• 家庭における犬と猫の共存、その成功因子が明らかに

     近年、先進国では犬と猫の両方を飼っている世帯が増加している。今回、日本国内で犬と猫の両方を飼っている飼い主のほとんどは、両者が友好的であると認識しているとする研究結果が報告された。両者の同居開始年齢が若いほど、友好的な関係が予測されるという。研究は大阪大学大学院人間科学研究科の千々岩眸氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に5月15日掲載された。

     2023年に一般社団法人ペットフード協会が実施した調査によると、国内で飼われている犬と猫の総個体数はそれぞれ700万匹と900万匹とされており、世帯全体のうち9.1%が犬を、8.7%が猫を飼っていると報告されている。また、日本の保険会社が2019年に実施した調査では、「犬・猫」を飼っている1776人の回答者のうち、11.1%(123人)が犬と猫の両方を飼っていると回答している。異なる特徴を持つ種が共存する場合、そこにはしばしば衝突が発生するが、近年、欧米諸国で実施された調査では、同居する犬と猫の間には概ね良好な関係が見出されている。この関係性は、同居開始年齢と猫特有の要因が影響しているという。しかし、日本や他のアジア諸国でこの関係性について調査した研究はない。また、多様な文化的背景における犬と猫の関係のダイナミクスを探ることは、両者の福祉(怪我やストレスの軽減、遺棄の防止など)にとって重要である。このような背景を踏まえ、著者らはオンライン調査を通じて、日本の犬・猫の飼い主が家庭内で両者の関係をどのように認識しているかを評価し、両者の共存に影響を与える様々な要因について検討した。

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     オンライン調査は、犬と猫の両方を飼っている国内在住の18歳以上の成人を対象とし、2021年12月14日から24日にかけて実施された。質問票は、(1)参加者に関する基本情報、(2)犬に関する基本情報、(3)猫に関する基本情報、(4)犬と猫に関する情報、(5)犬と猫の友好に関する評価(1~10までのリッカート尺度評価)の5つのセクションで構成されていた。犬と猫の友好に関連する因子を特定するために、質問票の各セクションについて個別にステップワイズ法による線形回帰分析を実施した。

     オンライン調査では1,981人の参加者から回答を収集し、そのうち777人の回答が有効とされた。最も年齢層が高かったのは40~49歳(27.5%)であり、未就学児がいない家庭が多かった(81.9%)。「X(犬または猫)の前でY(犬または猫)は快適に過ごしているか?」という問いに対し、多くの飼い主が互いに快適に過ごしていると回答した(犬:79.8%、猫:76.7%)。

     両者の友好の予測因子として、環境的側面では、食事場所が近いこと(標準化係数〔β〕-0.78、統計量〔t〕-9.14)、猫を犬に会わせた時の年齢が若いこと(β -0.32、t -3.84)、犬を猫に会わせた時の年齢が若いこと(β -0.25、t -2.37)などが明らかになった。また、「犬側の要因」では、犬が猫の前で快適に過ごしていること(β 0.62、t 7.37)、犬が猫に見せるためにおもちゃを拾ってくること(β 0.40、t 5.56)などが両者の友好の予測因子となった。一方、「猫側の要因」では、猫が犬の前で快適に過ごしていること(β 0.72、t 8.36)、猫が犬を威嚇しないこと(β -0.33、t -4.87)などが両者の友好の予測因子となっていた。欧米での報告では主に「猫側の要因」が重要であることが示唆されていたが、今回の研究から、「犬側の要因」と「猫側の要因」の両方が、(飼い主の)犬と猫との友好に対する認識に影響を与えることが明らかになった。

    本研究の結果について著者らは、「今回の研究では、先行研究とは異なり、『犬側の要因』は『猫側の要因』と同じくらい両者の友好的な関係に影響を与えることが示された。これは、小型犬や柴犬が屋内で飼育されているという日本特有の環境に起因するのかもしれない。また、犬と猫の関係が文化によってどのように異なるか、そしてそこから得られた知見をどのように活用できるかを検証するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

