潰瘍性大腸炎について

潰瘍性大腸炎とはどのような病気?

現在の医学では主な原因がはっきりわかっておらず、完全に治すのが難しいとされています。そのため、潰瘍性大腸炎では主に薬を使った内科的治療を行ないながら、「寛解」という病気がおさまっている状態を目指していきます。
よくある病気ではありませんが、潰瘍性大腸炎は若い人が発症しやすい傾向があり、近年徐々に患者数が増えています。
厚生労働省の発表によると、2014年に潰瘍性大腸炎と診断された人は約17万人となっています。

潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
潰瘍性大腸炎とよく似た病気にクローン病があります。潰瘍性大腸炎は大腸のみに症状が出るのに対し、クローン病は大腸以外の消化管粘膜にも症状が出ます。
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎の原因は、自己免疫反応に異常が生じて発症する説、腸内細菌が関わっているという説、ほかには遺伝性や食生活の欧米化が関係しているなど、さまざまな説があります。まだはっきりとした原因は解明されていません。
潰瘍性大腸炎の症状とは
下痢や粘血便・血便
潰瘍性大腸炎の症状として、下痢や粘血便(粘液の混じった血便)・血便が多くみられます。
腹痛
じわじわと長時間痛んだり、急に強い痛みが生じたりします。
体重減少
大腸の粘膜が荒れて正常にはたらかない状態にあるため、次第に体重が減ってきます。
貧血
食欲が低下し栄養状態も悪くなるため貧血になりやすい傾向があります。
発熱
潰瘍性大腸炎は炎症性の病気であるため、発熱することもあります。

また、潰瘍性大腸炎は合併症を起こすこともあります。合併症の例としては、関節炎や脊椎炎、皮膚では結節性紅斑や壊疽性膿皮症がみられます。潰瘍性大腸炎にかかってから長く経つと、大腸がんのリスクが高くなるともいわれています。
潰瘍性大腸炎を診断するための検査

症状
いつからどのような症状があるのか、身近な人の既往歴なども確認します。
注腸X線検査(行われないこともある)
大腸に造影剤を注入し、X線(レントゲン)撮影をして大腸の状態を確認します。
肛門鏡検査
肛門鏡という器具を使って、肛門周囲の状態を観察します。
内視鏡検査
内視鏡カメラを使って、肛門から大腸のはじまりまで、粘膜の状態を観察します。
細菌検査
細菌感染による腸炎など、潰瘍性大腸炎と似た病気もあるため、便や血液を使って細菌の有無を確認します。
組織検査
粘膜組織をわずかに取って、顕微鏡で組織の状態を観察します。

潰瘍性大腸炎の治療方法
潰瘍性大腸炎の治療方法は、薬を使って症状を抑えていく内科的治療がメインとなります。完治は難しく、症状は落ち着いたりひどくなったりする状態を繰り返します。そこで、潰瘍性大腸炎では寛解といって病気の状態が落ち着いている状態ができるだけ維持できるようにしていくのが目標となります。
寛解状態にあるときは食事の制約がなく、学業・仕事についても負担が大きくない程度であれば可能です。

内科的治療(薬による治療)
治療では、内服や点滴で炎症を抑える薬を使用します。特にステロイド薬は炎症を抑えることに効果があります。ほかに使われる5-アミノサリチル製剤では炎症を抑えるほか、再燃(落ち着いていた病状が、再び悪化すること)の予防にも効果があるといわれています。
ステロイド薬を減らすと症状が悪化するケースやステロイドで効果が見られない場合には免疫調整薬や免疫抑制薬を使用することもあります。また、炎症を引き起こすTNF-αという物質のはたらきを抑えるために抗TNF-α製剤も使われます。
白血球除去療法
白血球除去療法は炎症を長引かせている原因となる異常な白血球を取り除く治療です。この治療によって炎症が抑えられ、症状の改善が期待できます。
外科的治療
重症化してしまった潰瘍性大腸炎や薬による副作用で治療の継続が難しい場合、また大腸に穴が空いてしまったときや大量出血などの合併症がみられたときには、手術による治療が選択されます。
近年、医学の進歩により潰瘍性大腸炎の治療法は増えてきています。日本は世界の中でも、潰瘍性大腸炎の治療法が多い国の1つとなっています。
まとめ
潰瘍性大腸炎とは、下痢や血便から全身に症状が出る病気です。完治できる治療法は確立されていませんので、病状が寛解し、それを維持できるような治療を行なっていきます。
寛解状態のときには、注意点はあるものの日常生活を送るうえで大きな制限はありません。
潰瘍性大腸炎は専門機関での診断と保健所での手続きによって医療費の助成が受けられる病気です。気になる症状がある場合には、医療機関に早めに相談しましょう。
潰瘍性大腸炎は主にお腹の症状が中心となる炎症性の病気です。潰瘍性大腸炎の症状に焦点を当てながら潰瘍性大腸炎のセルフチェックに役立つ情報をご紹介していきます。
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男性患者のED・LUTSに潜む肝線維化、FIB-4 indexによる包括的アセスメントの重要性
男性のEDや下部尿路症状(LUTS)は、前立腺やホルモンの問題として扱われることが多い。しかし、新たな研究で、肝臓の状態もこれらの症状に関係している可能性が示された。男性更年期障害(LOH)のある男性2,369人を対象に、肝線維化指標(FIB-4 index)を用いた解析を行ったところ、FIB-4 indexの上昇とEDおよびLUTSの悪化が有意に関連することが明らかになった。研究は順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科の上阪裕香氏、辻?村晃氏らによるもので、詳細は10月31日付で「Investigative and Clinical Urology」に掲載された。
中高年男性におけるLOHや性機能障害は、代謝異常や動脈硬化と関連することが報告されている。一方、近年の食生活の乱れや飲酒により、男性の肝機能障害が増加しており、早期発見の重要性が高まっている。肝線維化を評価する非侵襲的指標としてFIB-4 indexが注目され、性機能やLUTSとの関連も示唆されているものの、大規模集団を対象とした包括的解析は限られている。こうした背景を踏まえ、本研究ではFIB-4 indexと性機能、LUTS、LOH指標との関係を明らかにするため、診療データを後ろ向きに解析した。
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本研究では、2016年5月〜2024年3月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックを受診したLOH症状のある男性2,369名を後ろ向きに解析した。LUTS、性機能、LOHの評価には、国際前立腺症状スコア(IPSS)と生活の質指数、勃起機能問診票(SHIM)および勃起の硬度スケール(EHS)、男性更年期障害質問票(AMS)をそれぞれ用いた。内分泌・代謝指標としてDHEA-S、IGF-1、総テストステロン、コルチゾール、HbA1c、中性脂肪を測定し、FIB-4 index は五分位に層別化した。まずFIB-4 indexと各臨床指標との関連をトレンド解析で検討し、続いてFIB-4 indexと有意に関連した内分泌・代謝因子を調整因子として、症状スコアとの関連を多変量解析で評価した。有意であった症状スコアについては、その重症度とFIB-4 indexとの関係も追加で検討した。
