2型糖尿病のHbA1cコントロールにピアサポートアプリが有効か

糖尿病患者の血糖管理においてHbA1cは重要な指標となるが、今回、デジタルピアサポートアプリの活用により2型糖尿病患者のHbA1cが統計学的に有意に低下する可能性が示唆された。アプリ内のチャットを通じたコミュニケーションが患者個人の意思決定や行動に影響を与えている可能性があるという。研究は北里大学大学院 医療系研究科の吉原翔太氏によるもので、詳細は「JMIR Formative Research」に5月20日掲載された。
HbA1cは過去2~3か月間の平均血糖値を反映し、糖尿病合併症のリスクを予測するためのゴールドスタンダードとされている。しかし、2型糖尿病患者にとっては、健康的な行動を自ら採用し維持することが困難な場合もあり、HbA1cの適切な管理が難しい患者も少なくない。ピアサポートは、共通の経験や課題を持つ個人同士が互いに支援し合うことと定義されており、2型糖尿病患者の健康的な行動を促進するための効果的な戦略となる可能性が示唆されている。デジタルヘルスの技術進歩により、ピアサポートもアプリ上で行うことが可能となりつつある。しかし、このようなアプリが2型糖尿病の管理に及ぼす影響については、十分な検討がなされていない。このような背景を踏まえ、著者らは2型糖尿病患者のHbA1cコントロールに対するデジタルピアサポートアプリの効果を検証するために、前向きの単群パイロット研究を実施した。

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本研究は、「TRY! YAMANASHI! 実証実験サポート事業」の一環として、2021年12月から2022年6月にかけて実施された。解析対象は、スマートフォンを所有する、山梨県内の医療機関を受診した2型糖尿病患者とした。参加者は医師からデジタルピアサポートアプリ「みんチャレ」(エーテンラボ株式会社)を紹介され、アプリ内の糖尿病管理グループに登録した。介入期間は3ヵ月間とし、参加者は糖尿病の標準治療に加え、このアプリの使用を奨励された。このアプリは、参加者がチャット機能を通じて活動記録や懸念を共有し、相互の関与と励ましによってHbA1c値の改善を図ることを可能にした。主要評価項目は、ベースラインからのHbA1cの変化量とした。
本研究には、21名の参加者(年齢中央値56歳)が含まれ、うち13名(61.9%)が女性だった。3ヵ月間の介入の結果、参加者のHbA1cはベースラインの7.1(±0.6)%から6.9(±0.1)%へと有意に減少した(P<0.05、ウィルコクソンの符号順位検定)。同様に、体重も70.7(±12.7)kgから69.9(±12.4)kgに減少した(P<0.05、ウィルコクソンの符号順位検定)。血圧に関しては、128.2(±12.5)mmHgから126.0(±12.9)mmHgへとわずかに減少したものの、統計的に有意ではなかった。また、1日1時間以上の身体活動を行う参加者の割合は、23.5%から58.5%へと増加した(P<0.05、マクネマー検定)。
本研究について著者らは、「2型糖尿病の標準治療に加え、デジタルピアサポートアプリを使用することで健康的な行動が促進され、患者のHbA1c値が改善する可能性があることが示唆された。この結果は、リマインダーやチャット機能といったアプリの特定の機能に起因している可能性がある。チャットを通じたコミュニケーションは、個人の意思決定や行動に影響を与え、健全な行動を維持するためのオンラインコミュニティ内での行動規範形成に寄与している可能性もある」と述べている。
本研究の限界点については、サンプル数の少ない単群介入研究であったこと、主要評価項目にHbA1c値を採用したため、行動変化と検査値の間にタイムラグがあることなどを挙げている。

糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。