デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて

難病として指定されている「筋ジストロフィー」の中でも一番多いとされているのが「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」です。出生男児約3500人につき1人の割合で発症し、日本でのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者数は、約5000人とされています。
  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィーとはどんな病気か?
  2. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状
  3. デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法とは?
  4. まとめ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとはどんな病気か?

手足を動かす筋肉の組織が、徐々に壊れていく筋ジストロフィーの一種で、男児にのみ発症する進行性の筋萎縮症です。まれにターナー症候群などの染色体異常で女児に発症する場合もあります。筋ジストロフィーの中で一番多いとされています。

〇デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因は?
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを引き起こしているのは、X遺伝子の劣性遺伝が原因の場合が多いです。
遺伝形式としてはX連鎖性遺伝で、女性はX染色体が2本あるため、保因者であっても発症せず、男児が生まれた場合、どちらのX染色体が遺伝したかによって発症の可能性が変わります。また、遺伝子の突然変異によって発症することもあるとされています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、乳児期には症状が現れず、3~5歳ごろから運動機能が徐々に低下し、走るのが遅い・転びやすい・ジャンプができないなどの症状がでてきます。

さらに筋力が低下すると、しゃがんでから立ち上がる動作がスムーズにできなくなります。床に手をつき、すこしずつ足を前に動かしてからだの重心の下に持ってきて、手をひざに当てて背を伸ばし、大腿部に手を当てて立ち上がれる動作が、自分のからだをよじ登っているようにも見えることから、登攀性起立と呼ばれています。

10歳ころには歩行が困難になり、車いすでの生活になります。20歳ほどになると、筋力低下により上手く呼吸できなくなるため、人工呼吸器を使って呼吸します。

以前は、呼吸不全や心不全のため20歳前後で亡くなる人がほとんどでしたが、呼吸補助療法の導入・改善などで平均寿命は延びています。

主な症状としては、進行する筋力低下・仮性肥大(ふくらはぎがししゃものような形に太くなる)・関節拘縮(関節が固まる)・ガワーズ徴候(膝に手をつかないと立ち上がれない)・歩行障害・呼吸機能低下・心臓機能低下があります。

また、中には軽度~重度の知的障害がみられることもあり、自閉傾向を示す場合もあるようです。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法とは?

遺伝子異常によって発症する筋ジストロフィーは、予防法や治療法の確たるものがありません。心疾患の進行予防のために、高血圧の薬を処方する、また筋力を維持するためにステロイドを処方する場合があります。

〇リハビリテーションの重要性
筋力の低下を止めることはできなくても、筋力を維持して、進行を遅らせることは可能です。
早期からストレッチなどを行うことで、現状の筋力を維持していきます。激しい運動やリハビリは筋肉や関節が損傷して、残されている機能に障害が出てしまうので、理学療法士による指導のもとで、適切な強度のリハビリを行いましょう。

国家試験である理学療法士の試験でもデュシェンヌ型筋ジストロフィーで正しいのはどれか?というテスト問題や、duchenne型筋ジストロフィーステージ別の可能な動きについての問題などがあります。

ステージは8段階に分けられ、さらに細かく分類もされており、リハビリの強度や判断のむずかしさが分かります。

さらに、リハビリに取り組むことで症状の悪化するスピードを遅らせるだけではなく、本人のやる気の向上も期待できます。
また、車いすなどに長く座っていると背骨が横に曲がってしまう側弯になってしまいます。側弯が強くなると内臓も圧迫してしまい、他にも痛みなど様々な症状がでてきます。
起立台や足につける補助具などを使って、可能な限り歩行することや、立位訓練を行って姿勢を維持させて側弯を予防します。
さらに、筋力低下が進行して、腕の機能が低下しても、手指の機能は最後まで残るので、文字を書いたり食事をしたりという日常動作をできるだけ維持していきます。

可動域が少しでも狭まらないように訓練をすることが大切です。

〇非侵襲的人工呼吸器の普及
筋力低下による呼吸不全には、近年、気管内挿管や気管切開をしないで、鼻マスク・鼻プラグ・マウスピース・フェイスマスクを使って呼吸をうながす非侵襲的陽圧換気療法(NPPVまたはNIPPV、NIVと略されます)が、ICUから在宅看護に至るまで普及され、気管を切開する人工呼吸器より主流になっています。

家族や介護者のケアもしやすく、不安が軽減するとともに、本人の医学的・身体的・社会心理的発達に望ましい環境を作ります。

この呼吸ケアは2006年に日本呼吸器学会からNPPVガイドラインが公表され、今までは不可能と考えられていた在宅での人工呼吸療法が可能になりました。

在宅看護については、ちょっとしたことから病状が急変・悪化したり、合併症を併発する可能性があるため、歩行が可能な間は6ヶ月に1度、歩行が困難になってからは3ヶ月に1度、内臓機能障害などが現れ出してからは1ヶ月に1度、専門の医療機関を受診して検査をすることが望ましいでしょう。

家族など介護する人が体調を崩してしまった場合には、国立療養所などでのショートステイを利用することをおすすめします。在宅でのケアに必要なノウハウを教えてもらうことも可能です。

まとめ

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、あまり身近に感じられない病気かもしれません。しかし、自分や知人がもしかしたら遺伝子的要因を持っているかもしれません。

子供がデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症する、周りの子供が発症するという可能性も否定はできません。

適切な対処法を知り、病気を受け入れることが大切です。無理のない範囲でできる限りのケアをしてあげましょう。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーのセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

デュシェンヌ型筋ジストロフィーのセルフチェック方法に関連する情報を掲載しています。どういった症状がこの病気に関する症状と考えられているのか。医師の診断が一番ですが、自分でチェックできる項目をまとめています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーのセルフチェック方法

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  • 胃がん

    胃がん手術、低CXIは予後不良・再発リスクと関連

     「がん悪液質」は、筋肉量の減少や低栄養、全身性炎症などを特徴とし、患者の予後に影響を及ぼすことが知られている。今回、これらを統合的に評価するCachexia Index(CXI)が、胃がん手術患者の予後や再発リスクを予測する指標として有用である可能性が示された。研究は、東京大学医学部附属病院胃食道外科の小島晴樹氏、菅原弘太郎氏らによるもので、詳細は7月13日付の「Surgery Today」に掲載された。

     胃がんの予後は病期が最も重要な決定因子とされる一方、患者の全身状態も術後の生存に影響することが知られている。そのため、近年では、がん悪液質を総合的に評価する指標であるCXIが注目されている。肺がんや胆管がん、肝細胞がんでは、CXI低値が予後不良と関連することが報告されている。一方、胃がんではCXIの有用性を示唆する報告はあるものの、病期別の予後や再発パターンとの関連については十分に検討されていなかった。そこで著者らは、胃がん手術患者を対象に、CXIと術後の全生存期間、無病生存期間、再発パターンとの関連を検討した。

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     著者らは、東京大学医学部附属病院で胃がんの根治切除を受けた1,166人を対象に後ろ向き解析を実施した。術前CT画像から評価した骨格筋量や血清アルブミン値、好中球リンパ球比を基にCXIを算出し、男女別の下位4分の1を低CXI群、それ以外を高CXI群に分類した。約7年間の追跡データを用いて、全生存期間、無病生存期間、再発パターンとの関連を検討した。

