TG/HDL-C比は2型糖尿病発症の強力な予測因子――日本人12万人の縦断的研究

 中性脂肪(TG)と善玉コレステロール(HDL-C)の比が、将来の2型糖尿病の発症リスクの予測に利用できることが、12万人以上の日本人を長期間追跡した結果、明らかになった。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の弓削大貴氏、岡田博史氏、福井道明氏、パナソニック健康管理センターの伊藤正人氏らの研究によるもので、詳細は「Cardiovascular Diabetology」に11月8日掲載された。2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値は、2.1だという。

 TGをHDL-Cで除した値「TG/HDL-C比」は、インスリン抵抗性の簡便な指標であることが知られているほか、脂肪性肝疾患や動脈硬化性疾患、および2型糖尿病の発症リスクと相関することが報告されている。ただしそれらの報告の多くは横断的研究またはサンプルサイズが小さい研究であり、大規模な追跡研究からのエビデンスは存在せず、2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値も明らかになっていない。弓削氏、岡田氏らは、国内の企業グループの従業員を対象とするコホート研究(Panasonic cohort study)のデータを用いた縦断的解析によって、この点を検討した。

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 2008~2017年に健診を受けた計23万6,603人から、ベースライン時点で既に糖尿病と診断されている患者、脂質異常症治療薬を服用している患者、およびデータ欠落者などを除外し、12万613人を解析対象とした。主な特徴は、平均年齢44.2±8.5歳、男性76.0%、BMI22.9±3.4kg/m2であり、TGは110.0±85.9mg/dL、HDL-Cは60.5±15.4mg/dLで、悪玉コレステロール(LDL-C)は123.4±31.5mg/dLだった。

 2018年までの追跡〔期間中央値6.0年(四分位範囲3~10年)〕で、6,080人が新たに2型糖尿病を発症した。2型糖尿病発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、空腹時血糖値、喫煙習慣、運動習慣、収縮期血圧)を調整後に、脂質関連検査値と2型糖尿病発症リスクとの間に、以下の有意な関連が認められた。

 まず、TGは10mg/dL上昇するごとのハザード比(HR)が1.008(95%信頼区間1.006~1.010)だった。同様の解析でHDL-CはHR0.88(同0.86~0.90)、LDL-CはHR1.02(1.02~1.03)であり、TG/HDL-C比は1上昇するごとにHR1.03(1.02~1.03)となった。

 次に、向こう10年間での2型糖尿病発症を予測するための最適なカットオフ値と予測能(AUC)を検討。すると、予測能が低い指標から順に、LDL-Cがカットオフ値124mg/dLでAUCは0.609、HDL-Cは54mg/dLでAUC0.638、TGは106mg/dLで0.672であり、最も高いAUCはTG/HDL-C比の0.679であって、そのカットオフ値は2.1と計算された。TG/HDL-C比の予測能は、他の3指標すべてに対して有意に優れていた(いずれもP<0.001)。

 続いて、性別およびBMI別のサブグループ解析を施行。すると、男性では全体解析と同様に、TG/HDL-C比が1上昇することによる2型糖尿病発症のHRは1.03(1.02~1.03)だったが、女性は1.05(1.02~1.08)であり、より強い関連が示された。ただし交互作用は非有意だった。

 BMI25kg/m2未満/以上で層別化した解析からは、25未満の群でTG/HDL-C比が1上昇するごとのHRは1.04(1.03~1.05)である一方、25以上の群ではHR1.02(1.02~1.03)であって、有意な交互作用が観察された(交互作用P=0.0001)。最適なカットオフ値は、BMI25未満では1.7、25以上では2.5だった。

 著者らは本研究の特徴として、日本人を対象とする縦断的研究でありサンプルサイズも大きいことを挙げる一方、女性が少ないこと、比較的若年者が多いことなどの限界点があるとしている。その上で「TG/HDL-C比は、LDL-C、HDL-C、TGよりも10年以内の2型糖尿病発症の強力な予測因子であることが示された。この結果は、2型糖尿病発症抑制のための今後の医療政策に有用な知見となり得る」と述べている。

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HealthDay News 2023年12月18日
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