デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとはどんな病気か?
手足を動かす筋肉の組織が、徐々に壊れていく筋ジストロフィーの一種で、男児にのみ発症する進行性の筋萎縮症です。まれにターナー症候群などの染色体異常で女児に発症する場合もあります。筋ジストロフィーの中で一番多いとされています。
〇デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因は?
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを引き起こしているのは、X遺伝子の劣性遺伝が原因の場合が多いです。
遺伝形式としてはX連鎖性遺伝で、女性はX染色体が2本あるため、保因者であっても発症せず、男児が生まれた場合、どちらのX染色体が遺伝したかによって発症の可能性が変わります。また、遺伝子の突然変異によって発症することもあるとされています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、乳児期には症状が現れず、3~5歳ごろから運動機能が徐々に低下し、走るのが遅い・転びやすい・ジャンプができないなどの症状がでてきます。
さらに筋力が低下すると、しゃがんでから立ち上がる動作がスムーズにできなくなります。床に手をつき、すこしずつ足を前に動かしてからだの重心の下に持ってきて、手をひざに当てて背を伸ばし、大腿部に手を当てて立ち上がれる動作が、自分のからだをよじ登っているようにも見えることから、登攀性起立と呼ばれています。
10歳ころには歩行が困難になり、車いすでの生活になります。20歳ほどになると、筋力低下により上手く呼吸できなくなるため、人工呼吸器を使って呼吸します。
以前は、呼吸不全や心不全のため20歳前後で亡くなる人がほとんどでしたが、呼吸補助療法の導入・改善などで平均寿命は延びています。
主な症状としては、進行する筋力低下・仮性肥大(ふくらはぎがししゃものような形に太くなる)・関節拘縮(関節が固まる)・ガワーズ徴候(膝に手をつかないと立ち上がれない)・歩行障害・呼吸機能低下・心臓機能低下があります。
また、中には軽度~重度の知的障害がみられることもあり、自閉傾向を示す場合もあるようです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法とは?

〇リハビリテーションの重要性
筋力の低下を止めることはできなくても、筋力を維持して、進行を遅らせることは可能です。
早期からストレッチなどを行うことで、現状の筋力を維持していきます。激しい運動やリハビリは筋肉や関節が損傷して、残されている機能に障害が出てしまうので、理学療法士による指導のもとで、適切な強度のリハビリを行いましょう。
国家試験である理学療法士の試験でもデュシェンヌ型筋ジストロフィーで正しいのはどれか?というテスト問題や、duchenne型筋ジストロフィーステージ別の可能な動きについての問題などがあります。
ステージは8段階に分けられ、さらに細かく分類もされており、リハビリの強度や判断のむずかしさが分かります。
さらに、リハビリに取り組むことで症状の悪化するスピードを遅らせるだけではなく、本人のやる気の向上も期待できます。
また、車いすなどに長く座っていると背骨が横に曲がってしまう側弯になってしまいます。側弯が強くなると内臓も圧迫してしまい、他にも痛みなど様々な症状がでてきます。
起立台や足につける補助具などを使って、可能な限り歩行することや、立位訓練を行って姿勢を維持させて側弯を予防します。
さらに、筋力低下が進行して、腕の機能が低下しても、手指の機能は最後まで残るので、文字を書いたり食事をしたりという日常動作をできるだけ維持していきます。

〇非侵襲的人工呼吸器の普及
筋力低下による呼吸不全には、近年、気管内挿管や気管切開をしないで、鼻マスク・鼻プラグ・マウスピース・フェイスマスクを使って呼吸をうながす非侵襲的陽圧換気療法(NPPVまたはNIPPV、NIVと略されます)が、ICUから在宅看護に至るまで普及され、気管を切開する人工呼吸器より主流になっています。
家族や介護者のケアもしやすく、不安が軽減するとともに、本人の医学的・身体的・社会心理的発達に望ましい環境を作ります。
この呼吸ケアは2006年に日本呼吸器学会からNPPVガイドラインが公表され、今までは不可能と考えられていた在宅での人工呼吸療法が可能になりました。
在宅看護については、ちょっとしたことから病状が急変・悪化したり、合併症を併発する可能性があるため、歩行が可能な間は6ヶ月に1度、歩行が困難になってからは3ヶ月に1度、内臓機能障害などが現れ出してからは1ヶ月に1度、専門の医療機関を受診して検査をすることが望ましいでしょう。

まとめ
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、あまり身近に感じられない病気かもしれません。しかし、自分や知人がもしかしたら遺伝子的要因を持っているかもしれません。
子供がデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症する、周りの子供が発症するという可能性も否定はできません。
適切な対処法を知り、病気を受け入れることが大切です。無理のない範囲でできる限りのケアをしてあげましょう。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのセルフチェック方法に関連する情報を掲載しています。どういった症状がこの病気に関する症状と考えられているのか。医師の診断が一番ですが、自分でチェックできる項目をまとめています。
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Burnt-out MASLD、肝癌切除後予後を左右する新たな高リスク表現型か
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)では、病態の進行に伴って肝脂肪が消失する「Burnt-out MASLD」と呼ばれる状態に至ることがある。今回、肝細胞癌(HCC)患者931例を対象とした研究で、Burnt-out MASLDを有する患者では肝切除後の再発および生存予後の悪化と独立して関連することが示された。術後のリスク層別化に役立つ新たな高リスク表現型として注目される。研究は、埼玉医科大学国際医療センター消化器外科(肝胆膵外科)の渡邉幸博氏らによるもので、詳細は5月29日付の「Liver International」に掲載された。
MASLDは、肥満や2型糖尿病の増加を背景に、近年ではHCCの主要な原因の一つとして注目されている。一方、MASLDは脂肪沈着や線維化の程度がさまざまで、病態の幅が広いことも特徴だ。中でも、病態の進行に伴って肝脂肪が減少し、高度線維化や肝硬変を伴う「Burnt-out MASLD」は、その代謝性の背景が見えにくく、従来は原因不明の肝硬変として扱われることもあった。しかし、Burnt-out MASLDが単に進行した肝障害を反映した状態なのか、それともHCC術後の再発や生存に影響する独自の病態なのかは明らかではなかった。こうした背景から著者らは、MASLD関連HCC患者におけるBurnt-out MASLDの臨床的意義を検討した。
【MASLDの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、2007~2025年に埼玉医科大学国際医療センターでHCCに対する根治的肝切除を受けた連続症例(931例)を対象に後ろ向き解析を行った。背景肝(がん以外の肝組織)の病理所見については、2人の肝病理専門医が独立して評価し、脂肪沈着と線維化の程度を組み合わせて4つの表現型に分類した。Burnt-out MASLDは、高度線維化(F3~F4)と脂肪沈着5%未満を特徴とし、他の慢性肝疾患の原因を除外した上で定義した。主要評価項目として、4つの表現型と無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)との関連を多変量Cox比例ハザードモデルで解析した。副次評価項目では、Clavien–Dindo分類に基づく術後合併症を評価した。
解析の結果、Burnt-out MASLDを有する患者は、他の病因群と比べても最も予後不良だった。Burnt-out MASLD群の3年/5年RFSはそれぞれ21%/14%、3年/5年OSは65%/43%で、non-burnt-out MASLDに加え、肝炎ウイルスやアルコールに関連するHCCと比べても最も低かった。