     生存者の追跡期間中央値は83.9カ月だった。低CXI群は高CXI群と比べて年齢中央値が高く(70歳 vs. 65歳)、併存疾患を有する患者や進行病期の患者の割合も高かった。また、術後合併症の発生率も低CXI群で高かった(25.7% vs. 20.5%、P=0.04)。

     5年生存率は、低CXI群で63.4%と、高CXI群の78.5%を有意に下回った(P<0.001)。この傾向は病期I~IIIのいずれでも認められ、低CXI群では一貫して予後が不良だった。また、5年無病生存率も低CXI群で61.0%と、高CXI群の76.7%より有意に低かった(P<0.001)。

     さらに、再発リスクが低い病期Iを除いた病期II/IIIの患者では、低CXI群で再発率が高かった(35.4% vs. 24.9%、P=0.023)。特に、血行性再発(血流を介した遠隔転移)は低CXI群で13.6%と、高CXI群の6.9%より有意に多かった(P=0.026)。一方、局所再発、リンパ節再発、腹膜再発の発生率には有意差は認められなかった。

     多変量解析では、低CXIは全生存期間の独立した予後不良因子であり(ハザード比〔HR〕1.58、95%信頼区間〔CI〕1.20~2.07、P<0.001)、無病生存期間についても独立した予後不良因子であることが示された(HR 1.60、95%CI 1.24~2.07、P<0.001)。

     著者らは、CXIは胃がん手術患者の予後を予測する簡便な指標となる可能性があると指摘。CXIは筋肉量や栄養状態、炎症状態を反映することで、患者の身体的脆弱性と腫瘍の悪性度の双方を捉えている可能性があるとした。また、術前にCXIを評価することで、術後合併症や再発リスクが高い患者を特定し、栄養療法やリハビリテーションなどの介入につなげられる可能性があるとしている。

     なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究であることに加え、CXIの最適なカットオフ値がまだ確立されていない点を挙げている。著者らは、今後は他施設での検証に加え、低CXI患者に対する栄養介入やリハビリテーションなどの有用性を検討する研究が必要だとしている。

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  • 癌

    アルコール依存症患者の飲酒関連がん、遺伝的体質でリスクに差

     飲酒は頭頸部がんや食道がんなどの飲酒関連がんの重要なリスク因子として知られている。今回、日本人のアルコール依存症患者を対象とした研究で、アルコール代謝に関わる遺伝的体質によって、こうしたがんのリスクが異なることが明らかになった。研究は、国立病院機構久里浜医療センターアルコール内科の横山顕氏、国立保健医療科学院生涯健康研究部の横山徹爾氏によるもので、詳細は7月7日付の「Cancer Medicine」に掲載された。

     飲酒は頭頸部がんや食道がん、肝がん、大腸がん、胃がんなどのリスク因子として知られている。また、東アジア人ではアルコール代謝に関わるADH1BとALDH2の遺伝子多型が、飲酒習慣や飲酒関連がんのリスクに影響することが報告されている。著者らはこれまで、アルコール依存症患者では依存症治療前に飲酒関連がんの治療を受けている例が少なくないことを報告している。しかし、がん治療とアルコール依存症の進行との時間的な関係や、ADH1B・ALDH2遺伝子多型との関連は十分明らかになっていなかった。そこで今回、日本人男性のアルコール依存症患者を対象に、飲酒関連がんの治療時期や遺伝子多型との関連などを調べた。

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     著者らは、2005~2020年に久里浜医療センターで初めてアルコール依存症の治療を受けた日本人男性5,214人(20~79歳、平均53.3歳)を対象に、初診時の問診や診療録を用いた後ろ向き調査を実施した。飲酒関連がんの治療歴や飲酒歴を調査するとともに、全例でADH1B(アルコールの分解速度に関与)およびALDH2(アルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドの分解に関与)の遺伝子型を解析し、代謝能力が異なる遺伝子型ごとに飲酒関連がんとの関連を評価した。また、飲酒を制御できなくなった時期や離脱症状の出現時期などを基に、アルコール依存症の進行時期を定義し、がん治療時期との関係を検討した。

     解析対象となった5,214人のうち、飲酒関連がんの既往があった患者は385人(7.38%)だった。内訳は胃がんが最も多く、次いで大腸がん、食道がん、頭頸部がん、肝がんだった。また、飲酒関連がんの多くは、アルコール依存症が進行した時期以降に治療されていた。

     遺伝子型との関連を解析したところ、ADH1B代謝低速型の患者では頭頸部がん、食道がんのリスクが高かった一方、胃がんとの関連は逆に低かった。ALDH2低活性型の患者では、頭頸部がんや食道がんに加え、胃がん、大腸がんのリスクも高くなっていた。

     特に、ADH1B代謝低速型とALDH2低活性型を併せ持つ患者では、頭頸部がんと食道がんのリスクがそれぞれ17.05倍、35.03倍と大幅に上昇していた。また、ADH1BとALDH2の組み合わせは、複数の臓器にわたる飲酒関連がんの発症とも関連していた。

     著者らは、「アルコール依存症患者では飲酒関連がんの治療歴を有する例が少なくなく、多くは依存症の進行後にがん治療を受けていた」とした上で、「ADH1BやALDH2の遺伝子型に応じたリスク評価と問題飲酒のスクリーニングを組み合わせることで、飲酒関連がんとアルコール依存症の双方に対する早期介入につながる可能性がある」と結論付けている。

     また、胃がん患者の約9割は胃切除術を受けており、胃切除後はアルコールが胃にとどまらず小腸へ速やかに移行して吸収されやすくなるため、アルコール関連の問題が生じる可能性があり、経過観察が重要だと指摘している。

     著者らは、対象がアルコール依存症治療を受けた患者に限られることや、後ろ向き横断研究であるため因果関係は証明できないことなどを限界として挙げている。

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  • アルツハイマー

    若年性アルツハイマー病、診断まで高齢発症より約9か月長く

     65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病では、高齢発症例より診断までに時間を要することが指摘されている。今回、日本人患者を対象とした研究で、症状出現から診断までの期間が高齢発症例より平均約9か月長いことが明らかになった。その主な要因は、症状が現れてから初めて医療機関を受診するまでの期間が長いことだったという。研究は、国立長寿医療研究センター診断イノベーション研究部の春日健作氏(研究当時は新潟大学脳研究所所属)らによるもので、詳細は7月9日付の「BMC Neurology」に掲載された。

     65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病(EOAD)は、働き盛りの世代に多く、就労や収入への影響が大きい。近年はアルツハイマー病の早期段階を対象とした抗アミロイドβ抗体薬が承認され、早期診断の重要性が高まっている。一方、EOADは失語や失行など物忘れ以外の症状で発症することもあり、診断が遅れたり他疾患と診断されたりする可能性がある。しかし、日本を含むアジアではアルツハイマー病の診断までの経過を検討した研究はほとんどなかった。このような背景から著者らは、日本人患者を対象に、EOADの診断までの経過を高齢発症アルツハイマー病(LOAD)と比較するとともに、診断までの期間に影響する要因を検討した。

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     著者らは、日本国内4施設で2011年4月~2023年3月にアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー型認知症(probable AD)と診断された18~79歳の患者を対象に、多施設共同の後ろ向き観察研究を実施した。対象は認知症専門医が診断した患者で、症状出現時の年齢に基づき65歳未満で発症した若年性アルツハイマー病(EOAD)群と65歳以上で発症した高齢発症アルツハイマー病(LOAD)群に分類し、症状出現から診断までの期間を比較した。また、診断までの期間に影響する要因についても検討した。

