全身性エリテマトーデスについて

「全身性エリテマトーデス」は、2016年にアメリカでも芸能人のセレーナゴメスさんが治療のために活動を休止したことや、2014年にドラマで石原さとみさんが発症してしまう役を演じたことから、病名を知っている人も少なくないでしょう。
免疫の異常によって発症するため、だれが発症してもおかしくありません。難病として指定されている全身性エリテマトーデスについて、基本的なことから知っていきましょう。
  1. 全身性エリテマトーデスとはどういうものか??
  2. 全身性エリテマトーデスの症状
  3. 全身性エリテマトーデスの治療法
  4. まとめ
全身性エリテマトーデスとはどういうものか?

全身性エリテマトーデスとは
本来身体を守るはずの免疫細胞が異常となってしまい、自分自身を攻撃してしまう自己免疫性疾患です。

「SLE」と略して呼ばれ、オオカミに噛まれた痕のような紅斑が出ることから「ループス」(ラテン語でオオカミを意味します。)とも名付けられています。20~40代の女性に多く発症する病気です。

原因は不明とされており紫外線を多く浴びたり、風邪などのウイルス感染、ホルモンバランスの崩れなどが誘因となっているとされています。

数年前までは、全身性エリテマトーデスを発症してからの寿命は5年と言われていましたが、ステロイドなどの使用によって生存率が上昇しています。

現在では、全身性エリテマトーデス発症後5年での生存率は95%を超え、普通に生活される方が増えています。

合併症を併発した場合死に至ることもあるので、注意が必要です。

全身性エリテマトーデスの検査と診断
全身性エリテマトーデスかもと疑いが出た場合は、下記の検査が行われます。様々な症状を表す疾患であることから、診断は慎重に行われており、現在日本では二種類の診断基準が使われています。

・血液検査
血液(抗核抗体、血算、赤沈)検査で、かかっている場合抗核抗体、抗ds-DNA抗体が要請になることが多いです。

・尿検査
蛋白尿や尿潜血が出ていないかを調べます。

その他に症状によって、生体検査・CT検査・MRI検査・髄液検査・脳波検査が行われます。

全身性エリテマトーデスの症状

初期症状は、発熱・だるさ・関節痛など風邪に似ています。なかなか改善しないことから発症が分かることが多いです。

・全身症状
38度を超える発熱が1週間以上続く・37.5度前後の微熱が2週間以上続くなどの発熱症状、全身の倦怠感や疲労感があります。また、食欲不振や体重減少なども出てきます。

・皮膚症状
蝶が羽を広げたような蝶型紅斑が出ることが有名です。また、顔や耳・首に丸い円盤のようなディスコイド疹が見られた理り、指が白く冷たくなるレイノー現象も起こります。

・関節症状
手・指・ヒザ・ヒジが腫れて痛む関節炎が起こります。また、日によって痛む場所が変化する移動型関節炎が見られることもあります。

・日光過敏症
紫外線に当たった後に赤い発疹・水ぶくれが出たり、発熱する場合があります。日光過敏症が全身性エリテマトーデスの始まりであることもあります。

・口内炎
痛みのない口内炎を発症します。鼻咽腔にもまれに発症することがあります。

・脱毛
円形脱毛のように部分的に毛が抜ける・全体の髪の量が減るなどの脱毛症状が出ます。また、髪が傷みやすく、途中から切れやすくなる人もいます。

・臓器障害
心臓・肺・消化器官・血液など全身のあらゆる臓器に障害を起こしますが、人によって症状や部位が異なります。また、臓器障害の出ない人もいます。

腎臓の場合、半数近くがかかってしまうループス腎炎と言われるネフローゼ症候群や急性進行性糸球体腎炎によるむくみや血尿などの症状があります。

心臓や肺では、漿膜炎が起こり、深呼吸すると胸が痛んだり、すぐに息切れしてしまうなどの症状が出ます。

他に、腹痛や吐き気が出た場合、腸間膜の血管炎や、ループス腹膜炎・ループス膀胱炎などの可能性もあります。

・中枢神経症状
中枢神経症状のCNSループスは重篤な症状とされています。うつ・失見当識・妄想という精神症状と、けいれん・脳血管障害などが見られます。

全身性エリテマトーデスの治療法

原因のわからない全身性エリテマトーデスですが、炎症を抑えて過剰な免疫を抑制することが夕刻な治療法になります。ステロイドの点滴薬・飲み薬が基本となり、炎症の状態が改善してきたら徐々に薬の量を減らしていきます。自己判断は絶対に禁物です。

ステロイドによって食欲が増進してしまうため糖尿病になりがちなため注意が必要です。さらに骨粗しょう症にもなりやすいので、合わせて薬が処方されることもあります。

日光を浴びることを極力避け、なるべくストレスをためないことも気を付けましょう。

全身性エリテマトーデスの予後は、症状が出なくなっている寛解期と再び症状が現れてしまう再燃を繰り返して慢性の経過をたどってしまいます。

しかし、閉経した女性の場合は再発する確率が少なくなっています。慢性化させず、再発させないためにもステロイド剤の服用と、医療機関への定期受診が大切です。

まとめ

全身性エリテマトーデスは何が原因で発症するかわからない難病のため、とても不安に思うかもしれません。

しかし、全身性エリテマトーデス発症したという国内外の芸能人の写真を見ると、実に多くの人がかかっていることが分かります。また、発症後も歌ったり踊ったりとされている方も多く、同じ全身性エリテマトーデスの人にとって希望が持てるでしょう。

以前とは違って生存率も高くなっており寛解期には、妊娠出産も可能ですので、きちんと投薬を受け、合併症を防ぐための定期診断を忘れず上手に付き合っていきましょう。

全身性エリテマトーデス(SLE)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

全身性エリテマトーデスは膠原病の一種で難病指定されている病気です。
どういう症状があれば全身性エリテマトーデスが疑われるのでしょうか?今回は全身性エリテマトーデスの基本的な概要と、セルフチェックについてご紹介します。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは?こんな症状に注意!セルフチェックについて

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  • ニュース

    ハンズフリーでも油断禁物、会話が運転中の目の動きを妨げる

     道路交通法上、運転中のハンズフリー通話に問題はないが、脳には一定の負荷がかかる可能性があるようだ。最新の研究で、健常成人に眼球運動課題を行ってもらったところ、話しながら課題を行った場合に反応開始時間や眼球移動時間に遅れが生じる傾向があることがわかった。研究は、藤田医科大学病院リハビリテーション部の鈴木卓弥氏、藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科の鈴木孝治氏(現所属:金城大学医療健康学部作業療法学科)、上原信太郎氏によるもので、詳細は10月6日付けで「PLOS One」に掲載された。

     注意の分散は運動行動に影響を与え、正確な動作や協調が必要なタスクで遅れや誤差を生じることが知られている。特に運転中の通話は、手に持つかハンズフリーかに関わらず周囲の視覚情報への反応を遅らせ、事故リスクを高めることが報告されている。これは、会話による認知的負荷が運転に必要な注意資源(attentional resources)を奪い合うためと考えられる。運転には眼球運動、物体認識、動作の準備、実行といった視覚運動処理が必要であり、会話はこれら、特に周辺視野への眼球運動に干渉する可能性がある。本研究では、健常成人に中心から周辺への眼球運動課題を実施し、会話をする、音声クリップを聞く、課題のみの3つの条件で比較し、会話による眼球運動の反応遅延を検討した。

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     本研究では、2019年7月11日から2020年8月13日の間に合計30人の健常成人が募集された。参加者は、21インチのコンピュータディスプレイの前に座り、画面中央から周辺に現れる8か所のターゲットに対して、できるだけ速く正確に視線を向けてもらう眼球運動課題を行った。目の動きはアイ・トラッカーで精密に記録した。参加者は、眼球運動課題を3つの条件で実施した。会話条件では、WAIS-IIIやオリジナルの質問計45問(「イタリアの首都はどこですか?」や「昨日の夜は何時に寝ましたか?」など)に答える形式をとった。聴覚条件では、夏目漱石の小説「吾輩は猫である」の朗読音声を聞き、その内容の理解に集中した。対照条件では、眼球運動課題のみを行い、追加の認知的負荷は課さなかった。3つの実験条件が眼球運動に与える影響を調べるため、各運動パラメータについて、条件(会話、聴覚、対照)および方向(8方向)を被験者内要因とした反復測定分散分析(ANOVA RM)を適用した。