MASLD関連HCC患者に限定した解析では、脂肪沈着が保たれ線維化が軽度な群を基準とした場合、Burnt-out MASLDはHCC再発リスクの上昇(ハザード比〔HR〕 1.87、95%信頼区間〔CI〕 1.10~3.17、P=0.020)および全死亡リスクの上昇(HR 3.38、95%CI 1.57~7.28、P=0.002)と独立して関連していた。一方、脂肪減少のみを認める群や、高度線維化のみを認める群では、無再発生存期間や全生存期間との有意な関連は認められず、脂肪減少と高度線維化が併存するBurnt-out MASLDのみが高リスク表現型として抽出された。
肝機能が保たれた患者や高度線維化症例に限定した解析においても、概ね同様の傾向が確認され、Burnt-out MASLDの不良予後は単なる肝機能低下や線維化の進行だけでは説明できなかった。一方、Burnt-out MASLDは術後合併症や90日死亡率の増加とは関連しなかった。
著者らは、脂肪減少のみ、あるいは高度線維化のみではなく、両者が併存するBurnt-out MASLDがHCC切除後の予後に影響する独立した高リスク表現型であることが示されたと報告した。Burnt-out MASLDの把握は、MASLD関連HCC患者における術後のリスク層別化やフォローアップ戦略の最適化につながる可能性があるとしている。
なお、本研究は単施設の後ろ向き解析であり、結果の一般化には制限がある。また、一部の生活習慣因子や分子情報は解析に含まれておらず、Burnt-out MASLDの病態機序については今後の検討が必要とされる。
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HealthDay News 2026年6月29日
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潰瘍性大腸炎の粘膜治癒、歯みがき頻度と関連
潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸粘膜に慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患(IBD)の一つである。今回、日本人のUC患者275人を対象とした研究で、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒(内視鏡で大腸粘膜の炎症が認められない状態)の達成と関連することが示された。一方、残存歯数との関連は認められなかった。研究は、済生会今治病院内科の八木専氏、愛媛大学総合健康センターの古川慎哉氏らによるもので、詳細は5月28日付の「Digestive Diseases and Sciences」に掲載された。
近年、口腔内細菌叢と腸内細菌叢が相互に影響し合う「口腔-腸軸(oral–gut axis)」への関心が高まっており、口腔環境とIBDとの関連を示す報告が増えている。歯周病やう蝕(虫歯)、歯の喪失はUCやクローン病との関連が報告されているほか、歯みがきは口腔内の細菌量や炎症を減らし、腸内環境や全身の炎症反応にも影響を及ぼす可能性があると考えられている。一方で、口腔ケアとUCの病勢との関連については十分に検討されていない。また、UCでは粘膜治癒が長期寛解や良好な予後につながる重要な治療目標とされている。こうした背景から著者らは、UC患者における残存歯数および歯みがき頻度と、粘膜治癒との関連を検討した。
【潰瘍性大腸炎の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、2015~2019年に愛媛県内の医療機関で診療を受けたUC患者275人を対象に横断解析を行った。質問票を用いて生活習慣や口腔の健康状態を調査し、残存歯数は20本以下、21~27本、28本の3群、歯みがき頻度は1日1回以下、2回、3回以上の3群に分類した。粘膜治癒はMayo内視鏡スコア(MES)0と定義し、ロジスティック回帰分析を用いて関連を検討した。多変量解析では年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、プレドニゾロン(ステロイド薬)使用の有無、罹病期間、病変範囲などで調整した。
対象患者の年齢中央値は50.7歳で、58.2%が男性だった。粘膜治癒(MES 0)を達成していた患者は24.7%だった。
残存歯数と粘膜治癒との間に有意な関連は認められなかった。一方、歯みがき頻度別にみると、粘膜治癒率は1日1回以下の群で15.4%、1日2回の群で24.8%、1日3回以上の群で32.1%と、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒率は上昇する傾向を示した。
年齢や性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、プレドニゾロン使用、罹病期間、病変範囲などを調整したロジスティック回帰分析でも、歯みがき頻度は粘膜治癒と独立して関連していた(調整オッズ比 2.87、95%信頼区間 1.19~7.29、傾向性のP値=0.021)。
本研究では、日本人UC患者を対象に、歯みがき習慣と粘膜治癒との関連が検討された。その結果、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒と関連する一方、残存歯数との関連は認められなかった。著者らは、残存歯数は過去の口腔状態を反映する指標であり、現在の炎症活動とは一致しない一方、歯みがき頻度は口腔内環境を介して腸に影響する「口腔-腸軸」に関与する可能性があると考察している。また、UCでは症状と内視鏡所見が必ずしも一致しないことから、口腔衛生は主に粘膜炎症に関与している可能性が示唆される。
著者らは、「本研究は横断研究であり因果関係を示すものではないが、歯みがきは患者自身が日常的に実践できる簡便な生活習慣である。今後、前向き研究や介入研究で関連が確認されれば、口腔ケアがUC患者の病勢コントロールを支援する新たなアプローチとなる可能性がある」と述べている。今回の結果については、消化器疾患の管理における口腔環境の重要性を示唆するものと強調した。
なお、本研究では、歯みがき習慣や残存歯数が自己申告であることから情報バイアスの可能性があることなどを研究の限界として挙げている。
潰瘍性大腸炎のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
潰瘍性大腸炎は主にお腹の症状が中心となる炎症性の病気です。潰瘍性大腸炎の症状に焦点を当てながら潰瘍性大腸炎のセルフチェックに役立つ情報をご紹介していきます。
もしかしたら?症状からみる潰瘍性大腸炎のセルフチェック方法参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年6月29日
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禁煙成功には“自信”が重要? 働く世代対象の禁煙支援研究
禁煙支援では、ニコチン依存の強さが禁煙成功に影響するとされているが、本人の「禁煙できる」という自信も重要かもしれない。今回、日本の企業向け禁煙プログラム参加者を対象とした研究で、禁煙への自信の高さが、加熱式たばこ利用者を含め禁煙成功と関連する可能性が示された。研究は北里大学大学院医療系研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は5月19日付の「Journal of Medical Internet Research(JMIR)」に掲載された。
スマートフォンアプリやニコチンガム・パッチを用いた禁煙支援が広がる中、禁煙成功に関わる要因への関心が高まっている。ニコチン依存度に加え、「禁煙できる」という心理的要因の重要性も指摘されているが、加熱式たばこ利用者を含めた検討は限られていた。こうした背景から、著者らは企業向け禁煙プログラム参加者を対象に、ニコチン依存度や禁煙への自信と禁煙成功との関連を検討した。
【禁煙治療の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、日本の38社で実施された企業向け禁煙プログラムに参加した労働者のデータを用いて研究を行った。この禁煙プログラムでは、12週間、デジタル・ピアサポートアプリ「みんチャレ」(A10Lab Inc.)と、参加者の喫煙量に応じて提供量を調整したニコチンガム・ニコチンパッチを併用した。アプリでは匿名グループチャットを通じ、参加者同士が禁煙の進捗や写真、コメントなどを共有した。ニコチン依存度は起床後最初の喫煙までの時間で評価(30分以内を高依存、30分超を低依存と定義)し、禁煙への自信は0~10点で評価(中央値を基準に高低2群に分類)した。解析では、紙巻きたばこ利用者、加熱式たばこ利用者、両者の併用者ごとに、ニコチン依存度や禁煙への自信と禁煙成功との関連を検討した。禁煙成功は、4週間以上の禁煙継続と定義した。
