• HIV抗体は「併用」が鍵に―サルで100%の感染予防効果

    今後、HIVの感染拡大を阻止するには複数の抗体を併用する戦略が鍵となりそうだ。2件の新たな研究で、手法は異なるが複数の抗体を組み合わせてサルに注射した結果、HIV感染を完全に予防できることが示された。

    これらの抗体は定期的に注射する必要があるが、より長期の予防効果を得ることができる抗体の開発も進められているという。

    HIV感染者に対する抗レトロウイルス療法では、単剤ではなく2~3種類の抗レトロウイルス薬が使用される。
    その理由は、単剤治療ではウイルスがすぐに耐性を獲得してしまうからだ。
    米エイズ研究財団(amfAR)のRowena Johnston氏によると、今回の研究は、この考えを抗体にも応用したものだという。これまでのHIVワクチンの研究でも1種類の抗体だけで完全に感染を予防できたことはなかった。

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    また、今回報告された2件の研究では、弱毒化させた病原体を接種して自然に免疫を獲得するのではなく、単純に抗体を投与することで免疫を獲得する「受動免疫」の仕組みを利用した。

    さらに、ウイルスに結合して標的細胞への侵入を阻止する中和抗体の中でも、さまざまな種類のHIV株を中和できる広域中和抗体に着目した点も、これらの研究に共通している。

    このうち米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのDan Barouch氏が率いた研究では、2種類の広域中和抗体(PGT121とPGDM1400)をサルに注射した後、2種類のHIV株に曝露させる実験を実施した。

    その結果、いずれか一方の抗体のみを注射したサルはHIVに感染したが、2種類の抗体を併用したサルはいずれのHIV株にも感染せず、100%の予防効果が示されたという。

    この研究結果は「Science Translational Medicine」9月20日号に掲載された。

    もう1件の研究はSanofi社のGary Nabel氏らが米国立衛生研究所(NIH)の研究者らと共同で実施したもので、「Science」9月20日号に掲載された。

    この研究では、3つの広域中和抗体(VRC01、PGDM1400、10E8v4)の機能をあわせ持つ単一の抗体を遺伝子組み換え技術を用いて作製。
    これを注射したサル8頭と、VRC01またはPGDM1400のいずれかを単独で注射したサル(それぞれ8頭)をHIVに曝露させた。

    その結果、3つの抗体の機能を持つ新たな抗体を投与した群では感染例はなかったが、VRC01投与群では6頭が、PGDM1400 投与群では5頭が感染した。

    Nabel氏は「抗体を傘に例えると、ウイルスはその傘に穴を開ける方法を見つけて耐性を獲得するため、その下に2層目、3層目を作り、ウイルスが傘を突破できないようにした。
    この3通りに働くワクチンを接種したサルは、完全に感染から防御することができた」と説明している。

    なお、HIV感染予防のためにはこれらの抗体を数週間ごとに投与する必要がある。
    そのため、Barouch氏らは現在、効果を数カ月間持続させるために抗体の“寿命”を延ばす研究を進めているという。

    また、いずれの研究チームもヒトを対象とした臨床試験の実施を予定していることを明らかにしている。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2017年9月20日
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  • 今さら人には聞けない、STD(性感染症)のはなし

    日本では欧米諸国と比べてまだまだSTDの認知度が低いですが、STDは感染症としての影響だけではなく、倫理やモラルを問われる重大な問題です。自分やパートナーの感染を予防し、差別や偏見をなくすためにも、STDに関する正確な知識を学びましょう。ここでは代表的なSTDとして知られるHIVとHHVについて解説します。
    1. 1. はじめに
    2. 2. HIVの感染経路と感染リスク
    3. 3. AIDSの治療
    4. 4. AIDSの予防
    5. 5. HHVの感染経路と症状
    6. 6. HHVの予防と治療
    7. 7. まとめ

    はじめに

    STDとは性感染症のことで、その原因微生物は80種類以上にもなります。代表的なSTDにはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症であるAIDS(後天性免疫不全症候群)や梅毒、ヘルペスウイルス感染症があります。

    2014年7月に国連合同エイズ計画は、2013年末時点でのAIDSの流行状況に関する報告書を発表しています。報告によると世界のHIV感染者数は3,500万人と推定されています。新規感染者および死亡者数は減少していますが、2013年の1年間に新たに210万人がHIVに感染し、さらに150万人がAIDSで死亡しています。
    この数値は、AIDSが解決しなければならない重大な社会的問題であることを意味しています。

    ※国連合同エイズ計画とは
    エイズ対策の国際的な調整を目的とした国連機関のこと。

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    HIVの感染経路と感染リスク

    AIDSの原因はHIVで、コンドームの使用がHIVの感染に影響します。コンドームを使わずに挿入による性交渉を行った場合、感染の確率は約0.1~1%と考えられています。100回に1回くらいの確率なので軽く見られがちですが、1回の性交渉でHIVに感染した例もあります。

