• 乳幼児期の睡眠不足、3歳時の発達遅延と関連――日本の出生コホート研究

     睡眠は、子どもの健やかな発達に欠かせない重要な要素である。今回、日本の全国出生コホート研究のデータを用いた解析から、乳幼児期の短い睡眠時間が3歳時の発達遅延と関連することが示された。また、睡眠場所が睡眠時間に関連する可能性も示された。研究は、鳥取大学医学部社会医学講座健康政策医学分野の増本年男氏らによるもので、詳細は7月8日付の「Frontiers in Public Health」に掲載された。

     これまでの研究で、子どもの短い睡眠時間は、肥満や不安・抑うつなどの精神的健康問題、感情調整の困難さと関連することが報告されている。また、乳幼児期は神経回路の形成が活発な時期であり、この時期の睡眠がその後の発達に影響する可能性も指摘されている。一方で、乳幼児期の睡眠時間と、その後の子どもの発達との関連については、研究結果が一貫しておらず、十分には解明されていない。また、睡眠時間に影響を及ぼす睡眠環境の要因についても、明らかになっていない。そこで研究グループは、日本の大規模出生コホート研究のデータを用いて、乳幼児期の睡眠時間と3歳時の発達との関連、さらに睡眠時間に影響する睡眠環境について検討した。

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     著者らは、日本の出生コホート研究「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査、The Japan Environment and Children’s Study:JECS)」のデータを用いて解析を行った。2011~2014年に全国19府県で登録された妊婦から生まれた子どものうち、出生情報などが得られた10万303人を主解析の対象とした。子どもの睡眠時間は、保護者への質問票により生後6カ月、1歳、1歳6カ月、3歳時点で評価した。年齢別の推奨睡眠時間(生後6カ月は12時間以上、1歳・1歳6カ月は11時間以上、3歳は10時間以上)を下回る場合を「短い睡眠時間」と定義した。また、子どもの発達は、生後6カ月、1歳、1歳6カ月、3歳時点で、保護者回答式の発達評価尺度であるAges and Stages Questionnaires, Third Edition(ASQ-3)を用いて評価した。主解析として、乳幼児期の睡眠時間と3歳時の発達遅延との関連について、個人差を考慮した統計解析を実施した。さらに、詳細調査の対象者を用いて、睡眠場所や騒音などの睡眠環境と睡眠時間との関連についても検討した。

     解析の結果、生後6カ月、1歳、3歳時点で睡眠時間が年齢別推奨範囲を下回っていた子どもでは、3歳時の発達遅延との関連が認められた。短い睡眠時間は、推奨睡眠時間以上の子どもと比べて、3歳時の発達遅延と関連していた(生後6カ月:オッズ比〔OR〕1.11、1歳:OR1.10、3歳:OR1.15)。

     また、ASQ-3の各領域について解析したところ、生後6カ月および3歳時の短い睡眠時間は、コミュニケーション、粗大運動(歩行などの全身運動)、微細運動(手先の細かな動作)、問題解決、個人・社会の全ての領域で発達遅延との関連が認められた。1歳時の短い睡眠時間は粗大運動および問題解決領域、1歳6カ月時の短い睡眠時間は粗大運動領域の発達遅延と関連していた。

     さらに、詳細調査の対象者を用いて睡眠環境との関連を調べた結果、睡眠場所が短い睡眠時間と関連していた。一方で、寝室へのペットの侵入、騒音、騒音による睡眠障害、就寝時間、喘息などの要因は、短い睡眠時間との有意な関連を示さなかった。

     今回の研究から、乳幼児期の短い睡眠時間は、3歳時の発達遅延と関連することが示された。また、睡眠場所などの睡眠環境が、子どもの睡眠時間に関連する可能性も示唆された。一方で、睡眠時間と発達との因果関係や、その背景にあるメカニズムについては明らかになっておらず、さらなる研究が必要だとしている。