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    HealthDay News 2025年6月23日
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  • がんサバイバーの脳卒中・心血管死リスク、大規模コホート研究で明らかに

     がんと診断された人(がんサバイバー)は、そうでない人と比較して心血管系疾患(CVD)を発症するリスクが高いことが報告されている。今回、がんサバイバーの虚血性心疾患・脳卒中による死亡リスクは、一般集団と比較して高いとする研究結果が報告された。大阪大学大学院医学系研究科神経内科学講座の権泰史氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association;JAHA」に5月15日掲載された。

     近年、医療の進歩により、がん患者の生存率は大幅に向上している。しかし、その一方で、CVDが新たながんサバイバーの懸念事項として浮上している。CVDはがんサバイバーでがんに次ぐ死因であることが明らかになっており、疫学研究では、CVDによる死亡リスクが一般集団の約2倍であることも報告されている。従来の研究では、CVD全体による死亡リスクが調査されてきたが、特定のCVDに焦点を当てた研究は限られていた。そのような背景を踏まえ、筆者らは「全国がん登録(NCR)」データベースを用いて、国内のがん患者におけるCVDによる死亡リスクを調査するコホート研究を実施した。CVD全体のリスク評価に加え、虚血性心疾患、心不全、大動脈解離・大動脈瘤、虚血性脳卒中、出血性脳卒中といった特定のCVDについても解析を行った。

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     解析対象は、NCRデータベースに含まれる、2016年1月~2019年12月の間にがんと診断された患者とした。対象者の死因は、国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づき、死亡診断書に記載された情報からNCRに登録されたコードを用いて特定された。がん患者と一般集団のCVD死亡リスクを比較するため、標準化死亡比(SMR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。また、特定のCVDにおいてもがん種ごとのSMRを算出した。

     本研究には397万2,603人(うち女性は45.8%)の患者が含まれ、621万2,672人年の追跡調査が行われた。CVDのSMRは2.39(95%CI 2.37~2.41)で、がん患者は一般人口集団と比較してCVD死亡リスクが2.39倍高かった。SMRは男性より女性で高くなっていた。CVD死亡リスクをがん種別にみると、全てのがん種でSMRが1.0を超えて上昇していた。SMRは非リンパ系造血器悪性腫瘍が最も高く(4.32〔95%CI 4.15~4.50〕)、前立腺がんが最も低かった(1.52〔95%CI 1.48~1.57〕)。

     次にがん種ごとに特定のCVDのSMRを調べた。その結果、特定のCVDのSMRはがん種によって異なることが明らかになった。虚血性心疾患と心不全では非リンパ系造血器悪性腫瘍のSMRが最も高かった(それぞれ3.15〔95%CI 2.87~3.45〕、7.65〔95%CI 7.07~8.27〕)。虚血性脳卒中、大動脈解離・大動脈瘤、出血性脳卒中ではそれぞれ膵臓がん(5.39〔95%CI 4.79~6.05〕)、喉頭がん(3.31〔95%CI 2.29~4.79〕)、肝がん(3.75〔95%CI 3.36~4.18〕)のSMRが最も高くなっていた。

     本研究の結果について著者らは、「がん患者はCVDによる死亡リスクが高く、非リンパ系造血器悪性腫瘍ではその傾向が顕著だった。また、死亡リスクは、がんの種類やCVDの種類によって大きく異なることが明らかになった。特定のがん種と心血管疾患関連の死亡率との関連性を理解することは、高リスク集団を特定し、がんサバイバーに対する長期的な管理戦略の策定に役立つだろう」と述べている。

     本研究の限界点については、NCRに記載のICD-10コードはまれに不正確であること、本研究が観察研究であり、がんとCVDの因果関係を確立するできないこと、などを挙げている。

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    肺がんは初期の自覚症状が少ないからこそ、セルフチェックで早めにリスクを確かめておくことが大切です。セルフチェックリストを使って、肺がんにかかりやすい環境や生活習慣のチェック、症状のチェックをしていきましょう。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2025年6月23日
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