1歳半までの受傷歴がある子どもは、ケガの再発リスクが高い――国内縦断研究

 生後18カ月(1歳半)までにケガを負ったことのある子どもは、7歳に至るまでに再度、ケガを負いやすいことが、国内で行われた縦断研究から明らかになった。岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏らの研究であり、詳細が「Scientific Reports」に10月21日掲載された。

 子どもはさまざまな場面でケガを負いやすく、その一部は致命的となり得る。これまでに法医学的な剖検例から、頭部外傷で死亡した子どもには以前の受傷を示唆する所見が多いことなどが報告されている。ただし、子どものケガの再発リスクに関する多くの研究は後方視的なデザインで行われたものであり、かつ限られた部位の外傷に焦点を当てたものだった。これを背景として小原氏らは、厚生労働省が行っている「21世紀出生児縦断調査」のデータを用いた縦断的な解析により、1歳半までの受傷歴がその後の受傷リスクと関連しているかを検討した。

治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

 2010年5月10~24日に出生した4万3,767人の子どものうち2万191人の家庭が、7歳に至るまで定期的に行われた縦断調査に回答していた。このうち80.4%に相当する1万6,239人が、1歳半までに家庭内を中心に何らかのケガを負っていた。一方、1歳半から7歳までの追跡期間中に、35.6%に当たる7,179人が何らかのケガによる受療行動を取っていた。

 追跡期間中のケガの有無で背景因子を比較すると、ケガあり群は男児が多く(57.9対49.7%)、単胎出産がわずかに多く(98.5対98.1%)、1歳半時点において保育園への通園がわずかに少ない(26.2対27.7%)という有意差が認められた。ただし、母親の出産時年齢・教育歴、在胎期間(正期産/早産)、両親の喫煙状況、居住地などは有意差がなかった。

 次に、1歳半までに何らかのケガを負っていた1万6,239人のケガの再発リスクを検討すると、その37.4%に当たる6,067人に、追跡期間中のケガによる受療行動が認められた。ロジスティック回帰分析で交絡因子(子どもの性別、単胎/多胎、保育園への通園、在胎期間、母親の教育歴、両親の喫煙状況、居住地など)を調整後、1歳半までの受傷歴は、追跡期間中のケガの発生と独立した関連のあることが明らかになった(調整オッズ比〔aOR〕1.48〔95%信頼区間1.37~1.60〕)。

 1歳半までのケガのタイプ別に追跡期間中のケガのリスクを見ると、やけど(aOR1.47〔同1.31~1.65〕)、誤飲(aOR1.35〔1.17~1.55〕)、転倒(aOR1.34〔1.26~1.43〕)、溺水(aOR1.29〔1.19~1.40〕)、挟まれ(aOR1.22〔1.15~1.29〕)については有意なオッズ比上昇が観察された。一方、切り傷、噛み傷、窒息、および交通事故については、1歳半までの受傷歴がない群と有意差がなかった。

 続いて、5歳半時点での問題行動(話を聞く、がまんする、約束を守る、などができない)の有無で群分けした解析を実施。問題行動のない群(80.1%)では1歳半までの受傷歴がある場合、追跡期間中のケガの発生aORが1.44(1.31~1.57)であり、問題行動がある群(19.9%)でも1.72(1.42~2.08)であって、ともに有意に多く発生していた。

 これらの結果から著者らは、「1歳半までにケガを経験した子どもは7歳に至るまでにケガを繰り返すリスクが高いことが示された。ケガ再発のリスク抑制のため、1歳半健診でケガの既往が確認された子どもの家庭に対しては、特にやけど、誤飲、転倒、溺水、身体を物に挟むといったことに関する安全対策の指導が欠かせない」と結論付けている。加えて、8割以上の子どもが1歳半までに何らかのケガを負っていることから、「家庭内で発生する子どものケガを減らすための普遍的な対策を強化する必要がある」としている。

 なお、1歳半までに受傷歴があり5歳半時点で問題行動がある場合に、受傷リスクがやや上昇することが示されたが、問題行動のない子どもとの差は大きなものでないことについて、「これは、子どものケガの再発には発達特性以外の要因の影響が大きいことを示唆しているのではないか」との考察が加えられている。

治験に関する詳しい解説はこちら

治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

治験・臨床試験についての詳しい説明

参考情報:リンク先
HealthDay News 2024年12月23日
Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
記載記事の無断転用は禁じます。