潰瘍性大腸炎について

国の指定難病の1つとして登録されている潰瘍性大腸炎。潰瘍性大腸炎とはどのような病気なのでしょうか。潰瘍性大腸炎について知りたい方のために、潰瘍性大腸炎の基本情報である症状、治療法などについて詳しくご紹介します。
  1. 潰瘍性大腸炎とはどのような病気?
  2. 潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
  3. 潰瘍性大腸炎の原因
  4. 潰瘍性大腸炎の症状とは
  5. 潰瘍性大腸炎を診断するための検査
  6. 潰瘍性大腸炎の治療方法
  7. まとめ

潰瘍性大腸炎とはどのような病気?

潰瘍性大腸炎とは大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができ、さまざまな症状が出る慢性の病気です。びらんとは、粘膜が荒れてただれている状態のことをいいます。

現在の医学では主な原因がはっきりわかっておらず、完全に治すのが難しいとされています。そのため、潰瘍性大腸炎では主に薬を使った内科的治療を行ないながら、「寛解」という病気がおさまっている状態を目指していきます。

よくある病気ではありませんが、潰瘍性大腸炎は若い人が発症しやすい傾向があり、近年徐々に患者数が増えています。

厚生労働省の発表によると、2014年に潰瘍性大腸炎と診断された人は約17万人となっています。

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潰瘍性大腸炎とクローン病の違い

潰瘍性大腸炎とよく似た病気にクローン病があります。潰瘍性大腸炎は大腸のみに症状が出るのに対し、クローン病は大腸以外の消化管粘膜にも症状が出ます。

潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎の原因は、自己免疫反応に異常が生じて発症する説、腸内細菌が関わっているという説、ほかには遺伝性や食生活の欧米化が関係しているなど、さまざまな説があります。まだはっきりとした原因は解明されていません。

潰瘍性大腸炎の症状とは

下痢や粘血便・血便
潰瘍性大腸炎の症状として、下痢や粘血便(粘液の混じった血便)・血便が多くみられます。

腹痛
じわじわと長時間痛んだり、急に強い痛みが生じたりします。

体重減少
大腸の粘膜が荒れて正常にはたらかない状態にあるため、次第に体重が減ってきます。

貧血
食欲が低下し栄養状態も悪くなるため貧血になりやすい傾向があります。

発熱
潰瘍性大腸炎は炎症性の病気であるため、発熱することもあります。

このように、潰瘍性大腸炎の症状はお腹から全身の症状までさまざまなものがあります。

また、潰瘍性大腸炎は合併症を起こすこともあります。合併症の例としては、関節炎や脊椎炎、皮膚では結節性紅斑や壊疽性膿皮症がみられます。潰瘍性大腸炎にかかってから長く経つと、大腸がんのリスクが高くなるともいわれています。

潰瘍性大腸炎を診断するための検査

潰瘍性大腸炎を診断するための方法として以下のものがあります。

症状
いつからどのような症状があるのか、身近な人の既往歴なども確認します。

注腸X線検査(行われないこともある)
大腸に造影剤を注入し、X線(レントゲン)撮影をして大腸の状態を確認します。

肛門鏡検査
肛門鏡という器具を使って、肛門周囲の状態を観察します。

内視鏡検査
内視鏡カメラを使って、肛門から大腸のはじまりまで、粘膜の状態を観察します。

細菌検査
細菌感染による腸炎など、潰瘍性大腸炎と似た病気もあるため、便や血液を使って細菌の有無を確認します。

組織検査
粘膜組織をわずかに取って、顕微鏡で組織の状態を観察します。

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潰瘍性大腸炎の治療方法

潰瘍性大腸炎の治療方法は、薬を使って症状を抑えていく内科的治療がメインとなります。完治は難しく、症状は落ち着いたりひどくなったりする状態を繰り返します。そこで、潰瘍性大腸炎では寛解といって病気の状態が落ち着いている状態ができるだけ維持できるようにしていくのが目標となります。

寛解状態にあるときは食事の制約がなく、学業・仕事についても負担が大きくない程度であれば可能です。

潰瘍性大腸炎は、医療機関で難病指定医のもと潰瘍性大腸炎の診断を受け、保健所で手続きすると患者登録されます。潰瘍性大腸炎の患者として認定されると国から医療費の助成を受けることができます。

内科的治療(薬による治療)
治療では、内服や点滴で炎症を抑える薬を使用します。特にステロイド薬は炎症を抑えることに効果があります。ほかに使われる5-アミノサリチル製剤では炎症を抑えるほか、再燃(落ち着いていた病状が、再び悪化すること)の予防にも効果があるといわれています。

ステロイド薬を減らすと症状が悪化するケースやステロイドで効果が見られない場合には免疫調整薬や免疫抑制薬を使用することもあります。また、炎症を引き起こすTNF-αという物質のはたらきを抑えるために抗TNF-α製剤も使われます。

白血球除去療法
白血球除去療法は炎症を長引かせている原因となる異常な白血球を取り除く治療です。この治療によって炎症が抑えられ、症状の改善が期待できます。

外科的治療
重症化してしまった潰瘍性大腸炎や薬による副作用で治療の継続が難しい場合、また大腸に穴が空いてしまったときや大量出血などの合併症がみられたときには、手術による治療が選択されます。

近年、医学の進歩により潰瘍性大腸炎の治療法は増えてきています。日本は世界の中でも、潰瘍性大腸炎の治療法が多い国の1つとなっています。

まとめ

潰瘍性大腸炎とは、下痢や血便から全身に症状が出る病気です。完治できる治療法は確立されていませんので、病状が寛解し、それを維持できるような治療を行なっていきます。
寛解状態のときには、注意点はあるものの日常生活を送るうえで大きな制限はありません。

潰瘍性大腸炎は専門機関での診断と保健所での手続きによって医療費の助成が受けられる病気です。気になる症状がある場合には、医療機関に早めに相談しましょう。

潰瘍性大腸炎のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

潰瘍性大腸炎は主にお腹の症状が中心となる炎症性の病気です。潰瘍性大腸炎の症状に焦点を当てながら潰瘍性大腸炎のセルフチェックに役立つ情報をご紹介していきます。

もしかしたら?症状からみる潰瘍性大腸炎のセルフチェック方法

参考文献・サイト:
医学書院 内科臨床誌medeicina 2015.9月号(Vol.52 No.10) p.1714~1716
治療と診断社 消化器研修ノート p.375~380
参考サイト1、参考サイト2、参考サイト3、参考サイト4、参考サイト5
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  • 不妊症