     解析対象は、EOAD群79人とLOAD群59人だった。EOAD群の平均発症年齢は55.8歳、LOAD群は72.0歳で、患者背景はかかりつけ医の有無や就労状況などを除き、おおむね同等だった。初発症状はいずれの群でも認知機能障害が最も多かったが、EOAD群では失語や視空間認知障害、遂行機能障害、不安・抑うつ、失行などの症状がLOAD群より多く認められた。

     症状出現からアルツハイマー病と診断されるまでの期間は、EOAD群で平均138.3週、LOAD群で99.6週と、EOAD群で有意に長かった(P=0.011)。また、症状出現から初めて医療機関を受診するまでの期間も、EOAD群で平均89.0週、LOAD群で57.6週とEOAD群で有意に長かった(P=0.024)。一方、初回受診から認知症専門医の初診まで、および認知症専門医の初診から診断までの期間には両群で有意差は認められなかった。

     著者らは、EOADでは診断の遅れが就労機会の損失や経済的負担につながるだけでなく、近年実用化が進む抗アミロイドβ抗体薬による治療を適切な時期に受ける機会を逃す可能性があると指摘。そのため、疾患に対する社会的認知の向上や早期受診の促進、診療体制の整備が重要だとしている。また、EOADでは認知機能障害に加えて非典型的な症状を呈することや若年で発症することが、診断の遅れに影響した可能性があると考察している。

     著者らは、電子カルテを用いた後ろ向き研究で症例数も限られていたことから、結果の解釈には一定の留意が必要だとしている。なお、本研究はエーザイ株式会社と新潟大学との共同契約に基づく支援を受けて実施された。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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    HealthDay News 2026年8月17日
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  • 心疾患

    マラソン中の心停止、スタート時の気温が低いほどリスク上昇か

     マラソン中の心停止はまれではあるものの、生命を脅かす重大なアクシデントだ。今回、日本全国のフルマラソン約453万人の参加データを解析した研究で、スタート時の気温が低いほど心停止リスクが高い可能性が示された。一方、大気汚染物質との有意な関連は認められなかった。研究は、霞ヶ浦医療センター循環器内科の加藤穣氏らによるもので、詳細は6月30日付の「JACC:Advances」に掲載された。

     マラソン中の心停止は、冠動脈疾患などランナー側の心血管疾患が主な原因と考えられている。一方、これまでの研究はランナー個人の特徴や基礎疾患に焦点を当てたものが中心で、レース当日の気象条件や大気汚染などの環境要因が心停止リスクに与える影響については十分に明らかになっていなかった。こうした背景から著者らは、フルマラソン大会の参加データとレース当日の気象・大気汚染データを用いて、これらの環境要因と心停止リスクとの関連を検討した。

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     著者らは、2011年4月~2020年3月に開催された日本陸上競技連盟(JAAF)公認のフルマラソン大会を対象に、延べ452万8,134人の参加データを解析した。心停止は、レース開始からゴール後1時間以内に発生し、胸骨圧迫や自動体外式除細動器(AED)による処置を要した症例と定義した。各大会について、スタート時の気温や湿度、風速などの気象データに加え、PM2.5などの大気汚染データを用いて、参加者構成や大会の特徴を考慮しながら心停止リスクとの関連を評価した。心停止症例は全国レジストリに加え、新聞やインターネット報道も確認し、大会事務局への照会を通じて未報告症例の把握にも努めた。

     対象となった571大会では、スタート時の平均気温は11.5℃で、多くの大会は秋から冬にかけて開催されていた。心停止は62大会で75例確認され、発生率は10万人当たり1.66例だった。心停止発生者の中央値年齢は52歳で、93.3%が男性だった。

     解析の結果、スタート時の気温が1℃上昇するごとに心停止リスクは約6%低下し、スタート時の気温が低いほど心停止リスクが高まる傾向が示された(発生率比〔IRR〕0.94、95%信頼区間0.90~0.99)。一方、PM2.5などの大気汚染物質と心停止リスクとの間に有意な関連は認められなかった。

     また、湿球黒球温度(WBGT)を用いた解析や、対象条件を変えた追加解析でも同様の傾向が確認され、低気温と心停止リスクとの関連はおおむね一貫していた。

     著者らは、寒冷環境では末梢血管の収縮や血圧・心拍数の上昇などが起こり、心臓への負担が増加する可能性を指摘している。こうした変化が重なることで、心筋虚血や不整脈を起こしやすい状態につながる可能性があるという。また、開催時期やスタート時刻の変更は現実的ではないものの、寒冷時のリスクを認識することが、大会主催者や医療スタッフによる救護体制の強化や緊急時の対応準備につながる可能性があると述べている。

     なお、本研究では発症者の基礎疾患や心停止の原因は把握できておらず、高温環境で開催された大会も少なかったことから、著者らはさらなる検討が必要だとしている。

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  • 癌

    ペムブロリズマブ投与後の好酸球割合、irAE発現リスク評価の手掛かりに

     免疫チェックポイント阻害薬はがん治療に大きく貢献している一方、免疫関連有害事象(irAE)への対応が課題となっている。今回、転移性尿路上皮がん患者を対象とした研究で、ペムブロリズマブ投与3週間後の好酸球割合が、irAE発現リスクを評価する手掛かりとなる可能性が示された。研究は名古屋市立大学大学院医学研究科臨床薬剤学分野の小田切州広氏、同大学医学部附属西部医療センター泌尿器科の内木拓氏らによるもので、詳細は7月1日付の「Cancer Medicine」に掲載された。

     転移性尿路上皮がん(mUC)は予後不良で、これまで主にプラチナ製剤を用いた化学療法が行われてきた。近年はペムブロリズマブが治療選択肢となり、治療成績が改善しているが、irAEは発症時期や発症する臓器の予測が難しく、早期にリスクを把握できるバイオマーカーの確立が求められている。著者らはこれまで他のがん種で好酸球とirAEとの関連を報告してきたが、ペムブロリズマブで治療を受ける転移性尿路上皮がん患者での有用性は明らかになっていなかった。そこで本研究では、ペムブロリズマブで治療を受けたmUC患者を対象に、治療前および治療3週間後の好酸球割合がirAE発現の予測マーカーとなり得るかを検討した。

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     研究グループは、2018年1月~2024年10月に東海地方の6施設でペムブロリズマブ単剤療法を1コース以上受けたmUC患者124人を対象に、多施設共同の後ろ向きコホート研究を実施した。患者はirAEの発症の有無で2群に分け、治療開始前と初回投与3週間後に採取した血液中の好酸球割合および好酸球数を比較した。irAEはCTCAE v5.0に基づいて評価した。さらに、原発部位別の解析も行い、膀胱がん患者と上部尿路上皮がん患者で結果を検証した。

     研究期間中、124人の患者から47件のirAEが確認された。47件のirAEのうち、初回ペムブロリズマブ投与から21日以内に発症したものは9件(19.1%)で、38件(80.9%)は治療開始21日以降に発症した。

     解析の結果、治療開始前から3週間後にかけての好酸球割合の変化は、irAE発症群で有意に大きかった(非発症群:2.4%から3.1%、発症群:2.2%から4.3%)。一方、好酸球数の変化については、両群で有意な差は認められなかった。