     なお、睡眠時間や発達の評価は保護者への質問票に基づいており、客観的な測定ではない点などが研究の限界として挙げられる。

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  • 胃がん手術、低CXIは予後不良・再発リスクと関連

     「がん悪液質」は、筋肉量の減少や低栄養、全身性炎症などを特徴とし、患者の予後に影響を及ぼすことが知られている。今回、これらを統合的に評価するCachexia Index(CXI)が、胃がん手術患者の予後や再発リスクを予測する指標として有用である可能性が示された。研究は、東京大学医学部附属病院胃食道外科の小島晴樹氏、菅原弘太郎氏らによるもので、詳細は7月13日付の「Surgery Today」に掲載された。

     胃がんの予後は病期が最も重要な決定因子とされる一方、患者の全身状態も術後の生存に影響することが知られている。そのため、近年では、がん悪液質を総合的に評価する指標であるCXIが注目されている。肺がんや胆管がん、肝細胞がんでは、CXI低値が予後不良と関連することが報告されている。一方、胃がんではCXIの有用性を示唆する報告はあるものの、病期別の予後や再発パターンとの関連については十分に検討されていなかった。そこで著者らは、胃がん手術患者を対象に、CXIと術後の全生存期間、無病生存期間、再発パターンとの関連を検討した。

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     著者らは、東京大学医学部附属病院で胃がんの根治切除を受けた1,166人を対象に後ろ向き解析を実施した。術前CT画像から評価した骨格筋量や血清アルブミン値、好中球リンパ球比を基にCXIを算出し、男女別の下位4分の1を低CXI群、それ以外を高CXI群に分類した。約7年間の追跡データを用いて、全生存期間、無病生存期間、再発パターンとの関連を検討した。

     生存者の追跡期間中央値は83.9カ月だった。低CXI群は高CXI群と比べて年齢中央値が高く(70歳 vs. 65歳)、併存疾患を有する患者や進行病期の患者の割合も高かった。また、術後合併症の発生率も低CXI群で高かった(25.7% vs. 20.5%、P=0.04)。

     5年生存率は、低CXI群で63.4%と、高CXI群の78.5%を有意に下回った(P<0.001)。この傾向は病期I~IIIのいずれでも認められ、低CXI群では一貫して予後が不良だった。また、5年無病生存率も低CXI群で61.0%と、高CXI群の76.7%より有意に低かった(P<0.001)。

     さらに、再発リスクが低い病期Iを除いた病期II/IIIの患者では、低CXI群で再発率が高かった(35.4% vs. 24.9%、P=0.023)。特に、血行性再発(血流を介した遠隔転移)は低CXI群で13.6%と、高CXI群の6.9%より有意に多かった(P=0.026)。一方、局所再発、リンパ節再発、腹膜再発の発生率には有意差は認められなかった。

     多変量解析では、低CXIは全生存期間の独立した予後不良因子であり(ハザード比〔HR〕1.58、95%信頼区間〔CI〕1.20~2.07、P<0.001)、無病生存期間についても独立した予後不良因子であることが示された(HR 1.60、95%CI 1.24~2.07、P<0.001)。

     著者らは、CXIは胃がん手術患者の予後を予測する簡便な指標となる可能性があると指摘。CXIは筋肉量や栄養状態、炎症状態を反映することで、患者の身体的脆弱性と腫瘍の悪性度の双方を捉えている可能性があるとした。また、術前にCXIを評価することで、術後合併症や再発リスクが高い患者を特定し、栄養療法やリハビリテーションなどの介入につなげられる可能性があるとしている。

     なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究であることに加え、CXIの最適なカットオフ値がまだ確立されていない点を挙げている。著者らは、今後は他施設での検証に加え、低CXI患者に対する栄養介入やリハビリテーションなどの有用性を検討する研究が必要だとしている。

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    HealthDay News 2026年8月24日
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