-
7月 27 2026 緑内障手術後、約3人に1人で眼瞼下垂――濾過手術でリスク高く
緑内障手術後には眼瞼下垂(まぶたが下がる症状)が生じることがあるが、その経過は十分に分かっていなかった。今回、患者を1年間追跡した研究で、約3人に1人に眼瞼下垂がみられ、特に濾過手術では術後1年まで進行する可能性が示された。研究は、神戸大学医学部眼科学教室の奥住奈南美氏、盛崇太朗氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology」に掲載された。
緑内障手術は近年の進歩により広く行われるようになった一方で、術後の眼瞼下垂が課題となっている。眼瞼下垂は見た目だけでなく、視野や患者満足度にも影響を及ぼす可能性が指摘されているが、発生頻度や経過、術式による違いを長期間にわたって検討した研究は限られていた。そこで著者らは、複数の緑内障手術を対象に、術前から術後1年まで眼瞼下垂の発生や経過を前向きに評価した。
【緑内障の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、2023年10月~2024年12月に神戸大学医学部附属病院で初回の緑内障手術を受けた167人を対象に前向き研究を実施した。対象となった術式は、低侵襲緑内障手術であるマイクロフックを用いた眼内線維柱帯切開術、プリザーフロ・マイクロシャント留置術、線維柱帯切除術、アーメド緑内障バルブ留置術の4術式である。術前から術後1年まで定期的に撮影した写真を用いて上まぶたの位置を客観的に評価し、術前より1mm以上低下した場合を眼瞼下垂と定義して、術式ごとの発生状況や関連因子を解析した。
解析の結果、術後1年時点で眼瞼下垂は54人(32.3%)に認められた。上まぶたの位置は術後1カ月から低下し、その低下傾向は1年後まで持続した。
マイクロフックでは有意な変化はみられなかった一方、プリザーフロ、線維柱帯切除術、アーメドなどの濾過手術では、上まぶたの位置の有意な下垂が認められた。
また、アーメド緑内障バルブ留置術と術前の瞼裂(目の開き)が大きいことが眼瞼下垂のリスク因子として特定された。
著者らは、本研究は緑内障手術後の眼瞼下垂が術後6カ月を超えて1年まで進行する可能性を初めて示した研究だとしている。また、濾過手術で眼瞼下垂が生じやすい理由について、術中の機械的な刺激だけでは説明できず、インプラントやろ過胞とまぶたとの摩擦などが関与している可能性があると考察している。さらに、緑内障手術を行う医師は術後の眼瞼下垂を認識し、経過を注意深く観察する必要があるとしている。
一方、本研究は単施設で日本人のみを対象とした研究であり、特にアーメド緑内障バルブ留置術は8例と症例数が少なかったことから、この術式に関する結果の解釈には注意が必要だとしている。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
7月 27 2026 低ナトリウム血症、腎機能が高くても低くてもリスク上昇
低ナトリウム血症は日常診療でよく遭遇する電解質異常だが、腎機能との関連は十分に明らかになっていなかった。今回、日本の外来患者13万人超を対象とした解析で、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められ、腎機能が高い場合と低い場合の双方でリスクが上昇することが報告された。研究は聖路加国際病院腎臓内科の長浜正彦氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載された。
低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が低下した状態で、体内の水分バランスを調節する仕組みの異常などによって生じる。腎機能が低下すると余分な水を排泄する能力が低下するため、低ナトリウム血症のリスクが高まると考えられている。一方、腎機能と低ナトリウム血症との関連については、これまで主に慢性腎臓病患者や入院患者を対象に検討されており、腎機能が保たれた外来患者を含めた大規模な検討は十分に行われていなかった。こうした背景から、著者らは成人外来患者を対象に、腎機能と低ナトリウム血症との関連を検討した。
【腎機能障害の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、聖路加国際病院(東京)において、2010年4月~2020年3月に外来を受診した成人患者を対象とする後ろ向き横断研究を実施した。血清ナトリウム値、血清クレアチニン値、尿検査のデータが同一受診日にそろっている患者を抽出し、透析患者などを除外した13万194人を解析対象とした。血清ナトリウム値135mEq/L以下を低ナトリウム血症と定義し、推算糸球体濾過量(eGFR)と低ナトリウム血症との関連を、多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。解析では、年齢や性別に加え、併存疾患や薬剤使用、各種臨床因子の影響を調整した。また、低ナトリウム血症患者では、尿浸透圧/血漿浸透圧比を指標として、eGFRと尿濃縮能との関連も検討した。
低ナトリウム血症の有病率は4.3%だった。低ナトリウム血症患者は、低ナトリウム血症のない患者と比べて高齢で、併存疾患が多かった。
低ナトリウム血症の有病率は、eGFRが70~80mL/min/1.73m²の群で最も低く、それよりeGFRが低い場合と高い場合のいずれでも増加し、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められた。特に、高eGFR群では有病率の上昇が顕著だった。
多変量解析では、併存疾患や薬剤使用を調整後もこの関連は維持された。さらに、炎症やバソプレシンによる水分調節に関連する臨床・検査因子を調整すると、eGFRが低い群で認められたリスク上昇は大きく減弱した一方、高eGFR群ではリスク上昇が持続した。完全調整モデルでは、eGFR 150mL/min/1.73m²以上の群のオッズ比は4.63(95%信頼区間 3.73~5.75)、eGFR 10mL/min/1.73m²未満の群では1.56(95%信頼区間 1.02~2.39)だった。
また、低ナトリウム血症患者では、高eGFR群ほど尿浸透圧/血漿浸透圧比が高く、尿濃縮能が保たれていた。
著者らは、「低ナトリウム血症は腎機能低下例だけでなく、腎機能が比較的保たれた患者でもその可能性を考慮すべきである」としている。また、高eGFR群と低eGFR群では低ナトリウム血症の発症機序が異なる可能性があると考察しており、高eGFR群では保たれた尿濃縮能とバソプレシンの作用が、低eGFR群では腎機能低下そのものやネフロン機能の低下など複数の要因が発症に関与している可能性があるとしている。
なお、本研究は横断研究のため因果関係は不明であり、尿濃縮能やバソプレシンを直接評価していない点などが限界として挙げられた。
本研究は、外来患者13万人超を対象に、腎機能が保たれた患者も含めて低ナトリウム血症との関連を検討した大規模解析であり、腎機能の高低で背景機序が異なる可能性を示した点が注目される。
糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。