     この関連が原発部位によって異なるかを調べるため、膀胱がんと上部尿路上皮がんに分けて解析した。膀胱がん患者では、irAE発症群で好酸球割合の上昇が有意に大きかった(非発症群:2.5%から2.8%、発症群:1.9%から4.1%)。一方、上部尿路上皮がん患者では、好酸球割合の変化とirAE発現との間に有意な関連は認められなかった。

     この結果を踏まえ、膀胱がん患者において治療3週間後の好酸球割合とirAE発現リスクとの関連を詳しく解析したところ、好酸球割合5.0%がリスク評価のカットオフ値となった。多変量解析では、好酸球割合5.0%以上の患者は、5.0%未満の患者と比べてirAEを発症するリスクが高かった(オッズ比3.61、95%信頼区間1.00~13.0)。

     著者らは、ペムブロリズマブ治療後の好酸球割合の変化を把握することで、irAE発現リスクを早期に把握するための手掛かりになる可能性があると考察している。また、3週間間隔の投与スケジュールに合わせて好酸球割合を確認することは、実臨床でも取り入れやすい評価方法になる可能性があるという。なお、好酸球の増加は免疫チェックポイント阻害薬の治療効果や予後改善とも関連することが報告されており、上昇のみを理由に治療中止を判断すべきではないと指摘している。

     一方で、本研究は後ろ向き研究であり、好酸球割合を単独の指標として臨床応用するには、今後さらなる検証が必要だとしている。

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    HealthDay News 2026年8月10日
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  • 小児

    よくかめる小学生ほど体力が高い傾向、男子でより顕著

     子どもの口腔機能は、食べることだけでなく全身の発育や健康との関わりも注目されている。今回、日本の小学生約1,200人を対象とした研究で、よくかめる小学生ほど体力が高い傾向があり、その関連は男子でより顕著であることが明らかになった。研究は大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の平松里彩氏、髙阪貴之氏らによるもので、詳細は7月6日付で「Journal of Dentistry」に掲載された。

     子どもの体力は、現在の健康状態だけでなく将来の健康にも影響するとされ、体力に関わる要因を明らかにすることは公衆衛生上の重要な課題となっている。一方、咀嚼機能は食物をかみ砕いて栄養を摂取する上で重要な役割を果たすだけでなく、成人や高齢者では身体機能やフレイル、生活の質(QOL)との関連も報告されている。しかし、子どもの咀嚼能力と体力との関連については十分な検討が行われておらず、特に総合的な体力との関連や男女差を調べた研究は限られていた。こうした背景から、著者らは日本の小学生を対象に、総合体力スコアを用いて咀嚼能力と体力との関連を検討し、さらに男女差についても解析した。

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     研究では、大阪MELON研究(Mastication research in Elementary school student teaching applying LONgitudinal Study)の一環として、大阪市内29校の市立小学校に通う小学4年生1,225人(男子608人、女子617人)を対象とした。2023年4月~2024年3月に身体測定や歯科検診を実施し、咀嚼能力と体力との関連を調べた。咀嚼能力は、色が変化するガムを1秒に1回のペースで1分間かんでもらい、60回咀嚼後の色の変化を専用アプリで解析して評価した。体力については、握力、上体起こし、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの7項目を測定し、これらを基に総合体力スコアを算出した。さらに、身長や体重の影響を考慮した統計解析を行い、咀嚼能力と総合体力スコアとの関連を検討した。

     解析の結果、咀嚼能力は、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、ソフトボール投げ、および総合体力スコアと有意に関連していた。男女別では、男子で上体起こし、20mシャトルラン、ソフトボール投げ、総合体力スコアとの関連が認められ、女子では20mシャトルランとの関連が認められた。

     さらに、身長や体重などを考慮した解析では、全体および男子で咀嚼能力と総合体力スコアとの有意な関連が認められたが、女子では有意な関連はみられなかった。ただし、性別によって関連の強さが異なることを示す統計的な差は認められなかった。著者らは、女子で明確な原因が認められなかった背景として、発達段階や生活習慣など今回評価していない要因が影響した可能性を挙げている。

     著者らは、咀嚼能力は口腔機能の指標にとどまらず、学童期の身体的な発達や機能状態とも関連する可能性があると指摘している。今回の研究は横断研究であるため因果関係は明らかにできないものの、子どもの健全な成長を支える観点から、適切な咀嚼習慣や口腔機能の発達を促すことの重要性が示唆されたとしている。

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  • 糖尿病

    チルゼパチド、2型糖尿病治療の負担軽減に寄与か――実臨床研究で示唆

     2型糖尿病では、複数の糖尿病治療薬の併用や複雑なインスリン療法が必要となり、患者の治療負担が増すことがある。こうした中、2型糖尿病患者を対象としたリアルワールド研究で、チルゼパチドは従来のGLP-1受容体作動薬と比べ、血糖コントロールや体重を改善しながら、糖尿病治療の負担軽減につながる可能性が示された。研究は、浅ノ川総合病院内科/金沢大学大学院未来型健康増進医学分野の澤村俊孝氏らによるもので、詳細は6月30日付の「Endocrine Practice」に掲載された。

     複数の薬を服用する「ポリファーマシー(多剤併用)」や複雑なインスリン療法は、2型糖尿病患者の治療負担を増大させるだけでなく、低血糖や転倒、入院などのリスクとも関連する。このため、十分な血糖コントロールを維持しつつ、治療を簡略化することが重要な課題となっている。チルゼパチドはGIPとGLP-1という2つの消化管ホルモンの受容体に作用する2型糖尿病治療薬で、優れた血糖降下作用や体重減少作用を示すことが報告されているが、これまでの研究はHbA1cや体重への効果に焦点を当てたものが中心で、治療薬やインスリンの減量といった「治療簡略化」を評価した報告は限られていた。こうした背景から著者らは、2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬の治療簡略化効果をリアルワールドデータで比較検討した。

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     著者らは、日本の2施設で2023年4月~2025年3月にチルゼパチドまたはGLP-1受容体作動薬を開始した2型糖尿病患者318人(チルゼパチド群153人、GLP-1受容体作動薬群165人)を対象に、後ろ向きのリアルワールド研究を実施した。患者を最大12カ月追跡し、糖尿病治療薬が1剤以上減少した場合、インスリン注射回数が減少した場合、または1日当たりの総インスリン投与量が50%以上減少した場合のいずれかを満たし、その状態が維持されていることを「治療簡略化」と定義して評価した。解析では患者背景の違いを考慮し、傾向スコアを用いた統計学的手法で調整した。

     解析の結果、チルゼパチド群では55%が治療簡略化を達成したのに対し、GLP-1受容体作動薬群では25%で、チルゼパチド群の方が有意に高かった(オッズ比〔OR〕 3.69、95%信頼区間〔CI〕 2.21~6.16、P<0.001)。絶対リスク差は30%だった。

     治療簡略化は主に糖尿病治療薬数の減少によるもので、その割合はチルゼパチド群で47%、GLP-1受容体作動薬群では10%だった(OR 7.96、95%CI 4.06~15.6、P<0.001)。インスリン注射回数や総インスリン投与量もチルゼパチド群で減少する傾向がみられたが、全体では有意差はなかった。