    不妊治療、保険適用でアクセス改善も公平性に課題

     不妊治療の保険適用で受療機会は広がったのか。日本の大規模レセプトデータ解析によりアクセス改善が示された一方、男性の診断・治療は依然少なく、生殖医療の公平性に課題が残ることが明らかになった。研究は、産業医科大学医学部公衆衛生学教室の大河原眞氏らによるもので、詳細は3月6日付の「Reproductive Medicine and Biology」に掲載された。

     日本では少子化と高齢化が進み、出生数や合計特殊出生率は過去最低水準にある。不妊治療は進歩し、体外受精などの生殖補助医療(ART)による出生も増加してきたが、従来は高額な費用が障壁となり、社会経済的背景によるアクセス格差が指摘されていた。こうした状況を受け、2022年4月にはタイミング法や人工授精といった一般不妊治療、体外受精や顕微授精といったARTを含む不妊治療が公的医療保険の対象となり、受療機会の拡大が期待された。しかし、実際にどの年齢層でどの治療がどの程度利用されたか、また男性と女性での差などの実態は明らかでなかった。本研究はレセプトデータを用い、保険適用初年度における不妊診断の頻度と治療実態を明らかにすることを目的とした。

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     本研究は、産業医科大学産業保健データサイエンスセンターに提供された医療レセプトデータを用いた観察研究である。2022年4月から2023年3月までの期間における14の健康保険組合のデータを解析し、18~69歳の女性約59万人、男性約62万人を対象とした。不妊症の診断や不妊治療の実施状況、関連する合併症については、診断コードや処置コード、薬剤コードに基づき特定した。また本研究では、不妊診断、特異的な不妊治療の実施、さらに薬物療法を含む広義の治療の3つの定義を設定し、レセプトデータの特性を踏まえて解析を行った。さらに、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)など不妊治療に関連する合併症についても評価した。

     解析の結果、最も不妊診断や治療を受けたのは30~34歳の女性で、診断率は5.0%、治療受療率は3.9%、不妊特異的治療は2.6%だった。男性は同年齢で診断率1.9%、治療受療率0.5%、不妊特異的治療0.3%にとどまり、診断・治療の割合は依然低く、治療の種類や処方も限られていた。

     治療の年齢別傾向として、若年女性ではART以外の一般不妊治療が中心で、35歳以上ではARTが主流となった。人工授精は20代後半に多く、採卵は30代後半から40代前半が中心であった。女性の主な処方は、ARTに伴う調節卵巣刺激や黄体機能不全に対して使用されるホルモン製剤であった。

     OHSSは不妊治療を受けた女性のうち8.0%に認められ、ARTを受けた女性では9.6%に達した。この割合は特に20代で高かった。

     これらの結果は、保険適用初年度における年齢・性別による治療選択や診断名登録によって記述された合併症の実態を示している。

     著者らは、「本研究は、不妊治療の保険適用初年度における日本の臨床実態を示したものであり、今後の不妊治療研究の基礎となる知見である。30~34歳の女性のうち2.6~3.9%が何らかの不妊治療を受けていた一方で、男性の受療は女性より少なく、医療相談や検査・治療の認知向上、医療アクセスの改善、治療選択肢の拡充が求められる」と述べている。

     なお、本研究は診療報酬データを用いた観察研究であるため、診断名や受療件数の正確性に限界があり、初年度データや対象集団の偏りにより実際の治療状況を正確に反映できていない可能性がある。著者らは、今後は複数年データや他のデータベースとの比較による検証が必要であると指摘している。

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  • 白内障

    白内障治療の将来を読む――全国と地方の眼科医供給格差

     白内障は加齢に伴って多くの人にみられ、日本では高齢化の進展とともに手術の需要増加が見込まれている。一方で、地域によって医療資源には偏りがあることも課題となっている。今回、NDBオープンデータや人口推計などを用いた研究で、都道府県ごとの白内障手術の将来需要と眼科医の供給を予測した結果、特に地方で需給バランスが悪化し、医療アクセスの地域格差が拡大する可能性が示された。研究は、国際医療福祉大学の山口浩史氏、アルアリアシーらるび氏、藤田烈氏によるもので、詳細は3月3日付の「BMJ Open Ophthalmology」に掲載された。

     白内障手術は近年増加傾向にあり、日本では過去数十年で手術件数が大きく伸びている一方、眼科医の増加はそれに比べて緩やかにとどまっている。また、眼科医の地域偏在も指摘されており、都市部と地方の格差は拡大している。こうした中、需要と供給を同一の枠組みで定量的に評価した研究は限られている。そこで本研究では、地域ごとの人口動態や医療資源の違いを踏まえ、日本における白内障手術の将来需要と眼科医の供給を予測し、需給バランスを評価することを目的とした。

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     本研究では、厚生労働省のNDBオープンデータ(2014~2022年度)を用い、診療報酬請求件数から年齢別・性別の白内障手術実施率を算出した。NDBは全国民を対象とした医療保険データであり、日本の医療実態を広く反映している。白内障手術の件数は、水晶体再建術(眼内レンズを挿入する手術)の請求件数から算出した。この手術実施率を、総務省の人口推計および国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計に適用し、回帰モデルを用いて2030年、2040年、2050年における手術需要を推計した。一方、眼科医の将来供給については、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」を基に、線形回帰モデルを用いて予測した。さらに、都道府県ごとに手術需要を眼科医数で割った需給比を算出した。この指標は、眼科医1人あたりが担う手術件数を示すもので、値が高いほど医師不足の程度が大きいことを意味する。将来の需給バランスの変化は、2022年を基準として評価した。

     白内障手術の需要は今後大きく増加すると推計された。手術件数は、2030年に約193万件、2040年に約237万件、2050年には約286万件に達する見込みで、2050年には2022年と比べて約1.7倍に増加する可能性が示された。特に70代および80歳以上の高齢者で顕著な増加が予測され、手術の大半(約7割以上)はこれら高齢層に集中していた。なお、手術件数は一貫して女性で男性を上回っていた。

     一方、眼科医数は多くの都道府県で緩やかな増加が見込まれるものの、一部の地域では減少する可能性が示された。

     その結果、白内障手術の需要を眼科医数で割った需給比は全国的に上昇すると推計された。人口減少が進む地域でも需要の増加が見込まれる中、とりわけ地方での上昇幅が大きく、都市部との地域差が今後さらに拡大する可能性が示唆された。さらに、一部地域では需給比が2倍以上に達する可能性も示された。