患者の平均年齢は50.6歳であった。解析の結果、FIB-4 indexの五分位が上昇するにつれて、年齢や肝酵素値は高くなり、血小板数は低下する傾向が認められた(傾向検定、いずれもP<0.001)。症状スコアについても、FIB-4 indexの上昇に伴い、IPSSおよびAMSは上昇し、SHIMおよびEHSは低下することが示された(同 P<0.001)。
内分泌因子では、DHEA-SおよびIGF-1はFIB-4 indexの上昇に伴い低下し、コルチゾールは上昇した(同P<0.001)。興味深いことに、FIB-4 indexとテストステロン値との間には有意な関連は認められなかった(同P=0.091)。同様に、代謝指標では、FIB-4 indexの上昇に伴いHbA1cは増加した(同P<0.001)が、中性脂肪との関連は見られなかった(同P=0.181)。
さらに、症状スコアをDHEA-S、IGF-1、コルチゾール、HbA1cで補正した多変量回帰解析を実施した。その結果、FIB-4 Indexが上昇するにつれてSHIMスコアは低下し(同P<0.001)、重度のEDの場合(SHIMスコアが低い)ではFIB-4 indexも高値を示した(同P<0.001)。同様に、FIB-4 indexが上昇するほどIPSSは増加し(同P<0.001)、LUTSが重い場合(IPSSが高い)ではFIB-4 indexも高値であった(同P<0.001)。
著者らは、「本研究では、大規模コホートでEDやLUTSがFIB-4 Indexで評価される肝線維化と密接に関連することを示した。この結果は、症状を呈する男性の評価において潜在的肝線維化も考慮した多職種的アプローチの重要性を示唆している。今後は、縦断的なホルモン測定や画像・組織評価を組み込んだ前向き研究が求められる」と述べている。
なお、本研究の限界として、後ろ向き研究であるため生活習慣や併存疾患の影響を十分に評価できなかったこと、また前立腺容積や尿流測定などの客観的泌尿器評価や、ホルモンの縦断的測定も行われなかったことを挙げている。
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HealthDay News 2025年12月8日
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多発性硬化症と口腔内細菌の意外な関係、最新研究が示す病態理解の可能性
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の神経線維を包むミエリンが自己免疫反応によって障害される希少疾患で、視覚障害や運動麻痺、感覚障害などさまざまな症状を引き起こす。最新の研究で、MS患者の口腔内に存在する特定の歯周病菌、Fusobacterium nucleatum(F. nucleatum)の量が、病気の重症度や進行に関わる可能性が示された。研究は、広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の内藤裕之氏、中森正博氏らによるもので、詳細は11月3日付で「Scientific Reports」に掲載された。
MSの発症には遺伝的素因に加え、ウイルス感染や喫煙、ビタミン欠乏などの環境因子が関与すると考えられ、近年は腸内細菌の異常も病態形成に影響することが示唆されている。また、口腔内細菌、特に歯周病菌も中枢神経疾患に影響することが報告されており、慢性的な炎症や免疫応答を介してMSの進行や重症度に関与する可能性がある。これまでに歯周病とMSの関連や、MS患者における特定菌種の増加が報告されているものの、臨床指標や再発・進行との具体的な関連や菌種ごとの差異は不明である。こうした背景を踏まえ著者らは、MSや視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)の患者の舌苔サンプルから歯周病菌量を定量し、臨床特徴やMRI所見との関連、さらに菌種ごとの影響を探索する横断的研究を実施した。
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本研究は2023年5~11月にかけて実施され、広島大学病院脳神経内科を受診した15歳以上のMS、NMOSD、MOGAD患者112人が解析対象となった。患者から採取した舌苔サンプルは4種の歯周病菌種 (F. nucleatum、P. gingivalis、P. intermedia、T. denticola)を標的とした定量的PCRを用いて分析した。先行研究に倣い、細菌の総存在量に対する比率が第3四分位数を超える場合「高相対量」と定義された。患者の重症度は総合障害度評価尺度(EDSS)で評価し、スコア4をカットオフとした。
本研究の最終的な解析対象は98人(平均年齢48.6歳、女性77.6%)となった。これらのうち、56人がMS、31人がNMOSD、11人がMOGADとそれぞれ診断された。MS、NMOSD、MOGADで歯周病菌の高相対量に有意差はなく、口腔衛生習慣もほぼ同等であった。
単変量解析により、MS患者における各歯周病菌とEDSSスコアの関係を調べたところ、F. nucleatumの相対量が高いMS患者は、低い患者に比べてEDSSスコアが有意に高く、EDSS ≥4の割合も多かった(61.5% vs 18.6%、P=0.003)。多重比較補正(Benjamini–Hochberg法)を行った後も、MS患者におけるF. nucleatumの高相対量とEDSS ≥4の関連のみが有意であった(P=0.036)。一方、他の歯周病菌の相対量は、EDSS ≥4との有意な関連は認められなかった。また、NMOSDおよびMOGAD患者においても、EDSSスコアと各菌の高相対量との関連は認められなかった。
単変量解析では、MS患者の重症度(EDSS ≥4)に影響を与える要因として、F. nucleatumの高相対量に加え、年齢、MSのサブタイプ、発作回数、罹病期間も示唆された。しかし、これらの因子を考慮した多変量解析では、F. nucleatumの高相対量のみが独立して有意であった(オッズ比10.0、95%信頼区間1.45~69.4、P=0.020)。
著者らは、「本研究は、MS患者において口腔内のF. nucleatum相対量がEDSSスコアと強く関連することを示した。因果関係は示せないが、将来的な研究課題としては、サイトカイン関連機構などの免疫学的メカニズムの解明や、口腔ケアなどの介入による影響の検討が挙げられる」と述べている。
本研究の限界として、単施設の横断的観察研究であり、MS以外の疾患群やF. nucleatum陽性患者が少なくサンプルサイズが限られていたこと、歯周病の臨床評価や抗菌薬使用歴、口腔行動の影響、免疫指標測定が不十分であり、残存交絡や因果関係の推定は困難であったことを挙げている。
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健康診断から見える、糖尿病予測の未来
糖尿病は日本人の主要な生活習慣病である一方、予防可能な側面も大きく、発症リスクの理解と適切な介入の実現が課題である。この課題に対し、静岡県の国民健康保険データベースを用いて、健康診断データから2型糖尿病発症リスクを予測する新たなモデルが開発された。Cox比例ハザードモデルを基礎に構築した予測スコアは、検証データセットで良好な識別能を示したという。研究は静岡県立総合病院消化器内科の佐藤辰宣氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の臼井健氏らによるもので、詳細は10月30日付で「Scientific Reports」に掲載された。
