疾患のリスクとなることが明らかである肥満。今後のさらなる研究の発展を期待したい。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2023年2月27日
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