     著者らは、公的統計データを用いて都道府県別の白内障手術需要と眼科医供給を推計した結果、手術需要は今後も増加し、特に70代および80歳以上に集中する一方、眼科医数は一部地域で減少する可能性があると報告している。これに伴い需給比は全国的に上昇し、とりわけ地方での増加が大きく、都市部との格差が拡大する可能性があると指摘している。さらに、受診の遅れや待機期間の長期化を防ぐ対策の必要性とともに、より細かな地域単位での需給評価の重要性を挙げている。

     なお、本研究は公的データに基づく推計であり、実際の手術需要や供給能力を十分に反映しない可能性がある。また、都道府県単位の解析のため地域内差や患者移動を考慮できず、将来予測には一定の不確実性がある。

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    HealthDay News 2026年4月20日
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  • ニュース

    日勤の看護師不足、入院患者の死亡・再入院と関連――日本の病院データ

     看護師の配置不足は入院患者の予後に影響するのか。今回、日本の急性期病院を対象とした研究で、病棟の通常水準を下回る看護師配置、特に日勤帯での不足が、院内死亡や再入院の増加と関連することが示された。約7万7,000件の入院データを解析した結果で、日々の人員配置を適切に維持する重要性が示唆された。研究は、国立保健医療科学院疫学・統計研究部の森岡典子氏、東京科学大学医療本部クオリティ・マネジメント・センターの森脇睦子氏、筑波大学医学医療系社会医学の宮脇敦士氏、英サウサンプトン大学のPeter Griffiths氏らによるもので、詳細は2月25日付で「JAMA Network Open」に掲載された。

     看護師は医療・ケア従事者の中で最大の職種であり、その配置は医療の質や安全性、医療提供体制の効率に大きく関わるとされる。これまでの研究でも、看護師配置が多いほど院内死亡や有害事象が減少するなど、患者アウトカムが改善することが示されてきた。一方で、実際の病棟では適切な人員配置の判断が看護管理者の経験や判断に依存している面もあり、エビデンスに基づく指針は十分とは言えない。さらに、病院単位で集計した患者対看護師比などの固定的な指標では病棟ごとに異なるケアニーズを十分に反映できない可能性がある。そこで本研究では、病棟ごとの通常水準を基準とした入院期間中の看護師不足を、日勤と夜間の時間帯別に評価し、院内死亡や再入院、在院日数との関連を検討した。

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     本研究は、日本の9病院82病棟の診療報酬請求データ(DPC)と病棟ごとの日々の看護師勤務表データを連結して行った後ろ向きコホート研究である。対象は2019年4月~2020年3月に入院した20歳以上の患者で、ICU滞在日は解析から除外した。対象病棟はいずれも、患者7人に対して看護師1人以上を配置する一般急性期病棟で最も手厚い「7対1看護配置」を採用していた。看護師不足(アンダースタッフィング)は、入院期間中の患者1人当たりの看護提供時間(中央値)が各病棟の通常水準(年間中央値)を下回る場合と定義し、24時間全体、日勤帯、夜勤帯(準夜・深夜)で評価した。解析では院内死亡、退院後7日および30日以内の再入院、在院日数を評価項目とし、傾向スコアマッチング(PSM)や病院・病棟の違いを考慮したマルチレベル回帰モデルを用いて解析した。

     解析対象は7万7,289件の入院で、患者の平均年齢は69歳、約半数が手術を伴う入院だった。PSM後は、年齢や併存疾患などの患者背景は両群でほぼ同等となった。

     その後の解析では、24時間全体または日勤帯で看護師不足が生じていた場合、院内死亡率はそうでない場合より高かった(24時間:3.1%対2.8%、日勤帯:3.2%対2.8%)。また、24時間全体で看護師不足があった場合は30日以内再入院率が高く(11.2%対10.5%)、日勤帯で不足があった場合は7日以内再入院率が高かった(2.3%対2.1%)。一方、夜間の看護師不足は院内死亡や再入院と有意な関連を示さなかった。

     在院日数は、24時間全体、日勤帯、夜間のいずれの時間帯で看護師不足があった場合でも長く、平均在院日数はそれぞれ14.6日対13.8日、14.7日対13.7日、14.1日対13.6日だった。多層モデルによる解析でも同様の結果が得られ、24時間の看護師不足は院内死亡リスクの上昇(調整オッズ比1.22)や30日以内再入院(同1.05)と関連していた。

     さらに感度解析でも結果は概ね同様で、看護師不足と院内死亡および在院日数の延長との関連は一貫して認められた。

     著者らは、「急性期病院では、24時間全体または日勤帯で看護師不足が生じている場合、院内死亡や再入院、在院日数の延長と関連する可能性が示された」としている。その上で、日々の看護師配置レベルを継続的に把握し、通常からの逸脱・不足が生じた場合にリリーフ支援などでタイムリーに対応することが、患者アウトカムの改善につながる可能性があると指摘している。

     なお、本研究の限界として、看護師不足の基準を病棟ごとの年間中央値で定義しており最適な配置水準は不明である点、看護師の経験構成など未測定要因の影響を考慮できていない点、さらに大規模公的病院のデータに基づくため結果の一般化に限界がある点が挙げられる。

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  • 慢性肝疾患

    肝硬変患者の肝性脳症リスク、フレイル評価で予測可能か

     肝硬変では、肝臓の機能低下に伴い意識障害や認知機能低下を来す「肝性脳症」が生じ、患者の生活の質や予後に大きく影響することが知られている。今回、肝硬変患者を対象とした研究で、簡便なフレイル評価指標であるClinical Frailty Scale(CFS)が、不顕性および顕性肝性脳症の発症リスクの層別化に有用である可能性が示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は2月26日付で「JGH Open」に掲載された。

     不顕性肝性脳症(CHE)は肝硬変患者の約40%に認められ、転倒や事故、死亡リスクの増加などと関連することが知られている。CHEが顕性肝性脳症(OHE)へ進行すると、入院の増加や社会生活への影響など患者や家族に与える負担は大きい。しかしCHEの診断には神経心理検査が必要で、時間や専門人材を要するため臨床現場での実施には限界がある。近年、肝硬変患者ではフレイルが入院や死亡など不良転帰と関連することが報告されている。そこで本研究では、CFSによるフレイル評価が、CHEおよびOHE発症リスクの層別化に有用かを検討した。

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     本研究は、岐阜大学医学部附属病院に入院した肝硬変患者を対象とした後ろ向き観察研究である。OHEの既往がない18~79歳の患者のうち、2004年3月~2023年12月にCHEの評価を受けた症例を解析対象とした。フレイルはCFSを用いて評価し、CFS5以上をフレイルと定義した。CHEは神経心理学的検査により診断し、OHEはWest Haven基準に基づく臨床評価で判定した。CHEとの関連因子はロジスティック回帰分析で検討した。さらに、死亡を競合リスクとして考慮したFine–Gray競合リスク回帰モデルを用いてOHE発症との関連を解析した。