日本では13人に1人程度が2型糖尿病と診断されているが、生活習慣改善や早期介入が発症リスクの低減に寄与し得ることが指摘されている。地域コホートや各種健康診断制度によって大規模な一般住民データが得られている一方、既存の予測モデルは病院データや職域健診を基盤とするものが多く、一般住民の健診データを活用したモデルは十分に整備されていない。このような背景を踏まえ、本研究では一般住民の健診データを用い、発症までの期間や打ち切り症例を考慮したCox比例ハザードモデルで2型糖尿病発症を予測するモデルを開発・検証した。
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本研究では、登録者数250万人以上を有する静岡国保データベース(SKDB)の2023年度版データ(2012年4月1日~2021年9月30日)を用いて解析を行った。解析対象は、ベースラインの健康診断時点で2型糖尿病(またはHbA1c値6.5%以上)やがんの既往がなく、年1回の健康診断歴を有する40歳以上の成人46万3,248人とした。対象者は2:1の比率で、モデル構築用(30万8,832人)と検証用(15万4,416人)に無作為に分割した。まずモデル構築用コホートにおいて、年齢、性別、BMI、血圧、健診で測定可能な各種血液検査値、喫煙・飲酒・運動習慣などの健康情報を用いてCox比例ハザードモデルにより糖尿病発症に関連する要因を解析し、予測モデルを構築した。続いて、その予測性能を検証コホートにおいてHarrellのc指数を用いて評価した。
モデル構築用データセットでは、中央値5.17年の観察期間中に5万2,152人(16.9%)が2型糖尿病と診断された。このデータセットにおいて、2型糖尿病発症に対する単変量および多変量Cox比例ハザード回帰解析を行った結果、高齢、男性、体格や血圧などの臨床指標、各種血液検査値や肝腎機能の異常、尿蛋白の存在、高血圧・脂質異常症に対する薬物使用、ならびに生活習慣(運動不足や過度の飲酒)が、いずれも発症リスクの上昇と関連していた。次いで、その結果をもとに、2型糖尿病発症を予測するスコアリングモデルを開発した。このモデルではスコアが高いほど発症リスクが高く、モデル構築用データセットではC指数0.652、検証用データセットではC指数0.656と、個人のリスクを良好な識別能をもって判別できることが示された。スコアごとの3年間での累積発症率は、スコア0.5未満で3.0%、スコア2.5以上では32.4%と大きく差があり、健診結果から算出される本スコアを用いることで個人を低リスクから高リスクまで明確に層別化できることが示された。これらの結果は検証用データセットでも同様に確認できた。
著者らは、「今回作成した予測スコアリングモデルは、検証用データセットで良好な識別能を示し、将来的な糖尿病発症リスクの層別化に応用可能である。また、本モデルは日常的に収集される健康診断の変数のみを使用しているため、識別能はやや低下する可能性があるが、実用性は高い」と述べている。さらに今後の展開として、「糖尿病患者では膵臓がんの発症リスクが高いことが報告されている。今後は、糖尿病発症の予防が膵臓がんの発症抑制につながるかといったテーマにも取り組む予定である」としている。
なお本研究の限界については、データベースには静岡県の住民のみが含まれ、一般化には限界があること、参加者を40歳以上に限定しているため若年層への適用が難しいことなどを挙げている。
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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。
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HealthDay News 2025年12月1日
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ロボット支援直腸がん手術、国内リアルワールドデータが示す新たな標準治療の可能性
国内約1.8万人分のリアルワールドデータを解析した多施設後ろ向きコホート研究により、進行直腸がんに対するロボット支援手術が、開腹および腹腔鏡手術と比較して短期・長期の両成績で有意に優れていることが示された。5年全生存率はロボット支援手術で94%と最も高く、術後合併症の発症率や総入院費用も最小であったという。研究は東京科学大学消化管外科学分野の花岡まりえ氏、絹笠祐介氏らによるもので、詳細は10月28日付で「Colorectal Disease」に掲載された。
従来の腹腔鏡手術(LRR)は直腸がん治療に有効であるが、長期的な腫瘍学的成績は開腹手術(ORR)と同等で、直腸膜間全切除(TME)が不完全になるリスクがあることが報告されている。ロボット支援手術(RARR)は低侵襲なアプローチとして短期成績に優れるとされる一方、長期成績のデータは限られている。そこで本研究では、国内大規模リアルワールドデータを用いて、進行直腸がん患者に対するORR、LRR、RARRの短期・長期成績を比較することを目的とした。
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本研究では、国内の大規模診療データベース(メディカル・データ・ビジョン株式会社保有)を用い、2018年4月~2024年6月に直腸切除術を受けた3万7,191人のうち、cT3またはcT4aの患者1万7,793人を解析した。ベースラインのバランスを調整するためオーバーラップ重み付けを行い、有効サンプルサイズは1万4,627人となった。主要評価項目は5年全生存率(OS)および無再発生存率(RFS)で、副次評価項目には周術期成績を設定した。データの分布に応じて、Welchのt検定、Mann–WhitneyのU検定、カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定を適用した。生存アウトカム(OSおよびRFS)については、オーバーラップ重み付けを用いてKaplan–Meier曲線を作成し、log-rank検定を行った。
オーバーラップ重み付け後の患者数の内訳は、RARR群で2,247人、LRR群で1万339人、ORR群で2,041人であった。平均年齢は70歳で、男性が66%を占めた。
短期成績では、RARR群は術後合併症の発生率が最も低かった(RARR:16.54%、LRR:19.95%、ORR:29.68%、P<0.001)。また、入院期間も最も短く(RARR:15.69日、LRR:18.87日、ORR:25.38日、P<0.001)、入院から退院までの総医療費も最も低かった(RARR:184万9,029円、LRR:193万4,626円、ORR:201万2,968円、P<0.001)。さらに、90日死亡率もRARR群で有意に低かった(RARR:0.23%、LRR:0.70%、ORR:1.21%、P<0.001)。
5年OSはRARR群で最も高く(94%、95%信頼区間91~97%)、次いでLRR群(86%、同85~88%)、ORR群(78%、同75~81%)の順であった。また、5年RFSもRARR群で最も高く(93%、同91~95%、)、次いでLRR群(83%、同81~84%)、ORR群(74%、同71~77%)の順であり、OSおよびRFSの両方でRARR群が他の2群に比べてそれぞれ良好であった(P<0.001)。これにより、RARR群が一貫して最良の転帰を示すことが示された。