    感染は性器以外でも成立し、肛門を使った性交渉では受入側に0.5%、挿入側に0.067%のリスクがあります。

    また、男女では性器の構造が違うため、同じ感染率ではありません。男女が性交渉するときの感染確率は、男性0.05%、女性0.1%です。女性の方が感染率が高いにもかかわらず、男性に感染者が多いのは、同性愛者同士の肛門を使った性交渉が原因です。

    また、15歳以下および45歳以上の女性も感染しやすいといわれています。それには膣(ちつ)粘液に含まれるムチンという成分の分泌量と割合が影響していると考えられていますが、まだ不明な点も多いです。

    AIDSの治療

    AIDSの治療開始が遅れると、生活の質の低下させるうえ、急速に病状が悪化して死期を早めてしまいます。しかし、現状ではAIDSを発症して初めてHIVに感染したことに気が付く例が、HIV感染者全体の3割を占めています。

    AIDS発症時に未治療の場合、予命は2~3年です。発症後の治療もある程度は成果がありますが、発症前と比較して明らかに劣ります。症状が出ていない発症前にHIV感染を知ることができれば、定期的な医療機関での受診やフォローアップ検査により、最適な治療を始めることができます。

    HIVを体内から完全に取り除く治療法は、残念ながら今のところありません。現状は抗HIV薬によってウイルスの増殖を抑え、AIDSの発症を防ぐことで、長期間にわたって健常時と変わらない生活が送れるようにしています。

    AIDSの発症には異物に反応する免疫担当細胞の1種である、CD4+T細胞が関与しています。健康なときには1マイクロリットル(1,000分の1ミリリットル)の血中に700~1,500個ありますが、それが350個未満になった場合にHIV療法の開始を検討します。

    日本における抗HIV薬は、2008年11月現在、核酸系逆転写酵素阻害剤10種類、非核酸系逆転写酵素阻害剤3種類、プロテアーゼ阻害剤8種類、インテグラーゼ阻害剤1種類で、これらを3剤以上組み合わせて服薬します。この治療のことをHAART療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)といい、HIVが血中から検出されなくなるように薬剤を組み合わせます。
    いったん治療を開始したら、特別な場合を除き、治療を継続する必要があります。これら治療薬や治療法の進歩により、感染者の治療の経過は飛躍的に良くなっています。

    ※核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤とは
    HIV感染すると、ウイルス内のRNA(リボ核酸)がヒトのDNA(デオキシリボ核酸)をコピーし、それを基にRNAからDNAへ変わる。これを逆転写といい、この作用によって作られたHIVのDNAがヒトのDNAに組み込まれ、HIVを構成するタンパク質を作る。
    核酸系逆転写酵素阻害剤と非核酸系逆転写酵素阻害剤は、この逆転写の過程を防いでウイルスの増殖を抑える薬のこと。

    ※プロテアーゼ阻害剤とは
    HIVがタンパク質を作るのを阻害する薬のこと。

    ※インテグラーゼ阻害剤とは
    HIVのDNAがヒトのDNAに組み込まれる際に働く、インテグラーゼという酵素の動きを止めて、ウイルスのDNAがヒトのDNAに入るのを防ぐ薬のこと。

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    AIDSの予防

    HIVは体液からも感染します。性的接触や母子感染(胎盤、産道、母乳などからの感染)が原因であるため、日常生活でHIVに感染する可能性はまずないです。唾液や涙の中のウイルス量は非常にわずかで、お風呂やタオルの共用で感染した事例はありません。

    HIVは体外に出ると感染性を失う弱いウイルスですが、ウイルスを含む体液が直接触れ合うような性行為にはパートナーの同意が必要です。

    HHVの感染経路と症状

    俗にいう『ヘルペス』とはHHV(ヒトヘルペスウイルス)に感染して起こる病気のことです。

    必要以上にウイルスに感染した細胞は、正常な機能を失います。このような細胞が多くなると、組織として環境変化に対応できなくなり、やがて生命を維持することが困難になります。

    HHVの感染は口腔や生殖器などの粘膜で起こります。口腔で感染すると、頭や顔の感覚を支配する三叉(さんさ)神経節に、性器で感染すると、骨盤の中央にある仙骨を支配する仙髄神経節に潜伏します。

    潜伏後、HHVに増殖の刺激があると、再び活性化して神経を通り、感染箇所とほぼ同じ箇所に水疱(すいほう)を形成します。水疱(すいほう)の中には増殖したHHVが含まれているため、漏れ出た液を介して感染します。

    初めて感染した際、抵抗力が弱いと、発熱やずきずきした痛みを伴って水疱(すいほう)が急激に現れます。

    陰部に感染するHHVは2型(HHV2)が主流です。しかし、近年、性交渉のスタイルの変化によって口唇ヘルペスの原因となるHHVの1型(HHV1)がHHV2と混ざって、性器ヘルペスの炎症のある部分から検出されることがあります。
    HHV2は性器の外側部分を中心に下半身にのみ症状を引き起こしますが、HHV1は全身のどこでも症状が出ます。また、HHV1とHHV2を合わせて単純ヘルペスウイルス(HSV)といいます。