     解析対象は262例で、年齢中央値は65歳(四分位範囲55~74歳)、女性は154例(58.8%)だった。フレイルは25例(9.5%)、CHEは82例(31.3%)に認められた。CHEの有病率は、フレイルあり群でフレイルなし群より有意に高かった(84.0% vs 25.7%、P<0.001)。

     追跡期間中央値2.8年の間に、40例(15.3%)がOHEを発症し、20例(7.6%)が死亡した。コホート全体でのOHE累積発症率は1年7%、3年13%、5年20%だった。OHEの発症率はフレイルあり群で高く、1年、3年、5年時点の累積発症率はそれぞれ25%、33%、36%で、フレイルなし群(5%、11%、18%)より有意に高かった(P=0.009)。

     年齢や肝機能指標などを調整した多変量解析では、CFSがCHEの存在(オッズ比2.13、95%信頼区間1.41~3.37、P<0.001)およびOHE発症(サブディストリビューションハザード比1.38、95%信頼区間1.02~1.87、P=0.037)の独立した関連因子であることが示された。

     本研究の結果から、肝硬変患者ではフレイルを有する場合、CHEの有病率とOHEの発症率が高く、CFSがそれらの独立した関連因子であることが示された。筆者らは、「フレイル評価は肝硬変患者における肝性脳症リスクの層別化に有用である可能性があり、臨床現場でのフレイル評価の重要性を示唆する」と述べている。

     なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究である点や、対象患者の病因分布が一般集団と異なる可能性がある点が挙げられ、結果の一般化には注意が必要である。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

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    HealthDay News 2026年4月13日
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  • ニュース

    AIで医療教育は変わるか? 問診評価で指導医の負担軽減の可能性

     医師の働き方改革が進む中、医療教育の現場でも効率化と質の担保の両立が課題となっている。AIを活用した仮想患者による問診評価について、指導医による評価と比較した研究が発表された。AIの評価は指導医と高い一致を示し、評価時間は6割以上短縮されたという。研究は、順天堂大学医学部総合診療科の髙橋宏瑞氏らによるもので、詳細は2月17日付の「JMIR Medical Education」に掲載された。

     適切な臨床面接は正確な診断と患者との信頼関係構築に不可欠であり、従来は実際の患者や模擬患者との実習と指導医の指導によって習得されてきた。近年は、「何年経験したか」ではなく「何ができるようになったか」で評価する能力基盤型医学教育(CBME)が広がり、評価や記録業務の負担が課題となっている。こうした中、大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AIによる仮想患者と自動評価の仕組みが登場しているが、専門家評価との一致や妥当性の検証は十分ではない。本研究では、AIによる臨床面接評価と指導医による評価の一致度を比較し、AIが代替可能かを検証するとともに、評価時間の短縮効果や経験差による影響を検討した。

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     標準化された「脚の脱力」の症例をAIの仮想患者として設定し、医学生2人、研修医3人、指導医2人の計7人がそれぞれ問診を行った。面接内容を書き起こしたテキストを、25項目からなる評価尺度を用いて採点した。評価は3つの方法で比較した。まず、GPT-o1 ProとGPT-5 Proは、同じ条件(同じプロンプト)で各テキストを5回ずつ評価し、ハルシネーションや評価のばらつきを確認した。次に、別の臨床指導医5人が同じ基準で独立に採点した。一致度はPearson相関係数(r)や級内相関係数(ICC)などで評価し、1件あたりの所要時間と時間短縮率も算出した。

     平均面接スコアは、AIによる評価と指導医による評価でほぼ同程度だった(GPT-o1 Proを用いたAI評価:平均52.1±6.9点、GPT-5 Proを用いたAI評価:平均53.2±9.2点、人間による評価:平均53.7±6.8点)。

     AI評価と人間評価の一致度は高く(r=0.90、Linの一致相関係数=0.88)、評価の偏りも小さかった(GPT-o1 Pro:平均差0.4±2.7点、GPT-5 Pro:平均差1.5±5.2点。Bland–Altman解析の一致限界はそれぞれ-4.9~5.7、-8.6~11.7)。

     信頼性を示すCronbachのα係数は、GPT-o1 Proで0.81、GPT-5 Proで0.86、人間評価で0.80といずれも高水準だった。一方、ICC(評価者間の一致度を示す指標)はAI評価で0.77および0.82と良好だったのに対し、人間評価では0.38にとどまった。さらに、評価のばらつきを示す変動係数はAI評価が6.6%で、人間評価(13.9%)の約半分だった。

     処理時間は、AIが3~4分程度で完了したのに対し、医師は約10分を要し、最大で約68%の時間短縮に相当した。

     著者らは、GPT-o1 ProおよびGPT-5 Proによる評価が指導医と同等の精度とより高い一貫性を示し、評価時間も大幅に短縮できたと報告している。その上で、「AIは人間評価者を補完または一部代替し得る可能性があるとしつつ、教育現場での活用には慎重な設計と継続的な人間の監督が不可欠だ」と強調している。

     なお、本研究は単一の模擬症例を対象とした小規模な検討にとどまる。著者らは、より多様な症例での検証や学習効果・費用対効果の評価に加え、実際の診療能力との関連を検証する必要があると指摘する。また、高い一致度が直ちに公平性を保証するわけではなく、性別や文化的背景などに関する潜在的なバイアスへの検証も不可欠だとしている。

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    HealthDay News 2026年4月6日
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  • ニュース

    縦隔腫瘍・重症筋無力症の手術、主流は「低侵襲」へ――全国データ解析

     胸の中央の空間である縦隔に生じる腫瘍(縦隔腫瘍)の手術は、従来は胸を大きく開く開胸手術が主流だった。近年は胸腔鏡やロボットを用いた低侵襲手術の導入が進んでいるが、日本全体での実態は十分に明らかでなかった。今回、全国の医療保険データを解析した研究で、縦隔手術の多くが胸腔鏡で行われ、ロボット手術も増加していることが示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学呼吸器外科学の岡田悟氏らによるもので、詳細は2月20日付で「International Journal of Clinical Oncology」に掲載された。

     胸腺上皮性腫瘍は発生頻度が低いものの、前縦隔に生じる腫瘍の中で最も多い。標準治療は外科切除であり、近年は胸腔鏡やロボット支援手術など低侵襲手術の導入が進んでいる。また、胸腺摘出術が行われる代表的疾患である重症筋無力症(MG)でも同様の手術手技の変化が報告されている。しかし、日本では縦隔手術の全国的な動向は十分に明らかでない。そこで本研究は、全国の医療保険データベースを用いて過去10年間の縦隔腫瘍手術の推移を解析した。