解析対象は2,143人で、平均年齢は46.5歳、約90%が男性だった。全体の禁煙成功率は53.8%だった。禁煙成功群では、禁煙への自信が高い傾向を示したほか、アプリ投稿頻度やグループメンバーからの承認数も多かった。
禁煙への自信が高い参加者では、禁煙成功率は63.4%で、自信が低い参加者の47.6%を上回った。自信が低い群と比べた禁煙成功の調整オッズ比(OR)は1.81(95%信頼区間〔CI〕 1.55~2.12)だった。この関連は、紙巻きたばこ利用者、加熱式たばこ利用者、併用者のいずれでも認められた。一方、ニコチン依存度と禁煙成功との有意な関連が認められたのは紙巻きたばこ利用者のみだった。
また、紙巻きたばこ、加熱式たばこ、併用のいずれでも、「ニコチン依存度が低く、禁煙への自信が高い群」で最も禁煙成功率が高かった。さらに、ニコチン依存度が高くても、禁煙への自信が高い群では高い禁煙成功率がみられた。
著者らは、たばこの種類を問わず、禁煙への自信の高さが、禁煙成功と関連する重要な要因である可能性が示唆されたとしている。
なお、著者らは、本研究の限界点として、禁煙成功を自己申告で評価しており客観的検証を行っていないことに加え、対象の大半が日本の大企業に勤務する男性だったため、結果の一般化には注意が必要と述べている。
肺がんのセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。
肺がんのリスクを症状と生活習慣からセルフチェック!参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年6月22日
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地域活動への参加、ワーク・エンゲージメントと関連――労働者1.4万人を追跡
ボランティアや地域活動、趣味・学習活動などに参加している人は、仕事にも前向きに取り組めるのだろうか。今回、日本の労働者約1万4,500人を追跡した研究で、地域活動への参加とワーク・エンゲージメント(仕事に関連したポジティブで充実した心理状態)の高さとの関連が示された。特に地域貢献活動(ボランティアや地域活動)では、年数回程度の参加でも関連が認められ、参加頻度が高いほど、ワーク・エンゲージメントが高い傾向が示唆された。研究は産業医科大学産業保健経営学の植月三咲子氏、永田智久氏らによるもので、詳細は5月14日付の「Journal of Occupational Health」に掲載された。
地域活動への参加は、身体的・精神的健康の向上や幸福感の増加と関連することが知られている。特に高齢者を対象とした研究では、抑うつ症状やフレイルリスクの低下、生活満足度の向上などとの関連が報告されている。一方で、地域活動が仕事にどのような影響を及ぼすかについては十分に明らかになっていない。こうした背景から、著者らは日本の労働者を対象に、地域活動への参加、特に参加頻度とワーク・エンゲージメントとの関連を検討した。
【治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、日本のさまざまな業種で働く20~65歳の労働者1万4,526人を対象に、2022年をベースライン、翌2023年を追跡調査とする前向きコホート研究を実施した。地域活動は「地域貢献活動」と「趣味・学習活動」に分類し、参加頻度を「週1回以上」「月1~3回」「年数回」「参加なし」の4群で評価した。ワーク・エンゲージメントは日本語版UWES-9で評価し、多変量回帰分析を用いて関連を検討した。解析では年齢や性別、世帯収入、業種に加え、職場の社会的支援、仕事の裁量権、外向性、ベースライン時点のワーク・エンゲージメントなどを調整した。
解析対象は1万4,526人(平均年齢45.2歳、男性57.4%)だった。地域貢献活動への参加頻度は、週1回以上が2.3%、月1~3回が3.8%、年数回が21.2%で、72.7%は参加していなかった。趣味・学習活動については、週1回以上が5.4%、月1~3回が6.2%、年数回が12.7%で、75.7%は参加していなかった。
多変量解析の結果、地域貢献活動への参加は、翌年のワーク・エンゲージメントの高さと有意に関連していた。具体的には、週1回以上参加する群(B=1.18)、月1~3回参加する群(B=1.01)、年数回参加する群(B=0.46)のいずれでも有意な関連が認められ、参加頻度が高いほど、ワーク・エンゲージメントが高い傾向が示唆された。一方、趣味・学習活動では、週1回以上参加する群のみで有意な関連がみられた(B=0.69)。
なお、外向性や職場の社会的支援、仕事の裁量権に加え、ベースライン(2022年時点)のワーク・エンゲージメントを調整した後も、これらの関連は維持された。
著者らは、地域活動を通じた社会的つながりの形成や、自己効力感、楽観性、レジリエンスといった心理的資源の向上が、ワーク・エンゲージメントとの関連に関与している可能性があると考察した。また、外向性や職場の社会的支援、仕事の裁量権などを考慮した後も関連が認められたことから、地域活動への参加とワーク・エンゲージメントとの関連は、性格や職場環境の違いだけでは説明できない可能性が示された。
一方で著者らは、仕事への意欲が高い人ほど地域活動にも参加しやすかった可能性を否定できないとしており、因果関係については慎重な解釈が必要だと指摘している。
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震災後の住まい、6年後の孤立リスクに差
災害後の生活再建では、住まいの確保が重要な課題となる。今回、東日本大震災後の東北地域住民を対象とした大規模研究により、震災から6年後の住居形態が社会的孤立と関連していたことが分かった。特に男性では、賃貸住宅で孤立リスク上昇、被災地で住宅再建した場合にはリスク低下との関連が示された。研究は、岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座(いわて東北メディカル・メガバンク機構兼務)の事崎由佳氏らによるもので、詳細は5月13日付の「BMJ Public Health」に掲載された。
東日本大震災では、多くの住民が家屋被害や転居を経験し、慣れ親しんだ地域や人間関係の喪失による社会的孤立が懸念されてきた。社会的孤立は、社会的ネットワークの縮小や他者との接触不足を示す指標であり、心血管疾患、抑うつ症状、認知機能低下などとの関連が報告されている。震災後の研究でも、孤立が抑うつ症状や死亡リスク上昇と関連することが示されている一方、被災後の住居形態と孤立の関係を長期的に検討した研究は限られていた。こうした背景から、著者らはいわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査を用い、震災6年後の住居形態と社会的孤立との関連を検討した。
【治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、いわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査(TMM CommCohort Study)に参加した人のうち、岩手県住民1万6,610人(男性5,828人、女性1万782人、平均年齢59.4±11.1歳)を対象に解析を行った。震災6年後の住居形態を、震災前からの自宅、仮設・みなし仮設住宅、賃貸住宅など8種類に分類した。社会的孤立はLubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を用いて評価し、12点未満を孤立と定義した。住居形態と社会的孤立との関連について、性別および65歳未満/65歳以上で層別化した上で、多変量ロジスティック回帰分析により調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。解析では、喫煙、飲酒、既往歴、就労状況、抑うつ症状に加え、ベースライン時点の社会的孤立も調整因子として考慮した。
震災6年後の時点で、社会的孤立の割合は男女とも賃貸住宅居住者で高く、男性48.0%、女性36.0%だった。男性では、仮設・みなし仮設住宅や災害公営住宅でも社会的孤立が多くみられた。
多変量解析の結果、男性では賃貸住宅に住む人で社会的孤立リスク上昇との関連が認められ、特に65歳未満で顕著だった(OR 1.87、95%CI 1.06~3.28)。一方、65歳未満で被災地に住宅を再建した男性では、社会的孤立リスク低下との関連が示された(OR 0.41、95%CI 0.20~0.86)。