OS不良と関連する因子を多変量Cox回帰分析で検討したところ、TNM分類以外の項目では、ORR(ハザード比〔HR〕4.69 、95%信頼区間3.42~6.43)、LRR(HR 2.50、同1.85~3.37)、男性(HR 1.35、同1.31~1.81)、腹会陰式直腸切断術(APR;HR 1.57、同1.33~1.86)、大学病院以外での手術(HR 3.53、同2.37~5.24)などが同定された(P<0.001)。一方でRARRはLRR,ORRと比べてOSの有意な予後良好因子として同定された。
著者らは、「本研究は進行直腸がんに対して大規模なリアルワールドデータを用いて、RARRの短期・長期アウトカムを評価した初めての研究である。今回の結果は、ロボット支援手術がこの領域における新たな標準治療となり得ることを支持している」と述べている。
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朝食後の歯みがきは高血圧リスクの独立した予測因子か
高血圧は生活習慣に大きく左右される疾患であり、予防には日常行動の改善が重要とされる。今回、地域住民を対象とした横断研究で、朝食後に歯を磨く習慣が高血圧の有病率低下と独立して関連することが示された。研究は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学の手塚綾乃氏、窪薗琢郎氏らによるもので、詳細は10月9日付で「Scientific Reports」に掲載された。
高血圧は心血管疾患(CVD)の最大の危険因子であり、その予防には血圧管理が不可欠である。しかし、日本では依然として十分な管理が行われておらず、生活習慣の改善余地が大きい。近年、歯周病をはじめとする口腔内の健康がCVDと関連することが報告されており、歯周治療により血管機能や動脈硬化マーカーが改善することも示されている。さらに、歯みがき頻度の低さがCVDリスクに関連するとの報告もあるが、歯みがきのタイミングと高血圧との関係は明らかでない。そこで本研究では、地域住民を対象に、歯みがき習慣と高血圧との関連を検討した。
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本研究では、鹿児島大学と垂水市による共同研究「垂水研究」の横断データを用い、垂水市在住の40歳以上の住民1,024人を対象とした。歯みがき習慣を調べるため、参加者には起床時、朝食前後、昼食後、夕食前後、就寝前の各タイミングにおける歯みがきの有無と頻度を質問票で回答してもらった。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬使用者と定義した。群間比較にはt検定とカイ二乗検定を用い、歯数の比較にはウィルコクソンの順位和検定を用いた。高血圧を従属変数、歯みがき習慣を独立変数として、単変量および多変量ロジスティック回帰解析(モデル1:年齢・性別で調整、モデル2:BMIや喫煙歴・薬物使用・総エネルギー摂取量などの生活習慣で追加調整)を実施した。
最終的な解析対象には940人(男性361人、平均年齢67歳)が含まれた。このうち、529人(56.3%)が高血圧群、411人(43.7%)が非高血圧群に分類された。
全体の歯みがき実施率は、起床時33%、朝食前8%、朝食後69%、昼食後48%、夕食前4%、夕食後42%、就寝前51%であった。歯を1日3回以上磨く参加者は合計476人(51%)であった。高血圧群は非高血圧群に比べ、朝食後(P<0.001)・昼食後(P<0.001)・就寝前(P=0.022)の歯みがき頻度が低く、また1日3回以上磨く頻度の高い参加者も少なかった(P<0.001)。単変量ロジスティック回帰解析では、朝食後(オッズ比[OR]0.577、95%信頼区間[CI]0.433~0.768、P<0.001)、昼食後(OR 0.571、95%CI 0.441~0.741、P<0.001)、就寝前(OR 0.737、95%CI 0.569~0.955、P=0.021)の歯みがき、さらに1日3回以上の歯みがき頻度(OR 0.554、95%CI 0.427~0.719、P<0.001)が、いずれも高血圧リスクの低下と有意に関連していた。
次に多変量ロジスティック回帰解析を実施した。年齢・性別のみ調整したモデル1では、朝食後の歯みがき(OR 0.604、95%CI 0.444~0.823、P=0.001)および1日3回以上の歯みがき(OR 0.735、95%CI 0.554~0.973、P=0.032)が、高血圧リスクの低下と有意に関連していた。さらに、追加調整したモデル2では、朝食後の歯みがきのみが独立して高血圧リスクの低下と関連していた(OR 0.688、95%CI 0.496~0.954、P=0.025)。
著者らは、本研究が横断研究であることや、任意参加であったため選択バイアスの可能性などの限界に言及しつつ、「歯みがき習慣、特に朝食後の歯みがきは、高血圧リスクの低下と独立して関連しており、日常的な口腔ケアが循環器疾患予防の一助になる可能性がある」と述べている。
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心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。
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HealthDay News 2025年11月25日
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代謝異常を伴う脂肪肝「MASLD」、慢性腎臓病の独立リスクに
新しい脂肪肝の概念「MASLD;代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」が、慢性腎臓病(CKD)の独立したリスク因子であることが国内研究で示された。単一施設の約1.6万人の健康診断データを解析したもので、MASLDの早期発見や管理の重要性が改めて示された。研究は京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の大野友倫子氏、濵口真英氏、福井道明氏、朝日大学病院の大洞昭博氏、小島孝雄氏らによるもので、詳細は10月17日付で「PLOS One」に掲載された。
日本では食生活の欧米化に伴い肥満が増加し、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の有病率も上昇している。NAFLDは主に内臓脂肪やインスリン抵抗性と関連し、糖尿病や心血管疾患などの代謝異常を伴うことが多い。2020年には、こうした代謝背景を重視する形でNAFLDはMAFLDとして再定義され、日本の大規模コホート研究ではCKDの独立したリスク因子であることが報告された。さらに2023年、国際的専門家パネル(Delphiコンセンサス)により、より包括的でスティグマの少ない概念としてMASLDへと名称が変更され、少なくとも1つの心血管代謝リスク(BMI、血糖値、HDL-C値など)を伴う脂肪肝と定義された。本研究は、この新しい定義によるMASLDがCKD発症の独立したリスク因子となるかを明らかにすることを目的に、人間ドック受診者を対象とした縦断的コホート解析として実施された。