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     本研究では、日本の保険診療におけるレセプトデータの95%以上を網羅する厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)の公開集計データを用い、2014~2023年に行われた縦隔手術を解析した。手術は疾患区分(良性腫瘍、悪性腫瘍、MG)と手術アプローチ(開胸、胸腔鏡、ロボット支援手術)で分類し、10万人年当たりの手術率を算出した。10年間の経年推移については、手術件数を線形回帰分析、手術率をポアソン回帰分析で評価した。手術率は男性・女性・男女全体に加えて、10歳ごとの各年代についての解析も実施した。年齢調整は2015年標準人口を用いて行った。

     2023年に日本で行われた縦隔手術は全6,214件で、内訳は良性腫瘍54.4%、悪性腫瘍41.6%、MG 4.0%だった。手術アプローチでは、胸腔鏡手術が全体の76.4%を占め、ロボット支援手術は全体の29.4%だった。これは胸腔鏡手術の約4割がロボット支援下で行われていた計算になる。一方で、開胸手術は23.6%にとどまった。手術患者の45.1%は65歳以上だった。

     過去10年間で、全縦隔腫瘍手術の件数は有意に増加した(P=0.0001)。この増加は、悪性腫瘍手術、胸腔鏡手術、ロボット支援手術件数の増加によるもので、いずれも有意な上昇を示した(いずれもP<0.0001)。一方、MGに対する拡大胸腺摘出術と開胸手術件数は有意に減少していた(それぞれP=0.0019、P<0.0001)。良性腫瘍手術件数には有意な増減を認めなかった。

     手術率では、特に悪性縦隔腫瘍に対する手術率が男女ともに増加しており、相対リスクは男性1.051、女性1.065、全体で1.058だった(いずれもP<0.0001)。年代別の解析では、40歳以上の男女で有意に増加していた(P<0.0024)。

     著者らは、「日本では過去10年間で悪性縦隔腫瘍に対する手術が増加しており、手術アプローチは開胸から胸腔鏡やロボットなどの低侵襲手術へと大きく移行している」とまとめている。こうした結果は、今後の医療資源配分や外科医育成などを検討する上で参考となる。

     なお、本研究は保険請求データに基づく解析であり、腫瘍の組織型や病期などの臨床情報は把握できず、非手術症例も含まれない。また、MGに対する拡大胸腺摘出術の件数が過小評価されている可能性もある。

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  • 高齢者

    配偶者死別後の健康に男女差、男性で死亡・認知症リスク上昇

     配偶者との死別は人生で最もつらい出来事の一つだが、その影響は男女で異なるのだろうか。今回、日本の高齢者を対象とした大規模研究により、配偶者死別後の影響には明確な男女差があり、男性では死亡や認知症リスクの上昇など不良転帰が目立つ一方、女性では時間の経過とともに幸福感や生活満足度が高まる傾向が示された。研究は、千葉大学予防医学センター社会予防医学部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は2月12日付の「Journal of Affective Disorders」に掲載された。

     配偶者の死別は高齢者にとって強いストレスを伴い、うつ症状や不安、死亡リスクの上昇など多様な健康影響が報告されている。特に高齢化が進む日本では死別を経験する人が多い。一方、従来研究はうつ症状や死亡など限られたアウトカムに偏っており、健康の多面的側面を十分に評価していないほか、影響の持続期間や男女差についても知見は限定的である。本研究は、配偶者死別と健康・ウェルビーイングの関連を多面的かつ縦断的に検討し、男女差および時間経過による変化を明らかにすることを目的とした。

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     本研究は、日本老年学的評価研究(JAGES)の2013年、2016年、2019年の3時点データを用いた縦断研究で、要介護認定を受けていない65歳以上の自立した高齢者約2万6,000人(調査ベース)と約3万4,000人(介護保険データベース)を対象に解析した。2013年時点で既婚であった参加者について、配偶者の死別の有無と時期に基づき、死別なし、2015~2016年に死別、2013~2015年に死別の3群に分類した。解析では、身体・認知機能、メンタルヘルス、主観的幸福感、社会的ウェルビーイングなど7領域にわたる計37項目を対象に、配偶者死別との関連を検討した。死亡や認知症、要介護状態については公的介護保険(LTCI)データと連結して評価し、最大約6年間の影響を追跡した。統計解析にはロジスティック回帰分析、修正ポアソン回帰分析、重回帰分析を使い分け、多重比較に対してボンフェローニ補正を行った。

     解析の結果、対象約2万6,000人のうち、解析開始時(2016年)に配偶者を亡くしていたのは1,076人だった。配偶者の死別による影響には男女差が認められ、男性では死亡リスク(3~4年後に約1.9倍)や認知症リスク(4~6年後に約2.3倍)、要介護状態に至るリスクの上昇と関連していた。一方、女性でも認知症や要介護状態との関連は一部でみられたものの、男性に比べて弱く、死亡リスクの上昇は認められなかった。

     また、死別後1年以内に、男性では抑うつ症状や絶望感の増加、幸福感の低下がみられたが、これらの影響は時間の経過とともに弱まる傾向があった。これに対し女性では、抑うつ症状の増加は認められず、その後、幸福感や生活満足度、生きがいの上昇がみられた。

     社会的ウェルビーイングでは、男女ともに社会参加の増加がみられ、友人との交流や趣味・運動などへの参加が活発化した。一方で、社会的支援の低下は男性のみに認められた。さらに、生活習慣の変化として、男性では飲酒量の増加、女性では健診受診の増加がみられた一方、座位時間の増加も確認された。

     本研究により、配偶者の死別が高齢者の健康や生活に及ぼす影響には、男女差と時間経過による違いがあることが示された。男性では身体・認知機能の悪化や社会的支援の低下が目立つ一方、女性ではその後の幸福感向上など適応的変化がみられた。著者らは、こうした結果は死別後の影響が一様ではないことを示すものだとし、「高齢化が進む社会においては、男女の特性に応じた支援体制の構築が重要」と指摘している。

     なお、本研究にはいくつかの限界があり、対象が高齢日本人に限られることや、サンプルの偏り、測定方法の制約などから、結果を一般化する際には注意が必要である。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

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    HealthDay News 2026年3月30日
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  • 癌

    がんサバイバーの運動習慣、死亡だけでなく要介護化リスクとも関連

     がん医療の進歩により、がんサバイバーは増加しているが、その後の生活機能や自立の維持は重要な課題となっている。今回、日本の大規模データを用いた研究で、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が、死亡だけでなく新規の要介護認定リスクとも関連する可能性が示された。研究は、国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の中塚清将氏、国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部の小野玲氏、九州大学大学院医学研究院の福田治久氏らによるもので、詳細は2月16日付で「BMJ Open」に掲載された。

