COVID-19感染リスクを過小/過大評価する人の特徴――高齢日本人での検討

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患するリスクを過小評価しがちな人と、その反対に過大評価しがちな人の特徴が明らかになった。京都大学大学院医学研究科社会疫学分野の竹村優太氏らが、日本人高齢者を対象に行った調査の結果であり、詳細は「SSM – Population Health」9月号に掲載された。

 COVID-19対策には適切なリスク評価が重要であり、リスクを過小評価する楽観的認識は、予防対策の軽視による感染リスクの上昇につながりかねない。反対にリスクを過大評価する悲観的認識は、精神的ストレスによる健康上の問題につながりかねない。高齢者はCOVID-19罹患率が高く重症化しやすいため、楽観/悲観的認識に基づく予防対策の差異の影響が、より大きく現れる可能性がある。そこで竹村氏らは、日本人高齢者を対象とする調査を行い、COVID-19罹患リスクを過小/過大評価しやすい人の特徴の把握を試みた。

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 この研究は、全国の自治体が参加して行われている「日本老年学的評価研究(JAGES)」の一環として実施された。2020年11月30日~2021年2月8日に、11の市区町村から65歳以上で要介護認定を受けていない一般住民2万4,613人を無作為に抽出し、調査協力を依頼。1万8,238人(74.1%)から回答を得た。データ欠落者などを除外し、1万8,045人を解析対象とした。解析対象者の主な特徴は、平均年齢75.7±6.5歳、女性52.5%で、70%以上が何らかの慢性疾患を有しており、86.5%は日常生活に介助を必要としない自立した生活を送っていた。

 「緊急事態宣言期間中(2020年4~5月)、あなた自身が新型コロナウイルスに感染する可能性はどの程度あると感じていましたか」との質問に四者択一で回答してもらった。回答の割合は、「まったくない」が8.8%、「あまりない」37.5%、「多少ある」42.9%、「かなりある」7.1%となった(無回答など3.7%)。1つ目を選んだ人を楽観的、4つ目を選んだ人を悲観的と定義し、2つ目および3つ目を選んだ人を対照群として、多項ロジスティック回帰分析により、楽観/悲観的認識と関連のある因子を検討した。

 まず、基本的な属性との関連については、年齢が高いほど楽観的認識が強いという関連があった〔オッズ比(OR)1.05〕。ただし、年齢と悲観的認識との関連は非有意だった。性別や配偶者の有無は、楽観/悲観的認識の双方と関連がなかった。

 社会経済的要因については、教育歴が長いことは楽観的認識の弱さと関連し(OR0.72~0.76)、悲観的認識とは関連がなかった。主観的な所得の高さは楽観的認識の強さと関連し(OR1.10)、悲観的認識とは関連がなかった。有職者であることは悲観的認識の強さと関連し(OR1.81)、楽観的認識とは関連がなかった。

 自己申告による慢性疾患のうち、糖尿病患者は楽観的認識が強く(OR1.11)、心疾患患者は楽観的認識が弱かった(OR0.72)。また、呼吸器疾患患者は悲観的認識が強かった(OR1.54)。脳卒中やがんは楽観/悲観的認識ともに、有意な関連がなかった。老年期うつ病評価尺度(GDS15)で評価したうつレベルの高さは、楽観的認識の弱さ(OR0.69~0.73)、悲観的認識の強さ(OR1.37~1.91)の双方と関連していた。

 居住地域の社会的な絆の強さは悲観的認識の弱さと関連し(OR0.94)、楽観的認識とは関連がなかった。そばに相談相手がいることは楽観的認識の弱さと関連し(OR0.82)、悲観的認識とは関連がなかった。ボランティアやスポーツ、趣味などの社会参加の頻度は、楽観/悲観的認識ともに有意な関連がなかった。

 行動をとる上で最も参考にしていた情報ツールとの関連については、テレビのニュース番組を参考にしていた人は楽観的認識が弱く(OR0.79)、悲観的認識が強かった(OR1.22)。テレビの情報番組を参考にしていた人は楽観的認識が弱く(OR0.84)、悲観的認識とは関連がなかった。インターネット情報を参考にしていた人は悲観的認識が強く(OR1.22)、楽観的認識とは関連がなかった。行政から発信される情報を参考にしていた人は楽観的認識が弱く(OR0.94)、悲観的認識とは関連がなかった。医療スタッフを参考にしていた人は悲観的認識が強く(OR1.60)、楽観的認識とは関連がなかった。家族や友人の情報を参考にしたことは、楽観/悲観的認識ともに有意な関連がなかった。

 以上、一連の結果を基に著者らは、「高齢、教育歴が短い、経済的に恵まれている、および糖尿病といった因子を持つ人はCOVID-19罹患リスクを過小評価する傾向がある。これらの人に対しては、感染リスクを強調して伝えるべきかもしれない。一方、うつ傾向のある人や有職者はリスクを過大評価する傾向があり、感染予防対策をしっかり行えばあまり不安がらなくても良いといったアドバイスが必要かもしれない」とまとめている。

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HealthDay News 2022年10月3日
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