• 子どもの頃の逆境体験、成人後の市販薬乱用と関連

     近年、市販薬の過量服薬(オーバードーズ)が社会問題となる中、幼少期の逆境体験がその背景に関与する可能性が示された。日本の成人約2万5,000人を対象とした全国調査の解析により、子どもの頃に虐待や家庭機能不全などの逆境体験を多く経験した人では、成人後の市販薬の習慣的乱用との関連が認められた。特に、電子たばこや加熱式たばこの使用者では、その関連がより強く認められたという。研究は、福島県立医科大学神経精神医学講座の森湧平氏、東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野の長岡敦子氏らによるもので、詳細は6月2日付の「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載された。

     逆境的小児期体験(ACEs)は、虐待やネグレクトなどの幼少期のつらい体験を指し、その後の心身の健康や物質使用障害との関連が指摘されている。日本でも成人の約4人に3人が少なくとも1つのACEを経験しているという。また、市販薬(OTC医薬品)の乱用は社会問題となっており、中学生を対象とした厚生労働省の調査では、過去1年間のOTC乱用経験は1.8%(約55人に1人)で、同年齢層の違法薬物使用を上回っていた。しかし、ACEsとOTC乱用との関連を直接検討した研究は乏しい。こうした背景から、著者らは全国規模の成人集団を対象に両者の関連を検討した。

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     本研究では、2025年2月23日~3月31日に実施された全国インターネット調査「Japan Society and New Tobacco Internet Survey(JASTIS)」の回答者2万8,000人のうち、不適切回答などを除外した2万5,424人を解析対象とした。18歳未満の10項目のACEsを評価し、4項目以上を経験した場合を高ACE曝露と定義した。OTC医薬品の習慣的乱用は、1)過去1年間に5回以上使用した、2)推奨量を超える過量服用をした、3)気分変容や多幸感を得る目的で使用した――の3つを満たした場合と定義した。また、多変量ロジスティック回帰分析により、ACEsとOTC乱用との関連を評価するとともに、紙巻きたばこ、電子たばこ、加熱式たばこ、アルコール、違法薬物の使用状況による違いも検討した。

     解析対象となった2万5,424人のうち、OTC医薬品の習慣的乱用の割合は6.8%だった。また、5.4%が4項目以上のACEsを経験した高ACE曝露群に該当した。高ACE曝露群では、低ACE曝露群と比べてOTC医薬品を習慣的に乱用するオッズが約3倍高く(調整オッズ比〔aOR〕 3.18、95%信頼区間〔CI〕 2.47~4.10)、有意な関連が認められた。さらに、ACEsの該当項目が1つ増えるごとにOTC乱用オッズは26%上昇した。ACE数別の解析でも、ACE数が多いほど関連が強まる傾向が認められた。

     他の依存行動との関連を検討したところ、紙巻きたばこ、加熱式たばこ、電子たばこの使用者では、非使用者よりもACEsとOTC乱用との関連が強かった。特に電子たばこ使用者では、その関連が最も強かった(aOR 27.14、95%CI 13.12~56.14)。

     本研究では、ACEsが成人後のOTC医薬品の習慣的乱用と独立して関連することが示された。特に電子たばこや加熱式たばこ使用者ではその関連がより強く認められた。著者らは、幼少期の逆境体験が長期的なメンタルヘルスに影響し得るとして、情緒的ストレスや社会的孤立に配慮した予防の重要性を指摘している。

     なお、本研究は横断研究であり因果関係を示すものではない。また、自己申告データに基づくことから誤分類や過少申告の可能性があるほか、オンライン調査参加者に限定されているため、一般集団との構成の違いや過大推定の可能性にも注意が必要とされる。

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  • 重度歯周炎、高齢者の脳卒中リスク上昇――医療費増加とも関連

     口腔の健康状態は、脳卒中発症だけでなく、その後の医療負担にも影響するのだろうか。今回、高齢者1,997人を対象とした5年間の追跡研究で、重度歯周炎は脳卒中発症リスクの上昇と関連し、脳卒中後の医療費増加にも関与する可能性が示された。研究は愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の齋藤瑞季氏、嶋﨑義浩氏らによるもので、詳細は6月12日付で「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。

     歯周炎は口腔内の慢性炎症性疾患であり、歯周病菌や炎症反応が血管に影響することで、心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている。脳卒中との関連を示した報告もある一方、因果関係については十分な結論が得られていない。また、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討した研究はあるものの、脳卒中後の医療費や入院日数との関係を評価した研究はほとんどない。こうした背景から著者らは、日本の後期高齢者を対象に、歯周炎と脳卒中発症との関連に加え、脳卒中後の医療費や入院日数との関連を検討した。

