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5月 26 2026 がんリスクに職業差、背景に「見つかりやすさ」の違いも――日本の大規模産業医学研究
職業は、がんリスクに影響するのだろうか。今回、日本の大規模研究で、男性では運輸関連や一部のブルーカラーの職業でがんリスクが高い傾向にあり、医師や教師などの専門職で低いといった傾向が示された。女性でも胃がんや乳がんなどで職業ごとの差がみられたという。ただし、この違いは単純な発症リスクだけではなく、健康診断の受診機会による「見つかりやすさ」や生活習慣の違いも影響している可能性がある。研究は東海大学医学部衛生学公衆衛生学の深井航太氏らによるもので、詳細は4月14日付で「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載された。
職業はがんリスクに影響する重要な要因とされるが、これまでの研究は特定の有害物質や高リスク産業に偏り、幅広い職業分類で部位別リスクを包括的に検討した研究は少ない。また、男女差や社会経済的要因、検診による「見つかりやすさ」の違いも十分に考慮されていない。日本は長期雇用により同一職業での曝露が蓄積しやすく、職場で行われるがん検診などにより職業ごとにがんの発見機会が異なる特徴を持つ。本研究は、日本の大規模データを用い、職業別・男女別・部位別のがんリスクを評価し、生活習慣や社会経済的要因、検出バイアスも考慮しながら、職業によるがん格差の実態解明を目的とした。
【がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究では、2005〜2023年に労災病院グループで実施された入院患者の病職歴調査(Inpatient Clinico-Occupational Database of Rosai Hospital Group:ICOD-R)のデータを用い、多施設による大規模症例対照研究が行われた。労災病院グループは全国34病院からなるネットワークで、診断は医師により国際基準に基づいて記録されている。対象は、がん患者約14万7,000人と、年齢などを一致させた対照群約27万8,000人で構成された。職業は最も長く従事した職種を基準に評価し、喫煙や飲酒などの生活習慣を調整した上で、条件付きロジスティック回帰分析により性別ごとに解析が行われた。
解析の結果、職業によってがんリスクに差が認められ、その傾向は男性でより顕著であった。男性では、肉体労働や運輸関連職でリスクの上昇がみられた一方、医師や教師などの専門職では低い傾向が示された。女性においても職業ごとの差は認められたが、全がんでの差は比較的小さく、がんの種類ごとに異なるパターンがみられた。なお、職業分類ごとの部位別がんリスクの詳細は、論文本文で男女別にヒートマップで示されている。
部位別にみると、男性では専門職で肺がん、胃がん、大腸がんなどのリスクが一貫して低い一方、販売や接客、飲食関連、運輸、建設などの職種で肺がんや大腸がん、肝がんのリスク上昇がみられた。女性では全体として職業差は限定的であったが、電気機械の組立作業に従事する人では、肺がんや胆道がん、胃がんのリスク上昇がみられるなど、特定のがん種で職業との関連が認められた。
ただし、こうした職業差の背景には、「見つかりやすさ」の違いが影響している可能性が指摘された。前立腺がんでは事務系職でリスクが高くみられたが、これは健康診断でPSA検査を受ける機会の違いにより、無症状の段階で発見されやすいことが影響している可能性がある。
著者らは、職業によるがんリスクの差について、実際の発症リスクだけでなく、生活習慣や健康診断の受診機会の違いも反映している可能性があると考察した。今回の知見について、特定の職業が一律に高リスクであることを示すものではなく、職業環境や健康管理機会の違いががんリスクの見え方に影響している可能性を示唆するものと位置づけている。
なお、本研究の限界点として著者らは、病院ベースの症例対照研究であることによる選択バイアスの可能性に加え、転職歴が加味されていないことや、身体活動など一部情報が含まれていない点を挙げている。
肺がんのセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。
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5月 26 2026 女性アスリートの月経不順増加、婦人科受診拡大後も続く傾向
