透析開始2週後の高BMIが死亡リスクの低さと関連――国内単施設での検討

 透析導入時点のBMI低値は死亡リスクの高さと関連する一方、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連するというデータが報告された。中東遠総合医療センター腎臓内科の稲垣浩司氏らの研究によるもので、結果の詳細は「PLOS ONE」に6月24日掲載された。

 肥満は代謝性疾患や心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)のリスク因子だが、一方で高齢者や一部の慢性疾患患者ではBMI高値の方が死亡リスクが低いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が見られることが知られている。日本人透析患者でも、BMIが低いほど死亡リスクが高いとする報告がある。ただし、BMI高値が死亡リスクの低さと関連することは示されていない。また透析患者のBMIは体液量によって大きく変動するため、どの時点でBMIを評価するかによって、死亡リスクとの関連性が異なる可能性がある。そこで稲垣氏らは、初回透析時のBMI、および、体液過剰が是正されたと考えられる透析開始2週間後のBMIと、全死亡のリスクとの関係を検討した。

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 同院で2013~2019年に維持血液透析を開始した20歳以上の患者284人のデータを後方視的に解析。エンドポイントは、腎移植の施行、追跡不能、または2022年2月の追跡終了までの全死亡とした。なお、追跡期間が3カ月未満の18人は解析から除外した。解析対象者266人の平均年齢は68.9±12.0歳、男性が66.5%で、54.1%は糖尿病、31.2%は心血管疾患を有していた。

 初回透析時の平均BMIは23.3±4.24で、BMI18.5未満の「低値群」が8.3%、18.5~23.9の「正常群」が55.6%、24以上の「高値群」が36.1%を占めていた。透析開始2週間後は、平均BMIが22.0±3.80であり、低値群18.4%、正常群54.9%、高値群26.7%と、全体的にBMIが低下していた。また、足浮腫を認める患者は初回が58.3%、2週間後が12.8%であり、心胸郭比は同順に、54.6±6.98%、52.4±6.57%だった。

 平均3.89±2.12年の追跡で30.1%が死亡。3年死亡率を初回透析時のBMIカテゴリー別に見ると、低値群40.4%、正常群16.4%、高値群10.5%であり、低値群は他の2群より有意に死亡率が高かった。透析開始2週間後のBMIカテゴリー別では、低値群28.5%、正常群17.7%、高値群4.5%であり、高値群は他の2群より有意に死亡率が低かった。

 次に、単変量解析によって死亡率と有意な関連が認められた因子(年齢、BMIカテゴリー、収縮期血圧、eGFR、心血管疾患の既往など)、および性別、糖尿病の影響を調整したCox回帰分析を施行。その結果、初回透析時のBMI低値群は、正常群に比べて有意に死亡リスクが高いことが示された〔ハザード比(HR)2.39(95%信頼区間1.13~5.03)〕。BMI高値群は正常群と有意差がなかった〔HR0.72(同0.40~1.29)〕。

 一方、透析開始2週間後のBMIに関しては、低値群は正常群との差が有意でなくなり〔HR1.43(同0.81~2.53)〕、高値群の死亡率は正常群より有意に低くなっていた〔HR0.38(同0.18~0.81)〕。なお、65歳以上の高齢者のみで検討すると、BMI高値群ではより大きなリスク低下が示された〔HR0.23(同0.09~0.61)〕。

 著者らは、「初回透析時のBMI低値は死亡リスクの高さと関連し、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連しており、高齢者ではこの関連が顕著だった」とまとめている。また、「体液過剰是正後のBMI高値は、高齢者や慢性疾患患者での死亡リスクの低下との関連が示唆されている筋肉量や脂肪量の多さを表していると考えられる。よって本研究の結果は、透析患者においても十分な栄養と身体活動が、予後改善に寄与する可能性を示唆している」と述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2022年10月3日
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