     3つの実験条件を比較した結果、ターゲットの位置にかかわらず、会話条件では他の条件より反応開始時間が長いことが分かった。事後比較では、会話条件(平均279.7ミリ秒〔ms〕、標準偏差〔SD〕32.8)は、聴覚条件(平均260.4 ms、SD 29.7、P=0.07、効果量〔d〕=0.62)および対照条件(平均261.3 ms、SD 32.8、P=0.09、d=0.56)と比べて、反応時間が長くなる傾向を示した。

     視線移動に要する時間についても同様で、会話条件(平均260.1 ms、SD 107.6)は、聴覚条件(平均141.5 ms、SD 58.9、P<0.05、d=1.37)および対照条件(平均160.8 ms、SD 102.1、P<0.05、d=0.95)より有意に長かった。

     さらに、視線調整に要する時間も同様の傾向を示し、会話条件(平均1226.5 ms、SD 723.3)は、聴覚条件(平均493.2 ms、SD 361.5、P<0.05、d=1.28)および対照条件(平均548.9 ms、SD 461.2、P<0.05、d=1.12)より有意に延長していた。

     著者らは、「本研究では、迅速かつ正確な視線移動と会話を同時に求められる負荷の高い状況において、視線行動の時間的パラメータが遅れることを示した。これらの結果は、会話に伴う認知的負荷が、視覚運動処理の最初のステップである視線行動の開始や制御に関わる神経プロセスに影響を与える可能性を示唆している」と述べている。

     なお、本研究の限界点として、個人ごとの認知負荷を定量化できず、会話そのものか負荷の影響かの区別もつかないため、干渉の閾値や程度は明らかでない点を挙げており、今後の取り組むべき研究課題であるとした。

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  • 妊娠

    ピロリ菌が重いつわりを長引かせる可能性、妊婦を対象とした研究から示唆

     妊娠中の「つわり」は多くの人が経験する症状であるが、中には吐き気や嘔吐が重く、入院が必要になるケースもある。こうした重いつわり(悪阻)で入院した妊婦164人を解析したところ、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)に対する抗体(IgG)が陽性である人は入院が長引く傾向があることが分かった。妊娠前や妊娠初期にピロリ菌のチェックを行うことで、対応を早められる可能性があるという。研究は、日本医科大学武蔵小杉病院女性診療科・産科の倉品隆平氏、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は10月6日付けで「Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載された。

     妊娠悪阻は妊娠の0.3〜2%にみられる重度のつわりで、持続する嘔吐や体重減少により入院を要することも多い。進行すると電解質異常や肝・腎機能障害、ビタミンB₁欠乏によるウェルニッケ脳症(意識障害やふらつきを伴う急性脳症)などを生じることがある。原因としてヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や胎盤容積の大きさなどが知られるが、近年はピロリ菌感染との関連も指摘されている。しかし、日本人妊婦における感染と重症度や入院期間との関係は十分に検討されていない。本研究では、重度妊娠悪阻で入院した症例を対象に、入院時の各種指標とピロリ菌に対するIgG抗体の有無が入院期間に及ぼす影響を後ろ向きに検討した。

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     本研究では、2011年1月~2023年6月までに日本医科大学付属病院または日本医科大学武蔵小杉病院で入院治療を要した重度妊娠悪阻患者164人が含まれた。患者はまず、抗H. pylori IgG抗体の有無(陽性群 vs 陰性群)に基づき2群に分けられた。その後、すべての患者を長期入院群(21日以上)と短期入院群(21日未満)に分類して、二次解析が行われた。統計手法には、マン・ホイットニーのU検定、t検定、フィッシャーの正確確率検定、ロジスティック回帰分析が適宜用いられた。

     解析対象164人中、抗H. pylori IgG抗体陽性の患者は23人(14.0%)、陰性は141人(86.0%)であった。これら2群の入院期間を比較したところ、抗H. pylori IgG抗体陽性群の入院中央値(範囲)は24日(6〜70日)であり、陰性群の中央値15日(2〜80日)と比べて有意に長かった(P=0.032)。

     次に長期入院群と短期入院群を比較したところ、長期入院群では尿ケトン体強陽性(3≦)の割合(P=0.036)や抗H. pylori IgG陽性の割合(P=0.022)が有意に高かった。入院時の検査所見を比較すると、長期入院群では血清遊離サイロキシン(FT4)値が有意に高かったが、その他の検査項目に有意差は認められなかった。

     多変量ロジスティック回帰分析の結果、単変量解析で有意だった因子を調整後も、入院長期化の独立したリスク因子として確認されたのは抗H. pylori IgG陽性のみであった(オッズ比〔OR〕 4.665、95%信頼区間〔CI〕 1.613~13.489、P=0.004)。尿ケトン体強陽性は入院期間延長の傾向を示したが、統計的有意差は認められなかった(OR 2.169、95%CI 0.97~4.85、P=0.059)。一方、尿ケトン体強陽性の有無で患者を層別すると、陽性群の入院中央値は19日(4〜80日)、陰性群の12日(2〜55日)であり、有意に入院期間が延長されていた(P=0.001)。

     著者らは「今回の研究結果から、抗H. pylori IgG抗体の検査で、重度の悪阻で入院が長引きやすい妊婦を特定できる可能性が示唆された。抗体陽性の妊婦は、入院中により注意深く観察されることで、体調管理の助けになると考えられる。また、妊娠前からの準備(プレコンセプションケア)が、悪阻の予防策として有効かもしれない」と述べている。

     また、著者らは、妊娠前のピロリ菌スクリーニングや除菌の有効性については現時点では仮説にすぎず、本研究はその可能性を示すにとどまると説明している。今後は、ガイドラインや保険制度の見直しを含め、前向き研究で有効性や費用対効果を検証することが重要だとしている。

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    HealthDay News 2025年11月17日
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  • 糖尿病

    糖尿病治療、継続の鍵は「こころのケア」と「生活支援」

     病気の治療を続けたいと思っていても、気持ちの落ち込みや生活の負担が重なると、通院や服薬をやめてしまうことがある。今回、全国の糖尿病患者を対象にした調査で、心理的苦痛や先延ばし傾向がある人ほど治療を中断しやすいことが明らかになった。その背景として、経済的困難や介護・家事の負担、糖尿病治療への燃え尽き症候群(糖尿病バーンアウト)がみられたという。研究は鳥取大学医学部環境予防医学分野の桑原祐樹氏らによるもので、詳細は9月30日付けで「BMJ Open Diabetes and endocrinology」に掲載された。

     世界的に糖尿病の有病率は増加しており、合併症による健康への影響が大きな課題となっている。適切な血糖管理により、多くの合併症は予防または遅らせることが可能である。しかし、治療を継続し、医療機関を受診し続けることは容易ではなく、治療中断やアドヒアランスの低下は血糖管理の不良、合併症の進行、死亡リスク、医療コストの増大につながる。過去の研究では、治療継続に関わる心理・社会的要因(抑うつや薬剤費など)が限定的に検討されてきたが、患者の体験と治療中断の関係については十分に解明されていない。本研究は、心理・社会的要因と患者体験が糖尿病治療の中断にどのように関連するかを明らかにすることを目的とした。

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     この横断研究では、220万人のパネル会員を持つ楽天リサーチ(現:楽天インサイト)株式会社を通じて、構造化オンラインアンケートを実施した。登録されている糖尿病患者1万8,000人のうち、40〜79歳の1万人を便宜的に抽出した。参加者には「現在、糖尿病の治療を受けていますか?(医療機関での定期的な血液検査や生活指導を含む)」と尋ね、「はい」と答えた者を治療継続群、「いいえ」と回答し、かつ「過去に定期的に治療を受けていたが、現在は医療機関を受診していない」を選択した者を治療中断群に分類した。群分けに続いて、参加者の心理的要因(気分障害・不安障害、自己肯定感、先延ばし傾向)および社会的要因(孤独感、逆境的な幼少期経験:ACE)を測定した。群間の割合の差はカイ二乗検定で評価し、糖尿病治療の中断と心理・社会的要因との関連は、潜在的交絡因子を調整したロジスティック回帰分析で検討した。

