• 血管攣縮性狭心症患者のイベント抑止に抗血小板薬は無効?

     血管攣縮性狭心症に対する抗血小板薬の有用性を検討した、国内多施設共同研究の結果が報告された。抗血小板薬が処方されていなかった群との比較において、主要心血管イベントの発生率に有意差は認められなかったという。昭和大学藤が丘病院循環器内科の森敬善氏らの論文が、「International Journal of Cardiology Heart & Vasculature」6月9日オンライン版に掲載された。

     狭心症の発作が起きる原因は、冠動脈の動脈硬化と血管攣縮(血管が痙攣して細くなること)の、大きく二つに分けられる。動脈硬化に対しては、動脈内に血栓ができるのを防ぐ抗血小板薬が処方され、前者のタイプの狭心症の治療や心筋梗塞の予防などに広く用いられている。一方、後者の血管攣縮によって起きる狭心症の予後に対する抗血小板薬の影響は、これまで明確にされていなかった。

    狭心症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     今回報告された研究は、日本冠攣縮研究会によって実施されたもので、国内47施設の血管攣縮性狭心症患者を、抗血小板薬の処方の有無で2群に分けて追跡し、イベント発生率を比較した。登録患者数は1,429人(後方視的に1,276人、前方視的に153人を追跡)、追跡期間の中央値は32カ月。一次評価項目は心臓死、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症による入院、心不全、植込み型除細動器(ICD)の作動などで構成される主要心血管イベント(MACE)とし、二次評価項目は全死亡とした。

     全対象者のうち、抗血小板薬が処方されていたのは669人(47%)で、760人(53%)には処方されていなかった。抗血小板薬療法施行群は、高齢で男性が多く、高血圧や糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞の既往がある患者の割合が高かった。これに関連し、カルシウム拮抗薬やスタチン、ACE/ARBなどの薬剤の処方率も、抗血小板薬療法施行群の方が高かった。傾向性スコアによるマッチングにより、これらの背景因子に偏りのない各群335人を抽出した。

     主な患者背景は、抗血小板薬療法施行群、非施行群の順に、年齢65.41±9.88歳、66.67±10.25歳、男性の割合73.7%、75.5%、心筋梗塞の既往2.7%、3.9%、多枝攣縮25.7%、26.9%、ST変化20.9%、18.8%などで、いずれも有意差はなかった。抗血小板薬療法には、低用量アスピリンとチエノピリジン系薬が使われていた。

     追跡期間中のMACE発生率は、抗血小板薬療法施行群5.7%、非施行群3.6%で有意差は認められなかった(P=0.20)。MACEの中で最も多かったイベントは両群ともに不安定狭心症だった。二次評価項目の全死亡も、同順に0.6%、1.8%で有意差がなかった(P=0.16)。

     性別や年齢、保有リスク因子数、心筋梗塞の既往、多枝攣縮、ST変化などで層別解析を行った結果、65歳以上では抗血小板薬療法施行群においてMACE発生リスクの有意な上昇が認められた〔ハザード比2.29(95%信頼区間1.22~4.31)〕。その他の因子については、各群の有意な交互作用は認められなかった。

     研究グループによると、本研究は、血管攣縮性狭心症に対する抗血小板薬療法の効果を調査した日本初の多施設共同研究という。結論としては、「抗血小板薬療法は血管攣縮性狭心症患者のMACEに有益な影響を及ぼさなかった」とし、「どのような血管攣縮性狭心症患者が抗血小板薬療法の恩恵を受けることができるかを明らかにするために、さらなる研究が必要」と今後の展望を述べている。

    慢性心不全のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2020年7月20日
    Copyright c 2020 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 狭心症患者へのステント治療は無駄?

    胸痛をもたらす代表的な疾患の一つである狭心症患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)で、一部の専門家が「これまでの循環器診療を変える可能性がある」と評する研究結果が示された。

    この試験では、カテーテルを用いて狭窄した冠動脈を広げるステントを留置する治療〔経皮的冠動脈インターベンション(PCI)〕を受けた患者と、実際にはステントを留置しない偽のPCIを受けた患者の間に症状やQOL(生活の質)の差は認められなかったという。

    この研究は英インペリアル・カレッジ・ロンドンのRasha Al-Lamee氏らが実施したもの。
    研究結果は心血管カテーテル治療学会議(TCT 2017、10月29~11月2日、米デンバー)で報告されたほか、「The Lancet」11月2日オンライン版にも掲載された。Al-Lamee氏らは「患者によっては高価なステントを用いた治療を行わなくても薬物療法のみで十分であることを示す結果」としている。

    RCTの対象は、英国の5施設で登録された70%以上の狭窄が1本の冠動脈のみに認められる18~85歳の安定狭心症患者200人(平均年齢66歳、女性27%)。
    全員に6週間の至適薬物療法を行った上で、105人をPCI群、95人を偽の治療を行うプラセボ治療群にランダムに割り付けた。
    PCI群では狭窄部位に薬剤溶出ステント(DES)を留置した一方、プラセボ治療群ではPCI群と同様、橈骨動脈または大腿動脈からカテーテルを挿入して冠動脈造影を実施したがステントは留置しなかった。
    なお、いずれの群も処置中は患者にヘッドホンを付けて音楽を流し、周囲の音が聞こえないようにした。

    狭心症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    お近くの治験情報を全国から検索できます。

    その結果、6週間後にトレッドミル検査での歩行時間がPCI群では28.4秒、プラセボ治療群では11.8秒延長したが、両群間に有意差は認められなかった。
    また、患者の評価による症状の改善度も両群間で有意差はなかった。
    ところが、瞬時血流予備量比(iFR)と冠動脈血流予備量比(FFR)によって評価した虚血の程度はPCI群で有意に改善していた。

    Al-Lamee氏はニュースリリースで「この結果は特定の条件を満たした患者群でのみ認められたものではあるが、驚くべきことにステント治療は血流を改善したにもかかわらず、薬物療法のみと比べて症状を抑える効果が優れているわけではないことが示された」と説明。
    「狭窄した冠動脈を広げることと症状の改善との関係は、考えられているほど単純な関係ではないのかもしれない」との見方を示している。

    また、同氏は今回の研究結果について「全ての安定狭心症患者でステント治療を回避すべきという意味ではない。
    安定狭心症でも薬物療法よりステント治療の方が望ましい患者が存在する可能性はある」と付け加えている。

    この研究について米セントルイス・ワシントン大学のDavid Brown氏らは論文の付随論評で「画期的な研究であり、極めて重要かつ広範囲に影響を与える結果が示された」と評価。
    この結果に基づき狭心症の治療ガイドラインを改訂するよう求めている。

    一方、この研究結果について慎重な見方を示す循環器医も多い。
    その理由として、この研究は狭窄がある冠動脈が1本のみで症状も比較的軽度の患者を対象としていたこと、追跡期間が6週間と短期間であったことなどが指摘されている。

    米コロンビア大学医療センターのAjay Kirtane氏は「これまで数多くの冠動脈疾患患者を治療してきた医師として、この研究結果がより重度の症状に苦しむ患者を含む全ての患者の治療にも当てはまるものと拡大解釈されてしまうことを危惧している」とコメント。
    また、米国心臓協会(AHA)のスポークスパーソンで米ノースカロライナ大学のSidney Smith氏も「狭窄部位にステントを留置しなかった患者に何が起こるのかを知るには、より長期間の追跡が必要だ」と強調している。

    治験に関する詳しい解説はこちら

    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2017年11月2日
    Copyright c 2017 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。