     また、HbA1cと体重はいずれの群でも改善したが、その改善幅はチルゼパチド群でより大きかった。12カ月後のHbA1cはチルゼパチド群で1.34%、GLP-1受容体作動薬群で0.78%低下し、体重はそれぞれ4.75kg、2.86kg減少した。

     本研究ではチルゼパチド使用患者の56%がGLP-1受容体作動薬からチルゼパチドへ切り替えられた患者であったが、GLP-1受容体作動薬からの切り替え患者を除外したサブグループ解析では、薬剤数に加えインスリン注射回数や総インスリン投与量についてのアウトカムも有意に減少した。

     著者らは、「チルゼパチドは、実臨床において血糖コントロールや体重減少効果を維持しながら、2型糖尿病治療の簡略化に寄与する可能性が示された」と結論付けている。また、治療レジメンの簡略化は服薬アドヒアランスや患者負担の軽減につながる可能性があり、チルゼパチドは日常診療における治療負担を軽減する新たな選択肢となり得るとしている。

     一方で著者らは、本研究が後ろ向き観察研究であることや、患者のQOLや治療満足度を評価していないことなどを限界として挙げ、前向き研究による検証が必要としている。

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  • 緑内障

    緑内障手術後、約3人に1人で眼瞼下垂――濾過手術でリスク高く

     緑内障手術後には眼瞼下垂(まぶたが下がる症状)が生じることがあるが、その経過は十分に分かっていなかった。今回、患者を1年間追跡した研究で、約3人に1人に眼瞼下垂がみられ、特に濾過手術では術後1年まで進行する可能性が示された。研究は、神戸大学医学部眼科学教室の奥住奈南美氏、盛崇太朗氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology」に掲載された。

     緑内障手術は近年の進歩により広く行われるようになった一方で、術後の眼瞼下垂が課題となっている。眼瞼下垂は見た目だけでなく、視野や患者満足度にも影響を及ぼす可能性が指摘されているが、発生頻度や経過、術式による違いを長期間にわたって検討した研究は限られていた。そこで著者らは、複数の緑内障手術を対象に、術前から術後1年まで眼瞼下垂の発生や経過を前向きに評価した。

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     著者らは、2023年10月~2024年12月に神戸大学医学部附属病院で初回の緑内障手術を受けた167人を対象に前向き研究を実施した。対象となった術式は、低侵襲緑内障手術であるマイクロフックを用いた眼内線維柱帯切開術、プリザーフロ・マイクロシャント留置術、線維柱帯切除術、アーメド緑内障バルブ留置術の4術式である。術前から術後1年まで定期的に撮影した写真を用いて上まぶたの位置を客観的に評価し、術前より1mm以上低下した場合を眼瞼下垂と定義して、術式ごとの発生状況や関連因子を解析した。

     解析の結果、術後1年時点で眼瞼下垂は54人(32.3%)に認められた。上まぶたの位置は術後1カ月から低下し、その低下傾向は1年後まで持続した。

     マイクロフックでは有意な変化はみられなかった一方、プリザーフロ、線維柱帯切除術、アーメドなどの濾過手術では、上まぶたの位置の有意な下垂が認められた。

     また、アーメド緑内障バルブ留置術と術前の瞼裂(目の開き)が大きいことが眼瞼下垂のリスク因子として特定された。

     著者らは、本研究は緑内障手術後の眼瞼下垂が術後6カ月を超えて1年まで進行する可能性を初めて示した研究だとしている。また、濾過手術で眼瞼下垂が生じやすい理由について、術中の機械的な刺激だけでは説明できず、インプラントやろ過胞とまぶたとの摩擦などが関与している可能性があると考察している。さらに、緑内障手術を行う医師は術後の眼瞼下垂を認識し、経過を注意深く観察する必要があるとしている。

     一方、本研究は単施設で日本人のみを対象とした研究であり、特にアーメド緑内障バルブ留置術は8例と症例数が少なかったことから、この術式に関する結果の解釈には注意が必要だとしている。

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    HealthDay News 2026年7月27日
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  • 腎障害

    低ナトリウム血症、腎機能が高くても低くてもリスク上昇

     低ナトリウム血症は日常診療でよく遭遇する電解質異常だが、腎機能との関連は十分に明らかになっていなかった。今回、日本の外来患者13万人超を対象とした解析で、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められ、腎機能が高い場合と低い場合の双方でリスクが上昇することが報告された。研究は聖路加国際病院腎臓内科の長浜正彦氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載された。

     低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が低下した状態で、体内の水分バランスを調節する仕組みの異常などによって生じる。腎機能が低下すると余分な水を排泄する能力が低下するため、低ナトリウム血症のリスクが高まると考えられている。一方、腎機能と低ナトリウム血症との関連については、これまで主に慢性腎臓病患者や入院患者を対象に検討されており、腎機能が保たれた外来患者を含めた大規模な検討は十分に行われていなかった。こうした背景から、著者らは成人外来患者を対象に、腎機能と低ナトリウム血症との関連を検討した。

    【腎機能障害の治験について相談したい方へ】
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     著者らは、聖路加国際病院(東京)において、2010年4月~2020年3月に外来を受診した成人患者を対象とする後ろ向き横断研究を実施した。血清ナトリウム値、血清クレアチニン値、尿検査のデータが同一受診日にそろっている患者を抽出し、透析患者などを除外した13万194人を解析対象とした。血清ナトリウム値135mEq/L以下を低ナトリウム血症と定義し、推算糸球体濾過量(eGFR)と低ナトリウム血症との関連を、多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。解析では、年齢や性別に加え、併存疾患や薬剤使用、各種臨床因子の影響を調整した。また、低ナトリウム血症患者では、尿浸透圧/血漿浸透圧比を指標として、eGFRと尿濃縮能との関連も検討した。

     低ナトリウム血症の有病率は4.3%だった。低ナトリウム血症患者は、低ナトリウム血症のない患者と比べて高齢で、併存疾患が多かった。

     低ナトリウム血症の有病率は、eGFRが70~80mL/min/1.73m²の群で最も低く、それよりeGFRが低い場合と高い場合のいずれでも増加し、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められた。特に、高eGFR群では有病率の上昇が顕著だった。

     多変量解析では、併存疾患や薬剤使用を調整後もこの関連は維持された。さらに、炎症やバソプレシンによる水分調節に関連する臨床・検査因子を調整すると、eGFRが低い群で認められたリスク上昇は大きく減弱した一方、高eGFR群ではリスク上昇が持続した。完全調整モデルでは、eGFR 150mL/min/1.73m²以上の群のオッズ比は4.63(95%信頼区間 3.73~5.75)、eGFR 10mL/min/1.73m²未満の群では1.56(95%信頼区間 1.02~2.39)だった。

     また、低ナトリウム血症患者では、高eGFR群ほど尿浸透圧/血漿浸透圧比が高く、尿濃縮能が保たれていた。

     著者らは、「低ナトリウム血症は腎機能低下例だけでなく、腎機能が比較的保たれた患者でもその可能性を考慮すべきである」としている。また、高eGFR群と低eGFR群では低ナトリウム血症の発症機序が異なる可能性があると考察しており、高eGFR群では保たれた尿濃縮能とバソプレシンの作用が、低eGFR群では腎機能低下そのものやネフロン機能の低下など複数の要因が発症に関与している可能性があるとしている。

