• デジタルゲームは高齢者に健康と幸せをもたらすのか

     ネット・ゲーム依存は身体活動の低下といった健康問題につながるが、高齢者の場合では、デジタルゲームにより身体活動が低下する可能性は低いということが明らかになった。千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の中込敦士氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Internet Research」に1月27日掲載された。

     デジタルゲームは高齢者の間でも人気が高まっており、認知的、社会的、身体的なメリットをもたらす可能性がある。しかしながら、高齢者において、デジタルゲームが健康と幸福にどのような影響を及ぼすかは依然として不明だ。中込氏らは、全国で実施された日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを使用して、デジタルゲームが高齢者の健康と幸福に与える多面的な影響を評価した。

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     本研究ではJAGESのデータベースより、2020年、2021年、2022年のデータを抽出した。デジタルゲームに関しての質問票が含まれていたのは、千葉県松戸市のみであったため、分析は松戸市の参加者のデータに焦点を当てた。

     2021年のデータの中で、過去5年間におけるデジタルゲーム(PC、携帯電話、スマートフォン、タブレット、またはコンソールによるビデオゲームと定義)の経験に関する質問に対して、「定期的にプレイしている」と答えた参加者を含む2,504人を対象とした。2022年に、これらの参加者に対してデジタルゲームに関する評価が行われた。また、2,504人の参加者のうちランダムに選択された1,243人(「定期的にプレイしている」192人を含む)に対しては、健康やウェルビーイングを含む人としての豊かさを評価する「Human Flourishing Index」評価も行われた。

     評価項目は6つの領域にわたる18の質問で構成されていた。領域は、1;幸福と生活満足度、2;心身の健康、3;意味と目的、4;性格と美徳、5;親密な社会関係、6;健康に関する行動、とされ領域の1~5に「Human Flourishing Index」の各2問の質問が設定された。全般的な豊かさである「Overall flourishing」は領域1~5までの平均とした。さらに領域2、5、6に関連する項目が追加された。

     Bonferroni法で補正し多重検定を行った結果、デジタルゲームは「Overall flourishing」、「Human Flourishing Index」のいずれとも有意な関連は認められなかった(P=0.12~P>0.99)。また、領域6の「座位時間の増加」(リスク比 1.055〔95%信頼区間0.788~1.105〕、P=0.72)、「屋外での活動減少」(平均差異0.026〔-0.081~0.133〕、P=0.64)とも関連していなかった。Bonferroni法で補正した結果、有意とはならなかったが、「趣味のグループへの参加」(平均差異0.124〔0.037~0.210〕、P=0.005)「友人との交流」(平均差異0.076〔0.010~0.142〕、P=0.02)でデジタルゲームとの強い関連が示された。

     中込氏らは、この研究結果を、「リアルワールドデータにおいて、デジタルゲームが高齢者の健康と幸福に与える影響に関する貴重な洞察が得られた」とした上で、「(デジタルゲームが身体活動の低下と関連していなかった点について)デジタルゲームは、高齢者のバランスの取れたライフスタイルの一部となり、特に趣味のグループを通じて社会参加の機会を提供できるのでは」と述べている。なお、本研究の限界点として、データは1つの都市から得られたもので、調査結果の一般化はできないこと、本研究が観察研究であることなどを挙げている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2025年3月10日
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  • 一人暮らしの認知症者は疎外されやすい?

     認知症者に対する社会的距離は、認知症の行動および心理的症状(BPSD)を有する一人暮らしの患者でより大きくなることが示唆された。この研究は東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵氏らによるもので、研究結果の詳細は「PLOS One」に1月22日掲載された。

     認知症者とその介護者は、疾患へのスティグマ(「先入観に基づいてレッテルをはり、偏見をもち、差別する」という、一連の心と行動)による社会的排除に直面している。スティグマは、病気そのものが引き起こす苦痛よりもさらに大きな苦痛をもたらすことがあり、深刻な人権侵害であると言われている。

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     スティグマの研究では、スティグマを社会的距離(他の個人との望ましい親密さ、または距離の程度)で測定する方法がある。今回の井藤氏らの研究では、地域住民の認知症者に対する社会的距離がどのような要因によって変化するのかを検討した。

     参加者は、オンライン調査会社に登録している国内、地域在住の40歳から90歳までの男女2,589人(平均年齢62.0±10.5歳、女性49.8%)である。この調査では、世帯形態、BPSDの有無の組み合わせが異なる4種類のビネットがあり、それぞれ80代の女性が正常老化から認知症を診断され、軽度、中等度、重度と進行していく様子が描かれていた(A〔家族と同居、BPSDなし〕、B〔家族と同居、BPSDあり〕、C〔独居、BPSDなし〕、D〔独居、BPSDあり〕)。参加者はいずれかひとつのビネットを受け取り、それぞれの病期で、社会的距離を測定するための質問に回答した。

     その結果、全てのビネットで、認知症が進行するほど社会的距離が大きくなることが示された。また、すべての病期を通して、ビネットA「家族と同居、BPSDなし」の場合の社会的距離がもっとも小さく、ビネットD「独居、BPSDあり」の場合の社会的距離が最も大きかった。

     社会的距離の差が最も大きかったビネットA「家族と同居、BPSDなし」とD「独居、BPSDあり」について、社会的距離に影響を与える要因を探索した。世帯収入、居住地域、認知症に関する知識、認知症患者との接触などを変数とする多変量分析を行った結果、軽度認知症段階では、「認知症に関する知識が多いこと」が社会的距離の縮小と関連していた(ビネットA〔95%信頼区間-0.28~-0.01、p=0.036〕、D〔同-0.26~-0.02、p=0.026〕)。「認知症患者との接触経験があること」は、認知症の全病期を通して、社会的距離の縮小と関連していた(ビネットA〔p=0.001~0.007〕、D〔p<0.001~p=0.006〕)。

     井藤氏らは本研究について、「今回の結果は、スティグマに対する介入としての教育の有効性を示すと同時に、その限界をも示すものである。中等度以上の認知症者に対するスティグマに対しては、教育だけではなく適切な準備状況がある社会的接触が必要であり、特に、社会的排除のハイリスク群である、独居でBPSDを示す者に対する方策が重要」と述べている。また、著者らは本研究の限界について、「社会的望ましさのバイアスが働いた結果、参加者はスティグマを過小に報告した可能性がある」と付け加えている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2025年3月10日
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