     適格性を検証後、最終的な解析対象は4,715人(男性86.8%、女性13.2%)となった。69人の参加者が糖尿病治療の中断を報告し、51人が3カ月以上治療を中断していた。

     次に、ロジスティック回帰分析により、心理・社会的要因と糖尿病治療中断との関連を検討した。性別、年齢、学歴、世帯収入、糖尿病の型で調整後、心理的苦痛(調整オッズ比〔AOR〕 1.87、95%信頼区間〔CI〕 1.06~3.30、P=0.032)および先延ばし傾向が強いこと(AOR 2.64、95%CI 1.25~5.56、P=0.011)は、治療中断と有意に関連していた。

     さらに、治療継続群と治療中断群との患者体験を比較した。全体として、参加者のうち9.7%が経済的困難を訴えていた。また、12.1%が糖尿病バーンアウトを報告していた。経済的困難(9.5%対21.7%、P=0.002)、育児または介護の困難(1.5%対10.0%、P<0.001)、および糖尿病バーンアウト(11.9%対26.7%、P=0.001)を報告した人の割合は、治療継続群に比べて治療中断群で有意に高かった。

     著者らは、「潜在的な交絡因子を調整した後も、心理的苦痛および強い先延ばし傾向は治療中断と有意に関連していた。いくつかの心理社会的要因の経験は、治療継続群と比較して治療中断群で有意に多く認められた。医療従事者および医療システムは、糖尿病患者の転帰不良を最小限に抑えるために、これらの要因への対応を優先すべきだ」と述べた。

     なお、本研究の限界として、選択バイアスが避けられなかった点、自己申告式の質問票であったため情報バイアスが存在していた可能性がある点などを挙げている。

    糖尿病のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。
    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2025年11月10日
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  • パーキンソン病

    パーキンソン病患者の“よだれ”が示すもの、全身的な神経変性との関連を示唆

     パーキンソン病でよく見られる“よだれ(流涎)”は、単なる口腔のトラブルではないかもしれない。日本の患者を対象とした新たな研究で、重度の流涎がある患者では、運動・非運動症状がより重く、自律神経や認知機能にも異常がみられることが示された。流涎は、全身的な神経変性の進行を映す新たな臨床的サインとなる可能性があるという。研究は順天堂大学医学部脳神経内科の井神枝里子氏、西川典子氏らによるもので、詳細は9月30日付けで「Parkinsonism & Related Disorders」に掲載された。

     パーキンソン病は、動作の遅れや震えなどの運動症状に加え、自律神経障害や認知機能低下など多彩な非運動症状を伴う進行性の神経変性疾患である。その中でも流涎(唾液の排出障害)は、生活の質や誤嚥性肺炎リスクに影響するにもかかわらず、軽視されがちで、標準的な評価方法も確立されていない。本研究は、この見過ごされやすい症状の臨床的重要性を明らかにするため、日本のパーキンソン病患者を対象に、流涎の有病率や特徴を調べ、運動・非運動症状との関連を検討することを目的とした。

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     本横断研究では、2015年11月~2022年8月の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科でパーキンソン病と診断された患者811人を初期スクリーニングした。運動症状および非運動症状は、MDS-UPDRSパートI〜IV、MMSE、MoCA-J、FAB、PDSS-2、JESS、およびPDQ-39を用いて評価した。心臓の自律神経機能は、メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)心筋シンチグラフィーによる遅延心・縦隔比(H/M比)で評価した。ドパミン作動性神経の機能は、ドパミントランスポーター単光子放射断層撮影(DaT SPECT)を用い、年齢調整済み基準データベースを基にzスコアを算出した。流涎の重症度は、MDS-UPDRSパートIIの項目2で評価した。群間比較には、連続変数に対してt検定、カテゴリ変数に対してカイ二乗検定を用いた。

     本研究の最終的な解析対象は513人で、そのうち341人(66.5%)が流涎症を有しており、144人(28.1%)が重度と診断された。流涎はMDS-UPDRSの全領域(パートI〜IV)で有意に高いスコアと関連し、運動症状・非運動症状のいずれも重症であることを示した(P<0.001〜P=0.011)。流涎群ではMMSE(P=0.010)およびFAB(P=0.006)のスコアが低く、より顕著な認知機能障害を認めた。また、PDSS-2スコアおよびPDQ-39総合スコアはいずれも有意に高値であり(ともにP<0.001)、睡眠の質および生活の質(QoL)の低下が示唆された。さらに、MIBG心筋シンチグラフィー(対象は402例)では心・縦隔比(H/M比)の低下がみられ(P=0.047)、心臓自律神経機能障害の進行が示された。加えて、DaT SPECT(対象は431例)では線条体のzスコアが有意に低下しており(P=0.001)、シナプス前ドパミン作動性神経活動の低下を反映していた。

     年齢・罹病期間・性別を調整した多変量回帰解析の結果、流涎の重症度は、より重度の運動症状・非運動症状、高いレボドパ換算用量、より強い認知機能障害、日中過眠の増加、より重度の睡眠障害、生活の質の低下、そしてDaT取り込み量のzスコア低下と有意に関連していた。

     著者らは、「流涎を伴うパーキンソン病患者は、運動症状・非運動症状がより重く、認知機能や自律神経機能にも影響がみられ、生活の質も低下していた。これらの結果は、流涎が単独の末梢的症状ではなく、パーキンソン病における全身的な病態進行の臨床マーカーとして機能する可能性があるという仮説を支持するものである」と述べている。

     なお、本研究は帝人ファーマ株式会社の支援を受けて実施された。

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    HealthDay News 2025年11月10日
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  • 高齢者

    都市と地方で違う?高齢者の健康に影響する「歩きやすさ」

     「歩きやすい街」は高齢者に優しいのか?今回、日本全国の高齢者を対象にした調査で、都市と地方でその効果に違いがあることが分かった。地域の歩きやすさ(ウォーカビリティ)は都市部では歩行の増加に寄与する一方、地方部ではウォーカビリティが必ずしも健康にプラスの影響を与えないことがあるという。研究は千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は9月21日付けで「Health & Place」に掲載された。

     高齢化社会では、日常生活空間の環境が高齢者の健康や生活の質に大きな影響を与えることが注目されている。特にウォーカビリティは、歩道や交差点、施設へのアクセスなど複数の要素を含み、身体的活動や心理・社会的健康に関係するとされる。しかし、ウォーカビリティが都市・地方に与える影響の違いや、身体・心理・社会面から総合的に評価した研究は限られる。そうした背景を踏まえ、著者らは、日本の65歳以上の高齢者を対象に、ウォーカビリティと健康・生活関連アウトカムの長期的関連を都市・地方別に分析し、その包括的影響を明らかにすることを目的とした。

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     解析には、地域在住の65歳以上を対象とした日本老年学的評価研究(JAGES)データベースより、2013年(プレベースライン)、2016年(ベースライン)、2019年(フォローアップ)の3時点で全国18の自治体において実施されたデータを用いた。2013・2016年調査データから不備や異常値を除外し、残った参加者を2019年追跡調査データと連結した「質問票ベースサンプル(2万7,354名)」と、2016~2019年の介護保険データベース(LTCI)と連結した「介護保険ベースサンプル(4万111名)」の2種類の解析サンプルを作成した。ウォーカビリティは、人口密度、最寄りの小売店および公園までの距離、道路密度(1km2あたりの道路の総距離〔m〕)から算出した複合指標を用いて評価した。7つの領域にわたる42のアウトカムについて、都市・地方別に層別した多層回帰モデルで解析し、それぞれの有意性判定に対してボンフェローニ補正(有意水準α=0.0012)を適用した。