また、65歳以上の男性では、仮設・みなし仮設住宅居住者で社会的孤立リスク上昇との関連がみられたが、この関連はベースライン時点の社会的孤立を調整すると有意ではなくなった。女性では、65歳以上で親族・知人宅に住む人を除き、住居形態と社会的孤立との有意な関連は認められなかった。
著者らは、災害後の住居形態が社会的孤立の重要な決定因子となる可能性があり、その影響は性別や年齢によって異なると結論付けている。その上で、災害復興時の住宅政策では、住居確保だけでなく、地域のつながりやコミュニティの維持、脆弱な集団への配慮といった社会的側面を組み込む重要性を強調している。
なお、著者らは本研究の限界点として、住居形態と社会的孤立を同時点で評価しており因果関係を断定できないこと、観察研究であるため残余交絡を否定できないこと、さらに東日本大震災特有の状況であり他災害への一般化に限界があることなどを挙げている。
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保護者の料理スキル、子どものレジリエンスや思いやり行動と関連
子どもの心の健康には、家庭環境や親子関係が大きく関わることが知られている。今回、日本の小学生と保護者を対象とした縦断研究により、保護者の料理スキルが高いほど、子どものレジリエンス(困難への対処力)や向社会的行動(思いやり行動)が高い傾向にあることが示された。さらに、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連に一部関与している可能性も示唆された。研究は、東京科学大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野の谷友香子氏らによるもので、詳細は5月1日付の「BMC Psychology」に掲載された。
思春期は多くの精神疾患が発症し始める時期とされ、この時期にレジリエンスや向社会的行動を育むことは、その後のメンタルヘルスに重要と考えられている。これまで、家族の結び付きや親の関わりなどの家庭環境が、子どもの心理的発達に関与することが報告されてきた。なかでも食事や調理は、親子のコミュニケーションや家族のつながりを生む日常的な活動とされる。日本の「おふくろの味」という言葉にも家庭料理への情緒的価値観が表れている。こうした背景から、著者らは保護者の料理スキルと子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。
【治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、東京都足立区の全69公立小学校に通う小学4年生と保護者を対象とした「A-CHILD研究」のデータを解析した。2018年のベースライン調査参加者を2年間追跡(追跡率87%)し、最終的に3,641組を解析対象とした。保護者の料理スキルを4群に分け、2年後の小学6年時点における子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。解析ではベースライン時点の心理指標や家庭背景因子を調整したほか、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連を媒介するかも解析した。
多変量解析の結果、ベースライン時点で保護者の料理スキルが高いほど、2年後の子どものレジリエンスおよび向社会的行動のスコアが高いことが示された。交絡因子を調整した解析では、料理スキルが最も低い群と比べ、最も高い群ではレジリエンススコアが8.75点高く(95%信頼区間〔CI〕 7.38~10.1)、向社会的行動スコアが9.51点高かった(95%CI 7.68~11.3)。これらの関連は、ベースライン時点の各スコアを調整後も維持され、料理スキルが高い群ほどスコアが段階的に高くなる傾向が認められた。さらに、この関連は世帯収入や子どもの性別によらず一貫していた。
また、保護者の料理スキルが高い群では、子どもの野菜摂取頻度や親子で一緒に料理する頻度、学校生活について親子で会話する頻度なども高かった。この関連について媒介分析を行ったところ、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが関連の一部を説明していた。
著者らは、「保護者の料理スキルは単なる調理技術ではなく、家庭内の関係性や生活習慣を通じて子どもの精神的発達に影響し得る『修正可能な家庭資源』であり、調理教育などの支援を通じて思春期のメンタルヘルス向上につながる可能性がある」と述べている。
なお、著者らは本研究の限界として、保護者1名による評価や自己報告バイアスの可能性、食事の質の未評価、残余交絡や因果関係の不確実性、COVID-19の影響、単一地域調査による一般化可能性の制約などを挙げている。
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救急搬送後の自殺再企図、若年と過量服薬がリスク因子に
自殺企図で救急搬送された患者の自殺再企図は、初期対応時に予測できるのだろうか。今回、国内3施設で救急入院患者を追跡した研究により、若年であることと過量服薬(オーバードーズ)が、自殺再企図のリスク因子となる可能性が示された。初回自殺企図時に過量服薬を行った患者では、再企図リスクが約2.5倍高かったという。研究は獨協医科大学精神神経医学講座の佐々木太郎氏、古郡規雄氏らによるもので、詳細は4月29日付の「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。
自殺企図歴は、その後の自殺再企図や自殺死亡の強い予測因子とされる。これまで若年者では再企図が多く、性別による自殺行動の違いも報告されてきたが、その背景には自殺手段の違いが関与する可能性が指摘されている。一方、日本では救急搬送後の自殺再企図に関するリアルワールドの多施設縦断データは限られており、特に過量服薬がその後の再企図リスクに及ぼす影響は十分に検討されていなかった。こうした背景から著者らは、自殺企図で救急入院した患者において、年齢および初回自殺企図時の過量服薬と自殺再企図との関連を検討するため、多施設後ろ向きコホート研究を実施した。
【うつ病の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究の対象は、2020年3月~2025年3月に日本国内3施設の救急外来へ自傷または過量服薬後に搬送され、自殺企図と臨床的に判断された1,038人とした。研究は、獨協医科大学病院、自治医科大学附属病院、八戸市立市民病院で行われた。事故による過量服薬や非自殺性自傷は除外した。対象患者を追跡し、初回救急入院後に医療介入を要した自殺再企図までの時間を評価した。Kaplan–Meier法およびCox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、初回自殺企図時の過量服薬と自殺再企図リスクとの関連を解析した。さらに、過量服薬単独例に限定した感度解析も行った。
追跡期間中に、医療介入を要した自殺再企図は58件確認された。Kaplan–Meier解析では、女性および39歳以下の患者で自殺再企図の累積リスクが高かった。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析では、40歳以上は自殺再企図リスク低下が認められた一方(HR 0.52、95%信頼区間〔CI〕 0.29~0.94、P=0.030)、初回自殺企図時の過量服薬は自殺再企図リスク上昇と有意に関連していた(HR 2.54、95%CI 1.32~4.90、P=0.005)。一方、性別は多変量解析では独立した関連を示さなかった。これらの結果は、過量服薬単独例に限定した感度解析でも同様だった。
著者らは、救急入院時に把握可能な年齢や初回自殺手段が、自殺再企図リスクの層別化に有用となる可能性を示したとしている。特に、過量服薬で自殺企図した若年患者では、退院後の重点的なモニタリングや支援が重要になる可能性があると述べている。また、過量服薬単独例でも再企図リスクとの関連が維持された背景として、過量服薬を含む複合的な自殺手段では致死性が高く、その後の再企図として観察されにくくなる生存バイアスの影響がある可能性を指摘している。
本研究の限界として、精神疾患の重症度や自殺企図歴、退院後の精神科治療などの影響を十分に調整できていない可能性を挙げている。また、再企図は参加施設のカルテに基づいて把握しているため、他院受診例などを十分に捉えられていない可能性もある。
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HealthDay News 2026年6月8日
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乳がん・子宮頸がん検診、働く女性の受診行動と性格特性に関連か