     がんサバイバーに対する身体活動は、死亡や再発リスクの低下、QOL改善と関連することが報告され、ガイドラインでも推奨されている。しかし、複数のがん種を対象に、1年以上の習慣的身体活動と長期的な機能的アウトカムとの関連を大規模データで検討した研究は限られている。特に、要介護化のような社会的・制度的指標を用いた検討は十分ではない。そこで本研究は、日本の介護保険(LTCI)データを活用し、がんサバイバーにおける1年間の習慣的身体活動が死亡および要介護認定に与える影響を検証することを目的とした。

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     本研究は、日本の13自治体が参加する大規模データベース「Longevity Improvement & Fair Evidence study(LIFE Study)」に登録された2014年4月から2022年3月までのレセプトおよび健診データを用いた後ろ向きコホート研究である。健康診断を受けた47万1,511人のうち、健診受診までの1年間にがんの診断があるなどの条件を満たした3万9,435人のがんサバイバーを解析対象とした。各参加者は最大約5年間追跡された。主要評価項目は、新規の要介護認定または全死亡の複合アウトカムとした。要介護認定は、自治体の担当職員が心身の状態を調査し、コンピュータ判定と専門職チームの審査を経て決定される制度上の指標で、日常生活動作(ADL)の低下を示す。全死亡はレセプトデータに基づいて把握した。身体活動は健診の項目より、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」と「日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施」の、「はい・いいえ」の回答から運動とウォーキングの有無を把握した。解析では、年齢や生活習慣などの要因を調整した生存時間解析を行い、身体活動と死亡および要介護認定との関連を検討した。さらに、年齢層別や主要ながん種別の解析も実施した。

     身体活動は「運動とウォーキングの両方を行っている群」1万3,536人(34.3%)、「運動またはウォーキングのいずれかを行っている群」1万1,609人(29.4%)、「身体活動なし群」1万4,290人(36.2%)の3群に分類された。

     65~74歳のがんサバイバーでは、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または新規の要介護認定リスクが有意に高かった(調整後ハザード比〔HR〕1.72、95%信頼区間〔CI〕1.52~1.94)。

     75歳以上でも同様の傾向がみられ、「運動またはウォーキングのみ」の群(HR 1.51、95%CI 1.29~1.85)および「身体活動なし群」(HR 1.66、95%CI 1.43~1.92)は、いずれも「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または要介護認定リスクが高かった。

     全死亡および要介護認定を個別に解析した補足解析でも、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べてリスク上昇が認められた。全死亡のHRは1.87(95%CI 1.65~2.12)、要介護認定のHRは1.33(95%CI 1.14~1.54)であった。

     さらに、身体活動の影響はがん種によって異なる可能性が示された。

     著者らは、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が死亡および要介護認定の予防につながる可能性を示したと結論づけた。とくに高齢者で効果が大きい可能性があり、日常生活での継続的な身体活動の重要性を強調している。

     本研究の限界として、治療状況が一様でない可能性や、身体活動を自己申告で評価している点、認知・心理状態など未測定因子の影響などを挙げている。

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  • 神経疾患

    神経疾患外来で患者と医師に“認識ギャップ”、機械学習モデルが予測可能性示す

     神経疾患の外来診療では、患者と医師の評価や満足度に小さなズレが生じることがある。この認識ギャップは、治療理解の不十分さや信頼関係の低下を通じて、生活の質や長期的な治療アウトカムに影響し得る。今回、パーキンソン病、多発性硬化症、てんかんの患者と医師のペアを対象にアンケートを実施し、認識ギャップを定量化するとともに、機械学習モデルでギャップを予測できることを明らかにした。研究は、順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科の大山彦光氏(現:埼玉医科大学医学部脳神経内科)、富沢雄二氏、服部信孝氏らによるもので、詳細は2月9日付で「Scientific Reports」に掲載された。

     パーキンソン病、多発性硬化症、てんかんなどの神経疾患は慢性かつ症状が多様で、進行に伴い日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす。近年は共同意思決定(SDM)の重要性が強調されているが、診察時の限られた情報に基づく判断では、患者と医師の間で疾患認識や治療目標に認識ギャップが生じる可能性がある。実際、神経疾患領域でも症状の重要度や治療目標、再発評価などを巡るズレが報告されているが、患者と主治医のペアで直接比較した研究は限られている。さらに、こうした認識ギャップを予測する試みも十分ではない。そこで本研究(GAP-AI研究)は、神経疾患患者と主治医の間の認識ギャップを定量化し、その関連因子を検討するとともに、機械学習モデルによる予測可能性を評価することを目的とした。

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     本研究は単施設の観察研究であり、患者197人とその主治医12人を対象に、2回の外来受診時に質問票への回答を求めた。質問票には、患者満足度を評価する18項目のPatient Satisfaction Questionnaire Short Formや、患者と医師双方が回答する9項目のShared Decision Making Questionnaire、Barthel Index、SF-36の各下位尺度を用いた。主要評価項目は、患者と医師の回答を項目ごとに対応させて算出した差(すなわち認識ギャップ)とした。差は絶対値でも評価し、ギャップの大きさを中央値で「一致群」と「不一致群」に分類した。患者背景および医師の年齢・経験年数などの属性との関連を単変量解析で検討し、さらに重回帰分析により認識ギャップに影響する独立因子を同定した。

     本研究は2023年1~8月に実施された。患者の平均年齢は58.1歳で、女性が60.4%を占めた。疾患はパーキンソン病が最多(69.5%)で、多発性硬化症、てんかんが続き、平均罹病期間は7.4年であった。多くは同居者がおり、介護を要しない軽~中等症例が中心であった。一方、医師の半数は35~44歳で、83.3%が男性であった。4割超が20年以上の経験を有し、多くがパーキンソン病を専門とする神経内科専門医であった。

     患者と医師の回答には各質問票で一定の認識ギャップが認められ、総得点は有意に異なり、一致度(κ係数)は全体に低値であった。SF-36下位尺度の一致は19.3%にとどまった。ギャップには患者年齢、診断名、介護者の有無、通院頻度、障害度などの患者側因子に加え、医師の年齢、経験年数、専門医資格、担当患者数などの医師側因子が関連していた。重回帰分析では患者年齢や介護者の有無、医師の経験年数などが独立因子として抽出され、一部疾患では年収も関連していた。