     都市部では、ボンフェローニ補正後、ウォーカビリティの高い地域ほど歩行時間が増加していることと有意に関連していた(回帰係数β=0.04、95%信頼区間〔CI〕 0.02~0.07、P<0.001)。ボンフェローニ補正後は有意ではないが、ウォーカビリティの高い地域は死亡リスクの低下(リスク比RR=0.87)、抑うつ症状の減少(β=–0.02)、趣味グループ(β=0.03)・スポーツグループ(β=0.03)・外出頻度(β=0.04)の増加とも関連していた。

     一方地方では、ボンフェローニ補正後、ウォーカビリティの高い地域は要介護認定(要介護度2以上)の増加(RR=1.20、95%CI 1.06~1.31、P<0.001)、趣味グループ(β=0.04、95%CI 0.02~0.06、P<0.05)、スポーツグループ(β=0.04、95%CI 0.03~0.07、P<0.05)、外出頻度(β=0.07、95%CI 0.04~0.10、P<0.01)の増加、座りがちな生活リスクの増加(RR=1.29、95%CI 1.13~1.47、P<0.001)、互恵性の低下(β=–0.04、95%CI –0.07~–0.02、P<0.001)と有意に関連していた。ボンフェローニ補正後は有意でないが、ウォーカビリティの高い地域は残存天然歯が少ない割合の低下(RR=0.80)、自己評価健康の改善(RR=1.01)、自己申告高血圧の低リスク(RR=0.98)、自己申告の糖尿病(RR=1.05)・脂質異常症(RR=1.08)の減少とも関連していた。また、ウォーカビリティの高い地域と歩行時間増加との関連は認められなかった(β=0.01)。

     本研究について著者らは、「ウォーカビリティの高い都市部では、死亡リスクの低下など一貫した利益が認められた。一方、地方では利益と課題が併存しており、趣味などの社会参加は多いものの、要介護認定や孤独感、座りがちな生活のリスクも高かった。これらの結果は、都市部では歩行を中心とした都市設計、地方では交通手段の整備や社会的つながりの促進、活動機会の拡充など、場所に応じた複合的な戦略の重要性を示している」と述べている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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    HealthDay News 2025年11月4日
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  • 歯の健康

    歯を失うと寿命にも影響?80歳女性で“咬合支持”の重要性が明らかに

     高齢になると「歯が抜けても仕方ない」と思われがちだが、噛み合わせの力が寿命にまで影響する可能性がありそうだ。今回、地域在住の80歳高齢者を10年間追跡した研究で、咬合支持(噛み合わせの支え)を失った女性は、そうでない女性に比べて死亡リスクが有意に高いことが示唆された。研究は新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座予防歯科学分野の田村浩平氏、濃野要氏、小川祐司氏によるもので、詳細は9月23日付けで「International Dental Journal」に掲載された。

     咀嚼は全身の健康と長寿に重要であり、歯や義歯による安定した咬合支持が不可欠である。咬合支持の低下は咀嚼の満足度や効率を損ない、栄養不足や運動機能低下にも関連することが報告されている。また、フレイルは高齢者の死亡リスク因子として注目され、歯の喪失や咬合力低下などの口腔要因も関連する。日本では高齢者の歯の保存が重要視されているが、健康な高齢者を対象に残存歯数や咬合力と死亡率の関係を検証した研究は少ない。咬合と死亡率については、最大咬合力や機能歯の数が全死因死亡率の有力な予測因子であり、Eichner Index(アイヒナー指数:EI)がこれらの指標の代替になり得ると考えられる。このような背景を踏まえ、著者らは新潟市の高齢者を対象とした25年間のコホート研究の一環として、咬合支持の喪失が死亡リスク因子であるという仮説を検証した。具体的には、フレイルのない健康な地域在住の80歳高齢者において、EIで評価した咬合支持と10年間の死亡率との関連を調査した。

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     本研究の解析対象は、新潟市在住のフレイルのない80歳の高齢者360人であり、追跡調査は2008年6月~2018年6月まで実施された。ベースライン時に、歯牙および歯周検査、唾液分泌量測定(ガム試験)、血液検査、および自記式アンケート(喫煙・飲酒習慣、運動習慣、既往歴など)が実施された。口腔検査票から、咬合支持はEIクラスA/B群(咬合支持あり/部分的にあり)およびC群(咬合支持なし)に分類され、歯周炎症表面積も算出された。生存解析にはKaplan–Meier法とログランク検定が用いられ、多変量解析にはCox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)が算出された。

     最終的な解析対象には297人(男性155人、女性142人)が含まれた。ベースライン時のEIクラスはA/B群が203人、C群が94人だった。10年間の累積生存率はA/B群とC群でそれぞれ79.8%および66.0%であり、有意な差が認められた(P=0.038)。

     多変量Cox比例ハザードモデルでは、「EIクラスC」および「男性」が全死因死亡の有意な独立リスク因子であった。性別、BMI、喫煙状況、既往歴などの交絡因子で調整後のHRは、EIクラスCで1.88(95%信頼区間 [CI] 1.08~3.36、P<0.05)、男性で2.28(CI 1.23~4.26、P<0.05)であった。

     男女別の層別解析では、EIクラスCは女性のみで有意な独立リスク因子となり、歯周炎症表面積、唾液分泌量、BMI、喫煙状況、既往歴などで調整後のHRは4.17(95%CI 4.17~11.79、P<0.05)であった。その一方、男性では統計的に有意な差は認められなかった。

     著者らは、「地域在住の健康な80歳高齢者において、咬合支持の喪失は、特に女性で全死因死亡の独立したリスク因子であった。この結果は、咬合支持の維持が咀嚼機能や十分な栄養摂取を支えることで、長寿の促進に重要な役割を果たす可能性を示している。今後の研究では、咬合支持の喪失が死亡に至るまでの間接的な経路をさらに検討する必要がある」と述べている。

     なお、結果に性差が出た理由として、男性は一般的に筋肉量や咀嚼筋力が大きく、咬合支持を失っても咀嚼機能や栄養摂取への影響が相対的に小さいこと、また、心理社会的要因(抑うつや孤立)の影響は女性でより顕著に現れやすいことが指摘されており、歯の喪失による審美的な変化が心理的に与える影響が、女性でより大きい可能性などが考察された。

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  • 慢性肝疾患

    肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義

     慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。

     CLDは進行すると予後不良となることが多く、非代償性肝硬変患者では5年生存率が約45%と報告されている。このため、将来的な疾患進行や合併症のリスクを減らすには、高リスク患者の早期特定が重要である。一方、最近の研究では、フレイルもCLD患者の予後に影響する独立因子であることが示されており、肝機能だけでなく身体全体の脆弱性を考慮した評価の重要性が指摘されている。Clinical Frailty Scale(CFS)は2005年に開発され、米国肝臓学会もCLD患者のフレイル同定に推奨する評価ツールであるが、これまで日本人CLD患者においてCFSを用いた評価は行われておらず、その臨床的意義は明らかでなかった。こうした背景から、著者らはCFSを用いて日本人CLD患者のフレイルの有病率、臨床的特徴、ならびに予後への影響を明らかにすることを目的とした。

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     本研究では、2004年3月~2023年12月の間に岐阜大学医学部附属病院、中濃厚生病院、名古屋セントラル病院に入院した成人CLD患者とした。CFSスコアは、入院当日の情報に基づき、併存疾患、日常生活動作、転倒リスクに関する質問票を後ろ向きに評価し、スコアが5以上(CFS 5~9)の場合をフレイルと定義した。本研究の主要評価項目は全死亡とした。群間比較には、カテゴリ変数に対してはカイ二乗検定、連続変数に対してはマン・ホイットニーU検定を用いた。生存曲線はカプラン–マイヤー法で推定し、群間差はログランク検定で比較した。フレイルが死亡に与える予後影響はCox比例ハザードモデルで評価し、結果はハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で示した。フレイルと関連する因子は多変量ロジスティック回帰モデルで解析した。