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     著者らは、2014年に三重県で実施された後期高齢者歯科健診のデータと、2014~2019年度のレセプトデータを用いて解析を行った。対象は75歳または80歳で、20本以上の歯を有し、脳卒中や心疾患の既往がない1,997人とした。歯周炎の重症度はCommunity Periodontal Index(CPI)を用いて評価し、歯周炎なし、中等度歯周炎、重度歯周炎の3群に分類した。参加者を5年間追跡し、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討したほか、追跡期間中に脳卒中を発症した参加者については、脳卒中関連医療費および入院日数との関連も評価した。また、生存曲線が交差していたため、制限付き平均生存時間(restricted mean survival time:RMST)解析も併用した。

     5年間の追跡期間中に232人(11.6%)が脳卒中を発症した。脳卒中発症との関連を検討したところ、重度歯周炎を有する高齢者では発症リスクが高い傾向がみられた。ただし全追跡期間での解析では有意な関連は認められず、追跡開始から22カ月までの解析でも明確な関連は示されなかった。一方で、23カ月以降の解析では重度歯周炎と脳卒中発症との有意な関連が認められた(ハザード比 1.65、95%信頼区間〔CI〕 1.08~2.53)。

     また、RMST解析でも、重度歯周炎群では脳卒中を発症せずに過ごせる期間が短く、追跡期間中における非歯周炎群と比べたRMST差は−0.80カ月(95%CI:−1.21~−0.39)だった。

     さらに、脳卒中を発症した80歳の参加者では、歯周炎のない群と比べて、中等度または重度歯周炎群で脳卒中後の医療費および入院日数が有意に増加していた。医療費は中等度歯周炎群で4.18倍、重度歯周炎群で6.32倍、入院日数はそれぞれ7.14倍、21.85倍だった。一方、75歳ではこれらの関連は認められなかった。

     著者らは、歯周炎が脳卒中リスクや脳卒中後の医療負担の増加に関与する可能性があるとしている。その背景として、歯周病菌による慢性炎症や動脈硬化の促進を挙げ、口腔健康の維持の重要性を強調している。また、80歳で医療費や入院日数との関連がより明確に認められたことについては、加齢に伴う身体機能低下により、脳卒中後の回復に時間を要しやすくなる可能性を挙げている。

     なお、本研究は80歳群で医療費や入院日数との関連を認めたが、解析対象者数が少なく信頼区間も広かった。著者らは、結果の解釈には注意が必要であり、さらなる大規模研究による検証が求められるとしている。

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  • 夜間頻尿の背景に“夜間多尿”――排尿日誌データから見えた加齢の影響

     夜間頻尿は高齢者に多い症状であり、その背景には膀胱機能低下だけでなく夜間多尿など尿量分布の変化が関与すると考えられている。今回、日本の17施設で夜間頻尿患者875例を対象に、排尿日誌を用いて夜間多尿の実態が解析された。その結果、夜間多尿の割合は加齢とともに増加し、特に80歳以上で顕著であった。夜間頻尿は年齢や尿量分布など複数の要因が関与する多因子性の病態と考えられた。研究は、岐阜大学大学院医学系研究科泌尿器科の川瀬紘太氏、古家琢也氏らによるもので、詳細は6月12日付の「Neurourology and Urodynamics」に掲載された。

     夜間頻尿は睡眠障害や転倒リスクの増加と関連し、高齢者のQOLに大きな影響を及ぼすことが知られている。その原因として夜間多尿(夜間に作られる尿の割合が多い状態)や膀胱蓄尿機能障害などが挙げられるが、加齢に伴う排尿パターンや昼夜の尿量分布の変化については十分に明らかになっていない。こうした背景から、著者らは排尿日誌を用いて年齢ごとの排尿パターンを解析し、夜間多尿の特徴と関連因子を検討した。

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     本研究は、2018~2022年に日本の17施設で夜間頻尿を主訴に受診した患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究である。膀胱結石や尿路感染症、泌尿器系の悪性腫瘍を有する患者、およびデスモプレシン使用者を除外した。対象者には少なくとも2日間の排尿日誌の記録を求め、24時間尿量や昼夜の尿量、最大排尿量などを評価した。夜間多尿は夜間多尿指数(NPi)を用いて評価し、夜間尿量が24時間尿量に占める割合が33%を超える場合と定義した。対象者を5つの年齢群に分類し、排尿パターンや夜間多尿の頻度を比較した。

     解析対象は875例で、このうち590例(67.4%)が夜間多尿に該当した。NPiは加齢とともに上昇し、80歳以上の群では他の年齢群と比べて有意に高値を示した(P<0.05)。また、夜間多尿の有病率も年齢とともに増加した。