     また、研究データに基づき複数の機械学習アルゴリズムを用いて予測モデルを構築したところ、k近傍法(k-nearest neighbors)アルゴリズムが、主要評価項目で定義した患者と医師の認識ギャップの有無を予測する上で最も良好な性能を示した。

     著者らは、GAP-AI研究により神経疾患患者と医師の間に認識ギャップが存在することが明らかになったと述べている。ギャップは患者背景や医師の経験など複数の因子に影響され、機械学習により予測可能であるとしている。さらに、その把握と是正が患者中心医療の向上につながる可能性があると指摘している。

     なお、本研究の限界として、単施設研究であり特にてんかん症例数が少ないことから一般化に制限がある点、主観的な患者報告アウトカムを用いたことや医師用に十分検証されていない質問票の使用が結果の解釈に影響し得る点などを挙げている。

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  • 慢性肝疾患

    MASLD患者の心血管疾患入院、糖尿病合併で院内死亡リスク約2倍

     代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者が心血管疾患(CVD)で入院した場合、糖尿病併存例では院内死亡や合併症のリスクが有意に高いことが、日本の大規模レジストリ研究で明らかになった。研究は、宮崎大学医学部内科学講座循環器・腎臓内科学分野の小牧聡一氏、松浦祐之介氏らによるもので、2月15日付の「Diabetic Medicine」に掲載された。

     MASLDは、従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に代わる新たな疾患概念として提唱されており、世界で最も頻度の高い慢性肝疾患の一つとされる。CVDとの関連が強いことから心血管リスク評価の重要性が指摘されているが、診断基準を構成する各代謝因子が予後に及ぼす影響については、十分に明らかになっていなかった。糖尿病はMASLDにおける肝関連合併症との関連が知られる一方、CVDで入院したMASLD患者の院内転帰に及ぼす影響については不明な点が多かった。そこで研究グループは、日本全国の心血管入院データを用いて、MASLD患者における糖尿病と院内転帰(死亡・合併症)との関連を検討した。

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     本研究は、2012年4月から2023年3月までの全国規模の日本循環器疾患レジストリ(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular Diseases–Diagnosis Procedure Combination:JROAD-DPC)のデータを用いた後ろ向き横断研究である。解析対象は、CVDで入院したMASLD患者10,614人。MASLDは、肝脂肪化に加え、少なくとも1つの心代謝リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、関連薬剤の使用、またはBMI 23 kg/m²以上〔アジア人のBMI基準〕)を有する場合と定義した。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目は主要な心血管系および非心血管系の院内合併症発生とした。統計解析では、糖尿病の有無による患者背景および転帰を比較したうえで、院内死亡との関連を検討するため多変量ロジスティック回帰解析を実施した。

     対象患者の年齢中央値は66歳で、66.9%が男性だった。MASLD患者10,614人のうち、4,550人(42.9%)が糖尿病を合併していた。糖尿病非合併患者と比較して、糖尿病合併患者では虚血性心疾患(35.5% vs. 30.8%)、急性冠症候群(18.8% vs. 16.9%)、心不全(27.3% vs. 25.4%)の割合がいずれも有意に高かった(いずれもP<0.05)。

     院内死亡率(5.6% vs. 3.3%、P<0.001)および全合併症発生率(23.6% vs. 19.7%、P<0.001)も糖尿病合併群で有意に高く、合併症発生率の差は主として心血管系イベント(16.8% vs. 10.5%、P<0.001)の増加によるものと考えられた。さらに心血管系イベントの内訳では、糖尿病合併例で入院後の心不全や急性冠症候群の発症が多く、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)、人工呼吸管理などの高度治療を要する割合も高かった。

     多変量ロジスティック回帰解析の結果、糖尿病は院内死亡の独立した予測因子であることが確認された(オッズ比 1.99、95%信頼区間 1.60~2.47、P<0.001)。さらに、敗血症、大出血、がんも院内死亡の独立した規定因子であった。一方、脂質異常症や虚血性心疾患は死亡リスク低下と関連し、抗血小板薬、スタチン、ACE阻害薬/ARBの使用も死亡率低下と関連していた。

     著者らは、CVDで入院したMASLD患者において、糖尿病合併が院内死亡率および合併症発生率の上昇と関連していたと結論づけた。そのうえで、「MASLDの心代謝リスク因子が予後に及ぼす影響を一律に捉えるのではなく、特に糖尿病の有無といった代謝表現型に基づいて層別化して評価することが、より精度の高いリスク評価や個別化医療の推進につながる可能性がある」としている。

     なお、本研究の限界として、診断が病名コードに基づくため誤分類の可能性がある点、検査値や治療詳細が含まれていない点、残余交絡の可能性や因果関係を示せない点、非MASLD対照群がない点が挙げられている

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  • 膵臓がん

    若年女性で膵がん増加の兆候、高齢者では手術も増加――全国データ解析

     膵がんは依然として予後不良ながんの一つであり、その発症動向の変化が注目されている。今回、日本の全国データを解析した研究で、若い女性における膵がん罹患率の上昇を示す兆候が確認された。また、高齢者では膵体尾部切除を中心に膵がんの手術件数が増加していることも明らかになった。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学外科学教室消化器外科学部門の森村玲氏らによるもので、詳細は「Annals of Gastroenterological Surgery」に1月22日付でオンライン掲載された。

     膵がんは世界的に罹患率が上昇しており、2022年には世界で約51万人が新たに診断され、がん死亡原因の上位を占めている。日本は人口10万人当たりの罹患率(粗罹患率)が世界で最も高く、2023年には男女ともにがん死亡原因の第3位となるなど、その影響は大きい。近年は若年発症例の増加も国際的に懸念されているが、日本における最新の発症動向や術式別の手術実態については、全国規模での詳細な検討が十分とはいえない。そうした中、本研究では、日本の全国規模データを用いて、近年の膵がん罹患率の推移と年齢・性別ごとの特徴、さらに術式別の手術動向について包括的に検討した。

    【膵がんの治験について相談したい方へ】
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     膵がんの罹患データ(2016~2021年)は、国立がん研究センターの全国がん登録データを用いて解析した。手術件数(2016~2023年)は、厚生労働省の管理する匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)から抽出した。膵臓は、「膵頭部(すいとうぶ)」「膵体部(すいたいぶ)」「膵尾部(すいびぶ)」の3つの部位に分けられる。膵がんの手術は、膵体尾部切除(膵体部・尾部を切除)と膵頭十二指腸切除(膵頭部や十二指腸などを切除)に分類し、さらに開腹手術と腹腔鏡手術に区分した。なお、コード定義の変更により、膵頭十二指腸切除および術式別(開腹・腹腔鏡)のデータは2020~2023年のみ取得可能であり、膵体尾部切除は2016~2023年の期間で解析した。人口10万人当たりの罹患率・手術率を算出し、ポアソン回帰分析で年間リスク比(RR)を推定した。多重比較の影響を考慮し、ボンフェローニ補正を適用した。