乳がんや子宮頸がんの早期発見には定期的な検診が重要だが、働く女性の受診率向上は課題となっている。今回、日本の就業女性を対象とした研究で、一般に健康管理と結びつきやすいとされる誠実性や不安と関連する神経症傾向が高い女性ほど、乳がんおよび子宮頸がん検診の受診率が低い傾向にあることが示された。研究は横浜市立大学医学部看護学科の佐藤みほ氏と、福島県立医科大学看護学部の佐藤菜保子氏によるもので、詳細は4月28日付の「JMIR Cancer」に掲載された。
日本では乳がん・子宮頸がんの罹患率および死亡率が高い一方、検診受診率は他のOECD加盟国と比べて低い。女性の就業率上昇に伴い働く女性の受診率向上が課題となる中、時間的制約に加え、心理社会的要因も健康行動に影響する可能性が指摘されている。こうした背景から著者らは、就業女性における乳がん・子宮頸がん検診受診と性格特性やリスク認知との関連を検討した。
【子宮がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターが実施する日本家計パネル調査(JHPS)および慶應義塾家計パネル調査(KHPS)のデータを用いた二次解析を行った。対象は70歳以下の就業女性1,142人で、2019~2022年の縦断データを解析した。乳がん検診(マンモグラフィ)および子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)の受診有無を評価し、性格特性は日本語版Ten-Item Personality Inventory(TIPI-J)で測定した。また、リスク回避傾向、主観的健康状態、精神的健康、婚姻状況、子どもの有無、介護役割の有無、学歴、雇用状態(正規・非正規)、居住地域などもあわせて解析した。少なくとも2回の回答が得られた参加者を対象に、一般化線形混合モデルを用いて乳がん・子宮頸がん検診受診と各因子との関連を検討した。
解析の結果、乳がん検診および子宮頸がん検診のいずれにおいても、誠実性と神経症傾向が高い女性ほど受診率が低かった。乳がん検診では、誠実性(オッズ比〔OR〕 0.86、95%信頼区間〔CI〕 0.77~0.97、P=0.01)、神経症傾向(OR 0.87、95%CI 0.77~0.98、P=0.02)が関連し、子宮頸がん検診でも同様の傾向がみられた(誠実性:OR 0.88、95%CI 0.79~0.98、P=0.02、神経症傾向:OR 0.88、95%CI 0.78~0.99、P=0.04)。
著者らは、一般に自己管理能力の高さと結びつく誠実性が高い女性ほど乳がん・子宮頸がん検診の受診率が低かった点について、仕事に加えて家庭でも多くの役割を担う日本人女性では、がんの予防行動よりも仕事や家族を優先する可能性があると考察した。また、神経症傾向が高い女性では、がんと診断される可能性に対する不安が強く、検診受診をためらう可能性が示唆された。
本研究の限界として、自己記入式質問票による想起バイアスや社会的望ましさバイアスの可能性、欠測データ除外による選択バイアス、がん特異的ではなく一般的なリスク回避傾向を評価した点、医療への信頼や受診アクセス障壁に関する情報が含まれていない点などを挙げた。今後は、がん検診受診に影響する構造的要因および心理社会的要因について、さらなる検討が必要だとしている。
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HealthDay News 2026年6月8日
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国産手術ロボットhinotoriによる大腸がん手術、94例の初期成績を報告
ロボット支援手術の普及が進む中、日本初の国産手術支援ロボット「hinotori」の大腸外科領域における臨床データが報告された。今回、京都大学医学部附属病院でhinotoriによるロボット支援大腸手術を受けた大腸がん患者94例を解析した結果、開腹移行例やClavien-Dindo分類Grade III以上の重篤な術後合併症は認められなかった。著者らは、hinotoriを用いた大腸がん手術は安全かつ実施可能であることが示されたとしている。報告は京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏、板谷喜朗氏らによるもので、4月25日付の「Journal of the Anus, Rectum and Colon」に掲載された。
ロボット支援手術は近年、世界的に普及が進んでおり、大腸外科領域でも腹腔鏡手術と比べて良好な短期・長期成績を示す報告が蓄積されている。日本でもロボット支援直腸がん手術が2018年、結腸がん手術が2022年にそれぞれ保険収載されたが、これまでのエビデンスの多くは「da Vinci Surgical System(DVSS)」によるものだった。hinotori Surgical System(hinotori)は、川崎重工業とシスメックスの合弁会社メディカロイドが開発した日本初の国産手術支援ロボットで、名称は手塚治虫氏の『火の鳥』に由来する。同システムは2020年に泌尿器科領域で臨床導入され、その後は消化器外科や婦人科領域にも導入が広がっている。こうした背景から著者らは、hinotoriを用いたロボット支援大腸手術の臨床成績を検証した。
【大腸がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、2023年8月~2025年11月に京都大学医学部附属病院でhinotoriを用いたロボット支援大腸手術を受けた連続症例を対象に、単施設後ろ向き観察研究を実施した。術者はいずれも、日本内視鏡外科学会技術認定医で、既存のロボット支援手術システム(DVSS)による大腸手術を40例超経験していた。解析は、患者背景、手術関連因子、短期成績について、結腸がん群と直腸がん群に分けて実施した。
解析対象は94例で、このうち結腸がんが53例、直腸がんが41例だった。結腸がん群の手術時間中央値は255分だった。術後合併症はClavien-Dindo分類Grade IIのイレウスを1例(1.9%)に認めたが、絶食で改善し、Grade III以上の重篤な合併症は認められなかった。
一方、直腸がん群の手術時間中央値は327分だった。41例のうち、側方リンパ節郭清や他臓器合併切除、再発病変切除を伴う高難度手術(beyond-TME)を7例に実施した。術後合併症はGrade IIの排尿障害を1例(2.4%)に認め、経口抗菌薬で改善したが、Grade III以上の重篤な合併症は認められなかった。
いずれの群でも開腹移行例や術後30日以内の再手術例はなく、術後在院日数中央値は結腸がん群で10日、直腸がん群で12日だった。
著者らは、大腸外科領域におけるロボット支援手術の有効性は既に示されている一方、hinotoriに関する臨床データは限られていると指摘した。その上で、本研究では開腹移行例やGrade III以上の重篤な合併症を認めず、既報と概ね同等の短期成績が得られたとして、hinotoriを用いた大腸手術の安全性と実施可能性が示されたと考察した。一方、手術時間は既報よりやや長かったが、高難度症例を含んでいたことや、hinotoriを初めて使用する術者が多かったことが影響した可能性があるとしている。
また、現在はDVSSが手術支援ロボット市場で大きなシェアを占めているものの、hinotoriのような新規プラットフォームの登場は健全な競争につながるとの見方を示した。
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HealthDay News 2026年6月1日
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不眠症と心房細動の関連、全国178万人データで検証
不眠症は多くの人が経験する身近な症状であり、生活の質の低下に加え、さまざまな健康リスクとの関連も指摘されている。今回、日本の全国規模データを用いた解析から、不眠症は心房細動の発症リスク上昇と有意に関連することが示され、特に若年層や女性でその傾向が強いことが明らかになった。睡眠の状態が心臓のリズム異常と関連する可能性を示した研究として注目される。研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学分野の増田拓郎氏、江尻健太郎氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は4月20日付の「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。
