• 救急搬送後の自殺再企図、若年と過量服薬がリスク因子に

     自殺企図で救急搬送された患者の自殺再企図は、初期対応時に予測できるのだろうか。今回、国内3施設で救急入院患者を追跡した研究により、若年であることと過量服薬(オーバードーズ)が、自殺再企図のリスク因子となる可能性が示された。初回自殺企図時に過量服薬を行った患者では、再企図リスクが約2.5倍高かったという。研究は獨協医科大学精神神経医学講座の佐々木太郎氏、古郡規雄氏らによるもので、詳細は4月29日付の「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。

     自殺企図歴は、その後の自殺再企図や自殺死亡の強い予測因子とされる。これまで若年者では再企図が多く、性別による自殺行動の違いも報告されてきたが、その背景には自殺手段の違いが関与する可能性が指摘されている。一方、日本では救急搬送後の自殺再企図に関するリアルワールドの多施設縦断データは限られており、特に過量服薬がその後の再企図リスクに及ぼす影響は十分に検討されていなかった。こうした背景から著者らは、自殺企図で救急入院した患者において、年齢および初回自殺企図時の過量服薬と自殺再企図との関連を検討するため、多施設後ろ向きコホート研究を実施した。

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     本研究の対象は、2020年3月~2025年3月に日本国内3施設の救急外来へ自傷または過量服薬後に搬送され、自殺企図と臨床的に判断された1,038人とした。研究は、獨協医科大学病院、自治医科大学附属病院、八戸市立市民病院で行われた。事故による過量服薬や非自殺性自傷は除外した。対象患者を追跡し、初回救急入院後に医療介入を要した自殺再企図までの時間を評価した。Kaplan–Meier法およびCox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、初回自殺企図時の過量服薬と自殺再企図リスクとの関連を解析した。さらに、過量服薬単独例に限定した感度解析も行った。

     追跡期間中に、医療介入を要した自殺再企図は58件確認された。Kaplan–Meier解析では、女性および39歳以下の患者で自殺再企図の累積リスクが高かった。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析では、40歳以上は自殺再企図リスク低下が認められた一方(HR 0.52、95%信頼区間〔CI〕 0.29~0.94、P=0.030)、初回自殺企図時の過量服薬は自殺再企図リスク上昇と有意に関連していた(HR 2.54、95%CI 1.32~4.90、P=0.005)。一方、性別は多変量解析では独立した関連を示さなかった。これらの結果は、過量服薬単独例に限定した感度解析でも同様だった。

     著者らは、救急入院時に把握可能な年齢や初回自殺手段が、自殺再企図リスクの層別化に有用となる可能性を示したとしている。特に、過量服薬で自殺企図した若年患者では、退院後の重点的なモニタリングや支援が重要になる可能性があると述べている。また、過量服薬単独例でも再企図リスクとの関連が維持された背景として、過量服薬を含む複合的な自殺手段では致死性が高く、その後の再企図として観察されにくくなる生存バイアスの影響がある可能性を指摘している。

     本研究の限界として、精神疾患の重症度や自殺企図歴、退院後の精神科治療などの影響を十分に調整できていない可能性を挙げている。また、再企図は参加施設のカルテに基づいて把握しているため、他院受診例などを十分に捉えられていない可能性もある。

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    HealthDay News 2026年6月8日
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  • 乳がん・子宮頸がん検診、働く女性の受診行動と性格特性に関連か

     乳がんや子宮頸がんの早期発見には定期的な検診が重要だが、働く女性の受診率向上は課題となっている。今回、日本の就業女性を対象とした研究で、一般に健康管理と結びつきやすいとされる誠実性や不安と関連する神経症傾向が高い女性ほど、乳がんおよび子宮頸がん検診の受診率が低い傾向にあることが示された。研究は横浜市立大学医学部看護学科の佐藤みほ氏と、福島県立医科大学看護学部の佐藤菜保子氏によるもので、詳細は4月28日付の「JMIR Cancer」に掲載された。

     日本では乳がん・子宮頸がんの罹患率および死亡率が高い一方、検診受診率は他のOECD加盟国と比べて低い。女性の就業率上昇に伴い働く女性の受診率向上が課題となる中、時間的制約に加え、心理社会的要因も健康行動に影響する可能性が指摘されている。こうした背景から著者らは、就業女性における乳がん・子宮頸がん検診受診と性格特性やリスク認知との関連を検討した。

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     著者らは、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターが実施する日本家計パネル調査(JHPS)および慶應義塾家計パネル調査(KHPS)のデータを用いた二次解析を行った。対象は70歳以下の就業女性1,142人で、2019~2022年の縦断データを解析した。乳がん検診(マンモグラフィ)および子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)の受診有無を評価し、性格特性は日本語版Ten-Item Personality Inventory(TIPI-J)で測定した。また、リスク回避傾向、主観的健康状態、精神的健康、婚姻状況、子どもの有無、介護役割の有無、学歴、雇用状態(正規・非正規)、居住地域などもあわせて解析した。少なくとも2回の回答が得られた参加者を対象に、一般化線形混合モデルを用いて乳がん・子宮頸がん検診受診と各因子との関連を検討した。

     解析の結果、乳がん検診および子宮頸がん検診のいずれにおいても、誠実性と神経症傾向が高い女性ほど受診率が低かった。乳がん検診では、誠実性(オッズ比〔OR〕 0.86、95%信頼区間〔CI〕 0.77~0.97、P=0.01)、神経症傾向(OR 0.87、95%CI 0.77~0.98、P=0.02)が関連し、子宮頸がん検診でも同様の傾向がみられた(誠実性:OR 0.88、95%CI 0.79~0.98、P=0.02、神経症傾向:OR 0.88、95%CI 0.78~0.99、P=0.04)。

     著者らは、一般に自己管理能力の高さと結びつく誠実性が高い女性ほど乳がん・子宮頸がん検診の受診率が低かった点について、仕事に加えて家庭でも多くの役割を担う日本人女性では、がんの予防行動よりも仕事や家族を優先する可能性があると考察した。また、神経症傾向が高い女性では、がんと診断される可能性に対する不安が強く、検診受診をためらう可能性が示唆された。

     本研究の限界として、自己記入式質問票による想起バイアスや社会的望ましさバイアスの可能性、欠測データ除外による選択バイアス、がん特異的ではなく一般的なリスク回避傾向を評価した点、医療への信頼や受診アクセス障壁に関する情報が含まれていない点などを挙げた。今後は、がん検診受診に影響する構造的要因および心理社会的要因について、さらなる検討が必要だとしている。

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    HealthDay News 2026年6月8日
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