• 犬を強く愛している飼い主ほど健康になれる?

     犬と暮らす人の中でも、犬への愛着が強い人ほど身体活動量が高くなっていることが明らかになった。国立環境研究所の谷口優氏と東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏による論文が、「PLOS One」に11月27日掲載された。同氏らは、「犬と暮らすことで得られる健康効果を説明する要因として、犬への愛着の強さが鍵を握っているのではないか」と述べている。

     近年、犬の飼い主は健康状態が良好な人が多いとする研究結果が複数報告されてきている。谷口氏らも既に、犬と暮らす高齢者は身体機能が高いことや、フレイル(虚弱)や死亡に至るリスクが低いことを報告している。また、犬と暮らす高齢者の中でも、散歩などの運動習慣がある人において認知症の発症リスクが低くなることも報告している。しかし、なぜ犬と暮らす人の中で、運動習慣に差が生じるのかについては不明であった。

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     今回の研究は、一般社団法人ペットフード協会が2023年に実施したインターネット調査のデータを用いて行われた。この調査には日本各地に居住している20~79歳の犬猫飼育者1,683人が回答。このうち犬を飼っている1,041人を解析対象とした。

     対象者の主な特徴は、平均年齢が52.5歳、女性57.5%、既婚者71.1%、戸建ての持ち家居住者70.0%、独居者10.4%で、平均年収は500~600万円であった。また犬の散歩の頻度は、1日2回以上が25.1%、1日1回から2回が3.8%、週3回から7回が45.8%、週3回未満が25.3%だった。国際標準化身体活動質問票で評価した中高強度身体活動量の平均値は、41.4METs時/週であった。

     飼い犬への愛情の強さの評価には、既存の質問票(the CENSHARE Pet Attachment Survey)を用いた。この質問票は、「ペットとの遊びや運動に時間を使うか?」、「ペットはあなたの気分の変化に気づくか?」、「ペットを家族だと思うか?」などの六つの質問から成り、最大スコア24点で回答を評価し、点数が高いほど愛着が強いと判定する。本研究の対象者の平均値は18.8点だった。

     犬への愛着の強さと散歩の頻度および身体活動量との関連性について、重要な交絡因子(年齢、性別、婚姻状況、同居家族、収入、自宅の形態)の影響を統計学的に調整した結果、犬への愛着が強いほど散歩の頻度が高いことが明らかになった(B=0.04、P<0.01)。そして、犬への愛着が強いほど、中高強度身体活動量が高いことも認められた(B=1.43、P<0.01)。

     著者らは本研究を、「犬に対する愛着の強さと身体活動量の関連を明らかにした初の研究」と位置づけている。研究の限界点として、横断研究であるため愛着と身体活動量の因果関係は不明であることなどを考察した上で、「犬への愛着の強さが、日々の世話を通じて飼い主の運動習慣につながり、その結果、飼い主に健康障害が発生するリスクが低下すると考える」と総括。他方、「単に犬と暮らすだけでは、健康上のメリットを得られない可能性があることも示された」と付け加えている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2025年2月3日
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  • 10代の若者が自殺に向かう理由――未遂者対象解析

     10代の若者が自殺行動に至る理由やその手段などの特徴が明らかになった。日本医科大学付属病院精神神経科の成重竜一郎氏らの研究の結果であり、詳細は「BMC Psychiatry」に11月6日掲載された。学校や家庭の問題、および自閉スペクトラム症が、この世代の自殺リスクを押し上げている可能性があるという。

     国内の自殺者数は近年減少傾向にあるが、10代の若者の自殺者数は変化が乏しく、依然としてこの世代の死因のトップを占めている。10代の自殺は他の世代とは異なる特徴を持つことが海外から報告されている。しかし日本人のデータは少なく詳細が不明。これを背景として成重氏らは、2010~2021年に同院救命救急センターに収容され、救命し得た症例を対象とする詳細な解析を行った。自殺企図の原因・動機や精神疾患の有無などは、2人以上の経験豊富な精神科医の討議により推定・診断した。

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     上記期間の自殺未遂による患者数は860人だった。このうち、10代の自殺未遂の特徴を探るという意図から、最も近い世代である20代の自殺未遂者を比較対照群とした。各群の患者数は、10代が59人(全体の6.9%)、20代が216人(同25.1%)だった。

     まず、10代と20代の合計275人の全体としての特徴を見ると、女性が68.7%と多く、精神科の受診歴ありが74.2%、自傷行為の既往ありが61.8%だった。自殺行動の手段としては過量服薬が67.3%、高所からの飛び降りが17.8%などであり、認められた精神疾患・発達特性は、気分障害23.6%、パーソナリティー障害21.5%、適応障害17.1%、統合失調症と他の精神病性障害12.0%、自閉スペクトラム症9.8%などだった。

     これらを10代と20代で比較した場合、性別の分布や自傷行為の既往には有意差がなかったが、精神科の受診歴は20代に多く(10代62.7%対20代77.3%)、高所からの飛び降りによる自殺企図(同順に28.8%対14.8%)や自閉スペクトラム症(28.8%対4.6%)は10代に多いといった有意差が認められた。

     自殺企図の原因・動機については、学校の問題(40.7%対4.6%)、家庭の問題(39.0%対16.7%)、家庭の問題のうちの親子関係(30.5%対8.8%)などは10代が有意に多く、一方、恋愛上の問題(5.1%対32.4%)、仕事上の問題(3.4%対20.8%)、経済的な問題(0.0%対12.0%)は20代が有意に多かった。

     次に、先行研究において10代の自殺に関連が深いと報告されている事柄を説明変数とするロジスティック回帰分析にて、10代の自殺企図に関連のある因子を検討。その結果、学校の問題(オッズ比〔OR〕14.338〔95%信頼区間5.557~36.998〕)、自閉スペクトラム症(OR7.297〔同2.541~20.956〕)、家庭の問題(OR2.860〔1.355~6.038〕)という三つの因子がそれぞれ独立して自殺企図に関連していることが示された。

     著者らは、本研究が都心部の単一施設のデータに基づく解析であるため、日本の他の地域とは傾向が異なる可能性があることなどを留意点として挙げた上で、「10代の若者は、ある程度自分で環境を変えることのできる成人と比べ、学校や家庭などの容易に変え難い環境で発生する困難から逃れることができず、その葛藤が自殺企図につながる可能性を示唆している。10代の自殺防止対策には、これらの要因を考慮することが重要である」と述べている。

     なお、学校や家庭の問題以外に、自閉スペクトラム症が10代の自殺企図に関連しているという結果については、「自分を取り巻く状況を変えることが難しい場合に、代替策として自身の特性を抑え込み、周囲に適応しようとする『社会的カモフラージュ』を強いられることで、精神的な負担がさらに増大しやすくなるためではないか」との考察が加えられている。

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    HealthDay News 2025年2月3日
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