     最終的に、本研究には715人のCLD患者(中央値年齢67歳、男性49.5%)が含まれた。最も多かった病因はウイルス性(38.7%)であり、続いてアルコール性(22.2%)、代謝機能障害関連(9.5%)であった。Child–Pugh分類およびModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアの中央値はそれぞれ7と9であり、CFSスコアの中央値は3であった。これらの患者のうち、フレイルは137人(19.2%)に認められた。フレイル患者のCFSスコア中央値は6であり、年齢が高く、BMIが低く、肝予備能も低い傾向にあった。

     中央値2.9年の追跡期間中に221人(28.0%)が肝不全などで死亡した。フレイル患者は、非フレイル患者に比べて有意に生存期間が短かった(中央値生存期間:2.4年 vs. 10.6年、P<0.001)。多変量Cox比例ハザード解析の結果、フレイルはCLD患者における独立した予後不良因子であることが示された(HR:1.75、95%CI:1.25~2.45、P=0.001)。

     また、フレイルの決定因子に関して、多変量ロジスティック回帰解析をおこなったところ、高齢、肝性脳症、低アルブミン血症、血小板減少、国際標準比(INR)の延長がフレイルと関連していることが示された。さらにフレイルの有病率はChild–Pugh分類の悪化とともに有意に増加し、Child–Pugh A群では4%、B群では22%、C群では55%の患者にフレイルが認められた。

     著者らは、「本研究から、CLD患者ではフレイルが高頻度に認められ、独立した予後不良因子としての役割を持つことが示された。予後への影響を考慮すると、CLD患者ではフレイルを日常的に評価し、転帰改善を目的とした介入を検討することが望ましい」と述べている。

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    HealthDay News 2025年10月27日
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  • COVID-19

    尿検査+SOFAスコアでCOVID-19重症化リスクを早期判定

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株の多くは軽症だが、重症化する一部の患者をどう見分けるかは医療現場の課題だ。今回、東京都内の病院に入院した842例を解析した研究で、尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)とSOFA(Sequential Organ Failure Assessment score)スコアを組み合わせた事前スクリーニングが、重症化リスク判定の精度を高めることが示された。研究は国立国際医療センター腎臓内科の寺川可那子氏、片桐大輔氏らによるもので、詳細は9月11日付けで「PLOS One」に掲載された。

     世界保健機関(WHO)が2020年3月にCOVID-19のパンデミックを宣言して以来、ウイルスは世界中に広がり、変異株も多数出現した。現在はオミクロン株の亜系統が主流となっており、症状は多くが軽症にとどまる一方、一部の患者は酸素投与や入院を必要とし、死亡する例も報告されている。そのため、感染初期の段階で重症化リスクを予測する方法の確立が求められている。

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     著者らは以前、L-FABPの測定がCOVID-19重症化予測に有用であることを示したが、症例数が少なく、他の指標との併用は検討されていなかった。そこで本研究では、COVID-19患者の入院前スクリーニングとして、L-FABP値と血液検査から多臓器の機能障害を評価するSOFAスコアを組み合わせ、重症化リスクのある患者を特定する併用アプローチの有用性を評価した。

     本研究は単施設の後ろ向き観察研究で、2020年1月29日から2022年4月6日までに国立国際医療センターに入院したCOVID-19陽性患者842名を対象とした。L-FABP値とSOFAスコアは、入院時および入院7日目に評価した。人工呼吸器管理を要した患者、または入院中に死亡した患者を「重症」と定義し、酸素療法を受けるが人工呼吸器を必要としない患者を「中等症」、それ以外を「軽症」と分類した。主目的は、入院時のL-FABP値から7日目の重症度を予測できるかどうかを評価することである。さらに、入院時のL-FABP値とSOFAスコアの予測性能を検討するため、ROC(受信者動作特性)曲線解析を実施した。

     入院時の重症度分類は軽症536名、中等症299名、重症7名であった。入院中に32名が死亡した。入院7日目には、入院時中等症だった55名が軽症に改善する一方で、重症患者は7名から34名に増加した。解析対象患者全員のL-FABP値を入院時と入院7日目の2時点でプロットし、疾患重症度の経過を可視化したところ、入院時にL-FABP値が高かった患者の一部は、軽症から中等症、あるいは中等症から重症へと進行していた。同様に、SOFAスコアでも、入院時にスコアが高かった患者は7日後に重症化する傾向が認められた。

     次にROC曲線解析を行い、L-FABP値とSOFAスコアの組み合わせが、重症例および重症・中等症例の識別にどの程度有効かを評価した。L-FABP値はカットオフ値11.9で重症例を特定する感度が94.1%と高く、SOFAスコアの82.4%を上回り、効果的なスクリーニングツールとなる可能性が示された。さらに、L-FABP値(AUC 0.81)とSOFAスコア(AUC 0.90)を組み合わせると、重症例検出のAUCは0.92に上昇した。このAUCの向上は、SOFAスコア単独との比較では統計学的に有意ではなかったが、L-FABP値単独との比較では有意であった(P<0.001)。一方、重症・中等症例の検出においては、L-FABP値(AUC 0.83)とSOFAスコア(AUC 0.83)の組み合わせによりAUCは0.88となり、いずれか単独の指標よりも有意にAUCを向上させた(それぞれP<0.001)。

     著者らは、本予測モデルにさらなる検証と改良が必要と指摘しつつ、「まず低侵襲な尿検査でL-FABP値を測定し、低リスクの患者は不要な入院を回避する。次にL-FABP値が高い患者を対象にSOFAスコアで重症化リスクを精査し、入院が必要な患者を特定する。これにより、不要な入院の削減や重症化リスクの早期把握が期待され、医療資源の効率的な配分にもつながる」と述べ、二段階のスクリーニング戦略を提案している。

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    HealthDay News 2025年10月27日
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  • 癌

    医療用麻薬の量が睡眠の質に関連か、非がん性慢性疼痛患者の新知見

     オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)はその多くが医療用麻薬に指定され、強い鎮痛作用を持つ。今回、がん以外の慢性的な痛みを抱える患者(非がん性慢性疼痛)において、オピオイドの使用量が睡眠の質と関連する可能性が示された。オピオイド未使用と比較して、高用量のオピオイド使用では総睡眠時間が短く、夜中に目が覚める時間が長い傾向がみられた一方、低用量のオピオイド使用では、睡眠の質が良好な傾向がみられたという。順天堂大学医学部麻酔科・ペインクリニック講座の池宮博子氏らによる研究で、詳細は9月8日付けで「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。

     非がん性慢性疼痛の治療においても医療用麻薬が用いられることがあるが、その使用には慎重な判断が求められる。特に、高用量を長期間使用することの有益性は限定的とされ、睡眠への影響についても様々な報告があり、専門家の間でも一定の見解は得られていない。睡眠は生活の質に大きく影響するため、臨床的意義は大きい。このような背景を踏まえ、著者らは非がん性慢性疼痛で強オピオイドを6か月以上の長期にわたり使用している患者の睡眠状態を明らかにするため、比較研究を行った。

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     本研究では、順天堂大学医学部附属順天堂医院の麻酔科・ペインクリニックを定期受診している慢性の非がん性疼痛患者29人を対象とした。患者はオピオイドの使用状況に基づき、オピオイド未使用群(11人)、弱オピオイド使用群(8人)、強オピオイドを1日モルヒネ換算量60mg未満で使用する群(5人)、および60mg以上で使用する群(5人)の4群に振り分けられた。痛みの強度や不安・抑うつ(HADS)、痛みを悲観的に考える傾向(PCS)、ストレス(JPSS)などの心理状態を質問票で評価した。また、主観的な睡眠状態も質問票であるAISで評価した。そして、総睡眠時間、中途覚醒時間、睡眠効率などの客観的睡眠指標は、ウェアラブル機器を用いて7晩にわたり測定した。睡眠データは、オピオイド未使用群を基準群として線形混合効果モデルで解析した。モデル1は年齢、性別、痛みの強度、測定日で補正し、モデル2ではさらにPCS、HADS、JPSSを加えて補正した。

