心臓手術は午前中よりも午後、術後の心イベントリスク5割減


研究を実施したリール大学(フランス)教授のDavid Montaigne氏らは「この結果には概日リズム(体内時計)が関係している可能性がある」と説明している。詳細は「The Lancet」10月26日オンライン版に掲載された。
今回の研究では、大動脈弁狭窄症のため大動脈弁置換術を午前中に受けた298人と午後に受けた298人の計596人の医療記録を500日間追跡した。
その結果、追跡期間中に心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、急性心不全による入院の複合)が発生するリスクは午前中に手術を受けた患者群と比べて午後に手術を受けた患者群では50%低かった。
これは、午後に手術を実施することで患者11人中1人の心血管イベントを回避できることに相当するという。

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また、Montaigne氏らは患者88人を対象としたランダム化比較試験も実施した。その結果、午前中の手術に割り付けられた群(44人)と比べて午後の手術に割り付けられた群(44人)では周術期における心筋トロポニンTの流出が少なく、心筋組織の損傷度が小さいことが示された。
さらに、患者から採取した心臓組織検体の遺伝子解析からは、午後に手術を受けた群の組織では、概日リズムに関連する287の遺伝子の活性が高いことも分かった。
これらのことから、Montaigne氏らは「心臓は概日リズムによる影響を受けており、午前中は心臓の修復能が低いことが術後のアウトカムに関係している可能性がある」との見方を示している。
その上で、「手術を午後に実施することで術後の心血管イベントのリスクを低減することができるかもしれない」とするとともに、「概日リズムに関連する遺伝子に作用することで心臓を保護する薬剤の開発にもつなげられる可能性がある」と期待を示している。

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