不眠症は臨床現場で頻繁にみられる疾患の一つで、死亡リスクの増加や幅広い慢性疾患との関連が指摘されている。一方、心房細動は高齢者に多くみられる代表的な不整脈で、脳梗塞や心不全などのリスクにもつながる重要な疾患だ。不眠症と心血管疾患との関連を検討した研究は多いものの、心房細動との関連を検討した研究は比較的少なく、一般集団における影響は十分に明らかになっていない。そこで著者らは、日本の全国規模のリアルワールドデータを用いて、不眠症とその後の心房細動発症との関連を検証した。
【不眠症の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします解析対象は、2014年4月~2023年8月にDeSCデータベースへ登録された、心房細動を含む心血管疾患の既往がない約178万人で、不眠症と診断されていた人とそうでない人に分けて、その後の新規心房細動の発症リスクを比較した。DeSCデータベースには、診療報酬請求情報に加え、健診データや処方情報などが含まれる。主要評価項目は心房細動の新規発症とし、不眠症の有無による発症リスクをCox比例ハザードモデルで比較した。解析では、年齢や性別に加え、高血圧や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、飲酒、身体活動などの影響も調整した。
対象者178万764人のうち、21万6,919人(12.2%)に不眠症が認められた。追跡期間中央値3.7年の間に、2万5,779人(1.4%)が新たに心房細動を発症した。不眠症のある人では、ない人に比べて心房細動発症率が高く(10,000人年当たり57.8 vs 35.4)、各種因子を調整した解析でも、心房細動の発症リスクは有意に高かった。調整後ハザード比は1.14(95%信頼区間1.10~1.18)で、リスクは14%上昇していた。サブグループ解析でも全体と同様の傾向がみられたが、65歳未満および女性では、不眠症と心房細動発症との関連がより強い傾向が示された(P for interaction=0.01、0.03)。
著者らは、本研究により、不眠症を単なる睡眠の悩みにとどまらず、心房細動のリスク因子として捉える重要性が示されたと述べている。その上で、心房細動予防の観点から睡眠管理にも目を向ける必要があり、さらなる研究が求められるとしている。また、不眠症に伴う自律神経の乱れや炎症、ホルモンバランスの変化が、心房細動発症に関与する可能性も指摘している。
本研究の限界点として、日本人中心の保険・健診データを用いた観察研究であり、診断がICD-10コードに依存している点や残余交絡の可能性などが挙げられる。
慢性心不全のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。
心不全のセルフチェックに関連する基本情報参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年6月1日
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がんリスクに職業差、背景に「見つかりやすさ」の違いも――日本の大規模産業医学研究
職業は、がんリスクに影響するのだろうか。今回、日本の大規模研究で、男性では運輸関連や一部のブルーカラーの職業でがんリスクが高い傾向にあり、医師や教師などの専門職で低いといった傾向が示された。女性でも胃がんや乳がんなどで職業ごとの差がみられたという。ただし、この違いは単純な発症リスクだけではなく、健康診断の受診機会による「見つかりやすさ」や生活習慣の違いも影響している可能性がある。研究は東海大学医学部衛生学公衆衛生学の深井航太氏らによるもので、詳細は4月14日付で「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載された。
職業はがんリスクに影響する重要な要因とされるが、これまでの研究は特定の有害物質や高リスク産業に偏り、幅広い職業分類で部位別リスクを包括的に検討した研究は少ない。また、男女差や社会経済的要因、検診による「見つかりやすさ」の違いも十分に考慮されていない。日本は長期雇用により同一職業での曝露が蓄積しやすく、職場で行われるがん検診などにより職業ごとにがんの発見機会が異なる特徴を持つ。本研究は、日本の大規模データを用い、職業別・男女別・部位別のがんリスクを評価し、生活習慣や社会経済的要因、検出バイアスも考慮しながら、職業によるがん格差の実態解明を目的とした。
【がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究では、2005〜2023年に労災病院グループで実施された入院患者の病職歴調査(Inpatient Clinico-Occupational Database of Rosai Hospital Group:ICOD-R)のデータを用い、多施設による大規模症例対照研究が行われた。労災病院グループは全国34病院からなるネットワークで、診断は医師により国際基準に基づいて記録されている。対象は、がん患者約14万7,000人と、年齢などを一致させた対照群約27万8,000人で構成された。職業は最も長く従事した職種を基準に評価し、喫煙や飲酒などの生活習慣を調整した上で、条件付きロジスティック回帰分析により性別ごとに解析が行われた。
解析の結果、職業によってがんリスクに差が認められ、その傾向は男性でより顕著であった。男性では、肉体労働や運輸関連職でリスクの上昇がみられた一方、医師や教師などの専門職では低い傾向が示された。女性においても職業ごとの差は認められたが、全がんでの差は比較的小さく、がんの種類ごとに異なるパターンがみられた。なお、職業分類ごとの部位別がんリスクの詳細は、論文本文で男女別にヒートマップで示されている。
部位別にみると、男性では専門職で肺がん、胃がん、大腸がんなどのリスクが一貫して低い一方、販売や接客、飲食関連、運輸、建設などの職種で肺がんや大腸がん、肝がんのリスク上昇がみられた。女性では全体として職業差は限定的であったが、電気機械の組立作業に従事する人では、肺がんや胆道がん、胃がんのリスク上昇がみられるなど、特定のがん種で職業との関連が認められた。
ただし、こうした職業差の背景には、「見つかりやすさ」の違いが影響している可能性が指摘された。前立腺がんでは事務系職でリスクが高くみられたが、これは健康診断でPSA検査を受ける機会の違いにより、無症状の段階で発見されやすいことが影響している可能性がある。
著者らは、職業によるがんリスクの差について、実際の発症リスクだけでなく、生活習慣や健康診断の受診機会の違いも反映している可能性があると考察した。今回の知見について、特定の職業が一律に高リスクであることを示すものではなく、職業環境や健康管理機会の違いががんリスクの見え方に影響している可能性を示唆するものと位置づけている。
なお、本研究の限界点として著者らは、病院ベースの症例対照研究であることによる選択バイアスの可能性に加え、転職歴が加味されていないことや、身体活動など一部情報が含まれていない点を挙げている。
肺がんのセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。
肺がんのリスクを症状と生活習慣からセルフチェック!参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年5月25日
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女性アスリートの月経不順増加、婦人科受診拡大後も続く傾向
女性アスリートでは、利用可能エネルギー不足(LEA)に伴い月経周期異常が生じ、健康や競技力に影響することが知られている。今回、日本の女性オリンピック選手を対象とした12年間の調査で、月経不順が増加傾向にある一方、婦人科受診率も大幅に上昇していたことが報告された。婦人科受診率は向上したものの、なお残る健康管理上の課題が浮き彫りとなった。研究はハイパフォーマンススポーツセンター・国立スポーツ科学センター産婦人科医の能瀬さやか氏らによるもので、詳細は4月12日付の「Women’s Health」に掲載された。
女性アスリートでは月経関連症状や月経周期異常が高頻度にみられ、競技活動やパフォーマンス、回復過程にも影響することが報告されている。また、LEAによって健康への影響がみられた状態であるスポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)は月経周期異常と関連し、長期的には骨・心血管系など多方面に影響し得る。しかし、既存研究の多くは横断的かつ欧米中心であり、長期的な変化や地域差は十分に検討されていない。そこで本研究では、日本の女性オリンピック選手を対象に、12年間・7大会にわたるデータを用い、月経関連症状と月経周期異常の有病率および婦人科受診率の経時的変化を検討した。