     なお、本研究は横断研究のため因果関係は不明であり、尿濃縮能やバソプレシンを直接評価していない点などが限界として挙げられた。

     本研究は、外来患者13万人超を対象に、腎機能が保たれた患者も含めて低ナトリウム血症との関連を検討した大規模解析であり、腎機能の高低で背景機序が異なる可能性を示した点が注目される。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。
    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

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    HealthDay News 2026年7月27日
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  • 慢性肝疾患

    AST・ALTは季節で変動、MASLDスクリーニング判定への影響示唆

     MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の評価では、ASTやALTなどの肝機能値が広く用いられている。今回、日本人の2型糖尿病患者約6,000人を対象とした研究で、AST・ALTは晩秋から初冬にかけて高く、夏に低い季節変動を示すことが分かった。さらに、この変動はMASLDスクリーニングの判定に影響する可能性も示された。ALTがスクリーニングの判定境界に近かった患者では、約9人に1人で測定季節によって判定が異なったという。研究は、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の土岐了大氏、国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也氏らによるもので、詳細は6月19日付の「Liver International」に掲載された。

     AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、肝細胞障害の指標として用いられてきた。近年ではMASLDの評価で最初に行われる検査として広く活用されており、特に2型糖尿病患者ではその重要性が高まっている。一方、体重や血圧、HbA1cなどでは季節による変動が報告されている。これまでにも集団全体ではAST・ALTが冬に高く夏に低い傾向が報告されていたが、個人レベルでの季節変動や、その臨床的意義は明らかになっていなかった。そこで著者らは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、AST・ALTの季節変動がMASLDの評価や血糖コントロールに及ぼす影響を検討した。

    【糖尿病の治験について相談したい方へ】
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     本研究では、全国の糖尿病診療施設で構成される日本糖尿病臨床データマネジメント研究会(JDDM)のレジストリに登録された2型糖尿病患者6,039人を対象とした。重度の肝障害患者を除外した上で、2014~2020年に測定された月ごとのASTおよびALT値を解析し、季節変動を評価した。AST・ALTの季節変動のパターンを評価するとともに、MASLDスクリーニングで用いられる30 IU/Lの閾値を基に、冬季と夏季で判定がどの程度変化するかを検討した。さらに、患者ごとのAST・ALTの季節変動幅を算出し、追跡終了時のHbA1cやHbA1c 7%未満の達成状況との関連を解析した。

     解析の結果、AST、ALTはいずれも有意な季節変動を示し、晩秋から初冬にかけて最も高く、夏に最も低かった(P<0.001)。季節によって異常値となる割合も変動し、ASTの異常値の割合は夏の15.0%から秋には17.7%へ、ALTでは20.6%から23.2%へ上昇した。

     MASLDスクリーニングで用いられるALT 30 IU/Lの閾値付近(年間平均20~40 IU/L)の患者では、約9人に1人で冬季と夏季の判定が異なった。

     また、患者ごとのASTの季節変動幅が大きいほど、追跡終了時のHbA1cは高く、HbA1c 7%未満の目標を達成できない可能性も高かった。季節変動幅を4群に分けて比較すると、変動幅が最も大きい群では最も小さい群よりHbA1cが高く、変動幅の増加に伴ってHbA1cも高くなる傾向が認められた。一方、ALTでも同様の傾向がみられたが、関連はASTほど強くなかった。

     著者らは、AST・ALTには再現性のある季節変動があり、特にMASLDスクリーニングの判定境界に近い患者では、測定時期によって判定が変わる可能性があると指摘している。また、季節変動幅が大きい患者ほど血糖コントロールが不良となる傾向がみられたことから、AST・ALTの解釈では季節を考慮することが重要であり、季節変動幅は肝・代謝系の不安定さを示す新たな指標となる可能性があるとしている。

     なお、本研究は日本人の2型糖尿病患者を対象とした観察研究であり、食事や運動など生活習慣の影響を十分に評価できていないため、結果を他の集団に一般化することや因果関係の解釈には注意が必要としている。

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  • 前立腺がん

    hinotoriによるロボット支援前立腺全摘、real-worldデータでda Vinciと比較

     手塚治虫氏の漫画『火の鳥』にちなんで名付けられた国産手術支援ロボット「hinotori」の前立腺がん手術への臨床導入が進む中、real-worldデータを用いて「da Vinci」との治療成績を比較した研究結果が報告された。hinotoriでは手術時間が長かった一方、陽性切除断端率や尿禁制回復、早期の生化学的再発などの主要アウトカムはda Vinciと同等の成績だった。研究は、滋賀医科大学泌尿器科講座の西田将成氏らによるもので、詳細は6月15日付の「Asian Journal of Endoscopic Surgery」に掲載された。

     前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘除術(RARP)は標準的な術式として広く普及しており、従来はインテュイティヴ・サージカル社のda Vinciが中心に用いられてきた。一方、近年は国産手術支援ロボットhinotori(メディカロイド社)の臨床導入も進んでいる。しかし、機種間の比較は手術時間や出血量などの周術期成績に関する報告が中心で、陽性切除断端(PSM:手術で切除した標本の端にがん細胞が残っている状態)率やその解剖学的部位別分布、生化学的再発(BCR)などの腫瘍学的アウトカムを比較した報告は限られている。こうした背景から著者らは、real-worldコホートを用い、hinotoriとda VinciによるRARPの周術期、病理学的、機能的および早期腫瘍学的アウトカムを比較した。

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     著者らは、2013年5月~2025年3月に滋賀医科大学医学部附属病院で前立腺がんに対するRARPを受けた437人を対象に、単施設・後ろ向きコホート研究を実施した。なお、本研究にはRARP経験レベルの異なる17人の術者が関与し、そのうちhinotori症例は12人の術者が執刀した。傾向スコアマッチング後、da Vinci群130人とhinotori群65人を解析対象とした。さらに解析では手術年を考慮し、ロボット導入時期の違いによる影響を調整した。その上で、周術期成績、PSM率とその解剖学的部位別分布、尿禁制回復(尿もれがない状態への回復)、BCRなし生存率を比較した。

     傾向スコアマッチング後の解析では、手術時間、コンソール時間(ロボット操作時間)、セッティング関連時間はいずれもhinotori群で長く、推定出血量も多かった。一方、輸血を要した症例はなく、合併症発生率や術後入院期間に群間差は認められなかった。

     病理学的には、全体および病期別のPSM率に有意差は認められなかった。PSMは両群とも前立腺尖部(apex)および後外側(posterolateral)に多く認められ、その解剖学的部位別分布にも差はみられなかった。さらに多変量解析でも、ロボット機種(hinotoriかda Vinciか)はPSMの独立した関連因子とはならなかった。

     機能的には、術後12カ月時点の尿禁制回復率はhinotori群87%、da Vinci群85%であり、両群で同等であった。さらに、追跡期間をそろえた解析では、BCRなし生存率は術後1年でそれぞれ94%、89%、術後2年で89%、85%と、いずれも明確な差は認められなかった。

     著者らは、PSM率や尿禁制回復、早期BCRには差は認められず、多変量解析でも機種はPSMの独立因子ではなかったことから、hinotoriの短期的な腫瘍学的・機能的成績はda Vinciと同等である可能性が示唆されたと述べている。一方、手術時間やセッティング時間の延長、出血量増加については、hinotori導入初期症例であり術者経験のばらつきや習熟過程(learning curve)、機器特有の操作性の違いが影響した可能性を指摘した。