    HHVの予防と治療

    予防するために大事なことは2つで、1つは自分にとって良い健康状態を保つことです。HHVは、もともとヒトの体の中にあり、普段はその働きを制限されています。しかし、月経のときや心身の疲れが溜まっているときは、ウイルスが活動を強めます。
    皮膚(ひふ)が固くなってしこりのような違和感が現れ、やがて帯状疱疹(たいじょうほうしん)(水ぶくれが帯のように広範囲にできる症状)になります。

    もう1つは症状のある人との接触を制限することです。HSVは唾液に含まれるため、オーラルセックスのような陰部への直接交渉がなければ大部分は予防できます。パートナーへの感染の告知やコンドームの使用などモラルが問われています。

    また、抗ウイルス薬として、ウイルスそのものをターゲットにした軟膏や服用薬が開発されています。症状が現れやすい場所を把握して、まずはすぐに抗ウイルス薬を塗ることが大切です。

    まとめ

    「私は、パートナーは大丈夫」と思っていても、STDは誰にでも起こりうる感染症です。人にはなかなか聞けないデリケートな問題ではありますが、感染の可能性があることを認識し、正しい知識を身につけて自分とパートナーの健康を守りましょう。

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  • 陰茎の包皮内の細菌が男性のHIV感染リスクに関連

    割礼(包皮切除)を受けていない異性愛者の男性では、陰茎の包皮内に生息する細菌がHIV感染リスクの上昇に関連している可能性のあることが初めて明らかにされ、研究報告が「mBio」7月25日号に掲載された。アフリカ人男性を対象とした今回の研究では、陰茎の包皮に覆われた部分の微生物叢(微生物の集まり)のうち、特定の4種類の細菌がHIV感染リスクに関連し、これらの細菌の量が10倍に増えるとリスクは最大で63%上昇することが示されたという。

    研究の筆頭著者である米ジョージ・ワシントン大学ミルケン公衆衛生大学院のCindy Liu氏は、「これらの細菌は嫌気性菌と呼ばれるもので、包皮の下など酸素の少ない環境で繁殖しやすい。今回の知見は、こうした細菌を減らすことによりHIV感染を防ぐといった新たな対策に生かせる可能性がある」と説明する。

    世界保健機関(WHO)は、男性の割礼は異性愛者の男性のHIV感染リスクを低減するのに役立つ可能性があるとしている。ただし、HIV予防のために割礼をすることは、HIV感染率が高く異性愛者間の新規感染が多い地域で、特に男性の割礼が一般的でない地域に限って推奨している。

    今回の研究では、ウガンダのラカイという町に住む割礼を受けていない男性180人以上を対象として、陰茎の包皮内(亀頭冠)をスワブでぬぐって検体を採取し、生息している微生物の種類や量について分析した。その後2年間で対象者のうち46人がHIVに感染したが、他の要因を考慮した解析の結果、4種類の嫌気性菌の量が多かった男性ではHIVに感染するリスクが有意に高く、これらの細菌が10倍に増えると感染リスクが54~63%高まることが分かった。

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    なお、これらの嫌気性菌の存在下では、特定の生化学物質(サイトカイン)の産生も増大することも分かった。Liu氏らは、これらのサイトカインによって炎症が生じ、免疫細胞が集まってくるためにHIV感染リスクが上昇すると推測。「免疫細胞は通常は感染症を撃退してくれるものだが、HIVが侵入したときには大きな弱点となる。つまりこの場合、嫌気性菌の増殖に伴って免疫細胞の数が増えることは、HIVに対して餌を与えるようなものだ」と説明している。

    Liu氏は、今回の研究はHIV感染率の高い地域に暮らす異性愛者の男性のみを対象にしたものだと強調し、「同性愛者の男性はコンドームを用いないアナルセックスにより感染することが多いと考えられるため、この知見は米国のゲイコミュニティには当てはまらない」と指摘している。一方、異性愛者の男性に対しては「割礼を受けずに陰茎の包皮下の微生物叢を変化させる有効な方法は現時点では分かっていない」と、同氏は話している。

    米国HIV医学協会(HIVMA)前会長で米カイザー・パーマネンテのMichael Horberg氏は、今回の研究報告について「HIVが蔓延する地域では割礼が重要な予防策だということが明確に示された」とコメント。割礼を受けていない男性がリスクを減らすには、まずはコンドームを使用することだが、それに加えて「理論的には、陰茎を清潔に保つことが有用と考えられる。例えば包皮の内側をよく洗い、包皮を戻す前に十分に乾燥させることだ」と説明している。

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    HealthDay News 2017年7月25日
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