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本研究では、岐阜県の朝日大学病院で実施されているNAFLDの縦断的解析(NAGALA Study)に基づき、1994~2023年の間に人間ドックを受けた1万5,873人を解析対象とした。ベースライン時点で肝疾患を有する者、またはCKD(推算糸球体濾過量〔eGFR〕<60 mL/分/1.73 m2、もしくはタンパク尿〔+1~+3〕が少なくとも3か月持続)と診断された者は除外した。参加者はアルコール摂取量、心血管代謝リスク、脂肪肝の有無によりグループ1~8までのカテゴリーに分類された。主要評価項目は、5年間の追跡期間中におけるCKDの新規発症率とし、ロジスティック回帰分析によりMASLDとCKD発症との関連を評価した。
解析対象の9,318人(58.7%)が男性で、平均年齢は43.7歳だった。追跡期間中のCKD新規発症率は、アルコール摂取が閾値以下で心血管代謝リスクおよび脂肪肝を認めないグループ1で最も低く(4.7%)、MASLDと診断されたグループ8で最も高かった(9.5%)。
次に、ベースライン時の年齢、性別、eGFR、喫煙習慣、運動習慣で調整した多変量解析を実施した。その結果、グループ1と比較して、MASLDと診断されたグループ8でのみCKD新規発症のオッズ比(OR)が有意に上昇した(OR 1.37、95%信頼区間〔CI〕1.12~1.67、P=0.002)。さらに、年齢(OR 1.04、95%CI 1.03~1.05、P<0.001)およびベースライン時のeGFR(OR 0.88、95%CI 0.87~0.89、P<0.001)も、CKDの有意な予測因子として同定された。
著者らは、「MASLDは、これまでのNAFLDを包含する新しい疾患概念として、CKD発症リスクを独立して高める可能性がある。特に日本に多い『非肥満型MASLD』では、腎機能低下リスクに注意が必要だ。今後は、筋肉量の影響を受けない腎機能指標を用いたリスク評価や、個別化された介入の検討が求められる」と述べている。
なお、本研究の限界点としては、参加者が岐阜県の人間ドック受診者に限られ、選択バイアスの可能性があること、食事内容や食後血糖などのデータが欠如している点などを挙げている。
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糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。
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HealthDay News 2025年11月25日
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ハンズフリーでも油断禁物、会話が運転中の目の動きを妨げる
道路交通法上、運転中のハンズフリー通話に問題はないが、脳には一定の負荷がかかる可能性があるようだ。最新の研究で、健常成人に眼球運動課題を行ってもらったところ、話しながら課題を行った場合に反応開始時間や眼球移動時間に遅れが生じる傾向があることがわかった。研究は、藤田医科大学病院リハビリテーション部の鈴木卓弥氏、藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科の鈴木孝治氏(現所属:金城大学医療健康学部作業療法学科)、上原信太郎氏によるもので、詳細は10月6日付けで「PLOS One」に掲載された。
注意の分散は運動行動に影響を与え、正確な動作や協調が必要なタスクで遅れや誤差を生じることが知られている。特に運転中の通話は、手に持つかハンズフリーかに関わらず周囲の視覚情報への反応を遅らせ、事故リスクを高めることが報告されている。これは、会話による認知的負荷が運転に必要な注意資源(attentional resources)を奪い合うためと考えられる。運転には眼球運動、物体認識、動作の準備、実行といった視覚運動処理が必要であり、会話はこれら、特に周辺視野への眼球運動に干渉する可能性がある。本研究では、健常成人に中心から周辺への眼球運動課題を実施し、会話をする、音声クリップを聞く、課題のみの3つの条件で比較し、会話による眼球運動の反応遅延を検討した。
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本研究では、2019年7月11日から2020年8月13日の間に合計30人の健常成人が募集された。参加者は、21インチのコンピュータディスプレイの前に座り、画面中央から周辺に現れる8か所のターゲットに対して、できるだけ速く正確に視線を向けてもらう眼球運動課題を行った。目の動きはアイ・トラッカーで精密に記録した。参加者は、眼球運動課題を3つの条件で実施した。会話条件では、WAIS-IIIやオリジナルの質問計45問(「イタリアの首都はどこですか?」や「昨日の夜は何時に寝ましたか?」など)に答える形式をとった。聴覚条件では、夏目漱石の小説「吾輩は猫である」の朗読音声を聞き、その内容の理解に集中した。対照条件では、眼球運動課題のみを行い、追加の認知的負荷は課さなかった。3つの実験条件が眼球運動に与える影響を調べるため、各運動パラメータについて、条件(会話、聴覚、対照)および方向(8方向)を被験者内要因とした反復測定分散分析(ANOVA RM)を適用した。
3つの実験条件を比較した結果、ターゲットの位置にかかわらず、会話条件では他の条件より反応開始時間が長いことが分かった。事後比較では、会話条件(平均279.7ミリ秒〔ms〕、標準偏差〔SD〕32.8)は、聴覚条件(平均260.4 ms、SD 29.7、P=0.07、効果量〔d〕=0.62)および対照条件(平均261.3 ms、SD 32.8、P=0.09、d=0.56)と比べて、反応時間が長くなる傾向を示した。
視線移動に要する時間についても同様で、会話条件(平均260.1 ms、SD 107.6)は、聴覚条件(平均141.5 ms、SD 58.9、P<0.05、d=1.37)および対照条件(平均160.8 ms、SD 102.1、P<0.05、d=0.95)より有意に長かった。
さらに、視線調整に要する時間も同様の傾向を示し、会話条件(平均1226.5 ms、SD 723.3)は、聴覚条件(平均493.2 ms、SD 361.5、P<0.05、d=1.28)および対照条件(平均548.9 ms、SD 461.2、P<0.05、d=1.12)より有意に延長していた。
著者らは、「本研究では、迅速かつ正確な視線移動と会話を同時に求められる負荷の高い状況において、視線行動の時間的パラメータが遅れることを示した。これらの結果は、会話に伴う認知的負荷が、視覚運動処理の最初のステップである視線行動の開始や制御に関わる神経プロセスに影響を与える可能性を示唆している」と述べている。
なお、本研究の限界点として、個人ごとの認知負荷を定量化できず、会話そのものか負荷の影響かの区別もつかないため、干渉の閾値や程度は明らかでない点を挙げており、今後の取り組むべき研究課題であるとした。
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HealthDay News 2025年11月17日
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ピロリ菌が重いつわりを長引かせる可能性、妊婦を対象とした研究から示唆