     なお、著者らは後ろ向き単施設研究であることに加え、術者経験のばらつきや導入初期症例に伴うバイアスなどを限界として挙げている。

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  • 小児

    子どもの頃の逆境体験、成人後の市販薬乱用と関連

     近年、市販薬の過量服薬(オーバードーズ)が社会問題となる中、幼少期の逆境体験がその背景に関与する可能性が示された。日本の成人約2万5,000人を対象とした全国調査の解析により、子どもの頃に虐待や家庭機能不全などの逆境体験を多く経験した人では、成人後の市販薬の習慣的乱用との関連が認められた。特に、電子たばこや加熱式たばこの使用者では、その関連がより強く認められたという。研究は、福島県立医科大学神経精神医学講座の森湧平氏、東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野の長岡敦子氏らによるもので、詳細は6月2日付の「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載された。

     逆境的小児期体験(ACEs)は、虐待やネグレクトなどの幼少期のつらい体験を指し、その後の心身の健康や物質使用障害との関連が指摘されている。日本でも成人の約4人に3人が少なくとも1つのACEを経験しているという。また、市販薬(OTC医薬品)の乱用は社会問題となっており、中学生を対象とした厚生労働省の調査では、過去1年間のOTC乱用経験は1.8%(約55人に1人)で、同年齢層の違法薬物使用を上回っていた。しかし、ACEsとOTC乱用との関連を直接検討した研究は乏しい。こうした背景から、著者らは全国規模の成人集団を対象に両者の関連を検討した。

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     本研究では、2025年2月23日~3月31日に実施された全国インターネット調査「Japan Society and New Tobacco Internet Survey(JASTIS)」の回答者2万8,000人のうち、不適切回答などを除外した2万5,424人を解析対象とした。18歳未満の10項目のACEsを評価し、4項目以上を経験した場合を高ACE曝露と定義した。OTC医薬品の習慣的乱用は、1)過去1年間に5回以上使用した、2)推奨量を超える過量服用をした、3)気分変容や多幸感を得る目的で使用した――の3つを満たした場合と定義した。また、多変量ロジスティック回帰分析により、ACEsとOTC乱用との関連を評価するとともに、紙巻きたばこ、電子たばこ、加熱式たばこ、アルコール、違法薬物の使用状況による違いも検討した。

     解析対象となった2万5,424人のうち、OTC医薬品の習慣的乱用の割合は6.8%だった。また、5.4%が4項目以上のACEsを経験した高ACE曝露群に該当した。高ACE曝露群では、低ACE曝露群と比べてOTC医薬品を習慣的に乱用するオッズが約3倍高く(調整オッズ比〔aOR〕 3.18、95%信頼区間〔CI〕 2.47~4.10)、有意な関連が認められた。さらに、ACEsの該当項目が1つ増えるごとにOTC乱用オッズは26%上昇した。ACE数別の解析でも、ACE数が多いほど関連が強まる傾向が認められた。

     他の依存行動との関連を検討したところ、紙巻きたばこ、加熱式たばこ、電子たばこの使用者では、非使用者よりもACEsとOTC乱用との関連が強かった。特に電子たばこ使用者では、その関連が最も強かった(aOR 27.14、95%CI 13.12~56.14)。

     本研究では、ACEsが成人後のOTC医薬品の習慣的乱用と独立して関連することが示された。特に電子たばこや加熱式たばこ使用者ではその関連がより強く認められた。著者らは、幼少期の逆境体験が長期的なメンタルヘルスに影響し得るとして、情緒的ストレスや社会的孤立に配慮した予防の重要性を指摘している。

     なお、本研究は横断研究であり因果関係を示すものではない。また、自己申告データに基づくことから誤分類や過少申告の可能性があるほか、オンライン調査参加者に限定されているため、一般集団との構成の違いや過大推定の可能性にも注意が必要とされる。

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    HealthDay News 2026年7月13日
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  • 歯の健康

    重度歯周炎、高齢者の脳卒中リスク上昇――医療費増加とも関連

     口腔の健康状態は、脳卒中発症だけでなく、その後の医療負担にも影響するのだろうか。今回、高齢者1,997人を対象とした5年間の追跡研究で、重度歯周炎は脳卒中発症リスクの上昇と関連し、脳卒中後の医療費増加にも関与する可能性が示された。研究は愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の齋藤瑞季氏、嶋﨑義浩氏らによるもので、詳細は6月12日付で「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。

     歯周炎は口腔内の慢性炎症性疾患であり、歯周病菌や炎症反応が血管に影響することで、心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている。脳卒中との関連を示した報告もある一方、因果関係については十分な結論が得られていない。また、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討した研究はあるものの、脳卒中後の医療費や入院日数との関係を評価した研究はほとんどない。こうした背景から著者らは、日本の後期高齢者を対象に、歯周炎と脳卒中発症との関連に加え、脳卒中後の医療費や入院日数との関連を検討した。

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     著者らは、2014年に三重県で実施された後期高齢者歯科健診のデータと、2014~2019年度のレセプトデータを用いて解析を行った。対象は75歳または80歳で、20本以上の歯を有し、脳卒中や心疾患の既往がない1,997人とした。歯周炎の重症度はCommunity Periodontal Index(CPI)を用いて評価し、歯周炎なし、中等度歯周炎、重度歯周炎の3群に分類した。参加者を5年間追跡し、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討したほか、追跡期間中に脳卒中を発症した参加者については、脳卒中関連医療費および入院日数との関連も評価した。また、生存曲線が交差していたため、制限付き平均生存時間(restricted mean survival time:RMST)解析も併用した。

     5年間の追跡期間中に232人(11.6%)が脳卒中を発症した。脳卒中発症との関連を検討したところ、重度歯周炎を有する高齢者では発症リスクが高い傾向がみられた。ただし全追跡期間での解析では有意な関連は認められず、追跡開始から22カ月までの解析でも明確な関連は示されなかった。一方で、23カ月以降の解析では重度歯周炎と脳卒中発症との有意な関連が認められた(ハザード比 1.65、95%信頼区間〔CI〕 1.08~2.53)。

     また、RMST解析でも、重度歯周炎群では脳卒中を発症せずに過ごせる期間が短く、追跡期間中における非歯周炎群と比べたRMST差は−0.80カ月(95%CI:−1.21~−0.39)だった。

     さらに、脳卒中を発症した80歳の参加者では、歯周炎のない群と比べて、中等度または重度歯周炎群で脳卒中後の医療費および入院日数が有意に増加していた。医療費は中等度歯周炎群で4.18倍、重度歯周炎群で6.32倍、入院日数はそれぞれ7.14倍、21.85倍だった。一方、75歳ではこれらの関連は認められなかった。

     著者らは、歯周炎が脳卒中リスクや脳卒中後の医療負担の増加に関与する可能性があるとしている。その背景として、歯周病菌による慢性炎症や動脈硬化の促進を挙げ、口腔健康の維持の重要性を強調している。また、80歳で医療費や入院日数との関連がより明確に認められたことについては、加齢に伴う身体機能低下により、脳卒中後の回復に時間を要しやすくなる可能性を挙げている。

     なお、本研究は80歳群で医療費や入院日数との関連を認めたが、解析対象者数が少なく信頼区間も広かった。著者らは、結果の解釈には注意が必要であり、さらなる大規模研究による検証が求められるとしている。