     2016~2021年の調査期間中、日本では年間平均約4万3,000人が膵がんと診断され、症例の約8割は65歳以上であった。

     年齢調整後の膵がん罹患率は、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に上昇した(RR=1.007、1.016、1.011、いずれもP<0.0001)。特に10~29歳の女性では顕著な上昇がみられた(RR=1.347~1.449、いずれもP<0.0009)。

     膵体尾部切除の手術率も、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に増加した(RR=1.033、1.032、1.033、いずれもP<0.0001)。年齢別にみると、65~89歳の高齢者で特に増加が顕著であった(RR=1.018~1.114、いずれもP<0.0012)。膵頭十二指腸切除の手術率も2020~2023年にかけて増加したが、解析期間が短いため年次推移の統計的評価は行えなかった。

     2023年の膵がん手術は計1万4,397件で、その内訳は膵頭十二指腸切除が65.6%(9,444件)、膵体尾部切除が34.4%(4,953件)であった。アプローチ別では、開腹手術が77.0%(1万1,079件)と主流で、腹腔鏡手術は23.0%(3,318件)、ロボット支援手術は8.8%(1,271件)であった。

     著者らは、「日本の膵がん疫学において、若年女性での罹患増加の兆候と、高齢者での膵体尾部切除の増加という二つの変化がみられた」と述べている。若年女性については組織型の違いも含めた原因解明とハイリスク群への層別スクリーニングが、高齢者については低侵襲手術を含む外科治療体制の整備が、今後の課題として重要になるとしている。

     なお、本研究の限界として、病期・組織型などの臨床情報を含まないデータの使用、コード変更に伴う解析期間の制約、異なるデータベースを用いた推定による解釈の不確実性などを挙げている。

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  • 胃がん

    62万人の解析で見えてきた、日本人のバレット食道リスクとは

     「バレット食道」は、胃酸などの逆流によって食道の粘膜が本来とは異なるタイプの細胞(円柱上皮)に置き換わる状態を指す。この状態は、将来的に食道腺がんの発生母地になることが知られている。今回、日本人約62万人の大規模データを解析した研究から、胃食道逆流症(GERD)や食道裂孔ヘルニアなどが、日本人におけるバレット食道のリスク因子である可能性が示された。研究は、静岡県立総合病院消化器内科の平田太陽氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏らによるもので、詳細は2月6日付で英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

     近年、欧米を中心に食道腺がんの増加が報告されており、その主要な前段階とされるバレット食道への関心が高まっている。日本を含む東アジアでは、長い範囲に及ぶ長区域バレット食道(LSBE)や、それを背景とした食道腺がんは従来まれと考えられてきたが、近年は増加傾向が指摘されている。これまで、バレット食道のリスク因子として、高齢、男性、肥満、喫煙に加え、GERDや食道裂孔ヘルニアなどが報告されてきた一方、ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)感染は保護的に働く可能性も示唆されている。しかし、生活習慣やピロリ菌の疫学は欧米と日本で異なり、日本人集団における大規模な検証は限られていた。そこで本研究では、日本人一般集団62万人超のデータを用い、バレット食道の発症率とリスク因子を検討した。

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     健康保険請求データや健診情報などを統合した静岡県市町国保データベース(SKDB)を用い、後ろ向きコホート研究を実施した。対象は2012年4月~2021年9月に市町村国保へ加入し、12カ月以上の連続加入が確認され、バレット食道の既往がない個人とした。新規発症は保険請求データで定義し、年齢、性別、併存疾患、生活習慣、GERDや食道裂孔ヘルニア、ピロリ菌感染歴、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)、ならびにヒスタミン-2受容体拮抗薬(H2RA)などの酸分泌抑制薬の使用を調整した、時間の経過を考慮して発症リスクを評価する統計手法(Cox比例ハザードモデル)を用いて解析した。

     本研究の最終的な解析対象は62万125人となり、追跡期間の中央値は6.2年だった。観察期間中に1,577人がバレット食道と診断され、新規発症率は10万人年あたり46.4例だった。

     まず1つずつの因子との関連を検討し(単変量解析)、そのうえで複数の要因を同時に調整した解析(多変量解析)を行った。GERDと酸分泌抑制薬使用は互いに関連が強い(強力な酸分泌抑制薬であるPPI/P-CABはGERDの第一選択薬である)ため、両者を別々に含めた2つの解析モデルで検討した。その結果、年齢(50~79歳)、男性、末梢血管疾患、肝疾患、食道裂孔ヘルニア、ならびにGERDまたはPPI/P-CAB使用が一貫して発症リスクの上昇と関連していた。一方、ピロリ菌感染歴やH2RA使用については、モデルによって関連の有無が異なった。なお、酸分泌抑制薬使用やピロリ菌感染歴がリスク上昇と関連した点について著者らは、薬やピロリ菌そのものが直接リスクを高めると単純に解釈すべきではないとし、背景にあるGERDの重症度や、ピロリ菌除菌後の胃酸分泌の変化などが影響している可能性を指摘している。また、身体活動は単変量解析では関連したものの、多変量解析では有意差を示さなかった。

     著者らは、「バレット食道の発症リスク因子について、本研究においては肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣因子は他の要因を調整すると明確な関連は認められず、GERDや食道裂孔ヘルニアなどの逆流関連因子の影響がより重要である可能性が示唆された」と述べている。これらの結果は、日本人における内視鏡サーベイランスの対象選択に新たな視点を与える可能性があるとしている。

     本研究での発症率(10万人年あたり46.4例)は、数値上は欧米の報告と同程度だが、診断基準の違いに注意が必要である。日本では、全長の短い短区域バレット食道(SSBE)が主流で、内視鏡医の判断で1cm未満の非常に短いものまで診断に含まれることがある。一方、欧米では一般に1cm以上の長さと組織検査による確認という厳格な基準が用いられる。そのため、発症率やリスク因子の単純な国際比較には慎重な解釈が求められる。

     なお、本研究の限界として、診断は保険請求データに基づいており、組織学的情報が含まれていない点や、短区域バレット食道(SSBE)と長区域バレット食道(LSBE)の区別ができない点、診断漏れの可能性などが挙げられる。また、家族歴や遺伝的素因といった臨床情報や、ピロリ菌感染状態(現在感染か除菌後かなど)を詳細に評価できていない点も限界である。さらに、本研究は観察データに基づくものであるため、因果関係を断定することはできない。

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