妊娠中の「つわり」は多くの人が経験する症状であるが、中には吐き気や嘔吐が重く、入院が必要になるケースもある。こうした重いつわり(悪阻)で入院した妊婦164人を解析したところ、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)に対する抗体(IgG)が陽性である人は入院が長引く傾向があることが分かった。妊娠前や妊娠初期にピロリ菌のチェックを行うことで、対応を早められる可能性があるという。研究は、日本医科大学武蔵小杉病院女性診療科・産科の倉品隆平氏、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は10月6日付けで「Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載された。
妊娠悪阻は妊娠の0.3〜2%にみられる重度のつわりで、持続する嘔吐や体重減少により入院を要することも多い。進行すると電解質異常や肝・腎機能障害、ビタミンB₁欠乏によるウェルニッケ脳症(意識障害やふらつきを伴う急性脳症)などを生じることがある。原因としてヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や胎盤容積の大きさなどが知られるが、近年はピロリ菌感染との関連も指摘されている。しかし、日本人妊婦における感染と重症度や入院期間との関係は十分に検討されていない。本研究では、重度妊娠悪阻で入院した症例を対象に、入院時の各種指標とピロリ菌に対するIgG抗体の有無が入院期間に及ぼす影響を後ろ向きに検討した。
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本研究では、2011年1月~2023年6月までに日本医科大学付属病院または日本医科大学武蔵小杉病院で入院治療を要した重度妊娠悪阻患者164人が含まれた。患者はまず、抗H. pylori IgG抗体の有無(陽性群 vs 陰性群)に基づき2群に分けられた。その後、すべての患者を長期入院群(21日以上)と短期入院群(21日未満)に分類して、二次解析が行われた。統計手法には、マン・ホイットニーのU検定、t検定、フィッシャーの正確確率検定、ロジスティック回帰分析が適宜用いられた。
解析対象164人中、抗H. pylori IgG抗体陽性の患者は23人(14.0%)、陰性は141人(86.0%)であった。これら2群の入院期間を比較したところ、抗H. pylori IgG抗体陽性群の入院中央値(範囲)は24日(6〜70日)であり、陰性群の中央値15日(2〜80日)と比べて有意に長かった(P=0.032)。
次に長期入院群と短期入院群を比較したところ、長期入院群では尿ケトン体強陽性(3≦)の割合(P=0.036)や抗H. pylori IgG陽性の割合(P=0.022)が有意に高かった。入院時の検査所見を比較すると、長期入院群では血清遊離サイロキシン(FT4)値が有意に高かったが、その他の検査項目に有意差は認められなかった。
多変量ロジスティック回帰分析の結果、単変量解析で有意だった因子を調整後も、入院長期化の独立したリスク因子として確認されたのは抗H. pylori IgG陽性のみであった(オッズ比〔OR〕 4.665、95%信頼区間〔CI〕 1.613~13.489、P=0.004)。尿ケトン体強陽性は入院期間延長の傾向を示したが、統計的有意差は認められなかった(OR 2.169、95%CI 0.97~4.85、P=0.059)。一方、尿ケトン体強陽性の有無で患者を層別すると、陽性群の入院中央値は19日(4〜80日)、陰性群の12日(2〜55日)であり、有意に入院期間が延長されていた(P=0.001)。
著者らは「今回の研究結果から、抗H. pylori IgG抗体の検査で、重度の悪阻で入院が長引きやすい妊婦を特定できる可能性が示唆された。抗体陽性の妊婦は、入院中により注意深く観察されることで、体調管理の助けになると考えられる。また、妊娠前からの準備(プレコンセプションケア)が、悪阻の予防策として有効かもしれない」と述べている。
また、著者らは、妊娠前のピロリ菌スクリーニングや除菌の有効性については現時点では仮説にすぎず、本研究はその可能性を示すにとどまると説明している。今後は、ガイドラインや保険制度の見直しを含め、前向き研究で有効性や費用対効果を検証することが重要だとしている。
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HealthDay News 2025年11月17日
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糖尿病治療、継続の鍵は「こころのケア」と「生活支援」
病気の治療を続けたいと思っていても、気持ちの落ち込みや生活の負担が重なると、通院や服薬をやめてしまうことがある。今回、全国の糖尿病患者を対象にした調査で、心理的苦痛や先延ばし傾向がある人ほど治療を中断しやすいことが明らかになった。その背景として、経済的困難や介護・家事の負担、糖尿病治療への燃え尽き症候群(糖尿病バーンアウト)がみられたという。研究は鳥取大学医学部環境予防医学分野の桑原祐樹氏らによるもので、詳細は9月30日付けで「BMJ Open Diabetes and endocrinology」に掲載された。
世界的に糖尿病の有病率は増加しており、合併症による健康への影響が大きな課題となっている。適切な血糖管理により、多くの合併症は予防または遅らせることが可能である。しかし、治療を継続し、医療機関を受診し続けることは容易ではなく、治療中断やアドヒアランスの低下は血糖管理の不良、合併症の進行、死亡リスク、医療コストの増大につながる。過去の研究では、治療継続に関わる心理・社会的要因(抑うつや薬剤費など)が限定的に検討されてきたが、患者の体験と治療中断の関係については十分に解明されていない。本研究は、心理・社会的要因と患者体験が糖尿病治療の中断にどのように関連するかを明らかにすることを目的とした。
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この横断研究では、220万人のパネル会員を持つ楽天リサーチ(現:楽天インサイト)株式会社を通じて、構造化オンラインアンケートを実施した。登録されている糖尿病患者1万8,000人のうち、40〜79歳の1万人を便宜的に抽出した。参加者には「現在、糖尿病の治療を受けていますか?(医療機関での定期的な血液検査や生活指導を含む)」と尋ね、「はい」と答えた者を治療継続群、「いいえ」と回答し、かつ「過去に定期的に治療を受けていたが、現在は医療機関を受診していない」を選択した者を治療中断群に分類した。群分けに続いて、参加者の心理的要因(気分障害・不安障害、自己肯定感、先延ばし傾向)および社会的要因(孤独感、逆境的な幼少期経験:ACE)を測定した。群間の割合の差はカイ二乗検定で評価し、糖尿病治療の中断と心理・社会的要因との関連は、潜在的交絡因子を調整したロジスティック回帰分析で検討した。
適格性を検証後、最終的な解析対象は4,715人(男性86.8%、女性13.2%)となった。69人の参加者が糖尿病治療の中断を報告し、51人が3カ月以上治療を中断していた。
次に、ロジスティック回帰分析により、心理・社会的要因と糖尿病治療中断との関連を検討した。性別、年齢、学歴、世帯収入、糖尿病の型で調整後、心理的苦痛(調整オッズ比〔AOR〕 1.87、95%信頼区間〔CI〕 1.06~3.30、P=0.032)および先延ばし傾向が強いこと(AOR 2.64、95%CI 1.25~5.56、P=0.011)は、治療中断と有意に関連していた。