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  • 夜間頻尿

    夜間頻尿の背景に“夜間多尿”――排尿日誌データから見えた加齢の影響

     夜間頻尿は高齢者に多い症状であり、その背景には膀胱機能低下だけでなく夜間多尿など尿量分布の変化が関与すると考えられている。今回、日本の17施設で夜間頻尿患者875例を対象に、排尿日誌を用いて夜間多尿の実態が解析された。その結果、夜間多尿の割合は加齢とともに増加し、特に80歳以上で顕著であった。夜間頻尿は年齢や尿量分布など複数の要因が関与する多因子性の病態と考えられた。研究は、岐阜大学大学院医学系研究科泌尿器科の川瀬紘太氏、古家琢也氏らによるもので、詳細は6月12日付の「Neurourology and Urodynamics」に掲載された。

     夜間頻尿は睡眠障害や転倒リスクの増加と関連し、高齢者のQOLに大きな影響を及ぼすことが知られている。その原因として夜間多尿(夜間に作られる尿の割合が多い状態)や膀胱蓄尿機能障害などが挙げられるが、加齢に伴う排尿パターンや昼夜の尿量分布の変化については十分に明らかになっていない。こうした背景から、著者らは排尿日誌を用いて年齢ごとの排尿パターンを解析し、夜間多尿の特徴と関連因子を検討した。

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     本研究は、2018~2022年に日本の17施設で夜間頻尿を主訴に受診した患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究である。膀胱結石や尿路感染症、泌尿器系の悪性腫瘍を有する患者、およびデスモプレシン使用者を除外した。対象者には少なくとも2日間の排尿日誌の記録を求め、24時間尿量や昼夜の尿量、最大排尿量などを評価した。夜間多尿は夜間多尿指数(NPi)を用いて評価し、夜間尿量が24時間尿量に占める割合が33%を超える場合と定義した。対象者を5つの年齢群に分類し、排尿パターンや夜間多尿の頻度を比較した。

     解析対象は875例で、このうち590例(67.4%)が夜間多尿に該当した。NPiは加齢とともに上昇し、80歳以上の群では他の年齢群と比べて有意に高値を示した(P<0.05)。また、夜間多尿の有病率も年齢とともに増加した。

     排尿日誌の解析では、80歳以上の群は他の年齢群と比較して24時間尿量および日中尿量が有意に少ない一方、夜間多尿の割合が有意に高かった(いずれもP<0.05)。

     さらに、夜間多尿群は非夜間多尿群と比べて高齢であり、過活動膀胱(OAB)の有病率も高かった。多変量解析の結果、年齢、OABの存在、最大排尿量、および24時間尿量が夜間多尿の独立した関連因子として抽出された。一方、男性を対象とした解析では前立腺肥大症(BPH)との有意な関連は認められなかった。

     著者らは、「夜間頻尿患者における夜間多尿は加齢とともに増加する一方、その背景にはOABや膀胱容量の低下、尿量分布の変化など複数の要因が関与している可能性がある」と結論付けた。高齢者の夜間頻尿は加齢に伴う尿量分布の変化と下部尿路機能障害が混在した病態であり、夜間尿量のみならず排尿機能も含めた評価が重要であるとしている。

     なお、本研究は後ろ向き観察研究であり、排尿日誌の自己記録による誤差や施設間の患者背景の違いが結果に影響した可能性がある。また、水分摂取量や睡眠障害、腎機能など夜間尿量に影響する因子を十分に評価できていないため、加齢と夜間多尿との因果関係については今後の検証が必要であるとしている。

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  • 高齢者

    高齢入院患者の睡眠薬継続使用、院内転倒リスク上昇と関連

     高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下につながり得るため、医療現場で重要な課題となっている。日本の急性期病院に入院した高齢患者6万人超を対象とした研究で、睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連することが示された。一方、ベンゾジアゼピン系・Z薬とオレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオンとの間で、転倒リスクに有意な差は認められなかった。研究は、日本医科大学医療管理学の西野拓也氏らによるもので、詳細は6月8日付の「PLOS One」に掲載された。

     高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下、入院期間の延長などにつながる重要な問題だ。また、入院中の高齢患者では睡眠障害が多くみられるため、睡眠薬の選択は転倒予防の観点からも重要とされている。従来から使用されてきたベンゾジアゼピン系・Z薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)は転倒リスクを高めることが知られている。一方、オレキシン受容体拮抗薬やラメルテオンは代替薬として使用が広がっているものの、院内転倒との関連については結果が一致していなかった。こうした背景から著者らは、日本の急性期病院に入院した高齢患者を対象に、睡眠薬の継続使用と院内転倒との関連を検討した。

    【睡眠障害の治験について相談したい方へ】
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     著者らは、2018~2024年に日本の急性期病院2施設へ入院した65歳以上の患者を対象に後ろ向き解析を実施した。長期入院患者では転倒や睡眠薬使用の機会が増える可能性を考慮し、入院7日目まで転倒のなかった患者6万1,663人を対象に、その後の転倒発生を追跡した。入院4~7日目に2日以上睡眠薬を使用していた患者を、ベンゾジアゼピン系・Z薬(BZ/Zs)群、オレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオン(ORA/Ram)群、両者の併用群に分類し、持続的な睡眠薬使用がなかった患者を対照群とした。その上で、入院8~37日目に発生した初回の院内転倒を評価し、患者背景や併用薬、日常生活動作(ADL)などを調整した上で各群の転倒リスクを比較した。

     対象となった6万1,663人のうち、3,884人(6.3%)が入院8日目以降に転倒を経験した。睡眠薬使用群では対照群と比べて患者背景に違いがみられた。特にORA/Ram群では、高齢でADLが低下した患者が多く、炎症反応や腎機能障害を示す検査値も高かった。

     30日間の追跡期間における転倒の絶対リスクは、対照群2.3%に対し、BZ/Zs群3.5%、ORA/Ram群4.9%、併用群4.4%であった。調整後解析では、対照群と比べてBZ/Zs群で転倒発生ハザードが42%高く(調整ハザード比1.42)、ORA/Ram群でも46%高かった(同1.46)。併用群でも同様の傾向が認められた(同1.42)。この関連は競合リスク解析でも一貫していた。

     さらに、傾向スコアマッチングにより患者背景をそろえてBZ/Zs群とORA/Ram群を直接比較した解析では、転倒発生ハザードに有意差は認められなかった(調整ハザード比0.98)。

     著者らは、高齢入院患者における睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連していた一方、BZ/Zs群とORA/Ram群との間で転倒リスクに有意差は認められなかったとしている。その上で、睡眠薬の種類を変更するだけでは転倒予防は難しく、患者の脆弱性そのものに着目した対策が重要になる可能性があると考察している。

     なお、著者らは、本研究が観察研究であるため因果関係は証明できず、睡眠薬が必要となる患者の背景因子による影響を完全には除外できない点を限界として挙げている。また、本研究は薬剤クラス間の同等性を検証するように設計された研究ではなく、BZ/Zs群とORA/Ram群の転倒リスクが同等であることを示したものではないとしている。

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難病として指定されている「筋ジストロフィー」の中でも一番多いとされているのが「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」です。出生男児約3500人につき1人の割合で発症し、日本でのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者数は、約5000人とされています。

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