日本人では内臓脂肪が多いほどインフルエンザ罹患リスクが高い

 日本人では内臓脂肪が多いほどインフルエンザに罹患しやすいことを示唆するデータが報告された。木下佳大氏〔弘前大学大学院医学系研究科社会医学講座、花王(株)〕、大里直樹氏(花王)、井原一成氏(弘前大学大学院医学系研究科社会医学講座)らの研究の結果であり、「PLOS ONE」に7月26日、論文が掲載された。

 肥満は免疫反応を低下させて感染症リスクを高めると考えられており、BMIとインフルエンザ罹患率との有意な関連も報告されている。ただしBMIの値には脂肪量だけでなく筋肉量も反映されており、さらに種々の疾患のリスクとの関連は皮下脂肪よりも内臓脂肪の影響が大きいことが知られている。よって、インフルエンザに関してもBMIより、内臓脂肪の方がリスクとの関連が強い可能性が考えられるが、それを検討した研究は報告されていない。また、肥満とインフルエンザの関連を示した研究も主として欧米で実施されたものであり、アジア人での知見は少ない。そこで木下氏らは、弘前大学が行っている住民対象疫学研究「岩木健康増進プロジェクト・プロジェクト健診」のデータを用いてこの点を検討した。

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 2019年5月25日~6月3日に、1,065人が同プロジェクトの一環として実施された住民健診に参加。データ欠落者などを除外し1,040人(平均年齢52.5±15.1歳、女性59.3%)のデータを横断的に解析した。インフルエンザの罹患状況は、過去1年以内の罹患の有無を自記式アンケートにより把握した。内臓脂肪面積は、花王が開発した内臓脂肪計(腹部生体インピーダンス法)により測定した。

 過去1年間でインフルエンザに罹患していたのは119人(11.4%)だった。インフルエンザに罹患していた群は、対照群に比べて若年で(P=0.024)、世帯規模が大きく(P=0.036)、高血圧の頻度が低かった(P=0.042)。性別(女性の割合)や喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、糖尿病・脂質異常症の有無、およびBMIは、群間に有意差がなかった。

 次に、内臓脂肪面積(VFA)に基づき全体を4群に分け、インフルエンザ罹患リスクに影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、世帯人員、教育歴、高血圧・糖尿病・脂質異常症の有無、健康状態の自己評価スコア)を調整の上、罹患状況を比較検討した。その結果、VFAが大きいほどインフルエンザにかかりやすいことが分かった。具体的には、VFA100cm2未満の群を基準とすると、VFA100~150cm2未満ではオッズ比(OR)1.62(95%信頼区間0.84~3.12)、150~200cm2未満ではOR1.97(同0.71~5.45)、200cm2以上ではOR5.03(1.07~23.6)であり、傾向性P値が0.049と有意だった。

 続いて、BMIに基づき全体を4群に分け、同様の交絡因子を調整後に検討したところ、インフルエンザ罹患との有意な関連は認められなかった。具体的には、BMI25未満の群を基準として、BMI25~30未満ではOR0.84(0.45~1.56)、30~35未満ではOR0.54(0.13~2.32)、35以上ではOR0.44(0.04~4.62)であり、傾向性P値が0.356と非有意だった。

 2020年の健診データを用いて行った解析からも、上記と同様の関係が認められた。

 著者らは本研究を、内臓脂肪面積とインフルエンザ罹患との関連を検討した初の研究と位置付け、論文の結論を「日本人成人では内臓脂肪蓄積がインフルエンザ罹患リスクと関連のあることが示唆される」とまとめている。なお、欧米での先行研究ではBMI高値がインフルエンザリスクであることが示されているが、本研究ではBMIとの関連が非有意だった。この違いの理由について著者らは、「アジア人はBMIがそれほど高くなくても内臓脂肪蓄積に対する感受性が高いことが一因ではないか」との考察を述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2022年10月11日
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