さらに、治療継続群と治療中断群との患者体験を比較した。全体として、参加者のうち9.7%が経済的困難を訴えていた。また、12.1%が糖尿病バーンアウトを報告していた。経済的困難(9.5%対21.7%、P=0.002)、育児または介護の困難(1.5%対10.0%、P<0.001)、および糖尿病バーンアウト(11.9%対26.7%、P=0.001)を報告した人の割合は、治療継続群に比べて治療中断群で有意に高かった。
著者らは、「潜在的な交絡因子を調整した後も、心理的苦痛および強い先延ばし傾向は治療中断と有意に関連していた。いくつかの心理社会的要因の経験は、治療継続群と比較して治療中断群で有意に多く認められた。医療従事者および医療システムは、糖尿病患者の転帰不良を最小限に抑えるために、これらの要因への対応を優先すべきだ」と述べた。
なお、本研究の限界として、選択バイアスが避けられなかった点、自己申告式の質問票であったため情報バイアスが存在していた可能性がある点などを挙げている。
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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。
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HealthDay News 2025年11月10日
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パーキンソン病患者の“よだれ”が示すもの、全身的な神経変性との関連を示唆
パーキンソン病でよく見られる“よだれ(流涎)”は、単なる口腔のトラブルではないかもしれない。日本の患者を対象とした新たな研究で、重度の流涎がある患者では、運動・非運動症状がより重く、自律神経や認知機能にも異常がみられることが示された。流涎は、全身的な神経変性の進行を映す新たな臨床的サインとなる可能性があるという。研究は順天堂大学医学部脳神経内科の井神枝里子氏、西川典子氏らによるもので、詳細は9月30日付けで「Parkinsonism & Related Disorders」に掲載された。
パーキンソン病は、動作の遅れや震えなどの運動症状に加え、自律神経障害や認知機能低下など多彩な非運動症状を伴う進行性の神経変性疾患である。その中でも流涎(唾液の排出障害)は、生活の質や誤嚥性肺炎リスクに影響するにもかかわらず、軽視されがちで、標準的な評価方法も確立されていない。本研究は、この見過ごされやすい症状の臨床的重要性を明らかにするため、日本のパーキンソン病患者を対象に、流涎の有病率や特徴を調べ、運動・非運動症状との関連を検討することを目的とした。
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本横断研究では、2015年11月~2022年8月の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科でパーキンソン病と診断された患者811人を初期スクリーニングした。運動症状および非運動症状は、MDS-UPDRSパートI〜IV、MMSE、MoCA-J、FAB、PDSS-2、JESS、およびPDQ-39を用いて評価した。心臓の自律神経機能は、メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィーによる遅延心・縦隔比(H/M比)で評価した。ドパミン作動性神経の機能は、ドパミントランスポーター単光子放射断層撮影(DaT SPECT)を用い、年齢調整済み基準データベースを基にzスコアを算出した。流涎の重症度は、MDS-UPDRSパートIIの項目2で評価した。群間比較には、連続変数に対してt検定、カテゴリ変数に対してカイ二乗検定を用いた。
本研究の最終的な解析対象は513人で、そのうち341人(66.5%)が流涎症を有しており、144人(28.1%)が重度と診断された。流涎はMDS-UPDRSの全領域(パートI〜IV)で有意に高いスコアと関連し、運動症状・非運動症状のいずれも重症であることを示した(P<0.001〜P=0.011)。流涎群ではMMSE(P=0.010)およびFAB(P=0.006)のスコアが低く、より顕著な認知機能障害を認めた。また、PDSS-2スコアおよびPDQ-39総合スコアはいずれも有意に高値であり(ともにP<0.001)、睡眠の質および生活の質(QoL)の低下が示唆された。さらに、MIBG心筋シンチグラフィー(対象は402例)では心・縦隔比(H/M比)の低下がみられ(P=0.047)、心臓自律神経機能障害の進行が示された。加えて、DaT SPECT(対象は431例)では線条体のzスコアが有意に低下しており(P=0.001)、シナプス前ドパミン作動性神経活動の低下を反映していた。
年齢・罹病期間・性別を調整した多変量回帰解析の結果、流涎の重症度は、より重度の運動症状・非運動症状、高いレボドパ換算用量、より強い認知機能障害、日中過眠の増加、より重度の睡眠障害、生活の質の低下、そしてDaT取り込み量のzスコア低下と有意に関連していた。
著者らは、「流涎を伴うパーキンソン病患者は、運動症状・非運動症状がより重く、認知機能や自律神経機能にも影響がみられ、生活の質も低下していた。これらの結果は、流涎が単独の末梢的症状ではなく、パーキンソン病における全身的な病態進行の臨床マーカーとして機能する可能性があるという仮説を支持するものである」と述べている。
なお、本研究は帝人ファーマ株式会社の支援を受けて実施された。
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都市と地方で違う?高齢者の健康に影響する「歩きやすさ」
「歩きやすい街」は高齢者に優しいのか?今回、日本全国の高齢者を対象にした調査で、都市と地方でその効果に違いがあることが分かった。地域の歩きやすさ(ウォーカビリティ)は都市部では歩行の増加に寄与する一方、地方部ではウォーカビリティが必ずしも健康にプラスの影響を与えないことがあるという。研究は千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は9月21日付けで「Health & Place」に掲載された。
高齢化社会では、日常生活空間の環境が高齢者の健康や生活の質に大きな影響を与えることが注目されている。特にウォーカビリティは、歩道や交差点、施設へのアクセスなど複数の要素を含み、身体的活動や心理・社会的健康に関係するとされる。しかし、ウォーカビリティが都市・地方に与える影響の違いや、身体・心理・社会面から総合的に評価した研究は限られる。そうした背景を踏まえ、著者らは、日本の65歳以上の高齢者を対象に、ウォーカビリティと健康・生活関連アウトカムの長期的関連を都市・地方別に分析し、その包括的影響を明らかにすることを目的とした。
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解析には、地域在住の65歳以上を対象とした日本老年学的評価研究(JAGES)データベースより、2013年(プレベースライン)、2016年(ベースライン)、2019年(フォローアップ)の3時点で全国18の自治体において実施されたデータを用いた。2013・2016年調査データから不備や異常値を除外し、残った参加者を2019年追跡調査データと連結した「質問票ベースサンプル(2万7,354名)」と、2016~2019年の介護保険データベース(LTCI)と連結した「介護保険ベースサンプル(4万111名)」の2種類の解析サンプルを作成した。ウォーカビリティは、人口密度、最寄りの小売店および公園までの距離、道路密度(1km2あたりの道路の総距離〔m〕)から算出した複合指標を用いて評価した。7つの領域にわたる42のアウトカムについて、都市・地方別に層別した多層回帰モデルで解析し、それぞれの有意性判定に対してボンフェローニ補正(有意水準α=0.0012)を適用した。