【月経困難症の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします日本の女性オリンピック選手を対象に、2008年北京大会から2020年東京大会(2021年開催)までの夏季・冬季計7大会に参加した選手のデータを解析した。対象は女性954人で、このうちホルモン製剤を継続使用していた選手を除いた786人を主な解析対象とした。婦人科に関する自己記入式アンケートを用い、月経周期の状態、月経関連症状、薬剤使用状況などを評価した。解析では大会ごとの経時的変化をロジスティック回帰分析で検討し、さらに同一選手が複数大会に出場することによる影響を考慮するため、一般化推定方程式(GEE)を用いた補正解析も行った。以上の方法により、本研究は反復横断研究デザインで長期的な傾向を評価した。
月経周期異常は全体の約22.5%に認められ、その内訳は月経不順13.9%、続発性無月経5.3%、初経遅延1.5%、原発性無月経1.8%などであった。12年間の経時的変化をみると、月経不順の有病率は有意に増加していた(オッズ比〔OR〕 1.24、95%信頼区間 1.13~1.37、P<0.001)。この傾向は同一選手の反復参加を考慮した解析(GEE)でも確認された(OR 1.25、P<0.001)。一方、続発性無月経では増加傾向が示唆されたものの統計学的有意差には至らず、原発性無月経や初経遅延には明確な変化は認められなかった。
月経随伴症状では、月経困難症が24.3%、月経前症候群(PMS)が66.9%、過多月経が9.2%に認められた。PMSは最も高頻度にみられた症状であったが、いずれも経時的な有意な変化は認められなかった。一方で月経困難症は主解析では増加傾向にとどまったものの、GEE解析では有意な増加が確認された(OR 1.11、P=0.005)。さらにPMSの個別症状では、怒りっぽさ、むくみ、体重増加などに明確な変化はみられなかった一方、乳房の張りは有意に減少していた。
また、月経周期異常の割合は競技特性によって差がみられ、特に新体操や器械体操、フィギュアスケート、陸上長距離などの審美系や持久系競技で無月経の割合が高い傾向にあった。婦人科受診歴については、全対象で解析した結果、受診率は12.4%から65.3%へと約5倍に増加していた(OR 1.42、P<0.001)。
著者らは、婦人科受診率が上昇した一方で月経不順や月経困難症の増加傾向が持続していることから、医療アクセス改善のみでは十分な健康管理につながらない可能性があると指摘している。月経周期異常は骨や心血管系を含む長期的健康リスクとも関連することから、早期対応と選手・指導者双方の理解と連携が重要と述べている。
本研究の限界として、症状評価が自記式質問票に基づくため想起バイアスの可能性があることに加え、月経周期異常の原因を特定できないこと、対象が日本人エリート女性選手に限られる点を挙げている。
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月経困難症 症状別のセルフチェックに関する基本情報を掲載しています。症状の重さやどういったことが診断の基準レベルになるのか。生理・生理前アプリや内膜症に関連する病気。まとめた情報を紹介しています。
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HealthDay News 2026年5月25日
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歯周病とMASLDの関連、女性で顕著――閉経前後で差
歯周病は口腔内の慢性炎症として知られ、全身の代謝異常との関連も指摘されている。今回、健診受診者を対象に歯周病と代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の関連を検討した結果、女性では両者に有意な関連が認められ、特に閉経前後の年代でその傾向が顕著であることが示された。研究は愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の齋藤瑞季氏、嶋﨑義浩氏らによるもので、詳細は4月8日付で「Clinical and Experimental Dental Research」に掲載された。
脂肪性肝疾患は、一部で肝硬変や肝細胞がんへ進行する可能性があるほか、脳卒中や虚血性心疾患など心血管疾患リスクの上昇とも関連することが知られている。MASLDは従来「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていたが、近年、代謝異常との関連性をより反映した名称へと改訂された。その診断には肥満や糖尿病、高血圧などの代謝異常の有無が考慮される。生活習慣とMASLDの関連は広く報告されており、MASLDの発症や進展に歯周病が関与する可能性も示唆されている。しかし、近年までは主にNAFLDを対象とした研究が中心であり、MASLDとの関連や性差を含めた検討は十分ではなかった。こうした背景のもと、本研究では健診受診者を対象に、歯周病とMASLDの関連および性差について検討が行われた。
【脂肪肝の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究は、愛知県の健康診断受診者を対象とした横断研究である。2014年4月~2015年3月に一般社団法人愛知健康増進財団の健康診断を受けた40~74歳を解析対象とした。肝疾患既往、B型肝炎表面抗原(HBs抗原)陽性、摂取アルコール量が20g/日以上の参加者などは除外した。脂肪肝は腹部超音波で判定し、心代謝リスク因子の基準を満たす例をMASLDと定義した。歯周病は地域歯周疾患指数(CPI)で評価し重症度別に分類した。喫煙や運動習慣などを調整し、MASLDとの関連をロジスティック回帰分析で検討、男女別解析や女性の年齢層別解析、性差の交互作用も評価した。
解析対象は6,184人で、このうち1,431人(23.1%)がMASLDと診断された。女性では、歯周病が中等度および重度の群で、歯周病がない群に比べてMASLDのオッズ比がそれぞれ1.40(95%信頼区間:1.04~1.89)、1.64(同1.04~2.59)と有意に高かった。
一方、男性では歯周病とMASLDの関連は調整後に有意ではなかった。女性では50~59歳でのみ有意な関連が認められ、他の年齢層では認められなかった。さらに、非飲酒者に限定した解析でも同様に女性で有意な関連が確認された。
また、性別と歯周病の影響には乗法的交互作用が認められたが、加法的交互作用は認められなかった。これは、歯周病とMASLDの関連の強さには性差があったが、リスクそのものには明確な差は認められなかったことを示す。
著者らは、こうした性差の背景として女性ホルモンの影響を挙げている。特に50~59歳は閉経移行期に相当し、エストロゲンの低下が代謝機能や炎症反応に影響を及ぼす可能性があるとされ、この時期に関連がより強く認められた可能性が示唆されている。
なお、本研究の限界として、横断研究であるため因果関係を明らかにできないことに加え、歯周病評価の精度や超音波による脂肪肝診断の限界、社会経済因子の未調整、単施設データによる一般化可能性の制約などを挙げている。
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膵臓がんの発症リスク、血糖と生活習慣で予測可能か
膵臓がんは早期発見が難しく、診断時にはすでに進行していることが少なくない。今回、静岡県の健診データとレセプトデータを統合した約64万人規模の解析により、血糖指標であるHbA1cや生活習慣が膵臓がんリスクと関連することが明らかになった。研究は、静岡県立総合病院消化器内科の佐藤辰宣氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏(現・名古屋医療センター臨床研究センター)、静岡社会健康医学大学院大学の田中仁啓氏らのグループによるもので、その詳細は4月6日付で「Pancreatology」に掲載された。
膵臓がんは予後不良ながんとして知られる。一方で、早期に発見できれば5年生存率は80%を超えるとされるが、実際には多くの患者が進行期で診断される。これは、初期には自覚症状に乏しく、血液検査や画像検査でも小さな病変を捉えにくいためである。そのため、症状出現前に発見するには、高リスク者を特定し、重点的に経過観察する戦略が重要となる。しかし、これまでのリスク因子研究では、単独の因子に着目したものが多く、生活習慣や代謝指標を含めて包括的に評価した報告は限られていた。日本では全国規模の健診制度により、血圧、BMI、血液検査、HbA1cなどの情報が広く収集されているが、これらをレセプトデータと統合して膵臓がんリスクを検討した研究は多くない。そこで本研究では、健診データを活用して膵臓がんに関連する因子を再評価し、高リスク者の抽出や将来の早期発見につなげることを目的とした。