女性アスリートでは、利用可能エネルギー不足(LEA)に伴い月経周期異常が生じ、健康や競技力に影響することが知られている。今回、日本の女性オリンピック選手を対象とした12年間の調査で、月経不順が増加傾向にある一方、婦人科受診率も大幅に上昇していたことが報告された。婦人科受診率は向上したものの、なお残る健康管理上の課題が浮き彫りとなった。研究はハイパフォーマンススポーツセンター・国立スポーツ科学センター産婦人科医の能瀬さやか氏らによるもので、詳細は4月12日付の「Women’s Health」に掲載された。
女性アスリートでは月経関連症状や月経周期異常が高頻度にみられ、競技活動やパフォーマンス、回復過程にも影響することが報告されている。また、LEAによって健康への影響がみられた状態であるスポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)は月経周期異常と関連し、長期的には骨・心血管系など多方面に影響し得る。しかし、既存研究の多くは横断的かつ欧米中心であり、長期的な変化や地域差は十分に検討されていない。そこで本研究では、日本の女性オリンピック選手を対象に、12年間・7大会にわたるデータを用い、月経関連症状と月経周期異常の有病率および婦人科受診率の経時的変化を検討した。
【月経困難症の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします日本の女性オリンピック選手を対象に、2008年北京大会から2020年東京大会(2021年開催)までの夏季・冬季計7大会に参加した選手のデータを解析した。対象は女性954人で、このうちホルモン製剤を継続使用していた選手を除いた786人を主な解析対象とした。婦人科に関する自己記入式アンケートを用い、月経周期の状態、月経関連症状、薬剤使用状況などを評価した。解析では大会ごとの経時的変化をロジスティック回帰分析で検討し、さらに同一選手が複数大会に出場することによる影響を考慮するため、一般化推定方程式(GEE)を用いた補正解析も行った。以上の方法により、本研究は反復横断研究デザインで長期的な傾向を評価した。
月経周期異常は全体の約22.5%に認められ、その内訳は月経不順13.9%、続発性無月経5.3%、初経遅延1.5%、原発性無月経1.8%などであった。12年間の経時的変化をみると、月経不順の有病率は有意に増加していた(オッズ比〔OR〕 1.24、95%信頼区間 1.13~1.37、P<0.001)。この傾向は同一選手の反復参加を考慮した解析(GEE)でも確認された(OR 1.25、P<0.001)。一方、続発性無月経では増加傾向が示唆されたものの統計学的有意差には至らず、原発性無月経や初経遅延には明確な変化は認められなかった。
月経随伴症状では、月経困難症が24.3%、月経前症候群(PMS)が66.9%、過多月経が9.2%に認められた。PMSは最も高頻度にみられた症状であったが、いずれも経時的な有意な変化は認められなかった。一方で月経困難症は主解析では増加傾向にとどまったものの、GEE解析では有意な増加が確認された(OR 1.11、P=0.005)。さらにPMSの個別症状では、怒りっぽさ、むくみ、体重増加などに明確な変化はみられなかった一方、乳房の張りは有意に減少していた。
また、月経周期異常の割合は競技特性によって差がみられ、特に新体操や器械体操、フィギュアスケート、陸上長距離などの審美系や持久系競技で無月経の割合が高い傾向にあった。婦人科受診歴については、全対象で解析した結果、受診率は12.4%から65.3%へと約5倍に増加していた(OR 1.42、P<0.001)。
著者らは、婦人科受診率が上昇した一方で月経不順や月経困難症の増加傾向が持続していることから、医療アクセス改善のみでは十分な健康管理につながらない可能性があると指摘している。月経周期異常は骨や心血管系を含む長期的健康リスクとも関連することから、早期対応と選手・指導者双方の理解と連携が重要と述べている。
本研究の限界として、症状評価が自記式質問票に基づくため想起バイアスの可能性があることに加え、月経周期異常の原因を特定できないこと、対象が日本人エリート女性選手に限られる点を挙げている。
月経困難症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
月経困難症 症状別のセルフチェックに関する基本情報を掲載しています。症状の重さやどういったことが診断の基準レベルになるのか。生理・生理前アプリや内膜症に関連する病気。まとめた情報を紹介しています。