都市部では、ボンフェローニ補正後、ウォーカビリティの高い地域ほど歩行時間が増加していることと有意に関連していた(回帰係数β=0.04、95%信頼区間〔CI〕 0.02~0.07、P<0.001)。ボンフェローニ補正後は有意ではないが、ウォーカビリティの高い地域は死亡リスクの低下(リスク比RR=0.87)、抑うつ症状の減少(β=–0.02)、趣味グループ(β=0.03)・スポーツグループ(β=0.03)・外出頻度(β=0.04)の増加とも関連していた。
一方地方では、ボンフェローニ補正後、ウォーカビリティの高い地域は要介護認定(要介護度2以上)の増加(RR=1.20、95%CI 1.06~1.31、P<0.001)、趣味グループ(β=0.04、95%CI 0.02~0.06、P<0.05)、スポーツグループ(β=0.04、95%CI 0.03~0.07、P<0.05)、外出頻度(β=0.07、95%CI 0.04~0.10、P<0.01)の増加、座りがちな生活リスクの増加(RR=1.29、95%CI 1.13~1.47、P<0.001)、互恵性の低下(β=–0.04、95%CI –0.07~–0.02、P<0.001)と有意に関連していた。ボンフェローニ補正後は有意でないが、ウォーカビリティの高い地域は残存天然歯が少ない割合の低下(RR=0.80)、自己評価健康の改善(RR=1.01)、自己申告高血圧の低リスク(RR=0.98)、自己申告の糖尿病(RR=1.05)・脂質異常症(RR=1.08)の減少とも関連していた。また、ウォーカビリティの高い地域と歩行時間増加との関連は認められなかった(β=0.01)。
本研究について著者らは、「ウォーカビリティの高い都市部では、死亡リスクの低下など一貫した利益が認められた。一方、地方では利益と課題が併存しており、趣味などの社会参加は多いものの、要介護認定や孤独感、座りがちな生活のリスクも高かった。これらの結果は、都市部では歩行を中心とした都市設計、地方では交通手段の整備や社会的つながりの促進、活動機会の拡充など、場所に応じた複合的な戦略の重要性を示している」と述べている。
軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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HealthDay News 2025年11月4日
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歯を失うと寿命にも影響?80歳女性で“咬合支持”の重要性が明らかに
高齢になると「歯が抜けても仕方ない」と思われがちだが、噛み合わせの力が寿命にまで影響する可能性がありそうだ。今回、地域在住の80歳高齢者を10年間追跡した研究で、咬合支持(噛み合わせの支え)を失った女性は、そうでない女性に比べて死亡リスクが有意に高いことが示唆された。研究は新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座予防歯科学分野の田村浩平氏、濃野要氏、小川祐司氏によるもので、詳細は9月23日付けで「International Dental Journal」に掲載された。
咀嚼は全身の健康と長寿に重要であり、歯や義歯による安定した咬合支持が不可欠である。咬合支持の低下は咀嚼の満足度や効率を損ない、栄養不足や運動機能低下にも関連することが報告されている。また、フレイルは高齢者の死亡リスク因子として注目され、歯の喪失や咬合力低下などの口腔要因も関連する。日本では高齢者の歯の保存が重要視されているが、健康な高齢者を対象に残存歯数や咬合力と死亡率の関係を検証した研究は少ない。咬合と死亡率については、最大咬合力や機能歯の数が全死因死亡率の有力な予測因子であり、Eichner Index(アイヒナー指数:EI)がこれらの指標の代替になり得ると考えられる。このような背景を踏まえ、著者らは新潟市の高齢者を対象とした25年間のコホート研究の一環として、咬合支持の喪失が死亡リスク因子であるという仮説を検証した。具体的には、フレイルのない健康な地域在住の80歳高齢者において、EIで評価した咬合支持と10年間の死亡率との関連を調査した。
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本研究の解析対象は、新潟市在住のフレイルのない80歳の高齢者360人であり、追跡調査は2008年6月~2018年6月まで実施された。ベースライン時に、歯牙および歯周検査、唾液分泌量測定(ガム試験)、血液検査、および自記式アンケート(喫煙・飲酒習慣、運動習慣、既往歴など)が実施された。口腔検査票から、咬合支持はEIクラスA/B群(咬合支持あり/部分的にあり)およびC群(咬合支持なし)に分類され、歯周炎症表面積も算出された。生存解析にはKaplan–Meier法とログランク検定が用いられ、多変量解析にはCox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)が算出された。
最終的な解析対象には297人(男性155人、女性142人)が含まれた。ベースライン時のEIクラスはA/B群が203人、C群が94人だった。10年間の累積生存率はA/B群とC群でそれぞれ79.8%および66.0%であり、有意な差が認められた(P=0.038)。
多変量Cox比例ハザードモデルでは、「EIクラスC」および「男性」が全死因死亡の有意な独立リスク因子であった。性別、BMI、喫煙状況、既往歴などの交絡因子で調整後のHRは、EIクラスCで1.88(95%信頼区間 [CI] 1.08~3.36、P<0.05)、男性で2.28(CI 1.23~4.26、P<0.05)であった。
男女別の層別解析では、EIクラスCは女性のみで有意な独立リスク因子となり、歯周炎症表面積、唾液分泌量、BMI、喫煙状況、既往歴などで調整後のHRは4.17(95%CI 4.17~11.79、P<0.05)であった。その一方、男性では統計的に有意な差は認められなかった。
著者らは、「地域在住の健康な80歳高齢者において、咬合支持の喪失は、特に女性で全死因死亡の独立したリスク因子であった。この結果は、咬合支持の維持が咀嚼機能や十分な栄養摂取を支えることで、長寿の促進に重要な役割を果たす可能性を示している。今後の研究では、咬合支持の喪失が死亡に至るまでの間接的な経路をさらに検討する必要がある」と述べている。
なお、結果に性差が出た理由として、男性は一般的に筋肉量や咀嚼筋力が大きく、咬合支持を失っても咀嚼機能や栄養摂取への影響が相対的に小さいこと、また、心理社会的要因(抑うつや孤立)の影響は女性でより顕著に現れやすいことが指摘されており、歯の喪失による審美的な変化が心理的に与える影響が、女性でより大きい可能性などが考察された。
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HealthDay News 2025年11月4日
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