     排尿日誌の解析では、80歳以上の群は他の年齢群と比較して24時間尿量および日中尿量が有意に少ない一方、夜間多尿の割合が有意に高かった(いずれもP<0.05)。

     さらに、夜間多尿群は非夜間多尿群と比べて高齢であり、過活動膀胱(OAB)の有病率も高かった。多変量解析の結果、年齢、OABの存在、最大排尿量、および24時間尿量が夜間多尿の独立した関連因子として抽出された。一方、男性を対象とした解析では前立腺肥大症(BPH)との有意な関連は認められなかった。

     著者らは、「夜間頻尿患者における夜間多尿は加齢とともに増加する一方、その背景にはOABや膀胱容量の低下、尿量分布の変化など複数の要因が関与している可能性がある」と結論付けた。高齢者の夜間頻尿は加齢に伴う尿量分布の変化と下部尿路機能障害が混在した病態であり、夜間尿量のみならず排尿機能も含めた評価が重要であるとしている。

     なお、本研究は後ろ向き観察研究であり、排尿日誌の自己記録による誤差や施設間の患者背景の違いが結果に影響した可能性がある。また、水分摂取量や睡眠障害、腎機能など夜間尿量に影響する因子を十分に評価できていないため、加齢と夜間多尿との因果関係については今後の検証が必要であるとしている。

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  • 高齢入院患者の睡眠薬継続使用、院内転倒リスク上昇と関連

     高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下につながり得るため、医療現場で重要な課題となっている。日本の急性期病院に入院した高齢患者6万人超を対象とした研究で、睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連することが示された。一方、ベンゾジアゼピン系・Z薬とオレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオンとの間で、転倒リスクに有意な差は認められなかった。研究は、日本医科大学医療管理学の西野拓也氏らによるもので、詳細は6月8日付の「PLOS One」に掲載された。

     高齢入院患者の転倒は、骨折や身体機能の低下、入院期間の延長などにつながる重要な問題だ。また、入院中の高齢患者では睡眠障害が多くみられるため、睡眠薬の選択は転倒予防の観点からも重要とされている。従来から使用されてきたベンゾジアゼピン系・Z薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)は転倒リスクを高めることが知られている。一方、オレキシン受容体拮抗薬やラメルテオンは代替薬として使用が広がっているものの、院内転倒との関連については結果が一致していなかった。こうした背景から著者らは、日本の急性期病院に入院した高齢患者を対象に、睡眠薬の継続使用と院内転倒との関連を検討した。

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     著者らは、2018~2024年に日本の急性期病院2施設へ入院した65歳以上の患者を対象に後ろ向き解析を実施した。長期入院患者では転倒や睡眠薬使用の機会が増える可能性を考慮し、入院7日目まで転倒のなかった患者6万1,663人を対象に、その後の転倒発生を追跡した。入院4~7日目に2日以上睡眠薬を使用していた患者を、ベンゾジアゼピン系・Z薬(BZ/Zs)群、オレキシン受容体拮抗薬/ラメルテオン(ORA/Ram)群、両者の併用群に分類し、持続的な睡眠薬使用がなかった患者を対照群とした。その上で、入院8~37日目に発生した初回の院内転倒を評価し、患者背景や併用薬、日常生活動作(ADL)などを調整した上で各群の転倒リスクを比較した。

     対象となった6万1,663人のうち、3,884人(6.3%)が入院8日目以降に転倒を経験した。睡眠薬使用群では対照群と比べて患者背景に違いがみられた。特にORA/Ram群では、高齢でADLが低下した患者が多く、炎症反応や腎機能障害を示す検査値も高かった。

     30日間の追跡期間における転倒の絶対リスクは、対照群2.3%に対し、BZ/Zs群3.5%、ORA/Ram群4.9%、併用群4.4%であった。調整後解析では、対照群と比べてBZ/Zs群で転倒発生ハザードが42%高く(調整ハザード比1.42)、ORA/Ram群でも46%高かった(同1.46)。併用群でも同様の傾向が認められた(同1.42)。この関連は競合リスク解析でも一貫していた。

     さらに、傾向スコアマッチングにより患者背景をそろえてBZ/Zs群とORA/Ram群を直接比較した解析では、転倒発生ハザードに有意差は認められなかった(調整ハザード比0.98)。

     著者らは、高齢入院患者における睡眠薬の継続使用は院内転倒リスクの上昇と関連していた一方、BZ/Zs群とORA/Ram群との間で転倒リスクに有意差は認められなかったとしている。その上で、睡眠薬の種類を変更するだけでは転倒予防は難しく、患者の脆弱性そのものに着目した対策が重要になる可能性があると考察している。

     なお、著者らは、本研究が観察研究であるため因果関係は証明できず、睡眠薬が必要となる患者の背景因子による影響を完全には除外できない点を限界として挙げている。また、本研究は薬剤クラス間の同等性を検証するように設計された研究ではなく、BZ/Zs群とORA/Ram群の転倒リスクが同等であることを示したものではないとしている。

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    HealthDay News 2026年7月6日
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