     弱オピオイド使用群の患者は全員トラマドール塩酸塩を使用していた。強オピオイド群で1日60mg未満の患者はフェンタニル貼付剤またはモルヒネ塩酸塩を使用し、1日60mg以上の患者はフェンタニル貼付剤、オキシコドン塩酸塩、またはモルヒネ塩酸塩を使用していた。

     解析の結果、モデル1では高用量群で総睡眠時間が短く(平均411 vs. 290分、P<0.001)、中途覚醒時間が長く(平均106 vs. 189分、P<0.01)、睡眠効率が低い(平均79.8 vs. 64.0%、P<0.001)ことが示された。モデル2でも同様の傾向は維持されたが、一部で統計的有意性がみられなかった。一方で、低用量群では、モデル2で中途覚醒時間が短く(平均121.4 vs. 47.6分、P<0.001)、睡眠効率が高い(平均77.1 vs. 88.8%、P<0.001)傾向がみられた。

     主観的な不眠症状は、強オピオイド使用群の両群で認められ、とくに高用量群で顕著だった。

     本研究について著者らは、「今回の結果は、非がん性慢性疼痛の患者さんで高用量の強オピオイドを使用する場合、睡眠への影響を評価する重要性を示している。一方、強オピオイド低用量群で見られた、睡眠効率が比較的高く、中途覚醒時間が短いという結果は、オピオイドの鎮痛効果と良好な睡眠を両立させるためには、慎重な用量調整が重要である可能性を示唆している」と述べている。

    肺がんのセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。
    肺がんのリスクを症状と生活習慣からセルフチェック!

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  • 癌

    がんサバイバーに潜む脳卒中リスク、年齢・高血圧・血液検査値がカギ

     がんと診断された人(がんサバイバー)は、そうでない人と比較して脳卒中を発症するリスクが高いことが報告されている。今回、大阪大学の大規模研究で、がんサバイバーにおける脳梗塞の発症率とそのリスク因子が明らかになった。年齢以外に血圧や血液の数値といった身近な健康指標が関わっているという。研究は大阪大学医学部4回生の寺田博昭氏、中村賢志氏、同大学大学院医学系研究科神経内科学講座の権泰史氏らによるもので、詳細は9月7日付けで「THROMBOSIS RESEARCH」に掲載された。

     がんサバイバーは脳卒中のリスクが高く、治療中断や予後不良につながることが報告されている。一般人口と比べ脳卒中関連死亡は約2倍で、臨床上の大きな課題となっている。既存研究では、がんサバイバーにおけるがん診断後1年以内の脳梗塞累積発症率は0.9~4%程度と報告され、著者らが行った日本の大規模研究でも同様の傾向が示された。脳梗塞発症リスクは男性や進行がん、心房細動、高血圧などで高く、脳転移も一因となる可能性がある。がんサバイバーの予後改善に伴い動脈血栓塞栓症への関心が高まっており、さらなる疫学的データの蓄積が求められている。こうした背景を踏まえ、著者らはがんサバイバーにおける脳梗塞の発症率を調査し、この集団におけるリスク因子を特定することを目的とした、後ろ向きの単施設観察研究を実施した。

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     解析対象は、2007年1月1日~2020年12月31日までの間に大阪大学医学部附属病院の院内がん登録に登録されたすべてのがん患者とした。主要評価項目はがん診断後の脳梗塞発症とした。患者は、がん診断時点から1年間追跡され、死亡を競合リスクとして脳梗塞の累積発生率を評価した。リスク因子はFine and Grayの競合リスクモデルを用いて解析し、サブディストリビューションハザード比(SHR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。年齢、性別、既往歴、がんの病期に加え、がん患者の血栓症リスク評価に用いられるKhoranaスコアの構成要素(がん種、白血球数、血小板数)も潜在的な交絡因子として考慮した。

     最終的な解析対象は3万5,862人(年齢中央値 65歳、男性 50.3%)となった。最も多かったがん種は乳がん(10.3%)であり、ついで子宮がん(9.6%)、大腸がん(8.2%)などであった。追跡期間中、188人の患者が脳卒中を発症した。そのうち最も多かったのは脳梗塞で143人(76.1%)が発症し、次いで脳内出血が38例(20.2%)、くも膜下出血が7例(3.7%)であった。がん診断後1年間の脳梗塞累積発生率は0.42%であった。

     次にFine and Grayの競合リスクモデルを用いて脳梗塞発症のリスク因子を分析した。多変量解析では、脳梗塞発症の独立したリスク因子として、高齢(調整後SHR 1.01、95%CI 1.00~1.03)、高血圧(1.59、95%CI 1.10~2.30)、脂質異常症(1.60、95%CI 1.09~2.36)、心房細動(2.42、95%CI 1.54~3.81)、進行がん(1.74、95%CI 1.12~2.70)が同定された。さらに、がん診断時の白血球数(≥11,000/μL:2.36、95%CI 1.35~4.14)および血小板数(≥350,000/μL:2.24、95%CI 1.05~4.79)の上昇も独立した予測因子であった。

     本研究について著者らは、「今回の結果は、高齢、⾼血圧、脂質異常症、心房細動、進行がん、ならびに白血球数および血小板数の上昇が、がんサバイバーにおける脳梗塞の潜在的なリスク因子である可能性を示唆している。今後の研究では、増加するこの集団において高リスク者を特定し、脳梗塞発症を予測するツールの開発を目指すべきである」と述べている。

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    HealthDay News 2025年10月20日
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  • 高齢者

    高齢者のポリドクター研究、最適受診施設数は2〜3件か

     複数の医療機関に通う高齢者は多いが、受診する施設数が多ければ多いほど恩恵が増すのだろうか。今回、高齢者を対象とした大規模コホート研究で、複数施設受診が死亡率低下と関連する一方、医療費や入院リスクが上昇することが明らかとなった。不要な入院を予防するという観点からは最適な受診施設数は2〜3件とされ、医療の質と負担を両立させる上での示唆が得られたという。研究は慶應義塾大学医学部総合診療教育センターの安藤崇之氏らによるもので、詳細は9月1日付で「Scientific Reports」に掲載された。

     高齢者では、複数の併存疾患を抱える人も少なくない。多疾患は死亡率や要介護、入院率、医療費の増加と関連しており、高齢化社会を特徴とする先進国の医療制度に大きな課題をもたらしている。特に日本では、多疾患を持つ高齢者の増加に伴い、「ポリドクター(polydoctoring、複数の医師による診療)」と呼ばれる現象が社会的な問題となっている。「ポリドクター」は、異なる医師や医療施設が患者を管理することで、ケアの分断や医療費の増加を招くリスクがある点が懸念されている。

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     著者らは以前、高齢者のポリドクターの背景として、眼疾患や骨粗鬆症、前立腺疾患、変形性関節症といった慢性疾患が関連することを示した。しかし、ポリドクターが患者の転帰にどのように影響するかは十分に解明されていない。そこで著者らは、日本の大規模保険請求データベースを用い、多疾患を抱える高齢者の定期通院施設数(RVF)と、死亡や入院などの転帰との関連を明らかにするため、後ろ向きコホート研究を実施した。

     本研究では、DeSCヘルスケア株式会社が提供するデータベースを用い、75~89歳の複数の慢性疾患を有する患者233万8,965人を解析対象とした。追跡期間は2014年4月~2022年12月であった。主要評価項目は全死亡率とした。副次評価項目は全入院、外来ケアで予防可能な疾患(ACSC)による入院、外来医療費が含まれた。いずれの評価項目も多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、補正ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。各群の比較はRVFが1施設の群を基準として行った。

     解析対象の中央値年齢は78歳で、参加者の58%が女性だった。RVFの中央値は2施設、併存疾患の中央値は5つであった。外来医療費の中央値は37万1,230円だった。追跡期間中に33万8,249人(14.5%)が死亡し、122万201人(52.2%)が入院した。そのうち29万1,376人(12.5%)はACSCによる入院であった。

