代謝的に健康でもFIB-4 index高値の男性はCKDリスクが高い
代謝的に健康で慢性腎臓病(CKD)のリスクは低いと考えられる男性でも、肝臓線維化マーカーである「FIB-4 index」が高い場合はCKDリスクが高いことを示唆するデータが報告された。産業医科大学病院腎センターの久間昭寛氏らが行った縦断的研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に10月5日掲載された。
メタボリックシンドロームの肝臓における表現型とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝硬変や肝がんのリスクであるのと同時に、心血管代謝疾患リスクとも関連のあることが知られている。さらに、NAFLDがアルブミン尿のリスク因子であるとする報告もある。ただし、NAFLDがCKDの独立したリスク因子であるか否かは十分検討されていない。これを背景として久間氏らは、NAFLDなどによる肝線維化の簡便な指標であるFIB-4 indexとCKDリスクとの関連を検討した。
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2009~2014年の企業健診受診者1万1,296人から、ベースライン時点でCKDに該当する人、習慣的飲酒者(エタノール換算で男性30g/日以上、女性20g/日以上)、追跡期間が5年未満だった人を除外し、男性5,353人(FIB-4 indexは平均0.73、eGFR81.8mL/分/1.73m2)のデータを解析に用いた。女性は解析対象に残らなかった。
FIB-4 indexが1.3以上を高値とすると、243人(4.5%)が該当した。傾向スコアマッチングにより、FIB-4 index1.3未満の群からこの243人と背景の一致する同数の対照群を設定。両群を比較すると、FIB-4 indexの計算に必要なAST、ALT、血小板数を除き、年齢、BMI、eGFR、血清脂質、血圧、HbA1c、喫煙者率、高血圧・糖尿病の該当者率など、全て有意差のないことが確認された。FIB-4 indexは低値群が0.91±0.22、高値群が1.65±0.49だった。
これら両群を5年間追跡したところ、FIB-4 index低値群の33人(14%)、高値群の48人(21%)がCKDを発症。全数解析では有意な群間差は認められなかった〔オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間0.97~2.56)〕。年齢(55歳未満/以上)および、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙習慣の有無で層別化したサブグループ解析では、非肥満〔OR1.92(同1.09~3.40)〕、非高血圧〔OR2.15(1.16~3.95)〕、非喫煙者〔OR1.88(1.09~3.23)〕において、FIB-4 index高値群でCKD発症オッズ比の有意な上昇が認められた。年齢や糖尿病・脂質異常症の有無では、FIB-4 indexの高低による有意なリスク差は認められなかった。
次に、サブグループ解析で有意差の認められた代謝関連因子(肥満、高血圧、喫煙習慣)が一つ以上該当する群(227人)と一つも該当しない群(237人)に二分し、FIB-4 index低値群に対する高値群のCKD発症オッズ比を検討。すると、代謝関連因子を有する群は有意なオッズ比上昇が観察されなかった一方で〔OR1.06(0.54~2.09)〕、代謝関連因子を持たない群では、FIB-4 indexが高いことによる有意なオッズ比上昇が認められた〔OR2.45(1.19~5.10)〕。
続いて、代謝関連因子を持たない群の5年間でのeGFR変化率を目的変数とする多重線形回帰分析を施行。その結果、FIB-4 index(β=-2.8950、P=0.011)、中性脂肪(β=-0.0159、P=0.026)が有意な負の関連因子、尿酸(β=1.0838、P=0.031)が正の関連因子として抽出され、年齢やBMI、LDL-C、HbA1c、収縮期血圧などは有意な関連がなかった。
以上を基に著者らは、「代謝的に健康でありCKDリスクが低いと考えられる場合でも、FIB-4 index 1.3以上で定義されるNAFLDに該当する男性はハイリスクの可能性があるため、腎機能の注意深い経過観察が必要とされる」と結論付けている。なお、代謝的に健康な場合でのみ両者の関連が有意であることの理由については、「代謝的に不健康な場合はそのことがCKD発症の強力なリスク因子となるため、FIB-4 indexの予測能がマスクされてしまうのではないか」との考察を加えている。
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