【すい臓がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、静岡県国保データベース(SKDB)の2023年度版データ(2012年4月1日~2021年9月30日)を用い、後ろ向き地域住民コホート研究を実施した。対象はコホート期間中に健診を受診した成人で、インデックス日はコホート登録から1年以上経過後に受けた初回健診日とした。膵臓がんまたは他の悪性腫瘍の既往がある者、観察期間が1年未満の者は除外した。主要アウトカムはICD-10コードに基づく膵臓がん発症とし、生活習慣、BMI、血圧、薬剤使用、併存疾患は、健診データ、質問票、処方情報、ICD-10コードをもとに定義した。膵臓がん発症との関連はcause-specific Coxモデルで評価し、モデルの妥当性や多重共線性も確認した。さらに、逆因果の影響を減らすため、インデックス日から2年以内の発症例を除外した感度解析と、年齢・性別によるサブグループ解析も行った。
解析対象は64万1,979人で、追跡期間中央値6.8年の間に4,313人が膵臓がんを発症した。年間発症率は1000人年あたり1.124(95%信頼区間 1.091~1.158)だった。解析の結果、膵臓がんリスクは男性で高く、加齢とともに大きく上昇していた。さらに、代謝異常、膵疾患関連因子、生活習慣のそれぞれが膵臓がん発症と関連していた。特に高血糖との関連では、糖尿病の診断の有無そのものよりも、HbA1c値が膵臓がんリスクとより明瞭な用量反応関係を示した。HbA1c 8%以上ではハザード比(HR)2.85(95%信頼区間 2.29~3.56)に達し、HbA1c 6.0~6.5%程度でもHR 1.37とリスク上昇が認められた。加えて、慢性膵炎、膵嚢胞性病変、高血圧、鉄欠乏性貧血、AST高値、習慣的喫煙も独立したリスク因子だった。一方、脂質異常症やLDLコレステロール高値は膵臓がんリスクと逆相関を示した。
その一方で、糖尿病の診断自体、BMI、大量飲酒は多変量解析では有意な関連を示さなかった。代謝関連因子や生活習慣因子の影響は60歳以上でより顕著であり、インデックス日から2年以内の発症例を除外した感度解析でも、結果は概ね一貫していた。
著者らは、行政請求データと健診データを統合した大規模解析により、日本の一般住民において、代謝因子、生活習慣、膵疾患関連因子が膵臓がん発症に関与することが示されたと述べている。特に、糖尿病の有無そのものではなくHbA1cがリスクと関連したことから、血糖管理の状態がより重要な指標となる可能性が示唆された。また、膵嚢胞性病変は特に強い関連を示しており、画像検査で偶然発見された膵嚢胞もサーベイランス対象として重要である可能性がある。こうした因子を組み合わせてリスク層別化を行うことで、膵臓がんの早期発見戦略の構築につながることが期待される。
ただし、本研究には限界もある。保険請求データに基づく解析であるため診断誤分類の可能性があり、また潜在する膵臓がんそのものによる代謝変化など、逆因果の影響を完全には排除できない点が挙げられる。
糖尿病のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。
糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年5月18日
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性的・ジェンダー少数者の健康格差、心理的・身体的暴力被害が背景か
性的・ジェンダー少数者(SGM)では、非SGMに比べて高血圧や精神疾患などの健康問題のリスクが高い可能性がある。今回、日本のミレニアル世代を対象とした研究で、SGMの高血圧リスクは非SGMの約3倍と推定され、こうした健康格差の背景に暴力被害が関与している可能性が示された。研究は筑波大学人文社会系の松島みどり氏らによるもので、詳細は「Public Health」に3月27日掲載された。
SGMは非SGMに比べて身体的・精神的健康状態が不良であることが報告されており、その背景には差別や心理的・身体的暴力など、少数者であることによって受ける「マイノリティストレス」があると考えられている。しかし、暴力被害がSGMと非SGMの健康格差をどの程度説明するのかは十分に検討されておらず、研究の多くは欧米に集中している。そこで研究グループは、LGBTQをめぐる議論が広がった時代に成長した日本のミレニアル世代(1980年代前半から1990年代半ばに生まれた人たち)に着目し、SGMと非SGMの健康格差とその要因を分析した。
【治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究は、日本の大規模インターネット調査「JACSIS study」第3波(2022年9月12日~10月19日)のデータを用いた横断研究である。楽天インサイトのパネルを対象としたオンライン調査から、ミレニアル世代の男性5,868人(SGM 986人、非SGM 4,882人)、女性6,253人(SGM 907人、非SGM 5,346人)を解析対象とした。出生時の性別と性自認、性的指向に関する質問からSGMを定義した。健康問題については、若年層で比較的多い高血圧、精神疾患、口腔疾患、慢性疼痛、アレルギーの5つを対象とし、現在診断されているかを自己申告で評価した。ロジスティック回帰でSGMと非SGMの健康格差を推定し、Fairlie分解法を用いて社会経済状況、医療アクセス、健康行動、心理的・身体的暴力被害が格差にどの程度寄与するかを解析した。
対象者のうちSGMは男性16.8%、女性14.6%だった。SGMは非SGMに比べ、検討したすべての健康問題と関連していた。高血圧のオッズ比は男性で3.02、女性で3.83、精神疾患は男性で2.87、女性で1.87だった。
各疾患の有病割合の差(SGMと非SGMの実際の有病率の差)は、男性で11~19%、女性で4~13%で、いずれもSGMで高く、特に精神疾患で大きかった。実際の有病率をみると、男性では高血圧がSGM25.1%、非SGM7.6%、精神疾患がSGM25.7%、非SGM7.1%など、いずれの疾患もSGMで高値であった。女性でも同様にSGMで有病割合は高いものの、その差は男性より小さかった。
また、SGMは心理的・身体的暴力を経験した割合も高く、男性では心理的暴力がSGM42.3%、非SGM20.8%、身体的暴力がSGM39.8%、非SGM17.4%だった。女性でも同様にSGMで暴力経験割合は高かった。
これらの健康格差の要因を分解すると、心理的・身体的暴力被害の寄与が最も大きく、観察された格差の約3分の1~4分の3を説明していた。一方、社会経済状況、医療アクセス、健康行動の寄与は小さかった。著者らは、社会経済状況や医療アクセスだけでは健康格差を十分に説明できず、より広い社会的要因が関与している可能性があると指摘する。これらの結果から、暴力被害が健康格差の主要な説明要因であり、心理的・身体的暴力の双方が関連していたことが示された。
日本はLGBTの法的保護や包摂の面で、OECD諸国の中でも低い評価(2019年時点)とされ、過去20年間で大きな進展はみられていないと指摘されている。2023年に成立した「LGBT理解増進法」は理解の促進を目的としたもので、差別を直接禁止する罰則規定はなく、同性婚も法的に認められていない。著者らは、こうした制度的背景や異性愛を前提とした社会構造がスティグマにつながっている可能性があり、健康格差の是正には政策的対応が重要だと指摘している。
なお、本研究の限界点として、オンライン調査による自己申告データを用いているため疾患の有病率が過小評価されている可能性がある点や、臨床データを含めていない点が挙げられる。
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治験・臨床試験についての詳しい説明参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年5月11日
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難病として指定されている「筋ジストロフィー」の中でも一番多いとされているのが「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」です。出生男児約3500人につき1人の割合で発症し、日本でのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者数は、約5000人とされています。

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