     全死亡に対する多変量Cox比例ハザードモデルでは、RVFが0施設の群(定期受診なし)が最も死亡率が高く、RVFの施設数が増えるにつれて生存率は改善した。RVFが0施設の参加者の死亡リスクは最も高く、ハザード比(HR)は3.23(95%CI 3.14~3.33、P<0.0001)であった。一方、RVFが5施設以上の参加者では死亡リスクが最も低く、HRは0.67(95%CI 0.62~0.73、P<0.0001)であった。ACSCによる入院では、2~3施設の群で入院率が最も低く、RVFが5施設以上になると再び入院率が上昇するU字カーブを描いた。

     外来医療費についても、RVFの施設数が増えるにつれて費用も増加する傾向が見られた。RVFが5施設以上の参加者では、RVFが1施設の参加者に比べ外来医療費が3.21倍(95%CI 3.17~3.26、P<0.0001)に増大した。

     本研究について著者らは、「ポリドクターは死亡率を低下させる一方で、入院率や医療費の増加とも関連しており、ACSCによる入院を最小化する最適な受診施設数は2~3施設であることが示された。これらの結果は、高齢化社会において、ケアの連携や医療資源の管理を改善しつつ、ポリドクターのメリットとコストのバランスをとる戦略の必要性を示している」と述べている。

     なお、RVFが5施設以上になると再び入院率が上昇する理由については、関与する医療機関が多すぎるとケアの継続性が損なわれ、全体的なメリットが減少する可能性を指摘している。

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  • ニュース

    歯みがきで命を守る?手術2週間前の口腔ケアが肺炎予防に効果

     高齢患者や基礎疾患を持つ患者においては、術後肺炎をはじめとする感染症対策が周術期管理上の大きな課題となる。今回、愛媛大学医学部附属病院の大規模後ろ向き解析で、術前2週間以上前からの体系的な口腔ケアが術後肺炎の発症抑制および入院期間短縮に有効であることが示された。研究は愛媛大学医学部附属病院総合診療サポートセンターの古田久美子氏、廣岡昌史氏らによるもので、詳細は9月3日付けで「PLOS One」に掲載された。

     近年、周術期管理や麻酔技術の進歩により、高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者でも侵襲的手術が可能となった。その一方で、合併症管理や入院期間の短縮は依然として課題である。術後合併症の中でも肺炎は死亡率や医療費増大と関連し、特に重要視される。口腔ケアは臨床で広く行われ、病原菌抑制を通じて全身感染症の予防にも有効とされる。しかし、既存研究は対象集団が限られ、最適な開始時期は明確でない。このような背景を踏まえ、著者らは術前口腔ケアについて、感染源除去や細菌管理、歯の脱落防止のために少なくとも2週間の実施が必要であると仮説を立てた。そして、手術2週間以上前からの口腔ケアが術後肺炎予防に有効かを検証した。

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     本研究では、2019年4月~2023年3月の間に愛媛大学医学部附属病院で手術および術後管理を受けた成人患者1,806人を対象とした。患者は口腔ケア介入の時期に基づき、手術の少なくとも2週間前に体系的な口腔ケアを受けた群(早期介入群)と、手術の2週間以内に口腔ケアを受けた、もしくは口腔ケアを受けなかった群(後期介入群)の2群に分類した。主要評価項目は、院内感染症のDPCコードを用いて特定された術後感染症(術後肺炎、誤嚥性肺炎、手術部位感染症、敗血症など)の発生率とした。副次評価項目は術後入院期間および入院費用であった。選択バイアスを最小化するために、傾向スコアマッチング(PSM)および逆確率重み付け(IPTW)が用いられた。

     解析対象1,806人のうち、257人が早期介入群、1,549人が後期介入群だった。年齢、性別、手術の種類など14の共変量を用いたPSMの結果、253組のマッチペアが特定された。PSMおよびIPTW解析の結果、早期介入群では、後期介入群に比べて術後肺炎の発生率が有意に低いことが示された(PSM解析:リスク差 −5.08%、95%CI −8.19~−1.97%、P=0.001;IPTW解析:リスク差 −3.61%、95%CI −4.53~−2.68%、P<0.001)。

     さらに、IPTW解析では早期介入群の入院期間は後期介入群より短く、平均で2.55日短縮されていた(95%CI −4.66~−0.45日、P=0.018)。医療費に関しても早期介入群で平均5,385円の減少が認められた(95%CI -10,445~-325円、P=0.037)。PSM解析では同様の傾向が認められたものの、統計的に有意ではなかった。

     著者らは、「本研究の結果は、手術の少なくとも2週間前から体系的な術前口腔ケアを実施することで、術後肺炎の発症を有意に減少させ、入院期間を短縮できることを示している。さまざまな統計解析手法でも一貫した結果が得られたことから、標準化された術前口腔ケアプロトコルの導入は、手術成績の改善に有用な戦略となり得る」と述べている。

     本研究の限界については、測定されていない交絡因子が存在する可能性があること、単一の施設で実施されたため、研究結果の一般化には限界があることなどを挙げている。

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  • 骨粗鬆症

    ビタミンD欠乏症が10年間で有意に減少、骨折リスク低減に期待

     骨や筋肉の健康を守るうえで欠かせない栄養素、ビタミンD。その不足は骨粗鬆症や骨折リスクの増大と関わることが知られている。今回、日本の大規模調査で、一般住民におけるビタミンD欠乏の割合がこの10年で有意に減少したことが明らかになった。血中ビタミンD濃度も上昇しており、将来的に骨粗鬆症や骨折の発症リスク低減につながる可能性があるという。研究は東京大学医学部附属病院22世紀医療センターロコモ予防学講座の吉村典子氏らによるもので、詳細は8月27日付で「Archives of Osteoporosis」に掲載された。

     ビタミンDは骨密度の維持に不可欠だが、世界的に血中25(OH)D濃度の低値が報告されており、世界的にビタミンD欠乏は広くみられ、とくに南アジア・中東で顕著である。さらに閉経後女性では欠乏率が高く、東アジアでも90%に達するとの報告がある。日本においても閉経後女性のビタミンD不足は深刻である。国内で実施されている「Research on Osteoarthritis/Osteoporosis against Disability(ROAD研究)」は、運動器疾患の予防を目的とした地域住民コホート研究である。2005~2007年調査では、ビタミンD不足・欠乏が9割以上と高頻度に認められ、その傾向は男性よりも女性で顕著であった。その後も同一地域で追跡調査が継続されており、本研究では調査開始から10年後のデータを用いて、ビタミンD欠乏の10年間の推移を明らかにすることを目的とした。

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     ROAD研究のベースライン調査は2005~2007年に実施され、東京都板橋区(都市部)、和歌山県日高川町(山間部)、和歌山県太地町(沿岸部)の3地域から参加者を募った。都市部の参加者についてはベースライン時に骨密度測定が行われていなかったため除外し、本研究の解析対象は山間部および沿岸部の参加者1,690名とした。血液サンプルは1,683名(男性595名、女性1,088名)から採取され、血中25DおよびインタクトPTH(副甲状腺ホルモン)濃度を測定した。参加者は面接形式の質問票に回答し、骨密度測定とX線検査も受けた。第4回調査は2015~2016年に実施され、1,906名(男性637名、女性1,269名)が参加した。全参加者はベースライン調査と同一の評価を受けた。ビタミンD欠乏および不足は、それぞれ血中25D濃度が20ng/mL未満、20ng/mL以上30ng/mL未満と定義された。

     平均血中25D濃度は、ベースラインで23.3 ng/mL、第4回調査では25.1 ng/mLとなり、有意な上昇が認められた(P<0.001)。ビタミンD不足および欠乏の有病率は、ベースラインでそれぞれ52.9%と29.5%であったのに対し、第4回調査では54.8%と21.6%となり、ビタミンD欠乏が有意に減少していた(P<0.001)。この傾向は男女ともに一貫して認められた。

     骨密度に関しては、腰椎(L2–4)および大腿骨頸部のいずれも、第4回調査の方がベースライン調査より有意に高値を示した(腰椎P<0.001、大腿骨頸部P<0.05)。また第4回調査では、男女とも腰椎(L2–4)の骨粗鬆症有病率がベースラインより有意に低下していた(P<0.01)。

     本研究について著者らは、「10年間隔の地域住民調査においてビタミンD欠乏症の有病率が有意に減少した。この好ましい傾向は、今後の骨粗鬆症および骨折発症率の低下に寄与する可能性がある」と述べている。

     一方で、30~50代の女性では依然としてビタミンD欠乏症の割合が高く、この世代が今後閉経期を迎えて骨粗鬆症リスクの高い年齢層に入ってきた際には、将来的に骨粗鬆症の増加につながる可能性があると警鐘を鳴らしている。著者らは、この点を公衆衛生上の重要な課題として指摘した。

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  • ニュース

    ロボット支援直腸がん手術、術後1日目のCRPで合併症予測が可能に

    術後合併症や感染症への対応には、早期発見と迅速な対処が求められる。今回、直腸がんに対するロボット支援下直腸手術(RARS)後の合併症リスクが、術後1日目のC反応性蛋白(CRP)値で予測できるとする研究結果が報告された。術後早期のCRP測定が、高リスク患者の見極めや迅速な介入に役立つ可能性があるという。研究は国立病院機構福山医療センター消化器・一般外科の寺石文則氏らによるもので、詳細は8月28日付けで「Updates in Surgery」に掲載された。

     RARSは、骨盤内の限られた視野で高い操作性を発揮し、従来の腹腔鏡手術や開腹手術と同等かそれ以上の成績を示すことが報告されている。しかし、依然として術後合併症は患者予後を左右する大きな課題であり、早期に高リスク患者を見極めることが重要だ。炎症マーカーであるCRPは大腸手術後の合併症予測に有用とされるが、ロボット支援手術における術後早期のCRP値の予測的価値は十分に検討されていない。このような背景を踏まえ著者らは、RARS後の合併症リスク因子を解析し、特に術後1日目のCRP測定の有用性を評価することを目的とした後ろ向きコホート研究を実施した。

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     本解析では、岡山大学病院にて、2020年9月から2025年1月にかけて、原発性直腸がんに対して待機的にロボット支援手術を受けた連続症例を対象とした。血清CRP値は、術前および術後1日目と4日目に測定された。主要評価項目は、手術後30日以内に発生したすべての合併症の有無であり、Clavien–Dindo(C–D)分類に基づいて評価した。群間比較は、連続変数についてはt検定またはMann-Whitney U検定、カテゴリ変数についてはカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を用いた。また、単変量解析で有意な因子や臨床的に重要な因子を多変量ロジスティック回帰モデルに投入し、術後1日目のCRPを含む独立した合併症予測因子を特定した。さらに、ROC解析で最適カットオフ値を算出し、Youden指数で評価した。

     追跡期間中に直腸がんに対してロボット支援手術を受けた患者117名が本研究の対象となった。平均年齢は66歳で、男性は59.0%を占めた。術後合併症は26名(22.2%)に発生し、腸閉塞(10例)、腹腔内膿瘍および吻合不全(7例)、リンパ漏(2例)などが認められた。手術後30日以内の死亡はなかった。単変量解析により、これらの合併症は高齢、ASAスコア(米国麻酔学会の全身状態評価)の上昇、術前補助療法、ストーマ造設、手術時間の長さ、術後1日目・4日目のCRP値上昇などと有意に関連することが示された。これらの因子を含めた多変量ロジスティック回帰分析を行った結果、術後1日目のCRP値は術後全体の合併症の強力かつ独立した予測因子であることが明らかとなった(調整オッズ比 0.77、95%信頼区間〔CI〕 0.63~0.93、P<0.01)。

     5分割交差検証を用いたROC解析では、AUCは0.735(ブートストラップ法によるバイアス補正95%CI 0.544~0.848)であった。術後1日目のCRPの最適カットオフ値は5.63 mg/dLで、この値でYouden指数は最大(0.484)となり、感度 0.615、特異度 0.868を示した。これらの結果から、術後1日目のCRP測定は、直腸がんに対するロボット支援直腸手術後の合併症を予測する有用かつ独立したバイオマーカーであることが示唆された。

     本研究について著者らは、「術後1日目のCRP値測定を術後管理に組み込むことで、高リスク患者の早期発見が可能となり、迅速な介入や最終的な手術成績の改善につながる可能性がある」と述べている。

     また著者らは、今後の研究において前向きかつ多施設での検証が必要であることを強調するとともに、CRPと他のバイオマーカーを組み合わせることで、予測精度をさらに高められる可能性があることにも言及している。

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  • 禁煙

    デジタルピアサポートアプリがニコチンガムの禁煙効果を後押し

     ニコチンガムは禁煙に一定の効果を示すものの、その禁煙成功率は十分とは言えない。今回、企業の健康保険組合加入者を対象とした非ランダム化比較試験で、ニコチンガムにデジタルピアサポートアプリを組み合わせることで、禁煙成功率が有意に向上することが示された。研究は、北里大学大学院医療系研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は「JMIR mHealth and uHealth」に8月19日掲載された。

     日本では禁煙治療が保険適用だが、禁煙成功率は高いとは言い難い。平成29年度の厚生労働省の調査によると、ニコチン依存症管理料を算定した患者における5回の禁煙治療完了率は全体で34.6%にとどまっていると報告されている。一方で、グループでの交流を促進し、ユーザー同士で禁煙へのモチベーションを高めるデジタルピアサポートアプリは禁煙に有益である可能性がある。しかしながら、デジタルピアサポートアプリとニコチン代替療法(ニコチンガム)を統合した禁煙プログラム効果は、これまで検討されてこなかった。このような背景から、著者らはニコチン代替療法(ニコチンガム)にデジタルピアサポートアプリを追加することで、企業の健康保険組合加入者で現喫煙者の禁煙率を高めることができるかどうかを評価するために、12週間の非ランダム化比較試験を実施した。

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     参加者は、健康保険組合に加入する3社(電子・保険・通信)の現喫煙者を、プログラム開始約1か月前から20日間募集した。介入期間中はデジタルピアサポートアプリ(みんチャレ、A10 Lab Inc.)に常時アクセス可能であった。このアプリでは、最大5人までの匿名グループチャットが可能で、写真やコメントを含む活動報告を共有することで交流や禁煙の取り組みを促した。参加者は自己選択で、(1)ニコチンガム単独(単独群)、または(2)デジタルピアサポートアプリとニコチンガムの併用(併用群)の2つの介入群のいずれかを選択した。単独群を基準とした禁煙のオッズ比(OR)は、人口統計学的および喫煙関連変数を調整したロジスティック回帰分析により推定した。

     最終的な解析対象は451人(単独群191人、併用群260人)であった。単独群と比較して、併用群は平均年齢が高く、喫煙歴が長い傾向がみられ、また禁煙の主な動機として「家族の健康」を挙げる割合が高かった。

     12週間時点での禁煙成功率は、単独群38.7%に対し併用群59.2%で有意に高かった。また、年齢、性別、喫煙歴、喫煙本数、禁煙の目的や意欲といった変数を調整し、ロジスティック回帰分析を行った結果、禁煙成功のORは2.41(95%信頼区間2.07~2.81)であった。

     さらに、禁煙成功率とデジタルピアサポートアプリの使用期間およびグループチャットへの投稿頻度との関連を検討した。解析の結果、アプリの使用期間が長いほど、また投稿頻度が高いほど禁煙成功率は有意に高く、いずれも正の関連が認められた(傾向性P<0.001)。

     著者らは、本研究が自己申告データに依存している点などの限界を認めつつも、「標準的なニコチン代替療法に加えてデジタルピアサポートアプリを併用した現喫煙者では、禁煙率が有意に上昇することが確認された。この知見は、禁煙介入におけるデジタルツールの実装可能性を示す予備的エビデンスである」と述べている。

     なお、禁煙成功率とデジタルピアサポートアプリの使用期間・投稿頻度に正の関連が見られた理由について、著者らは、アプリをより積極的に利用し、頻繁に投稿した人は、チャット機能を通じて自身の成功体験を共有したり、周囲から承認やポジティブなフィードバックを得たりする機会が増えたことが影響しているのではないかと考察している。

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